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続編
お客様は金づるです。勿論神様みたいなお客様もいるよ。
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学校のお昼休み中に化粧直しから戻った私は、教室で難しい顔をしている山ぴょんを発見した。腕を組んだ体制で席に着いている山ぴょんは、前の席の椅子をじっと睨みつけて何やら思い悩んでいる様子。どうしたんだろうか。お腹すいたか。
私は非常食のバランス栄養食を取り出し、山ぴょんの机に置くとそのまま静かに通り過ぎた。
元気出せよ山ぴょん。
山ぴょんはそれにしばらく気づいていない様子で、かなり真剣に悩んでいるようであった。
文化祭の準備は大詰めを迎え、文化祭は翌日に控えている。
今年は去年のようなアクシデントは起きなかったし、順調に物事が進んだ。それはとてもいいことなんだけど、嵐の前の静けさみたいでなんか怖いと感じる。なんでかな。
何事もなく、文化祭が無事に終わりますように…
文化祭当日は仕込みや準備で裏方担当は朝が早い。今夜は早めに休むとするか。
☆★☆
『只今より第○回文化祭を開催いたします』
ポン、ポポンと花火の鳴る音と同時に高校最後の文化祭が始まった。
早朝からカフェメニューの準備をしていた私達裏方はもう既に疲れていたが、疲れた顔を見せていられない。今日私は遅番なのでその間に気力体力を回復させないと。
メイド服に着替え、ゾンビメイクを施す。遅番の人はチラシを持って宣伝をする役目があるのだ。
私は瞳に白いカラコンをして、全体的に青白く、所々腐敗したようにグロいメイクを施した。
……そして、封印していたはずのカラーリングを施した今の私の髪色はキラキラのブロンドである。昨日思い立って学校帰りに美容室に駆け込んだの!
最後の文化祭だから特別!
明日の後夜祭のために必要なことだったの!
「わぁあやめちゃんすごいゾンビだ!」
「花恋ちゃんもかなりゾンビってるよ」
キャッキャとゾンビ顔を称賛し合う私達。去年のお化け屋敷での経験が生かされてよかったよ。クラスメイト達もコスプレを楽しんでいるようだ。
うちのクラスの冥土喫茶はホラーなカントリーハウスをモチーフにしているが、和風コスプレをしている生徒もいる。林道さんは猫娘風の和風メイドに扮している。本人かつての希望でゾンビメイクは薄めだ。
やりすぎて和真に怖がられたくないそうだ。…ていうかあいつがここに来るかな?
早番のユカやリン、遅番の私と花恋ちゃんの4人で自撮り棒撮影をした後、これから接客をするユカとリンに激励を送っておいた。同じシフトならみんなで見て回れたのに残念。
それはともかく時間は有限だから一分でも無駄には出来ない。沢山回りたい場所があるんだよね。いざ目的地に向かおうと私が花恋ちゃんと教室を出たその時、ある女の子とすれ違った。
「大志」
「…真優」
「来ちゃった…すごいねそれ何のコスプレ?」
「…フランケンシュタインだけど」
山ぴょんの元カノの真優ちゃんである。夏まつり以来なにかと箕島さんと競い合っているようだ。所々で山ぴょんにアタックしている姿を見かける。
去年の【花恋ちゃん階段墜落&巻き込まれた私の負傷事件】がきっかけで、山ぴょんから切り捨てるように別れを告げられた真優ちゃん。それ以降彼女を避けるようにしていた山ぴょんだったが……あれから一年、山ぴょんの心境にも変化があったのだろうか。
「大志! 2番と4番さんからオーダー入ったからよろしくね!」
「…おう」
真優ちゃんの登場に何処か緊張した様子だった山ぴょんだったが、箕島さんに声をかけられて自分の仕事を思い出したらしい。気まずそうな表情をしながらも、仕事に戻るべくバックヤードに入っていった山ぴょんを見送った後、箕島さんが真優ちゃんを睨みつけた。
「お帰りなさいませ。お嬢様…お一人でございますか?」
「……私、大志に接客してほしいんだけどな」
「お生憎様ですが、大志は裏方ですので基本接客はいたしませんのでご了承くださいませ」
「……そうなんだ…」
バチバチと女同士の睨み合いが始まった。真優ちゃんも箕島さんも山ぴょんがいなくなった瞬間笑顔を無くし、お互いを牽制しあっていた。
おいおいちょっと、こんなの店先でされたら営業妨害になるじゃないの!
「箕島さん! 他のお客様の御迷惑になるから抑えて! 申し訳ございませんお嬢様、こちらのお席へどうぞ!」
私は二人の間に割って入っていき、無理やり引き剥がした。
もう! 修羅場をここで起こすな! 文化祭はみんなの文化祭なんだからな!
私の半ば強引な案内に真優ちゃんは目を白黒させていたが、大人しく席についてくれた。
「こちらメニュー表でございます! オプションでご希望の相手と写真を取ることも出来ます。撮影一回につき500円になります」
「……それって大志とも撮れるの?」
「勿論でございます」
アルバイトで培った営業スマイルで真優ちゃんを接客すると、早番のユカとリンに箕島さんを彼女に近づけないようにお願いしておいた。
ここで安心しておきたいがまだ不安なので、念の為に箕島さんに注意しに行った。
「箕島さん、ここで山ぴょんの取り合いはやめて? みんな最後の文化祭なんだから。…誰もいない所でやってね?」
「…ごめん。でも、あの子どの面下げてここに来たんだって……腹が立っちゃって」
箕島さんは山ぴょんだけのことで敵対視したんじゃないようだ。あの転落事件の被害者である花恋ちゃんや私がいるクラスに、平然と真優ちゃんがやって来たことにも憤慨しているようだ。
箕島さん、正義感が強いところがあるんだよね。気持ちは嬉しいし、悪いことじゃないけど…時と場合があるからね…
「箕島さん、私達は大丈夫だから。他人のことでいちいち怒ってたら疲れるだけだよ? ……せっかくの文化祭だし…山ぴょんと同じシフトなんだから一緒に回れるでしょ? それまで頑張って」
「うん……」
「とにかく喧嘩を売らない。接客中はお客様なんだから」
「………」
「箕島さん、よく言うでしょ? お客様は金づる…ごほんっ…神様だって。大人になったらどんなに腹が立っても抑え込まないといけないんだからそれの練習だと思って…」
ついつい本音が漏れてしまった。
いやだってさぁ、バイトしてた時実感したけど、皆が皆いいお客さんばかりじゃないんだよ?
そうしたら自分の心を誤魔化すために、そう揶揄して接客しないと割に合わないというか……
箕島さんは目を丸くして私を見ていたがフフフ、と笑った。今の面白かったか。
「金づる…そうね…せいぜい売上に貢献してもらわなきゃね」
「ごめん。今の失言だった。あのアルバイトでね?」
「田端さん、もう大丈夫。本橋さんが待ってるし、文化祭見て回っておいでよ」
「う、うん……」
後ろ髪引かれる思いだったが、本人が大丈夫と言っているからそれを信じることにする。私は待たせてしまっていた花恋ちゃんの元へと戻っていった。
☆★☆
久松の劇を観に行きたいという花恋ちゃんにお願いされて体育館にやって来たが、もう既に満員御礼。
私達は仕方なく立ち見で観覧していた。素人学生の劇にしては熱の入った劇だった。演劇部でもないのに意外と久松は演技が上手だな。
私は弟や植草さんのクラスにも行きたかったので、30分くらいで体育館を出るつもりだったのだが、花恋ちゃんが来たのに気づいていたらしい久松は舞台からかなり後ろの方にいる私達の元に演技中にも関わらず駆けてきて……花恋ちゃんの手を取ってアラ○ンの名台詞を語りだした。
そこにスポットライトが当たる。花恋ちゃんをプリンセスのように扱う久松だが、今の花恋ちゃんはゾンビメイドである。私達ギャルの真似をしてかなり怖い仕上がりだ。
ゾンビメイドの姿に客席から恐怖の悲鳴が上がるが、久松はそれを物ともせずに呆然としている花恋ちゃんの手を引いて舞台へと駆けていった。
風のようにやって来て嵐のように去っていった久松と連れ拐われてしまった花恋ちゃんを見送るしか出来なかった私は……しばらく待ったけど花恋ちゃんが解放される気配もないので彼女にメッセージを送ると体育館を出ていったのである。
……後で合流すればいいかなと思って。時間は有限なのよ!
体育館を出た私は植草さんのクラスに顔を出してみた。
すると……彼女は男子を侍らせて、逆ハーレムを形成していた。
あら? あらら?
のり君のせいで男性恐怖症的な雰囲気があったのに…克服したの? 植草さん。……心の傷が癒えたのなら良いんだけどさ。
まぁあれだけの美人なら男が放って置かないか。
邪魔するのはあれだし、どうしようかなと思っていると「…田端先輩? 植草さんに会いに来たんですか?」と横から声を掛けられた。
そこには以前植草さんを呼び出しする際に何度かやり取りをした一年の女の子がいた。彼女は制服のセーターの上から水色の布地に「祭」と書かれたハッピを着ていた。メガホンを持っているから、お客さんを呼び込みをしていたようだ。
……ゾンビメイドな私でよく気づいたなこの子。髪だって染めてるのに。
「うんまぁ…。だけど忙しそうだし…」
「良かったら、待っている間に水風船ヨーヨーすくいしません?」
「わぁ懐かしい。じゃあ一回だけしようかな」
夏休みに先輩とお祭りに行ったけども、ヨーヨーすくいはしなかったんだよ。
お金を払ってヨーヨーすくいの限界に挑戦していると、一年のクラスに花恋ちゃんがやって来たので、すくったヨーヨーを1つあげた。
「もうびっくりしちゃった。下がるに下がれない雰囲気で…私、お芝居なんて出来ないのに」
「そうなの? 花恋ちゃんは可愛いからお姫様役とか似合いそうなのに」
「そんな事ないよ! …人前で台詞を言うのってかなり緊張するし…」
劇の中休みにようやく抜け出せたらしく、花恋ちゃんは少々お疲れ気味であった。久松は何がしたいんだ本当に。
私はヨーヨーを5つすくったので1つが花恋ちゃんに、自分の両手に2個ずつ付けてバシバシバシと叩いて遊んでいた。
植草さんはまだ忙しそうだし、私もそう時間がないから先に行こうかな。
「それじゃあがんばってね」
「植草さんは良いんですか?」
「もう時間がないから。後で連絡しておくから大丈夫」
植草さんのクラスメイトである彼女にそう言い残して一年のクラスを後にする。次は花恋ちゃんが行きたがっていた二年のクラスの迷路ゲームに向かうことにした。
迷路に入ったのは良いんだけど、入って気づいてしまった。
…しまった。ヨーヨーすごく邪魔だ。
なんでこんなに釣ってしまったんだろうか。
迷路は結構楽しかった。ダンボールだけでこんなに楽しめるなんて…よく考えついたもんだな。
制限時間内に脱出できた人には記念品を配っていた。私がもらったのは手作りのスライムだ。
あれ、なんかデジャブが……
この感触…私何処かで……
そういや去年タカギにたたきつけてお陀仏にしたな。手作りスライム。
私は非常食のバランス栄養食を取り出し、山ぴょんの机に置くとそのまま静かに通り過ぎた。
元気出せよ山ぴょん。
山ぴょんはそれにしばらく気づいていない様子で、かなり真剣に悩んでいるようであった。
文化祭の準備は大詰めを迎え、文化祭は翌日に控えている。
今年は去年のようなアクシデントは起きなかったし、順調に物事が進んだ。それはとてもいいことなんだけど、嵐の前の静けさみたいでなんか怖いと感じる。なんでかな。
何事もなく、文化祭が無事に終わりますように…
文化祭当日は仕込みや準備で裏方担当は朝が早い。今夜は早めに休むとするか。
☆★☆
『只今より第○回文化祭を開催いたします』
ポン、ポポンと花火の鳴る音と同時に高校最後の文化祭が始まった。
早朝からカフェメニューの準備をしていた私達裏方はもう既に疲れていたが、疲れた顔を見せていられない。今日私は遅番なのでその間に気力体力を回復させないと。
メイド服に着替え、ゾンビメイクを施す。遅番の人はチラシを持って宣伝をする役目があるのだ。
私は瞳に白いカラコンをして、全体的に青白く、所々腐敗したようにグロいメイクを施した。
……そして、封印していたはずのカラーリングを施した今の私の髪色はキラキラのブロンドである。昨日思い立って学校帰りに美容室に駆け込んだの!
最後の文化祭だから特別!
明日の後夜祭のために必要なことだったの!
「わぁあやめちゃんすごいゾンビだ!」
「花恋ちゃんもかなりゾンビってるよ」
キャッキャとゾンビ顔を称賛し合う私達。去年のお化け屋敷での経験が生かされてよかったよ。クラスメイト達もコスプレを楽しんでいるようだ。
うちのクラスの冥土喫茶はホラーなカントリーハウスをモチーフにしているが、和風コスプレをしている生徒もいる。林道さんは猫娘風の和風メイドに扮している。本人かつての希望でゾンビメイクは薄めだ。
やりすぎて和真に怖がられたくないそうだ。…ていうかあいつがここに来るかな?
早番のユカやリン、遅番の私と花恋ちゃんの4人で自撮り棒撮影をした後、これから接客をするユカとリンに激励を送っておいた。同じシフトならみんなで見て回れたのに残念。
それはともかく時間は有限だから一分でも無駄には出来ない。沢山回りたい場所があるんだよね。いざ目的地に向かおうと私が花恋ちゃんと教室を出たその時、ある女の子とすれ違った。
「大志」
「…真優」
「来ちゃった…すごいねそれ何のコスプレ?」
「…フランケンシュタインだけど」
山ぴょんの元カノの真優ちゃんである。夏まつり以来なにかと箕島さんと競い合っているようだ。所々で山ぴょんにアタックしている姿を見かける。
去年の【花恋ちゃん階段墜落&巻き込まれた私の負傷事件】がきっかけで、山ぴょんから切り捨てるように別れを告げられた真優ちゃん。それ以降彼女を避けるようにしていた山ぴょんだったが……あれから一年、山ぴょんの心境にも変化があったのだろうか。
「大志! 2番と4番さんからオーダー入ったからよろしくね!」
「…おう」
真優ちゃんの登場に何処か緊張した様子だった山ぴょんだったが、箕島さんに声をかけられて自分の仕事を思い出したらしい。気まずそうな表情をしながらも、仕事に戻るべくバックヤードに入っていった山ぴょんを見送った後、箕島さんが真優ちゃんを睨みつけた。
「お帰りなさいませ。お嬢様…お一人でございますか?」
「……私、大志に接客してほしいんだけどな」
「お生憎様ですが、大志は裏方ですので基本接客はいたしませんのでご了承くださいませ」
「……そうなんだ…」
バチバチと女同士の睨み合いが始まった。真優ちゃんも箕島さんも山ぴょんがいなくなった瞬間笑顔を無くし、お互いを牽制しあっていた。
おいおいちょっと、こんなの店先でされたら営業妨害になるじゃないの!
「箕島さん! 他のお客様の御迷惑になるから抑えて! 申し訳ございませんお嬢様、こちらのお席へどうぞ!」
私は二人の間に割って入っていき、無理やり引き剥がした。
もう! 修羅場をここで起こすな! 文化祭はみんなの文化祭なんだからな!
私の半ば強引な案内に真優ちゃんは目を白黒させていたが、大人しく席についてくれた。
「こちらメニュー表でございます! オプションでご希望の相手と写真を取ることも出来ます。撮影一回につき500円になります」
「……それって大志とも撮れるの?」
「勿論でございます」
アルバイトで培った営業スマイルで真優ちゃんを接客すると、早番のユカとリンに箕島さんを彼女に近づけないようにお願いしておいた。
ここで安心しておきたいがまだ不安なので、念の為に箕島さんに注意しに行った。
「箕島さん、ここで山ぴょんの取り合いはやめて? みんな最後の文化祭なんだから。…誰もいない所でやってね?」
「…ごめん。でも、あの子どの面下げてここに来たんだって……腹が立っちゃって」
箕島さんは山ぴょんだけのことで敵対視したんじゃないようだ。あの転落事件の被害者である花恋ちゃんや私がいるクラスに、平然と真優ちゃんがやって来たことにも憤慨しているようだ。
箕島さん、正義感が強いところがあるんだよね。気持ちは嬉しいし、悪いことじゃないけど…時と場合があるからね…
「箕島さん、私達は大丈夫だから。他人のことでいちいち怒ってたら疲れるだけだよ? ……せっかくの文化祭だし…山ぴょんと同じシフトなんだから一緒に回れるでしょ? それまで頑張って」
「うん……」
「とにかく喧嘩を売らない。接客中はお客様なんだから」
「………」
「箕島さん、よく言うでしょ? お客様は金づる…ごほんっ…神様だって。大人になったらどんなに腹が立っても抑え込まないといけないんだからそれの練習だと思って…」
ついつい本音が漏れてしまった。
いやだってさぁ、バイトしてた時実感したけど、皆が皆いいお客さんばかりじゃないんだよ?
そうしたら自分の心を誤魔化すために、そう揶揄して接客しないと割に合わないというか……
箕島さんは目を丸くして私を見ていたがフフフ、と笑った。今の面白かったか。
「金づる…そうね…せいぜい売上に貢献してもらわなきゃね」
「ごめん。今の失言だった。あのアルバイトでね?」
「田端さん、もう大丈夫。本橋さんが待ってるし、文化祭見て回っておいでよ」
「う、うん……」
後ろ髪引かれる思いだったが、本人が大丈夫と言っているからそれを信じることにする。私は待たせてしまっていた花恋ちゃんの元へと戻っていった。
☆★☆
久松の劇を観に行きたいという花恋ちゃんにお願いされて体育館にやって来たが、もう既に満員御礼。
私達は仕方なく立ち見で観覧していた。素人学生の劇にしては熱の入った劇だった。演劇部でもないのに意外と久松は演技が上手だな。
私は弟や植草さんのクラスにも行きたかったので、30分くらいで体育館を出るつもりだったのだが、花恋ちゃんが来たのに気づいていたらしい久松は舞台からかなり後ろの方にいる私達の元に演技中にも関わらず駆けてきて……花恋ちゃんの手を取ってアラ○ンの名台詞を語りだした。
そこにスポットライトが当たる。花恋ちゃんをプリンセスのように扱う久松だが、今の花恋ちゃんはゾンビメイドである。私達ギャルの真似をしてかなり怖い仕上がりだ。
ゾンビメイドの姿に客席から恐怖の悲鳴が上がるが、久松はそれを物ともせずに呆然としている花恋ちゃんの手を引いて舞台へと駆けていった。
風のようにやって来て嵐のように去っていった久松と連れ拐われてしまった花恋ちゃんを見送るしか出来なかった私は……しばらく待ったけど花恋ちゃんが解放される気配もないので彼女にメッセージを送ると体育館を出ていったのである。
……後で合流すればいいかなと思って。時間は有限なのよ!
体育館を出た私は植草さんのクラスに顔を出してみた。
すると……彼女は男子を侍らせて、逆ハーレムを形成していた。
あら? あらら?
のり君のせいで男性恐怖症的な雰囲気があったのに…克服したの? 植草さん。……心の傷が癒えたのなら良いんだけどさ。
まぁあれだけの美人なら男が放って置かないか。
邪魔するのはあれだし、どうしようかなと思っていると「…田端先輩? 植草さんに会いに来たんですか?」と横から声を掛けられた。
そこには以前植草さんを呼び出しする際に何度かやり取りをした一年の女の子がいた。彼女は制服のセーターの上から水色の布地に「祭」と書かれたハッピを着ていた。メガホンを持っているから、お客さんを呼び込みをしていたようだ。
……ゾンビメイドな私でよく気づいたなこの子。髪だって染めてるのに。
「うんまぁ…。だけど忙しそうだし…」
「良かったら、待っている間に水風船ヨーヨーすくいしません?」
「わぁ懐かしい。じゃあ一回だけしようかな」
夏休みに先輩とお祭りに行ったけども、ヨーヨーすくいはしなかったんだよ。
お金を払ってヨーヨーすくいの限界に挑戦していると、一年のクラスに花恋ちゃんがやって来たので、すくったヨーヨーを1つあげた。
「もうびっくりしちゃった。下がるに下がれない雰囲気で…私、お芝居なんて出来ないのに」
「そうなの? 花恋ちゃんは可愛いからお姫様役とか似合いそうなのに」
「そんな事ないよ! …人前で台詞を言うのってかなり緊張するし…」
劇の中休みにようやく抜け出せたらしく、花恋ちゃんは少々お疲れ気味であった。久松は何がしたいんだ本当に。
私はヨーヨーを5つすくったので1つが花恋ちゃんに、自分の両手に2個ずつ付けてバシバシバシと叩いて遊んでいた。
植草さんはまだ忙しそうだし、私もそう時間がないから先に行こうかな。
「それじゃあがんばってね」
「植草さんは良いんですか?」
「もう時間がないから。後で連絡しておくから大丈夫」
植草さんのクラスメイトである彼女にそう言い残して一年のクラスを後にする。次は花恋ちゃんが行きたがっていた二年のクラスの迷路ゲームに向かうことにした。
迷路に入ったのは良いんだけど、入って気づいてしまった。
…しまった。ヨーヨーすごく邪魔だ。
なんでこんなに釣ってしまったんだろうか。
迷路は結構楽しかった。ダンボールだけでこんなに楽しめるなんて…よく考えついたもんだな。
制限時間内に脱出できた人には記念品を配っていた。私がもらったのは手作りのスライムだ。
あれ、なんかデジャブが……
この感触…私何処かで……
そういや去年タカギにたたきつけてお陀仏にしたな。手作りスライム。
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