白銀の超越者 ~彼女が伝説になるまで~

カホ

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~領地改革~

裏町の少年

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 ボルギで一日滞在し、ユールたちは引き続き旅を続ける。おじいちゃん…ランカーさんという名前だった…に聞いたところ、このまま街道を進めば、この次の街は領都らしい。

「いつまでもお待ちしておりますぞ!!」

 去り際は、安定の住人総出(なのかどうかはわからないけどかなりの数の人がいた)のキラキラ目による見送りがあった。もう慣れましたよ。

 ちなみにランカーさんに聞いてみたところ、この近くには確かに聖獣の住む森があるようだ。名前はヴィクトリア水郷というらしい。

『聖獣様がいるのは誇れることじゃが、助けて欲しいとも媚を売ろうとも思わん!儂らは自分たちの思うように生きてればいいじゃろう!』

 ランカーさんはそう言って笑い飛ばしていた。いいですね、この地方の人たち。こんな人ばかりだったら聖獣たちも人間嫌いにはならなかっただろうに。

 ボルギを出てしばらく進むと、やがて岩山地帯を抜け、再び平野が戻ってきた。

「なんだか平野がすごく懐かしいわ」
「昨日は怒涛の一日でしたからね」
「岩山族の人たちはすごいとだけ言っておくわ」

 御者台にいるテオとそんな軽口を言い合う。

 のんびり進むこと半日、正午に差し掛かった頃に、遠くに街並みが見えた。

「あれが領都かしら?」
「名前はペンドラゴンでしたよね?」
「さすが都、規模が違うな。ブラズニルより全然デカい」
「フィヨルギンの農耕地候補よりはずっと小さいがね」

 テオかフレイが小窓を通じて馬車の中にも伝えたのだろう。ウルズ、ヴェルザンディ、スクルド、それからフレイヤが、一斉にこっちにピースしてきた。

「ウルズたちかわいい」
「ユール様も十分かわいいですからね!」

 素直にピースに対して感想を述べたら、変な観点でノルンが食いついてきた。とりあえず礼は言っておいた。

 領都ペンドラゴンに入ってきた一行は、街の様子に驚いたような納得したような微妙な表情を浮かべた。

「ここがユー様の都?すごくボロボロ」
「この荒れ果てた都を、俺たちで立て直さないといけないのですか」
「テオ、そんな遠い目を浮かべないで」
「でも確かに、少し気が遠くなりそうだな」
「兄さんはすぐに諦めるのね。まだわからないじゃん」
「他の街よりはずっといいけど、とても都には思えないわ」
「ウル姉の言う通りだな」

 仲間たちは口々にそういった。それを片耳で聞きながら、ユールは冷静にこの街の魔力を分析していた。

(魔力の源はこの近くにあるみたいね。源が近いからなのかな?ここの魔力は今までと場所より格段に同調率がいいわ。それでも魔力の食い違いは起きてるけど。やっぱり魔の森や海が形成されて大地の魔力が変質したんじゃないかな?)

 ペンドラゴンの街は、フィヨルギンの様子に近かった。街は木造建築だらけでボロボロだけど、通りを歩く人たちは死人のような顔をしていない。

 どっちかというと生気がないという表現の方が近い。ペンドラゴンの人たちは死ぬほどやせ細っているわけではなく、かろうじて最低限食べてます程度には細くなかった。

「ペンドラゴンの周辺には緑がそこそこあったからね」
「そこから食料を得ているんですね」
「他の街と比べれば、ペンドラゴンは幾分恵まれてる、ということですね」

 魔力がそこそこは同調しているから、ペンドラゴンの周辺はこの地方本来の豊かさを一部取り戻しているのだろう。なんせペンドラゴンの周辺には草原が広がってたから。他の街の周りにはろくな植物もなかったのに。

(2種類の魔力が常に混合してたから、長い時間の間で同調が起きたんだろうね)

 ペンドラゴンがちょっと豊かな理由はわかってもなぜ魔力が同調できないのかはわからない。このあと魔力の源に行ってみないと。

「領都も復興が順調に行きそうね」
「裏社会の暗躍がないっていいですよね」
「ヴァルハラはなんで裏社会がはびこらなかったんでしょう?ギャロルビルグでは普通にありましたよ?人身売買や麻薬取引。裏で糸を引いていたのは教会でしょうけど」

 ウルズが不思議そうに尋ねてきた。

「お金の流動も、人の欲望も消えてたからでしょうね。闇商売って、利益がなければやる意味ないもの。ここにはそんな需要もないし、必要もないから」

 物や金の出入りすらないような陸の孤島では、闇商売する理由もなかったのだろう。

「ちょっと路地裏に行ってみてもいい?」
「なぜですか?」
「大通りはちょっとマシみたいだけど、こういうとき裏路地の方が困窮を極めている場合が多いでしょ」
「ああ、大都市とかでよくありますよね、それ」

 表通り以外の場所も見ておきたいので、ユールは路地に入ってみることにした。

 入ってみた結果、表通りとそんなに変わらないことが判明した。裏路地に行ったら餓死者が増えていた、なんてことはなかった。

「貧富の差は生まれなかったのかな?」
「さあ………?表通りも裏通りも同じように見えますね」
「みんな仲良く助け合っていたのでしょうか?」
「うーん………」

 食料の確保に躍起になったりしなかったのかな?見たところ平和そうだけど。奪い合っても意味がないって諦めたから?

「おい」

 ここって、数百年前も都だったのよね?貴族はいるのかな?あったとしても没落してるでしょうけど、民を引っ張っていくには十分?

「おい!」

 もしかして貴族がまとめてたりするのかしら?この状況で私腹を肥やそうとするような貴族はいないと信じたい。

「おい!おめえら!!」

 ん?何か聞こえた。

 キョロキョロとあたりを見渡すと、ちょうどユールの後ろの方に少年が一人立っていた。

 当たり前だが痩せている。でも体格的にはテオよりちょっと大きい。明るい茶髪はボサボサしてるが、茶色い瞳はキリッとしていて、こっちをすごい目力で睨んでいる。わーお、迫力ー。

「あら?どちら様?」
「んなこと関係ねえだろ。貴族がこんなとこに何の用だ」
「…?視察だけど?」

 何か問題でも?

「視察だと!?今まで散々放り出しておいて、今更なんだ!!」
「それにつきましては大変申し訳ありませんでした。バカ(公爵家)に代わってお詫び申し上げます」
「ふざけるな!俺たちはずっと待ってたんだぞ!?ヴァルハラが隔絶されてからずっと!」

 それは……本当に申し訳ないと思っていますが、こちらにはどうしようもないのだが……。

「何百年も放置して、今更なにしにきた!!」
「この地方を復興しにきました」
「復興だと?こんな状態まで荒れた街をどうやって元に戻すってんだよ」
「それはこれからいろいろ試します」
「俺たちはモルモットか!?ふざけんなよ!!」

 うーん……言葉が悪かったかな?ああ言えばこう言う。彼は貴族に深い恨みがあるのかな?

「ユール様、お下がりください」
「テオ?」
「彼、今にも掴みかかってきそうです。ユール様に万が一があっては困ります」

 テオが少年とユールの間に立つ。少年が今度はテオを睨む。

「なんだてめえ」
「領主様の付き人です」
「付き人が何の用だ」
「見るからに何かやらかしそうな方から主人を守ろうとしています」

 ちょっとテオ、それ率直に言っちゃダメでしょ。そこはオブラートに包もうよ。

「……てめえ、喧嘩売ってんのか?」
「事実を言ったまでです」
「おめえ、表出ろ!叩きのめしてやる」
「わかりました。決闘を受けましょう」

 なんか決闘することが決まってしまいました。これ……テオが勝つような気しかしないのはユールだけでしょうか?
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