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第一部 第一章 プロローグ─夢の残火編─
殲滅鬼 1
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「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
怒りに満ちたノヒンの咆哮。
鎧を叩き切る鈍い音。
降魔となった者の人外の叫び。
雨のように降り注ぐ血飛沫。
飛び散る肉片。
闘技場内は地獄と化していた。
「俺に敵意を! 向けてんじゃぁ! ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
黒錆の剣の切れ味が増している。元よりノヒンの化け物じみた膂力によって連撃を可能にしていたが、これならば更に連撃に勢いが乗る。
敵意を向けられ、ギチギチと力も漲る。
血飛沫が混じり、赤く激しい竜巻のようになったノヒンが肉塊の山を作っていく。留まることを知らないノヒンの連撃。だが──
「がはっ!!」
暴風のような連撃の間を縫うように、ノヒンの脇腹に槍が突き刺さる。それを皮切りに無数の槍がノヒンの体を貫いた。
「ちっ、字名持ちかよ。ランスにロックに……あれは人狼か? 魔素が濃いせ……ぐぅっ!」
岩を鎧のように纏ったロックと呼ばれる降魔が、槍によって動きの止まったノヒン目掛けて無数の岩の塊を放つ。
体中の骨が砕けるかのような衝撃とともに、岩が際限なくガスガスとノヒンにぶち当たる。実際骨の至る所にはひびが入った。
「がはっ……はぁ……はっ……。いいぜぇ……いい痛みだ! 俺を殺したけりゃあよぉ! ちまちまやってねぇで……どんどん来いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ノヒンが叫びを上げるが、両腕が槍へと変化したランスと呼ばれる降魔に取り囲まれていた。無数の槍も体を貫いたままである。
だがノヒンは知ったことかと力任せにランスを両断する。ランスは体も金属のように変化しているらしく、甲高い音が響いた。
「グギ……ギィィィ!!」
「抜かせねぇっ!!」
残るランスが槍を引き抜こうとするが、ノヒンの筋肉がギチギチと締まって抜くことが出来ない。
「るぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
黒錆の剣による力任せの横薙ぎの一閃。ランスがガラクタのように飛び散る。
「ちょっと借りるぜ! ぬぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ノヒンが自身の体を貫く槍を引き抜き、ロックに向けて全力で投げつける。ビキビキと筋肉が隆起し、まるでバリスタのような威力となった槍がロックの頭蓋を貫通。脳漿をぶちまけた。
「これなら弓なんていらねぇなぁ! とりあえずよぉ……てめぇも死んどけやぁっ!!」
残る槍も引き抜き、ワーウルフに向けて致死の一撃を連続で放つ。とてつもない速度の槍がワーウルフへと襲いかかるが……
「ガルァァァァァァ!!」
「ちっ! なんて速さしてやが……ぐぅっ!!」
ワーウルフが放たれた槍を全て躱し、鋭い爪でノヒンをズタズタに切り裂く。ノヒンの体からは鮮血が迸った。
「わん公ごときが調子に乗ってんじゃねぇ! 撫で回してやるから来いよ!!」
ノヒンが鞘に両手を入れ、ガチンと黒錆の剣を外す。そのまま大砲のような勢いでワーウルフへと突っ込んだ。
「グルァァァァァァァァァァァァァ!!」
ワーウルフによる目視できない速度での連撃。ノヒンの体からは夥しい血飛沫が上がり、ワーウルフの体も返り血で赤く染まっていく。
「ちまちまやってんじゃねぇっ!!」
ノヒンが切り刻まれながらも、ワーウルフの両腕を脇の下を通してロックした。すかさずワーウルフが首筋に噛み付こうとするが、それを渾身の頭突きでガード。お互いの額からは血が吹き出す。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ノヒンの凄まじい叫びと共に、ゴギンッと嫌な音を立ててワーウルフの両腕がへし折られる。そのままノヒンがワーウルフを押し倒し、胸の辺りを力任せに殴りつけた。何度も何度も殴りつけ、バギンと何かが砕ける音と共に、ワーウルフが黒い霧となって消滅。黒い霧はノヒンの体へと侵入し、力が漲る。
「はぁ……はぁ……ぐあっ!!」
息を切らすノヒンの背中に、凄まじい衝撃と共に岩の塊がぶつかる。見れば倒したはずのロックや何体かのランスが復活していた。
「そういや砕くの忘れてたぜぇ! てめぇらは魔石を砕かねぇと再生するんだったなぁ! やってやるよ! 俺に敵意を向けるやつぁ皆殺しだ! くはっ! はははははははははははははははぁっ!!」
殲滅鬼ノヒン──
戦場でノヒンはそう呼ばれていた。呪われた血がそうさせるのか、乱戦になればなるほど……血が流れて骨が砕ける度に……ノヒンの感情は昂る。表情はどこか楽しんでいるかのようにさえ見える。
「ぐふぐふ、力が漲ってきますぅ。もうすぐ完全な魔神に至れますねぇ。それもこれも殲滅鬼が頑張って降魔を殺してくれるおかげですねぇ。座っているだけでどんどん私に魔素が捧げられていきますよぉ。ですが子供の降魔を全然殺していないですねぇ。これでは効率が悪いですよぉ。グルガにバザン、ちょっと行って子供達共々ノヒンと遊んでやって下さぁい。魔神の力の一部を授かったあなた達ならぁ……造作もないでしょぉう?」
「……応」
ズガンッと地面を蹴りつけ、グルガとバザンがノヒンの元へと向かう。グルガとバザンは元からオーガのような風貌だが、以前ノヒンが見た時よりも筋肉が隆起し、すでに人間を捨てているのが見て取れる。
二人は凄まじい勢いのままノヒンに突撃し、殴りかかった。
「づぅっ!!」
二人の突撃に気付いたノヒンが何とか躱そうとするが……
グルガの拳が左肩に直撃する。
ゴギンッと嫌な音がして肩の骨が砕け、闘技場の端まで吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
「がっはぁっ! ……ぐぅ……なんだありゃぁ。元から人間やめたみてぇな見た目だったがよ……魔神に至る神器ってのぁ半魔になるためのもんか……?」
端まで飛ばされた事で、闘技場内の状況がよく見える。殺された降魔達から濃い魔素が溢れ出し、グルガやバザン、パランへと流れていた。
(ちっ、あいつらガキの降魔を狙って殺してやがる……。降魔になったら殺すしかねぇって分かっちゃあいるが……胸糞わりぃ。しかも殺せば殺すほど奴らの体がでかくなってやがるな。めんどくせぇ流れだ。降魔が全滅する前に奴らを殺すしかねぇ)
ノヒンの砕けた肩がバキバキと音を立て、硬化した魔素によって補強される。
怒りに満ちたノヒンの咆哮。
鎧を叩き切る鈍い音。
降魔となった者の人外の叫び。
雨のように降り注ぐ血飛沫。
飛び散る肉片。
闘技場内は地獄と化していた。
「俺に敵意を! 向けてんじゃぁ! ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
黒錆の剣の切れ味が増している。元よりノヒンの化け物じみた膂力によって連撃を可能にしていたが、これならば更に連撃に勢いが乗る。
敵意を向けられ、ギチギチと力も漲る。
血飛沫が混じり、赤く激しい竜巻のようになったノヒンが肉塊の山を作っていく。留まることを知らないノヒンの連撃。だが──
「がはっ!!」
暴風のような連撃の間を縫うように、ノヒンの脇腹に槍が突き刺さる。それを皮切りに無数の槍がノヒンの体を貫いた。
「ちっ、字名持ちかよ。ランスにロックに……あれは人狼か? 魔素が濃いせ……ぐぅっ!」
岩を鎧のように纏ったロックと呼ばれる降魔が、槍によって動きの止まったノヒン目掛けて無数の岩の塊を放つ。
体中の骨が砕けるかのような衝撃とともに、岩が際限なくガスガスとノヒンにぶち当たる。実際骨の至る所にはひびが入った。
「がはっ……はぁ……はっ……。いいぜぇ……いい痛みだ! 俺を殺したけりゃあよぉ! ちまちまやってねぇで……どんどん来いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ノヒンが叫びを上げるが、両腕が槍へと変化したランスと呼ばれる降魔に取り囲まれていた。無数の槍も体を貫いたままである。
だがノヒンは知ったことかと力任せにランスを両断する。ランスは体も金属のように変化しているらしく、甲高い音が響いた。
「グギ……ギィィィ!!」
「抜かせねぇっ!!」
残るランスが槍を引き抜こうとするが、ノヒンの筋肉がギチギチと締まって抜くことが出来ない。
「るぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
黒錆の剣による力任せの横薙ぎの一閃。ランスがガラクタのように飛び散る。
「ちょっと借りるぜ! ぬぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ノヒンが自身の体を貫く槍を引き抜き、ロックに向けて全力で投げつける。ビキビキと筋肉が隆起し、まるでバリスタのような威力となった槍がロックの頭蓋を貫通。脳漿をぶちまけた。
「これなら弓なんていらねぇなぁ! とりあえずよぉ……てめぇも死んどけやぁっ!!」
残る槍も引き抜き、ワーウルフに向けて致死の一撃を連続で放つ。とてつもない速度の槍がワーウルフへと襲いかかるが……
「ガルァァァァァァ!!」
「ちっ! なんて速さしてやが……ぐぅっ!!」
ワーウルフが放たれた槍を全て躱し、鋭い爪でノヒンをズタズタに切り裂く。ノヒンの体からは鮮血が迸った。
「わん公ごときが調子に乗ってんじゃねぇ! 撫で回してやるから来いよ!!」
ノヒンが鞘に両手を入れ、ガチンと黒錆の剣を外す。そのまま大砲のような勢いでワーウルフへと突っ込んだ。
「グルァァァァァァァァァァァァァ!!」
ワーウルフによる目視できない速度での連撃。ノヒンの体からは夥しい血飛沫が上がり、ワーウルフの体も返り血で赤く染まっていく。
「ちまちまやってんじゃねぇっ!!」
ノヒンが切り刻まれながらも、ワーウルフの両腕を脇の下を通してロックした。すかさずワーウルフが首筋に噛み付こうとするが、それを渾身の頭突きでガード。お互いの額からは血が吹き出す。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ノヒンの凄まじい叫びと共に、ゴギンッと嫌な音を立ててワーウルフの両腕がへし折られる。そのままノヒンがワーウルフを押し倒し、胸の辺りを力任せに殴りつけた。何度も何度も殴りつけ、バギンと何かが砕ける音と共に、ワーウルフが黒い霧となって消滅。黒い霧はノヒンの体へと侵入し、力が漲る。
「はぁ……はぁ……ぐあっ!!」
息を切らすノヒンの背中に、凄まじい衝撃と共に岩の塊がぶつかる。見れば倒したはずのロックや何体かのランスが復活していた。
「そういや砕くの忘れてたぜぇ! てめぇらは魔石を砕かねぇと再生するんだったなぁ! やってやるよ! 俺に敵意を向けるやつぁ皆殺しだ! くはっ! はははははははははははははははぁっ!!」
殲滅鬼ノヒン──
戦場でノヒンはそう呼ばれていた。呪われた血がそうさせるのか、乱戦になればなるほど……血が流れて骨が砕ける度に……ノヒンの感情は昂る。表情はどこか楽しんでいるかのようにさえ見える。
「ぐふぐふ、力が漲ってきますぅ。もうすぐ完全な魔神に至れますねぇ。それもこれも殲滅鬼が頑張って降魔を殺してくれるおかげですねぇ。座っているだけでどんどん私に魔素が捧げられていきますよぉ。ですが子供の降魔を全然殺していないですねぇ。これでは効率が悪いですよぉ。グルガにバザン、ちょっと行って子供達共々ノヒンと遊んでやって下さぁい。魔神の力の一部を授かったあなた達ならぁ……造作もないでしょぉう?」
「……応」
ズガンッと地面を蹴りつけ、グルガとバザンがノヒンの元へと向かう。グルガとバザンは元からオーガのような風貌だが、以前ノヒンが見た時よりも筋肉が隆起し、すでに人間を捨てているのが見て取れる。
二人は凄まじい勢いのままノヒンに突撃し、殴りかかった。
「づぅっ!!」
二人の突撃に気付いたノヒンが何とか躱そうとするが……
グルガの拳が左肩に直撃する。
ゴギンッと嫌な音がして肩の骨が砕け、闘技場の端まで吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
「がっはぁっ! ……ぐぅ……なんだありゃぁ。元から人間やめたみてぇな見た目だったがよ……魔神に至る神器ってのぁ半魔になるためのもんか……?」
端まで飛ばされた事で、闘技場内の状況がよく見える。殺された降魔達から濃い魔素が溢れ出し、グルガやバザン、パランへと流れていた。
(ちっ、あいつらガキの降魔を狙って殺してやがる……。降魔になったら殺すしかねぇって分かっちゃあいるが……胸糞わりぃ。しかも殺せば殺すほど奴らの体がでかくなってやがるな。めんどくせぇ流れだ。降魔が全滅する前に奴らを殺すしかねぇ)
ノヒンの砕けた肩がバキバキと音を立て、硬化した魔素によって補強される。
応援ありがとうございます!
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