白銀の超越者 ~彼女が伝説になるまで~

カホ

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~出会い~

休暇

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 冒険者になって半月、今日もユールとノルンの姿は街の外にある森にあった。

 「グギャゴ!」

  最後のゴブリンを仕留め、20匹近いゴブリンの死体を一箇所にまとめ、魔石や討伐証明部位を剥ぎ取り、死体は焼却する。

  この半月の間、ユールとノルンは実に規則正しい生活を送っていた。この世界は一日が24時間、10日で一週間、そのうち週末3日は休日。1ヶ月は4週間で、12ヶ月で一年。

  平日は毎朝5時に起床し、公爵邸の庭を1時間散策、戻ってきて朝食、その後ゲートでギンヌンガガプに飛び、ギルドで依頼を受ける。昼はどこぞのレストランや屋台で食事をして、午後にまた依頼を受ける。18時までに屋敷に戻り、夕食を食べる。食後は再びギンヌンガガプに飛び、公衆浴場でお風呂に入る。それが終わるのがだいたい20時頃。就寝時間は22時だが、それまでは図書館に行ったり、道具を揃えたり、屋敷に戻って本を読んだりして過ごす。

  休日は7時起床で、朝食は抜かれることも多いが、ユールの異次元収納があるから無問題。自分たちで朝食を済ませれば、ノルンは留守番も兼ねて部屋で魔法の練習、ユールは屋敷の図書室でひたすら本を読み漁る。正午には一度部屋に戻り、軽い昼食をとる。午後は午前中の続きをすることもあるが、ギンヌンガガプの街を散策して買い物をする日もある。

  現在の二人の財布はかなり膨れている。異次元収納に入っている女神金貨相当のお金は貯金用と決めている。それを差し引いた今の彼女たちの所持金は、白金貨7枚。70万エッダである。庶民の平均月収は大金貨1枚。70万は大金である。

  ユールの異次元収納には貯金が入っているので、白金貨7枚の方はノルンが預かっている。ノルンもこの半月でメキメキと魔法の力を伸ばし、今は空間魔法を利用した収納魔法を使えるようになっている。狩りの道具や稼いだ分の金額はノルンの収納魔法の中である。しかし収納魔法の内部は少しずつだが時間が進んでいる上、容量にも限界があるため、素材や薬草、魔物の死体は異次元収納の方に入れている。

  その日は週に3日ある休日の初日。この日、二人は午前中から街でショッピングしていた。公爵が知ったら怒り狂いそうなほどいい生活である。

 「ユール様、ユール様。これなんてどうです?」
 「あ、いいんじゃない?似合ってると思う」

  今二人がいるのは、とある洋服屋。本来洋服類は銀貨か金貨ぐらいの値段はするが、白金貨7枚も持っている二人には関係ない。換算すると大金貨70枚。

 「おばさーん、これとこれくださーい!」
 「あいよ!どうもありがとう」

  気前良く二着のドレスを買ったノルンに、服屋のおばちゃんも上機嫌のようだ。お値段銀貨2枚と銅貨6枚。

 「じゃあ、私はこれで」

  ユールも服を買う。かわいいリボンのついた春色のフレアワンピースである。お値段金貨1枚と銀貨2枚。

 「金髪の嬢ちゃんもありがとうね!せっかくだから何かサービスするよ!」

  金髪の嬢ちゃんとはユールのこと。思わぬ上客に巡り合ったおばちゃんは、これまた気前良くカウンターから数点の商品を取り出した。

 「お嬢ちゃんたち、この中から一個ずつ好きなのを選んでいいよ!」
 「いいんですか!!」

  ノルンが目をキラキラさせている。

 「いいとも!せっかくこんなに可愛くて気前のいい女の子に会えたんだよ?おばちゃんも奮発しちゃうよ」
 「では、お言葉に甘えて」

  ノルンがテンションMAXではしゃいでいる横で、ユールはじっくりと商品を吟味し始めた。

  提示された商品は全部で5点。そのうち靴が2点、アクセサリーが2点、カバンが1点。どれかをもらえるなら靴だね。アクセサリーは興味ないし、カバンは異次元収納があるからいらない。

  二つある靴は正反対な見た目をしていた。一つは深い赤色の編み上げブーツ、もう一つは薄い水色の丸履。足首にリボンを結んで履くタイプだ。

 「じゃあこれで」

  ユールが選んだのは水色の靴の方だ。赤いブーツはちょっと派手すぎる。

 「あ!ユール様、先に選ぶなんてずるい!」

  そう言ってノルンも選ぶ。ノルンが選んだのは、可愛らしいピンクの花飾りがついたヘアゴムだった。

 「あら、意外ね。アクセサリーを選ぶと思ってたけど、金髪のお嬢ちゃんは違ったね」

  おばちゃんが何らや驚いている。

 「よし!ここはあたしが許可しちゃおう。金髪の嬢ちゃん、これは選別だよ!」

  そう言っておばちゃんは残っていた方のアクセサリーをユールに渡した。4本の細い鎖でできた、いわゆるヘアチェーンだ。一番短いチェーンには何もなくて、二番目に短いチェーンには真珠の飾りがついていて、一番長いチェーンにはピンク、淡黄色、黄緑、水色、藤色の宝石がついている。三本のチェーンは両端でつながれており、両接続部には小さな青薔薇の飾りがついていて、最後の一本はその左の花につながっていて、その先には淡い水色をした、透明な涙の形をした宝石がぶら下がっている。

  なんでしょう?このやたら豪華だけど清楚な感じのアクセサリーは。

 「え?でも……」
 「いいのいいの!お嬢ちゃんはせっかくかわいいんだから、少しぐらいおしゃれしたってバチは当たらないさ!」

  おばちゃんがユールに向かってウインクする。うまくできてはいなかったけど。

 「ありがとうございます。じゃあいただく」

  ここまで言われてご好意を無駄にするのも悪いので、素直に受け取っておく。

 「またきてよー!」

  おばちゃんの声を背に聞きながら、二人は洋服屋をあとにする。

  ちなみに靴や服のサイズを気にしなかったのは、あとで魔法をかけてサイズを自由に調整できるようにするので、サイズが大きくても小さくても関係ないからである。

  次に向かうのは、多数の食べ物屋。屋台も含む。ポッポにもらった食料はあるが、これもできれば貯蔵用にとっておきたいので、買えるときにはたくさん食べ物を買っておきたい。

 「ユール様!つけてみたんですけど、どうです?」

  ノルンを見ると、さっきのヘアゴムをもうつけていた。銀色の髪をサイドテールにして、花飾りがこっちに向くように結んでいる。今のノルンは銀だが、これなら元の金でもよく映えると思う。

 「かわいいよ。とっても」
 「ありがとうございます!」

  ユールに褒められて上機嫌のノルン。そのノルンを引っ張って、ユールは手近にあったパン屋に入るのだった。

  今日の起床時間は9時。パン屋でどっさりパンを買い、店を出る頃には12時前になっていた。昼食ラッシュに直撃する前に近くのレストランに入り、さっさと食事を済ませてラッシュが始まる頃に無事退出。

  昼食後にさらに肉屋、魚屋、八百屋、道具屋、雑貨屋etc。屋台も含むいろんな店に行き、物資を買いあさる二人。しかし二人がそれであんまり浮かないのは、収納魔法を使う人こそ珍しいが、ドカ買いする冒険者は少なくないからだ。

  調味料や、念願の調理道具も買えた二人は、夕焼けに染まる街をサンドイッチを食べながら歩く。道中寄った本屋で本を数冊買ったりしながら街の外を目指す。

  すでに顔見知りとなった門番のおじちゃんに挨拶して、二人は街道を歩く。10分ぐらい歩いたところで魔法発動。ゼロコンマのタイムラグで、二人は屋敷戻っていく。

  本日のお会計、大金貨14枚。これだけ買い込んでも全体金額の7分の1しか消費しかなった二人である。
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