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3 神隠し~死者と会えるトンネル~【恐怖指数 ☆☆★★★】
神隠し~死者と会えるトンネル~【恐怖指数 ☆☆★★★】 1
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「アカリくん、冴子くんのところに行くから、つきあってくれないかな」
アカリはお昼休みに、京四郎に声をかけられた。翔陽は徹夜でゲームをしたとかで、机に突っ伏して爆睡中だ。
一年A組を覗くと、冴子はいつものようにピンと背筋を伸ばして本を読んでいた。近づくと、アカリが声をかけるより早くこちらを向く。学校で一番と言われるほどイケメンの京四郎がいっしょにいるので、A組がざわめいていたのだ。
「珍しい組み合わせね」
冴子は文庫本を閉じで、頬にかかった黒髪を長い指先で払った。それだけで映画のワンシーンのように美しく、アカリはうっかりみとれてしまった。
(冴子ちゃん、あいかわらず美人!)
「冴子くんに頼みがあるんだ」
京四郎は持っていた紙袋を冴子の机の上に置いた。
「これを寺で燃やしてもらいたい」
中には、『ひとりかくれんぼ』で使ったサルのぬいぐるみが入っていた。冴子の家は寺なので、お焚き上げをして供養できる。
「まだ処分してなかったんだ」
思わずつぶやくと、京四郎はうなずいた。
「しばらく観察したかったからね、ぼくの部屋に置いていた」
(ホントに京四郎くん、変わってる)
アカリはとなりに立つ背の高い京四郎を見上げた。霊が宿って凶暴化したぬいぐるみなんて、近くに置きたくなんてない。
「動画、見たわよ。私のアカリを危険な目にあわせておいて、よくも頼みごとができるものね」
アカリは冴子に手を引かれると、膝の上にのせられた。
「冴子ちゃん、わたし重……」
「重くない」
ウエストを両腕で抱えられて、アカリは立ち上がれなくなってしまった。
(うわあ、お尻も背中も温かくて柔らかい。いい匂いもする。なんか恥ずかしい)
アカリは顔を赤くして縮こまった。
「見てくれたのならば話は早い。冴子くんをスカウトしに来たんだ」
「私に出演してほしいの?」
「ご名答。翔陽しか映っていないのは、絵的にさみしいからな」
京四郎はメガネを指先で持ち上げてほほ笑んだ。
「なぜ私に?」
「もう一人増やすと考えたとき、条件は三つあった。ネット配信する動画に出演可能であること。翔陽に釣り合うくらいに容姿がいい人物であること。心霊スポットに行くから、ある程度霊現象に慣れている人物であること」
「私はすべて当てはまると?」
「少なくても冴子くんはカメラに動じないだろうし、実はこういうイベントを欲してるよね」
「どういう意味かしら」
冴子は形のいい眉をつり上げた。二重のはっきりした瞳が氷のように冷たく見える。
「中学生らしいお遊び、したいだろ」
京四郎はメガネを上げて、人の悪そうな笑みを浮かべた。
「……私はそういう、なんでも知ってます、みたいな顔をする人はキライ」
板挟みになっているアカリはハラハラした。そういえばこの二人、小学生のころからあまり仲が良くなかった。二人とも高校生のように大人びていて、容姿も頭もいいので、同族嫌悪かもしれない。
「冴子くんなら、アカリくんがいれば引き受けてくれる可能性が高いと思ったのも理由の一つだよ」
京四郎はパッと柔和な笑みに戻った。
「アカリ、私を釣るエサにされてるわよ」
(そんなことを言われても)
アカリは口をとがらせた。
「アカリくんだって、冴子くんがいたほうが嬉しいだろ?」
「そりゃあ、そうだけど」
修学旅行の時も、冴子が心霊現象をおさめたのだ。こんなに頼もしい人は他にいない。
「私にいてほしい?」
冴子がきれいな顔で見上げて来る。
「うん。冴子ちゃんが迷惑じゃなければだけど……」
「じゃあ、参加してもいいわよ」
即答だった。
冴子がチームに加わった。
「最近、質の悪い霊の被害報告があがってきているから、鈴竹市の心霊スポットは危険なのよ。私がアカリを守ってあげる」
冴子の腕がきゅっと強くなった。
アカリはお昼休みに、京四郎に声をかけられた。翔陽は徹夜でゲームをしたとかで、机に突っ伏して爆睡中だ。
一年A組を覗くと、冴子はいつものようにピンと背筋を伸ばして本を読んでいた。近づくと、アカリが声をかけるより早くこちらを向く。学校で一番と言われるほどイケメンの京四郎がいっしょにいるので、A組がざわめいていたのだ。
「珍しい組み合わせね」
冴子は文庫本を閉じで、頬にかかった黒髪を長い指先で払った。それだけで映画のワンシーンのように美しく、アカリはうっかりみとれてしまった。
(冴子ちゃん、あいかわらず美人!)
「冴子くんに頼みがあるんだ」
京四郎は持っていた紙袋を冴子の机の上に置いた。
「これを寺で燃やしてもらいたい」
中には、『ひとりかくれんぼ』で使ったサルのぬいぐるみが入っていた。冴子の家は寺なので、お焚き上げをして供養できる。
「まだ処分してなかったんだ」
思わずつぶやくと、京四郎はうなずいた。
「しばらく観察したかったからね、ぼくの部屋に置いていた」
(ホントに京四郎くん、変わってる)
アカリはとなりに立つ背の高い京四郎を見上げた。霊が宿って凶暴化したぬいぐるみなんて、近くに置きたくなんてない。
「動画、見たわよ。私のアカリを危険な目にあわせておいて、よくも頼みごとができるものね」
アカリは冴子に手を引かれると、膝の上にのせられた。
「冴子ちゃん、わたし重……」
「重くない」
ウエストを両腕で抱えられて、アカリは立ち上がれなくなってしまった。
(うわあ、お尻も背中も温かくて柔らかい。いい匂いもする。なんか恥ずかしい)
アカリは顔を赤くして縮こまった。
「見てくれたのならば話は早い。冴子くんをスカウトしに来たんだ」
「私に出演してほしいの?」
「ご名答。翔陽しか映っていないのは、絵的にさみしいからな」
京四郎はメガネを指先で持ち上げてほほ笑んだ。
「なぜ私に?」
「もう一人増やすと考えたとき、条件は三つあった。ネット配信する動画に出演可能であること。翔陽に釣り合うくらいに容姿がいい人物であること。心霊スポットに行くから、ある程度霊現象に慣れている人物であること」
「私はすべて当てはまると?」
「少なくても冴子くんはカメラに動じないだろうし、実はこういうイベントを欲してるよね」
「どういう意味かしら」
冴子は形のいい眉をつり上げた。二重のはっきりした瞳が氷のように冷たく見える。
「中学生らしいお遊び、したいだろ」
京四郎はメガネを上げて、人の悪そうな笑みを浮かべた。
「……私はそういう、なんでも知ってます、みたいな顔をする人はキライ」
板挟みになっているアカリはハラハラした。そういえばこの二人、小学生のころからあまり仲が良くなかった。二人とも高校生のように大人びていて、容姿も頭もいいので、同族嫌悪かもしれない。
「冴子くんなら、アカリくんがいれば引き受けてくれる可能性が高いと思ったのも理由の一つだよ」
京四郎はパッと柔和な笑みに戻った。
「アカリ、私を釣るエサにされてるわよ」
(そんなことを言われても)
アカリは口をとがらせた。
「アカリくんだって、冴子くんがいたほうが嬉しいだろ?」
「そりゃあ、そうだけど」
修学旅行の時も、冴子が心霊現象をおさめたのだ。こんなに頼もしい人は他にいない。
「私にいてほしい?」
冴子がきれいな顔で見上げて来る。
「うん。冴子ちゃんが迷惑じゃなければだけど……」
「じゃあ、参加してもいいわよ」
即答だった。
冴子がチームに加わった。
「最近、質の悪い霊の被害報告があがってきているから、鈴竹市の心霊スポットは危険なのよ。私がアカリを守ってあげる」
冴子の腕がきゅっと強くなった。
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