Oil & Water~サークル合宿の悲劇~

じゅん

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陽菜乃 合宿二日目 昼

陽菜乃 合宿二日目 昼 その8

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 奈月は息をのんで、動きをとめた。
「どうしたの?」
 奈月は陽菜乃たちの背後、東側の廊下を見ている。陽菜乃は奈月の視線を追いかけるように振り向いたが、なにもなかった。
「今、白っぽい人影が、向こうの部屋から出てきて、消えた……」
 奈月は耳の下で自分の髪を鷲掴みにした。
「どうして? これは呪い? 遠くで幸せになってるんじゃないの!?」
「あっ」
 陽菜乃は突き飛ばされたかと思うと、目の前のドアが閉まってしまった。背後にいた龍之介に支えられて転倒は免れたが、鍵をかけられてしまい、ドアノブを回してもドアは開かない。
「奈月、出てきてっ」
「いやだ、そっちで勝手にやって。あたしは部屋にいる!」
 奈月は引きこもってしまった。
 しばらくそのままドアを見つめていたが、陽菜乃は首を振って溜息をつく。
「受け止めてくれてありがとう」
 礼を言うと、龍之介は小さくうなずいた。
「それより、白い影が向こうの部屋から出てきた、っていうのが気になるな」
「二階の東側にある部屋は、階段側にある手前の部屋から、和樹、クリス、龍之介、だったね」
「そうだ。行ってみるか」
 陽菜乃たちは、一番手前の和樹の部屋のドアを叩いた。返事が聞こえて、すぐに和樹が顔を出した。部屋からロック調の音楽が聞こえてくる。
「なんや?」
「お前の部屋に、誰か来ていたか?」
「おらんよ。なにかあったん?」
 和樹は大きな瞳をきょとんとさせた。
「白い人影がこっちの部屋から出てきたって奈月が言っていたから、確かめに来たの」
「ああ、噂の幽霊か?」
 陽菜乃の言葉に和樹は手を打った。
「そんなところだ。邪魔したな」
「待ちいや。暇やったんや。オレも行く」
 ドアを閉めようとした龍之介をとめて、和樹がそのまま廊下に出てきた。和樹は別れた時と変わらない、独特の柄のTシャツとハープパンツをはいている。
「次は隣りのクリスの部屋ね」
 陽菜乃はそう言いながらノックをした。返事はない。
「そういえば私、龍之介の部屋に行く前にもクリスの部屋を訪ねたんだけど、返事がなかったの」
「厨房行って食べとるんやないか?」
 和樹はそう言って、連続でノックをする。そしておもむろにドアノブを捻ると、回った。
「開いとるやん。クリス、入るで」
 内開きのドアを和樹が押し開けると、目まで染みそうな異臭が押し寄せた。陽菜乃は思わず両手で鼻から下を押さえた。まさに鼻が曲がりそうだ。
 思わず閉じた目を開くと、ベッド近くの天井に設置された電気から紐が下がっていて、そこからクリスの首まで繋がっている。
クリスの足は五十センチ以上空に浮いていた。
 数時間前まで陽菜乃と一緒に狼煙を見守っていた時とは服装が違い、なぜかクリスはマジックショーで愛用していた燕尾服を着ていた。
 クリスは身体ごと真っ直ぐこちらを向いていた。首が垂れていて、長めの前髪で表情は見えない。全身が脱力していて、ピクリとも動かなかった。
「首吊り……」
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