【完結】R18 明石と行定と勇者と魔王

325号室の住人

文字の大きさ
6 / 8

《休憩》終わりの彼ら

しおりを挟む

「ん…ここは……?」

そこは、全く見覚えのない天井とそこまで続く本棚、窓に掛かったスクリーンカーテンの端からは陽の光が盛大に漏れていた。

「……は? 何でもう昼みたいなんだ?」

上体を起こすと頭がクラクラしたけれど、じっとしていたら治った。

──ここは…まさか!

シラフだった昨日の記憶は、もちろん全て頭の中にある。
しかも最後の記憶が盛大にイって叫んだ時の。
…ってことは……
家主は明石しか居ないという簡単な計算に、俺は頭を抱えた。






オレは今、超特急で頼んだ先輩のスーツとネクタイを受け取りに、近所の洗濯屋に来ている。

この街は周辺に比べて、駅近の《いかがわしい系》の店や《オネェちゃん》の居る店などを抱えた繁華街である。
いわゆる《お店のオネエチャン》達が、急に入った同伴に、相手がプレゼントしてくれたドレスを直前に綺麗にしてもらうのに使うのが《洗濯屋》で、ダバダバのも、カピカピのも、どんな体液も綺麗にしてくれるのだ。

実は、オレはあのホテルの近所に住んでいる。

いろいろなことを諦めた中2を終えたオレは、中3には親に自分がゲイであることを告げ、卒業と同時に家を出た。
どこかでバイトでもしながら細々と暮せばなんとかなるなんて考えていたオレは、かなりの無知だった。
高校生と同じ年のアルバイトで貯められるのなんて所詮はお小遣い程度で、こうなりゃ《売り》しかないかと繁華街に足を踏み入れたのが16の誕生日だった。
ちなみにオレの誕生日は4月2日。家を出てから1週間のことだった。

そんな時だ。《ばあさん》に会ったのは。
《ばあさん》はあのホテルのオーナーで、オレにあのホテルの1室を、全室の掃除を条件に貸してくれた。

あのホテルのパネルの裏の《管理人室》のモニタで、客の出入りの監視カメラをチェックした。

無理やり連れ込まれた客はお断りで、部屋の電子錠は解錠しない。
監視カメラは映像は事件捜査時にも提出しないといけないから、1年保管する決まりになってるんだ。

《ばあさん》がもろもろやってくれてオレは《ばあさん》の養子になったし、勉強部屋として管理人室のモニタのあるデスクで勉強して高校は行かずに権利だけ得て、大学は通信で卒業した。

事前と事後しか見られないから、テクニックは学べなかったけど、遊びで何度か客室を使ったことがある。

暫くあのホテルで、借金があった《ばあさんの実子》のおっさんを顎で使いながら働いていたのだが、去年《ばあさん》が入院中の病院のベッドで言ったんだ。
「お前は陽の当たる真っ当な仕事に就いて、ちゃんと人並みの幸せな人生を歩みなさいよ。」
で、就職した訳だ。

あ、ちなみに《ばあさん》は今でもピンピンとオーナーをしているぞ。
フルコースで健康診断受けた時、《睡眠時無呼吸症候群》の睡眠データを取るための1晩だけの入院だったから。

《ばあさん》ってのはあだ名で本当の性別は《♂》、今年還暦を迎えたところだからな。

……と、こんな回想をしながら家路を急いだ。






腹が減った俺は、寝室を出た。
ダイニングテーブルには、何でも好きに使っていいという旨の手紙が置いてあった。

どうやら風呂にも入れてもらったらしい俺は、明石サイズでもないピッタリサイズのスウェット上下を着ていてよく寝たらしく、時計の針は昼少し前を指していたので腹が減っていた。

とりあえず、電子レンジの横に置いてあった食パンを1枚だけ拝借してオーブントースターのタイマーを捻ったところで小を催したくなり、トイレを探しに走った。






玄関扉を開けた時、何やら香ばしい匂いがした。
オレはキッチンへ急ぐと、パンがこんがり焼けているが先輩は不在だった。

とりあえずバターを塗ると、視界に留守番電話の録音アリのボタンがチカチカとしていて、オレは何も考えずにそのボタンを押した。

『……んっ…んんっハ…あんっ……イイ…』

聞こえてきたのは先輩の声。やっぱりスマホを通すと雑音が排除されて《声》だけが綺麗に入ってた。

右手が無意識に股間に伸びる。

その時、オレの背後から声がした。

「え? 俺の声?」
「ヤバッ、先輩!!」

蒼白な先輩と、焦って股間を握りしめて振り返ったオレの視線が絡み合った。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

先輩、可愛がってください

ゆもたに
BL
棒アイスを頬張ってる先輩を見て、「あー……ち◯ぽぶち込みてぇ」とつい言ってしまった天然な後輩の話

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

処理中です...