35 / 49
本編
35
しおりを挟むそんな時だった。
現在は辺境伯邸でお務め中の、辺境伯家のお嬢様でありながら剣技に長けたリッカの声がした。
「皆、遅くなってすまない。」
「ワオォォ~~ンッ ワンッ ワホオッワンッ!!」
狼化した我らが副団長と共に、砦の騎士達の元へ魔法陣から出現した。
既に日没を迎えはまもなく夜を迎えるという頃の砦。
夜になれば魔物の動きが活発になる。
『砦の右側への結界は張ってあるで。わいが完全体なら、砦をすっぽり結界で覆うことも可能だと言うに…すまん!』
「声…どこから?」
『こっちや。わいは、世界最強の剣の精霊…剣精サマや。そうや、そこの獣人よ、ちぃと御使いに行ってはくれなんだか?
お前さんとは波長が合うようだ。わいの声が聞こえるとはなかなか見込みのある…』
「何だ? 剣精サマだと?」
『そうや。今から魔法陣を展開するからやな、ちぃとわいの本体ごと、ライドを連れてきて欲しいんや。
んじゃ、行くで! わいの意識、わいの意識…えいや!』
その時、抹茶色に狼化した副団長の足元が白い円の形に光り、瞬間的に狼を消した。
「え? マーロン?」
『大丈夫や……いや、間違えた。瞬間的にわいの気が強ぉなったからそこへ送ったが…
いや、魔法陣へ戻れ。今度こそライドのところへ送っちゃる! えいや!』
再び白い円に光ったと思ったら、今度は同じ色に輝く剣を構えた若い男と共に狼化した副団長が光の円の中へ戻ってきた。
「え? タコチンはどこですか?」
『何言うとる? 今は砦がピンチやろうが! さぁ、わいもいったん本体へ戻って……えいや!』
すると、半ば透けて白く光る長髪の背の高い男が砦中央へ現れた。
「剣精? ここは砦? 何故俺はここへ?」
『ライドよ。現在砦では味方の人数より多い魔物と睨みおうとる。
領民を守るべく、今からわいはこの砦に結界を張る。
ライドは騎士達と共に、魔物と戦え!』
「わかりました。剣精よ、そしてこの砦の剣士達、リッカ嬢、マーロン副団長殿、共に戦いましょう!」
「「「「「「おう!」」」」」」
砦で自らの拳を空へ突き上げた面々は、剣精の力で次の瞬間には砦を背に魔物と向き合う場所に降り立っていた。
チャキッ
ライドが最強の剣を構えると剣精の透けた白い姿は消え、代わりにライトの持つ剣が力強く白く光った。
黒い不気味な狼の魔物がこちらに向かって1歩踏み出すのを合図に、砦の辺境伯騎士団員達と魔物との戦いの火蓋は切って落とされた。
0
あなたにおすすめの小説
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
『嫌われ令嬢ですが、最終的に溺愛される予定です』
由香
恋愛
貴族令嬢エマは、自分が周囲から嫌われていると信じて疑わなかった。
婚約者である侯爵令息レオンからも距離を取られ、冷たい視線を向けられている――そう思っていたのに。
ある日、思いがけず聞いてしまった彼の本音。
「君を嫌ったことなど、一度もない」
それは誤解とすれ違いが重なっただけの、両片思いだった。
勘違いから始まる、甘くて優しい溺愛恋物語。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
〖完結〗終着駅のパッセージ
苺迷音
恋愛
分厚い眼鏡と、ひっつめた髪を毛糸帽で覆う女性・カレン。
彼女はとある想いを胸に北へ向かう蒸気機関車に乗っていた。
王都から離れてゆく車窓を眺めながら、カレンは夫と婚姻してから三年という長い時間を振り返る。
その間、夫が帰宅したのは数えるほどだった。
※ご覧いただけましたらとても嬉しいです。よろしくお願いいたします。
【完結】捨てられ令嬢の冒険譚 〜婚約破棄されたので、伝説の精霊女王として生きていきます〜
きゅちゃん
恋愛
名門エルトリア公爵家レオンと婚約していた伯爵令嬢のエレナ・ローズウッドは、レオンから婚約破棄を宣言される。屈辱に震えるエレナだが、その瞬間、彼女にしか見えない精霊王アキュラが現れて...?!地味で魔法の才能にも恵まれなかったエレナが、新たな自分と恋を見つけていくうちに、大冒険に巻き込まれてしまう物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる