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職業は愛妾?
しおりを挟む「承服しかねます。」
先に答えたのはソーマだ。
「父上には申し上げたはずです。『できることならケイと番いたい』と。」
「しかし王太子令となれば、国の優先事項となる。」
「ですが!」
「いや、ソーマよ申し訳ない。私とてケイとソーマの仲を引き裂こうとは思っておらぬ。」
「ならなぜ!」
「ケイは、私の愛妾としたい。愛妾ならば国から役職と賃金、それに伴い立場が得られる。」
「愛妾? となれば、のちに正妃様を娶られた時に、ケイへの風当たりが強くなりましょう。」
「しかし、私としても国としても、ケイには一定期間毎の解呪を望む。でなければ、この国は滅ぶ。様々な欲に身を滅ぼしつつある双子の弟達に国は任せられぬからな。」
「しかし…………」
ダヴィさんとソーマとの話し合いは、平行線だ。
ソーマは僕を、ダヴィさんは国として僕を、それぞれ考えてくれている。
それは本当に嬉しい。でも、どちらの気持ちにも応えることはできないか。
ソーマが望んでくれる僕と、国のために必要としてくれる僕。
特に後者は、託宣にも繋がってくる。
神曰く、
『この国の呪術を解呪して欲しい。その尻で!!』
実は、僕の中で考えていたことがある。
やってみたいことがあるのだ。
僕は、二人にそれを話してみることにした。
「ソーマ、ありがとう。ソーマの気持ち、とても嬉しかったよ。」
ソーマは僕へ優しい視線を向ける。
「それからダヴィさん。立太子おめでとうございます。それと、僕の先のことを考えてくださって、ありがとうございました。」
ダヴィさんは大仰に頷いた。
「僕は、愛妾にはなりません。その件は、お断りさせてください。」
ソーマはうんうんと頷き、ダヴィさんは顔を青ざめた。
「実は、先日城下で解呪する機会がありました。その時、とても喜ばれて嬉しかったので、僕は解呪専門の医師になりたいのです。
具体的には、ソーマの家である公爵家の別邸の診療所を、僕にも使わせてもらいたいんだ。
ダヴィさんのことは、そちらに定期的に通ってもらうことで解呪できると思うんだ。
どうだろう。」
二人の表情は、少し穏やかになる。
「けれどケイ。この間みたいなことになったらどうだ?
私は、君を泣かせたくない。」
僕の脳裏には、無理矢理ヤられたミレイルさんの記憶が蘇る。
「心配なら、ソーマが許した人だけを診察するよ。」
「それなら…まぁ……」
ソーマは何度か頷き、納得しようとしてくれている。
「ダヴィさんも、これなら正妃様にヤキモチ妬かれなくて良いんじゃないでしょうか。」
「確かに。《診察》とした方が、ケイのところに堂々と通える。」
「では、決まりですね。僕は、解呪専門の、医師になります!」
僕は宣言した。
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