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ガラスの箱と淫紋奴隷
第四話 ◆
しおりを挟む乙女を失う際は出血を伴うと聞いていたのに、床に腕と額をくっつけて胸と床の隙間から股の間を確認しても、赤い色は恥丘の上に光る淫紋の光のみ。結合部から溢れて太腿を滴る愛液と精液の混濁液は白に近い半透明で、むわっと濃い香水のような香りを放っている。
「ふぁ、あっ――あああっ……!」
その香りに酔って、じゅぷっと強く穿たれた瞬間にエリンは未知の快感に襲われた。愉悦の波と同時に、マッシュの指先が完熟した乳首をきゅうっと摘まみ上げる。
強い衝撃と甘い刺激を同時に受けたエリンの身体は、四つん這いになった状態のままでがくがくと強く痙攣した。
ぎゅうぎゅうと蜜壁が収縮すると、膣内に収まっていたマッシュの淫棒もたがが外れたように暴れ回った。まるで心臓が竿に移動したのではないかと思うほど、ドクドクと熱を持って激しく脈動する。その直後膣の奥に熱い温度を感じたので、エリンはこれで解放されると安堵した。
だがマッシュの欲望の象徴からは、熱も硬さも角度も失われていない。そのまま抽挿を再開されると、エリンは焦って首を振った。
「も、いい……! 気持ちい……気持ち良く、なった……から、あぁっ」
「足りない……!」
もう十分、と訴えようとした言葉は、瞳の奥にぎらりと妖光を宿したマッシュに奪い取られてしまう。
「足りる訳ないだろう……! 俺が、今までどれほど耐えたと……!」
「ああ、ああぁんっ」
そのまま腰を鷲掴みにされ、がつがつと振りたくられてしまう。エリンの尻とマッシュの股関節が激しくぶつかり高い音を奏でる。尻を高く掲げているせいで下腹部同士の距離が近付き、また淫紋が共鳴反応して赤く怪しい光を放つ。
「あっ、あっ……もぉ……っぁああ」
「ああ……中が、うねって……」
「やああぁん、ああ、あああ――!」
二度目の絶頂はあっという間だった。ぱちゅぱちゅとみだらな音が響き、膣内に熱液を放出された直後、エリンも快感を極めてしまう。
突き刺さっていた竿が身体からぶるんっと抜け出る。その拍子に膣の中から飛び出た体液がぴしゃぁっと音を立てて床を濡らす。
すでに出来ていた蜜溜まりの上に濁った体液がぱたぱたっと落ちて混ざると、そこからさらに濃い香りが立ち込めた。
床の上へ崩れ落ちる前に、マッシュがエリンの腕を引く。そのまま脚を伸ばして床へ座ったマッシュの上へ跨るように誘導される。
一切勢いが萎んでいない陰茎の上にヒクつく蜜口を重ねてゆっくりと腰を落とすと、再び互いの肉を貪るように身体を揺さぶられた。
「あっ、ぁン、んぅ、っふ、っぁ、あん、ああ、ああ」
「くぅ……うう、ッ」
座った状態で向かい合う。全裸でぴたりと抱き合う。腕を絡め合って、至近距離で見つめ合う。子宮を象ったエリンの淫紋と男根を象ったマッシュの淫紋が強く惹かれ合う。
性交の欲望を強制的に誘発し、興奮度を究極まで高め、快楽を数十倍にも数百倍にも増幅する。対の淫紋を刻んだ者同士の性交は、比べ物にならないほどの強い快感を得られる。天にも昇るほど、そして地獄に堕ちるほど。
(食べ、ら、れちゃう――)
再び深く口付けられ、小さな口の中から舌を引きずり出される。お互いの唾液をねっとりと混ぜ合わせ、濃度が増した蜜を飲み込むように誘導される。だからそんなことを考えてしまう。
けれどあながち錯覚ではないのかもしれない。エリンはきっと、自分でも無意識のうちにマッシュに食い尽くされることを望んでいる。
「ひぁ、あっ……あっ、ふ、ぁ、あん、あんっ」
さらに深まるキスと同時に、両胸の突起を何度も何度も執拗に弾かれる。そして乳首への責めが終わったと思えば、その直後に下からずんずんと突き上げられる。身体の全てが性感帯になった今、マッシュに与えられる刺激はどれも快感へと変わっていく。
「だめっ、ふぁ……いって、る……ん、んん」
「ふん、フッ……!」
「ひぁあっ……ああ、またぁ……きちゃ、うぅ~っ」
しっかりと腰を掴まれ、深い場所まで埋め込まれる。その貫通に慣れる前に、速度を増されて勢いのある抽挿を繰り返される。そうかと思えばまたゆったりとした挿入に戻され、徐々に脳も身体もとろけていく。
降りてきた子宮の入口付近で、ぷくりと膨れ上がった突起をノックされる。陰茎の先端を使ってトプトプと探られると、エリンの性感は最大限まで引き上げられて一気に弾け飛んでしまう。
「エリン、ああ……もうイッてしまうっ!」
「あぁっ……ああああっ! マッシュ……!」
ついつい強く締め付けてしまうと、その刺激に呼応するようにマッシュの肉棒からも精液がびゅうびゅうと放たれる。
灼けるほどに熱い体液を注がれたエリンは今度こそ意識を手放すことを許されると期待したが、マッシュも下腹部の淫紋もやはりまだ逃亡を許してはくれない。
今度は床に背中をつけるように床へ押し倒されて、さらに深い愛を教えられた。
* * *
何度も絶頂を迎え、何度も意識を失いかけては快感によって現実へ呼び戻され、とうとう身体が全く動かなくなるまで互いの熱を貪り合った。
夢を見ることさえ出来ず、泥のように沈んでいた意識の底から這いあがると、汗と涙と愛液と精液にまみれた状態でマッシュの腕に抱かれていた。気が付けば淫紋の発光も収まり、元の黒い墨の状態に戻っている。
「高いんですけどねぇ、この強化ガラス」
朦朧とする頭の中に響いた声で、一気に覚醒する。呆れたような声を掛けてきたのは、例の紳士だった。どうやらエリンとマッシュが行為に溺れている間に、このあと身に着ける衣服と、身を清めるタオルを用意してくれていたらしい。
元々出入りのために開閉が可能になっていたガラス箱の一部をこじ開けると、ガラスの破片がパラパラと崩れ落ちる。その粉砕された破片を革靴で踏みつけながら、彼は何食わぬ顔でガラス箱の中へ入ってきた。
「でもまぁ……こちらも十分稼がせてもらいましたので、不問にいたしましょう」
にこりと怪しい笑みを浮かべた紳士からタオルを受け取ると、とりあえずそれで身体を覆い隠す。彼には奴隷市で品定めされ、着替えも見られ、ほぼ裸に近い状態で長い時間やり取りをしていたので今さらな気もしていたが、やはり恥ずかしいものは恥ずかしい。
「淫紋、剥がしましょうか?」
「いや、今はいい。この子がちゃんと俺なしじゃいられないようになったら、その時に考える」
「……それなら今すぐでもいいと思うんですが」
苦笑する紳士の言葉にはエリンもまったくその通りだと思ったが、口は挟まなかった。
エリンがぼんやりとしている間に、男性二人はエリンが得た611万シータ、マッシュが得た11万シータ、奴隷解除の証明書、そしてエリンを所有する権利がマッシュに移ることを記した宣誓書を確認し、あっさりと取引を終えてしまった。
今はもう沈静化した黒い文様を指で辿りながら、エリンはほう、と息を吐く。
どうしてマッシュが延長に1時間も耐えたのか、その理由にようやく辿り着く。彼は妹の治療費用ではなく、エリンを買い取るための金額を稼いでいたのだ。同時にエリンを極限まで追い詰めてから激しく抱くことで、身体の権利と同時に心まで手に入れようと目論んだのだろう。
その前にエリンの性衝動が決壊していたらどうするつもりだったのだろうと思ったが、エリンが簡単に音を上げないことも彼には見抜かれていたに違いない。
マッシュに気に入られた理由は未だよくわからないが、それを知る時間はこれからたくさんあるはずだ。なにせエリンはもう彼の奴隷になってしまったのだから。
「またお金が必要になったらいらして下さい。淫紋以外にも様々な快楽ゲームの用意がありますので。貴方たちのような強い精神力を持つ奴隷ならば、いつでも言い値で買い取りますよ」
「なら次はそのモノクルも強化レンズにしておくんだな」
「……冗談ですよ。怖いですね」
マッシュは本気で困ったような言葉を零す紳士に鼻を鳴らして会話を切り上げると、エリンの目の前へそっと手を差し出した。
家族を失い、帰る家を失い、何もかもを無くしてしまったエリンが身一つで歩み出す新しい人生の第一歩は、マッシュの大きな掌が導いてくれる。
「行こうか、エリン」
「どこへ?」
「俺の家――いや、その前に君の兄をぶん殴りに、か」
「……」
すでに止まった腕の出血が再噴出しそうな勢いで指と手をポキポキ鳴らす。
エリンと対の淫紋でつながった新しいご主人様は、色んな意味で結構危険な人かもしれない。
――Fin *
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