結婚を前提に異世界にきてくれませんか?

むー

文字の大きさ
22 / 159

22

しおりを挟む
「ユキ兄様、キミ兄様、アユくんのお土産の"ぴよぴよまんじゅう"美味しいねー」

午前中、泣くほど叱られたキラピカくんは、あの出来事がなかったかのように楽しげにアフタヌーンティーのお茶請けに出したオレのお土産を食べてる。
ちなみにこの"ぴよぴよまんじゅう"は、我が家のお土産のド定番だ。
小鳥の形のこのお菓子は、白餡を薄皮の生地に包んでホワイトチョコでコーティングしている。
ホワイトチョコのパリッとした食感の後に白餡のホロっとした舌触りが最高に良くて、オレも大好きなお菓子だ。

「うん。すごく美味しいです。歩夢先輩、ありがとうございます」
「ああ、うん。喜んでもらえて嬉しいよ」

無表情のオオキミくんも口の端をちょっと上げて喜んでくれているようで、お紅茶を飲みながらニヤニヤしたら睨まれた。

「歩夢先輩、この後何かしたいことありますか?」
「うーん。城の外とか歩いてみたいかな。城の中はだいぶ回ったし」

昨日一昨日は、イチゴくんの時間が空いた時に城内を案内してもらった。
王様と王妃様の住居エリアと執務エリアは立ち入り禁止なので、それ以外で立ち入って良い場所を回った。
昨日はイチゴくんの部屋に案内してもらったが、オレが充てがわれている部屋より広くて豪華絢爛だった。
さすが王子様だ。
あと、市民が自由に立ち入れるエリアにも行ったが、テーマパークみたいに賑やかだった。

「だからそろそろ外に出たいなって思ってるんだけど」

そう言うと、キラピカくんの目が輝いた。

「城外にお出かけなら、明日がいいよ!ボクも一緒に行きたいっ」
「明日?」
「明日は市がある。キラピカはそれに行きたいんだろ」
「うんっ」

城の正面に位置する街では、月に一度、市が開かれ、そこでは普段出ない遊びや食べ物の屋台が出店するため、街に住む子どもたちの楽しみらしい。
キラピカくんも数回しか訪れたことがなく、オオキミくんの話では毎月この日が近づくと「行きたい」と騒ぐそうだ。
とはいえ、王子様がホイホイ行く場所じゃないし、行ったら行ったで騒ぎになるから滅多に許可が下りないと。

「向こうで言うお祭りみたいなものか?」
「はい」
「なら、オレ行ってみたい。みんなで」
「ええっ⁉︎」

オレの発言にキラピカくんは目を更に輝かせ喜んだが、イチゴくんとオオキミくんは目を見開いて驚いた。

「あ、あの、先輩ーー」
「お祭りならみんなで行ったほうが楽しいじゃん。イチゴくんも行くのは久しぶりだろ?ならみんなで行って楽しもうよ」

オレの提案にイチゴくんは珍しく困った表情をした。

「でも……」
「いいと思いますよ。みなさんで行って来なさい」

振り返ると王妃様がいた。

「遅れてしまってごめんなさい。まだ大丈夫かしら」
「はい。あの、母上ーー」

王妃様はイチゴくんの発言を手で制し、キラピカくんの隣に座る。
出されたお茶を一口飲むと口を開いた。

「異世界から来てくださったお客様を城の中に閉じ込めてはいけません。この世界を知ってもらうには市は一番良いと私は思いますよ。折角ですし、みなでアユムさんを案内して、楽しい思い出を作ってきなさい」
「はいっ。お母様」

元気よく返事をするキラピカくんに王妃様は優しく微笑みながらのその頭を撫でる。

「アワユキとオオキミは?」
「……はい」
「……わかりました」

2人とも渋々了解した。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。 ……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、 気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。 「僕は、あなたを守ると決めたのです」 いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。 けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――? 身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。 “王子”である俺は、彼に恋をした。 だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。 これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、 彼だけを見つめ続けた騎士の、 世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。

人気アイドルグループのリーダーは、気苦労が絶えない

タタミ
BL
大人気5人組アイドルグループ・JETのリーダーである矢代頼は、気苦労が絶えない。 対メンバー、対事務所、対仕事の全てにおいて潤滑剤役を果たす日々を送る最中、矢代は人気2トップの御厨と立花が『仲が良い』では片付けられない距離感になっていることが気にかかり──

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精

処理中です...