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続編
小話・橘恵介の女性関係について。
しおりを挟む電車に乗っている時間も受験生にとっては貴重な時間。学校帰りの私はテキストを眺めながら電車に乗っていた。
「橘さんあの、良かったら……今度、映画でも観に行きませんか…?」
「……申し訳ないが、俺はもうすぐ大学院受験があるのでそういった誘いには乗れないんだが」
「あ、そ、そうなんですか?」
耳に「橘」という単語が入ってきたので顔を上げると、隣の車両の連結部分付近で橘兄がOL風の女性と一緒にいた。
あ、あの人痴漢されていたのを橘兄に助けられた人じゃん。ちゃっかり二人はいい感じなのか?
…橘兄よ…受験生の弟には女が傍にいた時ケチつけてきたのに、今年受験生の自分は大丈夫って言うのか。
いや、もしも清楚可憐な女性相手ならあの時ケチつけてこなかったのかもしれないけど……
まぁ過去のことはもういいわ。
…橘兄は現在彼女いる雰囲気なかったのになぁ。でも今まで彼女はいたにはいたと思う。女性慣れしていないわけじゃないし。
…橘兄って女性の理想高そうだけど、どんな人が好みなんだろうか。
「それじゃ」
「あっ…」
てっきりOLさんといい感じだと思っていたが、橘兄はきっぱりデートのお誘いを断ると、車両を移動してきた。
その先にいた私とバッチリ目が合って、渋い顔をしてきた。なんだ出会い頭に失礼な人だな。知ってたけど。
「…見ていたのか」
「見たくて見たんじゃありませんよ。…お兄さんも隅に置けませんなぁ。モテモテじゃないですか」
「……今はそういうのは邪魔なんだ」
橘兄は渋い顔を余計に渋くさせた。
モテる男だけに言える発言ですね。いいなぁ私もそんな事言ってみたいわ。
私が生温かい瞳で橘兄を見上げていたので、橘兄は「何だ」と言って眉を顰めてきた。
「お兄さんの昔の彼女ってどんな人だったんですか?」
「……藪から棒になんだ」
「ほら、私も亮介先輩との話をしてるんだから、たまにはお兄さんも恋バナしてくださいよ」
「俺は無理やり聞かされてるだけなんだが……」
惚気ている自覚はあるけど、いいじゃないの。何だかんだ言って橘兄も話をちゃんと聞いてくれてるし。
橘兄は私の要求に対して面倒臭そうなため息を吐くと、投げやりに吐き捨てた。
「去年まで付き合っていたのは…同じ大学の女性だったが……俺が勉強ばかりしているのが気に食わなかったらしい。もっと自分のために時間を作ってくれないなら別れると言われたから別れた」
「ドライ! あっさり別れすぎでしょう!」
「女一人のために自分の人生を棒に振るわけには行かない。日本の社会ではやり直しはきかないんだぞ」
「まぁそうなんですけどね!」
理性的で悪くはないと思うけど、女性から見たら冷たく見えるな。
でも橘兄の言い分もわからんでもない。そんな事社会人になっても通用するわけじゃない。寂しいのは可哀想だけど、仕方ないって部分もある。橘兄も真剣に将来の夢のために努力している段階なんだから。
「別れるって言ったのはあっちなのに、未だに連絡してきて鬱陶しいんだ…」
「その人はお兄さんの気持ちを確認したかったんでしょうね…」
「面倒くさい。暫くはそういう煩わしいことから離れて受験に集中したい」
煩わしいって、面倒くさいってあんた。
私はハハッと黒いネズミみたいな笑い声をあげると、それ以上のコメントは控えた。
そんな人もいるよね。仕方がない。
橘兄は私が手に持っているテキストに目が止まったのか「受験勉強か?」と質問してきた。
お節介…いや面倒見のいい橘兄が頼んでもないのに私に口頭で問題の解き方のコツをレクチャーしている時、何処からか鋭い視線が私に刺さった気がした。
視線を上げると、あのOLさんが私に嫉妬の視線を送ってきていた。
…あの…私も一応、あなたの恩人なんですけどね? それに私には彼氏いますんで…
「あやめさん聞いているのか。ちょっとの油断が大きな命取りになるんだぞ」
「担任みたいなこと言わないでくださいよ」
橘兄はOLさんのこと全く意識していないらしい。弟の彼女に勉強を教えることのほうが大事なのか。
それでいいのか。橘兄よ。
最寄り駅まで橘兄から受験指導をされ、私は電車を降りるまでOLさんに睨まれ続けていたのだが、橘兄はそれに全然気づかない。
橘兄はその後私に「ちゃんと勉強しろよ」と念押しして涼しい顔して帰っていった。
現在、橘兄には彼女はいない。しばらく作るつもりもないらしい。
理想のタイプは不明である。
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