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【本編】
13.5 眠りに落ちる前に
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──それはきっと、マサの深層に沈んだ〝不安〟が見せた夢だった。
「なんで俺を振ったの。帰って来いって言ったのは、浩誠だろ」
「悪かった。あの時の俺は、ガキだったんだ。……もう離さない。ルカ、好きだ」
「俺も。好き……」
マサの目の前で熱い抱擁を交わすふたりは、涙を浮かべながらも、幸せにそうに見えた。対するマサは、心臓が張り裂けそうな気持ちで、精一杯の笑い声を上げた。
あのふたりが何故付き合い始めて、何故別れたのかは、薄らとしか知らない。昔、ルカが何か話していた気もするが、その時の自分は聞く気がなかった。
それでも、ふたりの間に深い絆があり、本当は両思いのまま別れを決めたんだということは、覚えていた。
だから目の前のこの光景は、間違いなくハッピーエンドなのだ。後から現れた自分は、浩誠の物語の、ちょっとしたハプニングでしかない。
「浩誠……」
笑うのをやめ、マサが小さく呟く。
縋るような声であることに、自分でも気付かなかった。
ただ失恋したくらいで、なんだというのか。
人ひとり、自分の人生から姿を消したくらいで、マサという人間は揺らがない。
そう自分に言い聞かせながらも、心が辛くて、マサは知らない痛みに膝を折った。
──目を開けると、見慣れた自室の天井があった。
「夢か……」
胸を切り裂くような先程のシーンは、現実ではなかったらしい。痛みが続かないことを理解し、マサはほっと、胸を撫で下ろした。
「くそ、あの野郎……」
安心したら、今度は腹が立ってきた。一応自分たちは恋人同士だろう。浩誠から先に手を出したというのに、裏切るなんて。
「……浩誠」
苛立ちは長くは続かなかった。今度マサの心を支配したのは、寂しさだった。浩誠に会いたい。しかしここはアメリカで、浩誠は日本に居て、すぐに会える距離ではない。
マサはスマホを取りだし、慣れた手つきで浩誠に電話を掛けた。呼出音が鳴る。
──ああ、でも、夢で良かった。
そう思うと、なんだかまた眠くなってきた。
『もしもし? マサ?』
「ん……浩誠」
『なんだよ、まだ起きてたのか?』
「……浩誠、会いてぇ……」
それだけ言い切ると、マサはまた、深い夢の中へと入っていった。
翌朝。
浩誠の就寝前に交わす、いつもの電話にて。
『〝会いたい〟って言ってたけど。なんかあった?』
「ンなこと言ってねェ」
『言ってたよ。覚えてないのか?』
「言うわけねェだろ」
そう言いながらも、マサの記憶には薄ら、自分の醜態が残っていた。
浩誠がルカに取られて辛かったのも、苦しかったのも、夢から覚めてホッとしたのも。──寝る前に浩誠の声が聞こえて、嬉しかったのも。
「……浩誠は俺のモンだからな」
『あ? なんだよ、急に』
「別に。浮気したらちんこ切り落とすぞ」
『……マサ、そんなに俺のこと好きなんだな』
「なんでそういう事になンだよ」
『可愛い。マサ、好き』
ガチトーンの浩誠の言葉に、マサは返す言葉を失った。
ただ真っ赤な顔で、幸せというものを噛み締めていた。
「なんで俺を振ったの。帰って来いって言ったのは、浩誠だろ」
「悪かった。あの時の俺は、ガキだったんだ。……もう離さない。ルカ、好きだ」
「俺も。好き……」
マサの目の前で熱い抱擁を交わすふたりは、涙を浮かべながらも、幸せにそうに見えた。対するマサは、心臓が張り裂けそうな気持ちで、精一杯の笑い声を上げた。
あのふたりが何故付き合い始めて、何故別れたのかは、薄らとしか知らない。昔、ルカが何か話していた気もするが、その時の自分は聞く気がなかった。
それでも、ふたりの間に深い絆があり、本当は両思いのまま別れを決めたんだということは、覚えていた。
だから目の前のこの光景は、間違いなくハッピーエンドなのだ。後から現れた自分は、浩誠の物語の、ちょっとしたハプニングでしかない。
「浩誠……」
笑うのをやめ、マサが小さく呟く。
縋るような声であることに、自分でも気付かなかった。
ただ失恋したくらいで、なんだというのか。
人ひとり、自分の人生から姿を消したくらいで、マサという人間は揺らがない。
そう自分に言い聞かせながらも、心が辛くて、マサは知らない痛みに膝を折った。
──目を開けると、見慣れた自室の天井があった。
「夢か……」
胸を切り裂くような先程のシーンは、現実ではなかったらしい。痛みが続かないことを理解し、マサはほっと、胸を撫で下ろした。
「くそ、あの野郎……」
安心したら、今度は腹が立ってきた。一応自分たちは恋人同士だろう。浩誠から先に手を出したというのに、裏切るなんて。
「……浩誠」
苛立ちは長くは続かなかった。今度マサの心を支配したのは、寂しさだった。浩誠に会いたい。しかしここはアメリカで、浩誠は日本に居て、すぐに会える距離ではない。
マサはスマホを取りだし、慣れた手つきで浩誠に電話を掛けた。呼出音が鳴る。
──ああ、でも、夢で良かった。
そう思うと、なんだかまた眠くなってきた。
『もしもし? マサ?』
「ん……浩誠」
『なんだよ、まだ起きてたのか?』
「……浩誠、会いてぇ……」
それだけ言い切ると、マサはまた、深い夢の中へと入っていった。
翌朝。
浩誠の就寝前に交わす、いつもの電話にて。
『〝会いたい〟って言ってたけど。なんかあった?』
「ンなこと言ってねェ」
『言ってたよ。覚えてないのか?』
「言うわけねェだろ」
そう言いながらも、マサの記憶には薄ら、自分の醜態が残っていた。
浩誠がルカに取られて辛かったのも、苦しかったのも、夢から覚めてホッとしたのも。──寝る前に浩誠の声が聞こえて、嬉しかったのも。
「……浩誠は俺のモンだからな」
『あ? なんだよ、急に』
「別に。浮気したらちんこ切り落とすぞ」
『……マサ、そんなに俺のこと好きなんだな』
「なんでそういう事になンだよ」
『可愛い。マサ、好き』
ガチトーンの浩誠の言葉に、マサは返す言葉を失った。
ただ真っ赤な顔で、幸せというものを噛み締めていた。
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