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~東への旅~
化け物
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ドラヴの街を旅立ってから2日、ユール一行の姿はミミールへ続く街道にあった。
「目障り」
「ユール様に危害を加えるなど1000年早い!」
「さあ、私の魔法特訓の糧になりなさい!」
ただいま盗賊と交戦中です。
初日は順調に街道を進み、途中から一緒だった商隊と一緒に野宿し、翌日には彼らと別れて引き続き街道を進んでいたが、道中この盗賊たちに襲われたのだ。
馬車の偽装魔法は発動させていたが、多分盗賊としてはそこそこの馬車で、付き人も10歳ぐらいの少年少女だけだから格好の餌食だと思ったのだろう。もちろんそれは本来正しい。10歳前後の男女と明らかにそれよりも下の少女の三人組など、これ以上に襲いやすい相手はいないだろう。
「た、助けてくれぇぇぇ!!」
「逃がさない」
「う、うわああああ!!く、くるなぁぁぁあああ!!!」
「みっともないですね。大の大人が俺たちのような子供に泣かされるとか」
「お前らのようなガキがいてたるか、ってぎぃやぁぁぁぁぁああああ!!!」
「に、逃げ、逃げるぞ!!て、撤退だぁぁあ!!」
「まだ試していない魔法があるんですからおとなしく付き合いなさい!」
「うわぁぁぁああああ!!!」
しかしそれは普通だった場合だ。
この三人組はどう考えても普通ではない。30人近い盗賊を3人で蹂躙している10歳児などいないだろう。戦場では土、風、無属性の魔法が飛び交い、容赦なく盗賊たちの命を刈り取っていく。ユールは表向き、土属性の魔力を持っていることで通すので、街道みたいな目立つ場所では土属性しか使わないと決めていた。
ユールたちの一方的な蹂躙により、戦闘時間わずか5分で30人近かった盗賊の半数が死亡し、10人以上が重傷を負い、残り5人ほどが捕虜となった。大事な人たちに危害を加える存在ならば殺しさえも厭わないこの3人は、明らかに子供の精神ではない。
捕虜の1人を脅して問い詰め、盗賊のアジトを吐かせた。テオを見張りに残し、ノルンと一緒にエインに乗り、そのアジトを目指す。ユール1人ではまだ馬に乗れないのである。
常時発動の身体強化のおかげでぐんぐん走るエインは、ものの十数分でアジトにたどり着いた。アジトに残っていた10人ほどの盗賊を叩きのめし、そのうち3人を捕縛した。
「結構大きな盗賊団でしたね」
7人の死体を順番に燃やしているユールの隣で、ノルンが言った。
「そうね。いいもの持ってるかしら?」
ノルンに捕まえた3人から目を離さないように言いつけ、ユールはアジトの奥に入っていく。雪うさぎのセラがバッグのサイドポケットから飛び出し、すててててーとユールの前を走っていく。
一番奥には、盗賊が溜め込んでいたお宝があった。様々な武器や防具、金銭や装飾品、食材なんかもいろいろあった。今までにも商隊などを襲っていたのだろう。
「武器防具は使えないね……」
その言葉通り、金銭や装飾品は街に持っていけば売れるが、防具は古びたやすいやつしかないし、武器も錆びていたり欠けていたりしてるのが多い。食材だって半分以上がカビてしまっている。
「使えるものだけもらって、帰ろうか」
みーみー鳴いているセラを抱き上げ、ユールは使えそうな品だけを見繕って異次元収納にしまっていく。金や装飾品は持っていく。防具は使えるのがないが、数本だけまだ使えそうな状態の武器はあったのでもらっていく。
あとは魔法で処分してしまおうと思い、ユールはノルンのところに引き返す。
「ユール様、どうでした?」
帰ってくるなり、ノルンはそう聞いた。
「微妙。あまりよくなかった」
ノルンに合図を送ると、頷いて重量軽減魔法で盗賊をひょいひょい外に運び出す。ノルンに続いて外に出たユールは、振り向きざまアジトの洞窟に向かって火球を放つ。
どがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああん!!!!
大音量を撒き散らして、洞窟が爆散、崩落する。後始末を終えたユールは、そのまま素知らぬ顔でエインのところに行く。後ろから真っ青になって震える盗賊たちを引きずりながらノルンがついてくる。
盗賊たちの足に合わせながらノルンはエインを走らせる。馬に引きずられている盗賊3人は、怪我にうめいたりしているが、自業自得なので同情しない。
行きは十数分だった道のりを数十分かけて戻ると、笑顔のテオが出迎えてくれた。近くには2人増えて7人になった盗賊が縛られていた。おそらく重傷10人のうち生き残れるだろう2人が捕縛組に加わったのだろう。
「おかえりなさい、ユール様、ノルン」
「ん、ただいま」
合計10人の捕虜盗賊をエインとヘリヤルに5人ずつつなぎ、引きずって行くことにした。
そのまま何事もなかったように出発する一行。しかし10歳前後の少年少女たちが10人の盗賊を馬で引きずっている図など、異質だろう。事実、道中様々な人に声をかけられた。その後ろの人たちはどうしたの?と。
隠す理由もないので素直に盗賊です、と答えれば、みんな仰天する。確かに幼い子供3人だけの一行が10人の傷だらけの盗賊を引きずってたら奇妙に思いますよね。
なんだかんだで通行人の質問などをかわして、ユールたちは進む。のんびり進んで明日にミミールに着く予定だったが、盗賊という荷物が増えてしまったので少し急いでいます。スピードが上がって盗賊たちは辛そうだったが、是が非でもついてきてもらいます。
明日の早朝に到着予定だったミミールの街に日の入りギリギリに到着した一行。門番の兵隊さんたちも馬の後ろにつながれた10人を見て驚いている。
「君、この後ろにいる人たちはなんだい?」
そのうちの一人が、警戒した眼差しをユールに投げながら聞いた。
「盗賊です」
「盗賊!?」
「はい。襲われたので返り討ちにした結果です。全部で40人ほどいましたが、これ以外はお察しください」
「よ、四十人………このあと合流者がいるのかい?他に同伴者は……」
「いません。私たち3人だけです」
ユールがこともなさげに淡々と告げると、隊長らしい兵士さんが黙ってしまった。
「と、とにかく、盗賊を連れているのなら、奴隷として買取希望かね?」
「はい」
この世界で盗賊は多い。盗賊団を壊滅させた場合、盗賊は全員死亡していても問題はない。盗賊が持っていたものは討伐した人が好きにしていい。盗賊を生け捕った場合は、近隣の街で奴隷として売ることが可能。
「今情報を確認してるから待っててくれ…………この辺りでこの規模の盗賊団は"鷹の爪"だな」
ブツブツと何かつぶやきながら、兵士さんは資料をめくっている。
「そこの10人の買取はこちらで承ります。代金は明日にでもお渡しできると思いますが」
「明後日までいる予定なので構いません」
「なるほど、わかりました。お嬢ちゃんたち入街希望かい?」
「はい」
「では通行証かギルドカードの提示を。ない場合は一人銀貨1枚の通行料を」
言われたとおり、ユールは公爵家でもらった通行証のようなものを見せる。
「では拝見します。………っ!リ、リーヴ公爵家の方でしたか。これは失礼いたしました。どうぞお通りください」
通行証を見せただけでこの威力。ユール以外にもテオとノルン、雪うさぎのセラもいるのにこうもあっさり。こういうときに公爵家の名前って使えるのよね。
門を開けてくれている間におすすめの宿を聞いたところ、街の南にある"グリフォンの翼"という宿がオススメらしい。
無事にミミールの街にやってきたユールたちは、とりあえずオススメされたグリフォンの翼に向かう。大通りに面していたそれは簡単に見つかった。建物の横に巨大な厩舎や馬車置き場があるのを見て、ここを勧められた理由を一部理解した。
宿の中は、まあ絢爛豪華でした。ユールがリーヴ公爵家と関係あると知って、良いところを紹介せねばと思ったのだろう。
「いらっしゃいませ。お食事でしょうか?宿泊でしょうか?」
「宿泊です」
ふくよかな女将さんが出迎えてくれた。
「一泊二食付きでお一人様金貨7枚です。何名様で何泊のご予定ですか?」
「二泊で3人です。外に馬車が一台と馬が4頭いますので厩舎と馬車置き場もお願いします」
「わかりました。お部屋はいかがいたしましょう?三人部屋の場合はお一人様金貨1枚の割引がございますが」
「じゃあ三人部屋で」
「では3名様二泊、三人部屋一つで金貨29枚、馬車置き場の利用料金が金貨8枚、厩舎4つで金貨24枚、合計で金貨61枚です」
「はい」
「では夕食の時間、7時に食堂にお越し下さい」
「わかりました。あと、馬4頭に今すぐ食事をお願いしてもいいですか?」
「承知しました。では追加料金で金貨10枚の支払いをお願いします」
「はい」
わお。宿泊するだけで金貨71枚、換算すると大金貨7枚ちょっと。この世界の宿泊料金の相場は一晩銀貨2・3枚程度だ。すごいですね。さすが高級宿屋。
鍵を受け取り、三人で部屋に上がる。セラはバッグの中に隠れていたので省かれた。部屋は三階にあり、割と移動もしやすい良い位置にあった。
「わぁぁーー!すごい!」
入った部屋を見て、ノルンが歓声をあげる。
確かにすごい部屋だ。少なくともユールが今まで住んでいた部屋とは比べ物にならないほど豪華だ。大きな窓があって、そこから街を見渡せるようになっている。横一列に並んだ三つのベッドも、結構の広さがあって寝心地が良さそう。家具もアンティーク風のものが揃えられていて、一体感のある落ち着いた部屋であった。トイレと浴室もあって、これまたずいぶんなセレブである。
「明日はどうしよう?」
真ん中のベッドに座り、ユールは天井を見る。
「俺としてはさっさとギルドに登録したいんですけど」
「買い出しと売却です!ユール様!」
二人とも違うことを言う。
「冒険者ギルドの登録は朝一番に行けばどうにかなるかな。あとの時間は買い出しとか売却に使おうか」
「いいですね。それでいきますしょう!」
「俺はユール様に従いますよ」
明日の方針が決まったので、このあと食事をして、今日はもうお風呂に入って寝よう。7時に夕食を食べ、部屋に戻ってユール、ノルン、テオの順番にお風呂に入り、ユールは人生ではじめて極上のベッドで寝落ちたのである。
『みぃ~』
…………セラはとりあえずおとなしく寝ておこうか。
「目障り」
「ユール様に危害を加えるなど1000年早い!」
「さあ、私の魔法特訓の糧になりなさい!」
ただいま盗賊と交戦中です。
初日は順調に街道を進み、途中から一緒だった商隊と一緒に野宿し、翌日には彼らと別れて引き続き街道を進んでいたが、道中この盗賊たちに襲われたのだ。
馬車の偽装魔法は発動させていたが、多分盗賊としてはそこそこの馬車で、付き人も10歳ぐらいの少年少女だけだから格好の餌食だと思ったのだろう。もちろんそれは本来正しい。10歳前後の男女と明らかにそれよりも下の少女の三人組など、これ以上に襲いやすい相手はいないだろう。
「た、助けてくれぇぇぇ!!」
「逃がさない」
「う、うわああああ!!く、くるなぁぁぁあああ!!!」
「みっともないですね。大の大人が俺たちのような子供に泣かされるとか」
「お前らのようなガキがいてたるか、ってぎぃやぁぁぁぁぁああああ!!!」
「に、逃げ、逃げるぞ!!て、撤退だぁぁあ!!」
「まだ試していない魔法があるんですからおとなしく付き合いなさい!」
「うわぁぁぁああああ!!!」
しかしそれは普通だった場合だ。
この三人組はどう考えても普通ではない。30人近い盗賊を3人で蹂躙している10歳児などいないだろう。戦場では土、風、無属性の魔法が飛び交い、容赦なく盗賊たちの命を刈り取っていく。ユールは表向き、土属性の魔力を持っていることで通すので、街道みたいな目立つ場所では土属性しか使わないと決めていた。
ユールたちの一方的な蹂躙により、戦闘時間わずか5分で30人近かった盗賊の半数が死亡し、10人以上が重傷を負い、残り5人ほどが捕虜となった。大事な人たちに危害を加える存在ならば殺しさえも厭わないこの3人は、明らかに子供の精神ではない。
捕虜の1人を脅して問い詰め、盗賊のアジトを吐かせた。テオを見張りに残し、ノルンと一緒にエインに乗り、そのアジトを目指す。ユール1人ではまだ馬に乗れないのである。
常時発動の身体強化のおかげでぐんぐん走るエインは、ものの十数分でアジトにたどり着いた。アジトに残っていた10人ほどの盗賊を叩きのめし、そのうち3人を捕縛した。
「結構大きな盗賊団でしたね」
7人の死体を順番に燃やしているユールの隣で、ノルンが言った。
「そうね。いいもの持ってるかしら?」
ノルンに捕まえた3人から目を離さないように言いつけ、ユールはアジトの奥に入っていく。雪うさぎのセラがバッグのサイドポケットから飛び出し、すててててーとユールの前を走っていく。
一番奥には、盗賊が溜め込んでいたお宝があった。様々な武器や防具、金銭や装飾品、食材なんかもいろいろあった。今までにも商隊などを襲っていたのだろう。
「武器防具は使えないね……」
その言葉通り、金銭や装飾品は街に持っていけば売れるが、防具は古びたやすいやつしかないし、武器も錆びていたり欠けていたりしてるのが多い。食材だって半分以上がカビてしまっている。
「使えるものだけもらって、帰ろうか」
みーみー鳴いているセラを抱き上げ、ユールは使えそうな品だけを見繕って異次元収納にしまっていく。金や装飾品は持っていく。防具は使えるのがないが、数本だけまだ使えそうな状態の武器はあったのでもらっていく。
あとは魔法で処分してしまおうと思い、ユールはノルンのところに引き返す。
「ユール様、どうでした?」
帰ってくるなり、ノルンはそう聞いた。
「微妙。あまりよくなかった」
ノルンに合図を送ると、頷いて重量軽減魔法で盗賊をひょいひょい外に運び出す。ノルンに続いて外に出たユールは、振り向きざまアジトの洞窟に向かって火球を放つ。
どがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああん!!!!
大音量を撒き散らして、洞窟が爆散、崩落する。後始末を終えたユールは、そのまま素知らぬ顔でエインのところに行く。後ろから真っ青になって震える盗賊たちを引きずりながらノルンがついてくる。
盗賊たちの足に合わせながらノルンはエインを走らせる。馬に引きずられている盗賊3人は、怪我にうめいたりしているが、自業自得なので同情しない。
行きは十数分だった道のりを数十分かけて戻ると、笑顔のテオが出迎えてくれた。近くには2人増えて7人になった盗賊が縛られていた。おそらく重傷10人のうち生き残れるだろう2人が捕縛組に加わったのだろう。
「おかえりなさい、ユール様、ノルン」
「ん、ただいま」
合計10人の捕虜盗賊をエインとヘリヤルに5人ずつつなぎ、引きずって行くことにした。
そのまま何事もなかったように出発する一行。しかし10歳前後の少年少女たちが10人の盗賊を馬で引きずっている図など、異質だろう。事実、道中様々な人に声をかけられた。その後ろの人たちはどうしたの?と。
隠す理由もないので素直に盗賊です、と答えれば、みんな仰天する。確かに幼い子供3人だけの一行が10人の傷だらけの盗賊を引きずってたら奇妙に思いますよね。
なんだかんだで通行人の質問などをかわして、ユールたちは進む。のんびり進んで明日にミミールに着く予定だったが、盗賊という荷物が増えてしまったので少し急いでいます。スピードが上がって盗賊たちは辛そうだったが、是が非でもついてきてもらいます。
明日の早朝に到着予定だったミミールの街に日の入りギリギリに到着した一行。門番の兵隊さんたちも馬の後ろにつながれた10人を見て驚いている。
「君、この後ろにいる人たちはなんだい?」
そのうちの一人が、警戒した眼差しをユールに投げながら聞いた。
「盗賊です」
「盗賊!?」
「はい。襲われたので返り討ちにした結果です。全部で40人ほどいましたが、これ以外はお察しください」
「よ、四十人………このあと合流者がいるのかい?他に同伴者は……」
「いません。私たち3人だけです」
ユールがこともなさげに淡々と告げると、隊長らしい兵士さんが黙ってしまった。
「と、とにかく、盗賊を連れているのなら、奴隷として買取希望かね?」
「はい」
この世界で盗賊は多い。盗賊団を壊滅させた場合、盗賊は全員死亡していても問題はない。盗賊が持っていたものは討伐した人が好きにしていい。盗賊を生け捕った場合は、近隣の街で奴隷として売ることが可能。
「今情報を確認してるから待っててくれ…………この辺りでこの規模の盗賊団は"鷹の爪"だな」
ブツブツと何かつぶやきながら、兵士さんは資料をめくっている。
「そこの10人の買取はこちらで承ります。代金は明日にでもお渡しできると思いますが」
「明後日までいる予定なので構いません」
「なるほど、わかりました。お嬢ちゃんたち入街希望かい?」
「はい」
「では通行証かギルドカードの提示を。ない場合は一人銀貨1枚の通行料を」
言われたとおり、ユールは公爵家でもらった通行証のようなものを見せる。
「では拝見します。………っ!リ、リーヴ公爵家の方でしたか。これは失礼いたしました。どうぞお通りください」
通行証を見せただけでこの威力。ユール以外にもテオとノルン、雪うさぎのセラもいるのにこうもあっさり。こういうときに公爵家の名前って使えるのよね。
門を開けてくれている間におすすめの宿を聞いたところ、街の南にある"グリフォンの翼"という宿がオススメらしい。
無事にミミールの街にやってきたユールたちは、とりあえずオススメされたグリフォンの翼に向かう。大通りに面していたそれは簡単に見つかった。建物の横に巨大な厩舎や馬車置き場があるのを見て、ここを勧められた理由を一部理解した。
宿の中は、まあ絢爛豪華でした。ユールがリーヴ公爵家と関係あると知って、良いところを紹介せねばと思ったのだろう。
「いらっしゃいませ。お食事でしょうか?宿泊でしょうか?」
「宿泊です」
ふくよかな女将さんが出迎えてくれた。
「一泊二食付きでお一人様金貨7枚です。何名様で何泊のご予定ですか?」
「二泊で3人です。外に馬車が一台と馬が4頭いますので厩舎と馬車置き場もお願いします」
「わかりました。お部屋はいかがいたしましょう?三人部屋の場合はお一人様金貨1枚の割引がございますが」
「じゃあ三人部屋で」
「では3名様二泊、三人部屋一つで金貨29枚、馬車置き場の利用料金が金貨8枚、厩舎4つで金貨24枚、合計で金貨61枚です」
「はい」
「では夕食の時間、7時に食堂にお越し下さい」
「わかりました。あと、馬4頭に今すぐ食事をお願いしてもいいですか?」
「承知しました。では追加料金で金貨10枚の支払いをお願いします」
「はい」
わお。宿泊するだけで金貨71枚、換算すると大金貨7枚ちょっと。この世界の宿泊料金の相場は一晩銀貨2・3枚程度だ。すごいですね。さすが高級宿屋。
鍵を受け取り、三人で部屋に上がる。セラはバッグの中に隠れていたので省かれた。部屋は三階にあり、割と移動もしやすい良い位置にあった。
「わぁぁーー!すごい!」
入った部屋を見て、ノルンが歓声をあげる。
確かにすごい部屋だ。少なくともユールが今まで住んでいた部屋とは比べ物にならないほど豪華だ。大きな窓があって、そこから街を見渡せるようになっている。横一列に並んだ三つのベッドも、結構の広さがあって寝心地が良さそう。家具もアンティーク風のものが揃えられていて、一体感のある落ち着いた部屋であった。トイレと浴室もあって、これまたずいぶんなセレブである。
「明日はどうしよう?」
真ん中のベッドに座り、ユールは天井を見る。
「俺としてはさっさとギルドに登録したいんですけど」
「買い出しと売却です!ユール様!」
二人とも違うことを言う。
「冒険者ギルドの登録は朝一番に行けばどうにかなるかな。あとの時間は買い出しとか売却に使おうか」
「いいですね。それでいきますしょう!」
「俺はユール様に従いますよ」
明日の方針が決まったので、このあと食事をして、今日はもうお風呂に入って寝よう。7時に夕食を食べ、部屋に戻ってユール、ノルン、テオの順番にお風呂に入り、ユールは人生ではじめて極上のベッドで寝落ちたのである。
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