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3 神隠し~死者と会えるトンネル~【恐怖指数 ☆☆★★★】
神隠し~死者と会えるトンネル~【恐怖指数 ☆☆★★★】 5
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「二人は消えちゃったの? これが神隠し?」
そんなばかな、と頭を振る。
アカリはスマートフォンを取り出して翔陽、冴子、京四郎の順番で電話をかけたが、電波が届かない、という音声が流れた。
(ここって、電波が届かなかったっけ? そうだ、外に出ればいいんだ)
アカリは翔陽や冴子の名前を叫びながら、薄暗いトンネルを走った。
息を切らしながらトンネルを抜けると、待機しているはずの京四郎も、そこに設置していた機材も消えている。自転車もない。
「帰っちゃったの?」
アカリはショックを受けたが、考え直す。
それならアカリの自転車が残っているはずだが、一台もない。
(どういうこと?)
驚きすぎて、混乱して、アカリの呼吸が浅く早くなる。
(どうしよう、どうすればいいの、翔ちゃん!)
もう一度スマートフォンでメンバーに電話をするが、やはり圏外だった。
(トンネルの外で電波が入らないはずがないのに)
アカリは迷ったが、トンネルの反対側に行くことにした。三人はなにかの事情で、自転車ごと反対側に行っているかもしれない。それしか考えられない。
「翔ちゃん! 冴子ちゃん! 京四郎くん!」
名前を呼びながら、一人でトンネルを走る。懐中電灯を持っていても怖い。声が反響して、わんわんと耳の奥でこだました。
これは本当に、自分の声なのだろうか。別の、霊の声が混ざっているのではないか。
三人で騒ぎながら歩いていた時には気にならなかったが、霊の気配を全身に感じて、気を抜くとしゃがみ込みたくなる。
(怖い。早くトンネルを出なきゃ)
トンネルの反対側に行こうと考えたことを後悔し始めた。
トンネル内に足音が響く。
タッタッタ、という音が重なり、増えているように感じる。
――いや、実際に増えている。
(うそ。いる。誰かが後ろから追いかけてきてる)
この寒気は、間違いなく、生きている人間ではない。
「いや、やだ、やだ!」
全力で走ろうとして、アカリは転んでしまった。
「いたっ」
つまづいたわけではなかった。
足首に、圧迫感がある。
見たくない。見たくないが……。
アカリは恐々と視線を向けた。地面からいくつも手がはえていて、その一つに足首を掴まれていた。だんだんと地面から顔の凹凸も浮き上がってきて、その顔がニタリと笑う。
「ひっ」
アカリは足を必死に動かして、なんとか手を外した。
横を照らすと、あの横穴があった。
後ろを振り向くと、トンネルの奥が見えないほどの霊がアカリに向かってきていた。大人も子供もいる。服はボロボロで、生きている人間ではあり得ない方向に関節が曲がり、体の一部が欠けている者もいる。このトンネルで、事故にあった者たちだろうか。
(立たなきゃ、追いつかれる)
アカリが力を振り絞って立ち上がると……。
目の前からも同じように、たくさんの霊が迫っていた。
(挟まれてる……、逃げ場がない)
もう一度、横穴を懐中電灯で照らした。
(ここに入っても行き止まり)
とはいえ、ここにいても霊に囲まれるだけだ。アカリは横穴に入った。奥には地蔵がポツンとある。
「お地蔵さま、助けて!」
アカリは地蔵の前でしゃがみ込む。
すぐにトンネル内の霊たちが現れて、横穴に侵入してきた。
いくつもの不気味なうめき声が反響し、脳が壊れてしまいそうだ。
(こわい、誰か助けて! おばあちゃん助けて!)
地蔵の前でアカリは祈った。
そんなばかな、と頭を振る。
アカリはスマートフォンを取り出して翔陽、冴子、京四郎の順番で電話をかけたが、電波が届かない、という音声が流れた。
(ここって、電波が届かなかったっけ? そうだ、外に出ればいいんだ)
アカリは翔陽や冴子の名前を叫びながら、薄暗いトンネルを走った。
息を切らしながらトンネルを抜けると、待機しているはずの京四郎も、そこに設置していた機材も消えている。自転車もない。
「帰っちゃったの?」
アカリはショックを受けたが、考え直す。
それならアカリの自転車が残っているはずだが、一台もない。
(どういうこと?)
驚きすぎて、混乱して、アカリの呼吸が浅く早くなる。
(どうしよう、どうすればいいの、翔ちゃん!)
もう一度スマートフォンでメンバーに電話をするが、やはり圏外だった。
(トンネルの外で電波が入らないはずがないのに)
アカリは迷ったが、トンネルの反対側に行くことにした。三人はなにかの事情で、自転車ごと反対側に行っているかもしれない。それしか考えられない。
「翔ちゃん! 冴子ちゃん! 京四郎くん!」
名前を呼びながら、一人でトンネルを走る。懐中電灯を持っていても怖い。声が反響して、わんわんと耳の奥でこだました。
これは本当に、自分の声なのだろうか。別の、霊の声が混ざっているのではないか。
三人で騒ぎながら歩いていた時には気にならなかったが、霊の気配を全身に感じて、気を抜くとしゃがみ込みたくなる。
(怖い。早くトンネルを出なきゃ)
トンネルの反対側に行こうと考えたことを後悔し始めた。
トンネル内に足音が響く。
タッタッタ、という音が重なり、増えているように感じる。
――いや、実際に増えている。
(うそ。いる。誰かが後ろから追いかけてきてる)
この寒気は、間違いなく、生きている人間ではない。
「いや、やだ、やだ!」
全力で走ろうとして、アカリは転んでしまった。
「いたっ」
つまづいたわけではなかった。
足首に、圧迫感がある。
見たくない。見たくないが……。
アカリは恐々と視線を向けた。地面からいくつも手がはえていて、その一つに足首を掴まれていた。だんだんと地面から顔の凹凸も浮き上がってきて、その顔がニタリと笑う。
「ひっ」
アカリは足を必死に動かして、なんとか手を外した。
横を照らすと、あの横穴があった。
後ろを振り向くと、トンネルの奥が見えないほどの霊がアカリに向かってきていた。大人も子供もいる。服はボロボロで、生きている人間ではあり得ない方向に関節が曲がり、体の一部が欠けている者もいる。このトンネルで、事故にあった者たちだろうか。
(立たなきゃ、追いつかれる)
アカリが力を振り絞って立ち上がると……。
目の前からも同じように、たくさんの霊が迫っていた。
(挟まれてる……、逃げ場がない)
もう一度、横穴を懐中電灯で照らした。
(ここに入っても行き止まり)
とはいえ、ここにいても霊に囲まれるだけだ。アカリは横穴に入った。奥には地蔵がポツンとある。
「お地蔵さま、助けて!」
アカリは地蔵の前でしゃがみ込む。
すぐにトンネル内の霊たちが現れて、横穴に侵入してきた。
いくつもの不気味なうめき声が反響し、脳が壊れてしまいそうだ。
(こわい、誰か助けて! おばあちゃん助けて!)
地蔵の前でアカリは祈った。
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