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第一部 第六章 夢の残火─継承編─
燃ゆる血潮─バーンブラッド─
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『魔石の過剰駆動とでも言えばいいのでしょうか? もちろん限界を超えた駆動ですので、私も無事ではすまないと思います。ですが同じくあなたの魔石も万全ではないようですし、事象崩壊魔術も使えないんですよね?』
「ちっ……気付いてやがったか。ありゃ負荷がでけぇから当分は使えねぇ。つーかそもそもおめぇはなんのために戦ってやがんだ? そこまでする理由はなんだ?」
『もはや私に目的などありません。ただただ弱者をいたぶるのが楽しい。そして今は……強者と戦うのが楽しいと思っています』
ムスペルが拳を握り、楽しそうな表情でノヒンを見る。
「……ロキと一緒でただの戦闘狂かよ」
『ロキ? 嗚呼……懐かしい名ですね。彼は目的を達成出来たのですか?』
「目的だぁ? ……そういやロキの野郎は神話時代から生きてやがんだよな。目的ってのはよく分かんねぇし、生きてんのか死んでんのかも分かんねぇ」
『彼が死んだかもしれない? ……くく……そんなわけがない。何せ彼は……ユグド……ぐうぅ……』
唐突にムスペルが苦しみ出す。露出した魔石に手を当て、ボコボコと筋肉が沸騰するように隆起する。
「おい! ロキがどうしたってんだ!?」
『……対話はここまでのようです。魔石から発生するエネルギーを発散しなければ体が崩壊……しますので!』
「づうぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
魔石の過剰駆動により、神速に達したムスペルの突撃。ノヒンがそれを両手で受ける……が、あまりに凄まじい速度と力により、数百メートルほど押される。
「……急に突っ込んで来てんじゃぁ……ねぇぞごらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
『ごぶぅっ!!』
ようやく止まったところで、ノヒン渾身のボディブローがムスペルに炸裂。と同時、流れるような回し蹴りを叩き込み、ムスペルが吹き飛ぶ。
「まだまだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
さらにノヒンが全力で地面を蹴りつけ、吹き飛ぶムスペルに追撃をしようとするが……
『そこですっ!!』
「ちっ! うぜぇっ!!」
ムスペルが吹き飛びながらも体勢を変えて着地。追いすがるノヒンに向けて極大の火球を放つ。だがノヒンは構わず火球へと突っ込む。
『まだまだ! そこですっ! はあっ!』
さらに連続での火球による追撃を放ち、着弾した火球が辺り一面を焼き尽くす。凄まじい熱量によって景色が歪む。だが──
「無駄だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
『がっはっ!!』
燃え上がる炎の中から焼け爛れたノヒンが飛び出し、ムスペルを殴りつける。あれほどの熱量からの生還など不可能なはず。だがノヒンには狂戦士という魔素が自動で攻撃を防御し、ダメージを軽減する無詠唱特殊魔術がある。
傷を負って身体強化し、超速再生によって負った傷を再生する。
文字通りの狂戦士。
『ぐう……ぅ……まさかこれほどとは……。いい勝負になると思ったのですが……』
「てめぇとは背負ってるもんが違ぇんだ。目的もねぇ相手に負けるわけがねぇだろ? つーかなんなんだぁ? どいつもこいつも訳分かんねぇ理由で好き勝手しやがってよ。とりあえずこれで終わりだ。何か言い残すことはあるか?」
『いえ……何もありません。完敗ですね。どうぞとどめを刺してください』
「ちっ……胸糞悪ぃ……んじゃまああの世で……」
ノヒンがムスペルの魔石を砕こうと拳を握るが、動きが止まる。顔は驚きとも怒りともとれる表情で、バキバキと歯を食いしばっていた。
「なん……で……なんでてめぇがここにいやがんだ!! ロキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!」
ノヒンの視線の先、ムスペルの背後に少年兵姿のロキがいた。
「久しいな。ヴァンの流れを汲む者……いや、ノヒンよ。悪いがムスペルはこちらに貰う」
ロキがそう言い放つと黒い霧によってムスペルが包まれ──
消えた。
「ちっ! なにしやがるっ!!」
「ムスペルは良い変化を遂げたのでな」
「なんなんだぁ!? なんなんだよてめぇはっ!!」
ノヒンが怒りに身を任せ、ロキに殴りかかる。手加減したつもりは全くないのだが……
涼しい顔をしたロキに軽く片手で止められた。
「くく……相変わらずのようで安心した」
「てめぇ……俺の知ってるロキじゃねぇな……?」
「ほう、それに気付くか」
「見た目は同じだけどよ、雰囲気が全然違ぇ。いったいおめぇは何者なんだ? 何がしてぇんだ? いや……ラグナスとは別の考えで動いてやがんのか? 次元崩壊はどうやって抜けた? いや……違ぇな。今のおめぇは次元崩壊に巻き込まれたやつじゃねぇってことだよな? ああ! くそっ! 全っ然分かんねぇ! 頭がおかしくなりそうだぜ!」
「無理に理解する必要はない。貴様は貴様で足掻き続ければいいだけなのだからな。さあっ! 私を楽しませてみせろ! ノヒン!!」
「ぐぶおぁっ!!」
唐突に始まった因縁の相手──ロキとの戦闘。
ロキの拳がノヒンの腹部にめり込む。あまりにも強烈な一撃。内蔵が破裂し、口からは血が溢れる。前に戦ったロキとは明らかに別次元の強さ。
「どうした? こんなものなのか? 数多の死線を越え、貴様のNACMOも成長しているはずなのだが……。この程度なのか? ……ノヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンッ!!」
「がぁ……はっ!!」
「こんな! 程度っ! なのかっ!? 数千年っ! 数千年も! 待ったと! 言うのにっ!!」
ロキがノヒンの頭を鷲掴みにし、地面へと叩きつける。何度も何度も地面へと叩きつけ、このままでは頭が潰れて絶命する。
「……っと危ない危ない。せっかくここまで成長したのに殺してしまうところであった。それよりも……」
ロキがノヒンを無造作に投げ捨て、ランドの方に視線を向ける。
「貴様には失望したぞ? 蒼き狼よ。神器を与え、もう少し成長すると思ったのだがな」
「お前はロプト……だよな……?」
「そうだ。だが貴様と会ったのは分体だがな」
「分……体……?」
「少々貴様が面白そうだったので遊ばせて貰ったようだ。だがその体たらくはなんだ? 私が降魔化させたトズールの民たちを虐殺している時はあれほど猛々しかったではないか!!」
「なん……だって……? トズールの人達が……? 降魔……?」
「くく……素晴らしかったぞ! 呪いの大戦斧で住人を皆殺しにする様はな!!」
「本当……に……? そう……なのか……? うぅ……」
ランドが泣き崩れる。トズールに住む普通の人達を皆殺しにしたと思っていたのだが、住人達はすでにロキによって降魔へとされていたようだ。だからといって自分が許されるとは思っていないが、思わず涙が溢れる。
「とんだ見込み違いだな。だが……」
ロキがカタリナに視線を移す。
「貴様はなかなかに面白い。その容姿は天翔のデータでも反映されたのか? そのうえ金獅子はこちら側ではすでに発生しなくなったと思っていたが……少し調べさせて貰うとするか」
ずしゃり──
と、ロキが一歩前へと進む。この時カタリナは一歩も動けなくなっていた。目の前にいるのは見たところただの少年兵だが……
少しでも動けば殺されるという恐怖が、カタリナの身を硬直させる。一歩、また一歩とロキが近付き……
「……させるかぁっ!!」
「ほうっ! もう回復したのか! そうでなくてはなぁっ!!」
ロキの背後から、まるで砲弾のように駆けてきたノヒンの両足による飛び蹴り。それを振り返ったロキが両手で受け、ノヒンは空中で翻って着地。
「頼むっ! 耐えてくれ! 耐えてくれよっ! もうこれ以上俺の目の前で誰かが傷付くのは勘弁だ! 絶てぇやらせねぇっ! 俺がっ! 俺がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! っくぞぉっ! 血燃ォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」
魔石が限界を越えた状態でのバーンブラッド。ノヒンの魔石からはバキバキとひび割れる音がする。
「くく……面白いっ!! 貴様の全力を受けてやろう!!」
「……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ノヒン渾身のボディブローがロキの腹部へとめり込み、弾け飛ぶ。ロキはそのまま黒い霧となって霧散。霧の一部が僅かにだがノヒンの体に侵入した。
「ぐぅ……がはっ……わざと受けやがって……。だが終わったん……だよなぁ……?」
息も絶え絶えなノヒンが片膝を付いて声を絞り出す。だが──
『くくく……それなりに楽しませて貰ったので今日のところはこれで終いにしてやろう。それにしても貴様は相変わらず他人のために力を振るうのだな』
姿は見えないが、どこからともなくロキの声が響く。
「てめぇ! わざとランドとカタリナを狙いやがったな!!」
『貴様はそうした方が本気が出ると思ったのでな』
「ちっ! マジでなんなんだよっ! 何がしてぇんだ! ラグナスは……ジェシカは無事なのかよっ!!」
『次元崩壊の中のことに関しては私も分からんが、死んでいる可能性の方が高いのではないか? まあどちらでも私はかまわないのだ。私は私のしたいようにするだけなのでな。ではノヒンよっ!! また相見えようぞ!!』
「待てっ! 待ちやが……ぐう……ぅ……」
ノヒンが胸を押さえて倒れ込む。魔石がひび割れたことで体は限界を迎え、文字通りその身を流れる血潮さえも燃やし尽くし──
再びヘドロのような闇に、意識は沈んでいった。
────第六章 夢の残火─継承編─(了)
「ちっ……気付いてやがったか。ありゃ負荷がでけぇから当分は使えねぇ。つーかそもそもおめぇはなんのために戦ってやがんだ? そこまでする理由はなんだ?」
『もはや私に目的などありません。ただただ弱者をいたぶるのが楽しい。そして今は……強者と戦うのが楽しいと思っています』
ムスペルが拳を握り、楽しそうな表情でノヒンを見る。
「……ロキと一緒でただの戦闘狂かよ」
『ロキ? 嗚呼……懐かしい名ですね。彼は目的を達成出来たのですか?』
「目的だぁ? ……そういやロキの野郎は神話時代から生きてやがんだよな。目的ってのはよく分かんねぇし、生きてんのか死んでんのかも分かんねぇ」
『彼が死んだかもしれない? ……くく……そんなわけがない。何せ彼は……ユグド……ぐうぅ……』
唐突にムスペルが苦しみ出す。露出した魔石に手を当て、ボコボコと筋肉が沸騰するように隆起する。
「おい! ロキがどうしたってんだ!?」
『……対話はここまでのようです。魔石から発生するエネルギーを発散しなければ体が崩壊……しますので!』
「づうぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
魔石の過剰駆動により、神速に達したムスペルの突撃。ノヒンがそれを両手で受ける……が、あまりに凄まじい速度と力により、数百メートルほど押される。
「……急に突っ込んで来てんじゃぁ……ねぇぞごらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
『ごぶぅっ!!』
ようやく止まったところで、ノヒン渾身のボディブローがムスペルに炸裂。と同時、流れるような回し蹴りを叩き込み、ムスペルが吹き飛ぶ。
「まだまだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
さらにノヒンが全力で地面を蹴りつけ、吹き飛ぶムスペルに追撃をしようとするが……
『そこですっ!!』
「ちっ! うぜぇっ!!」
ムスペルが吹き飛びながらも体勢を変えて着地。追いすがるノヒンに向けて極大の火球を放つ。だがノヒンは構わず火球へと突っ込む。
『まだまだ! そこですっ! はあっ!』
さらに連続での火球による追撃を放ち、着弾した火球が辺り一面を焼き尽くす。凄まじい熱量によって景色が歪む。だが──
「無駄だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
『がっはっ!!』
燃え上がる炎の中から焼け爛れたノヒンが飛び出し、ムスペルを殴りつける。あれほどの熱量からの生還など不可能なはず。だがノヒンには狂戦士という魔素が自動で攻撃を防御し、ダメージを軽減する無詠唱特殊魔術がある。
傷を負って身体強化し、超速再生によって負った傷を再生する。
文字通りの狂戦士。
『ぐう……ぅ……まさかこれほどとは……。いい勝負になると思ったのですが……』
「てめぇとは背負ってるもんが違ぇんだ。目的もねぇ相手に負けるわけがねぇだろ? つーかなんなんだぁ? どいつもこいつも訳分かんねぇ理由で好き勝手しやがってよ。とりあえずこれで終わりだ。何か言い残すことはあるか?」
『いえ……何もありません。完敗ですね。どうぞとどめを刺してください』
「ちっ……胸糞悪ぃ……んじゃまああの世で……」
ノヒンがムスペルの魔石を砕こうと拳を握るが、動きが止まる。顔は驚きとも怒りともとれる表情で、バキバキと歯を食いしばっていた。
「なん……で……なんでてめぇがここにいやがんだ!! ロキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!」
ノヒンの視線の先、ムスペルの背後に少年兵姿のロキがいた。
「久しいな。ヴァンの流れを汲む者……いや、ノヒンよ。悪いがムスペルはこちらに貰う」
ロキがそう言い放つと黒い霧によってムスペルが包まれ──
消えた。
「ちっ! なにしやがるっ!!」
「ムスペルは良い変化を遂げたのでな」
「なんなんだぁ!? なんなんだよてめぇはっ!!」
ノヒンが怒りに身を任せ、ロキに殴りかかる。手加減したつもりは全くないのだが……
涼しい顔をしたロキに軽く片手で止められた。
「くく……相変わらずのようで安心した」
「てめぇ……俺の知ってるロキじゃねぇな……?」
「ほう、それに気付くか」
「見た目は同じだけどよ、雰囲気が全然違ぇ。いったいおめぇは何者なんだ? 何がしてぇんだ? いや……ラグナスとは別の考えで動いてやがんのか? 次元崩壊はどうやって抜けた? いや……違ぇな。今のおめぇは次元崩壊に巻き込まれたやつじゃねぇってことだよな? ああ! くそっ! 全っ然分かんねぇ! 頭がおかしくなりそうだぜ!」
「無理に理解する必要はない。貴様は貴様で足掻き続ければいいだけなのだからな。さあっ! 私を楽しませてみせろ! ノヒン!!」
「ぐぶおぁっ!!」
唐突に始まった因縁の相手──ロキとの戦闘。
ロキの拳がノヒンの腹部にめり込む。あまりにも強烈な一撃。内蔵が破裂し、口からは血が溢れる。前に戦ったロキとは明らかに別次元の強さ。
「どうした? こんなものなのか? 数多の死線を越え、貴様のNACMOも成長しているはずなのだが……。この程度なのか? ……ノヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンッ!!」
「がぁ……はっ!!」
「こんな! 程度っ! なのかっ!? 数千年っ! 数千年も! 待ったと! 言うのにっ!!」
ロキがノヒンの頭を鷲掴みにし、地面へと叩きつける。何度も何度も地面へと叩きつけ、このままでは頭が潰れて絶命する。
「……っと危ない危ない。せっかくここまで成長したのに殺してしまうところであった。それよりも……」
ロキがノヒンを無造作に投げ捨て、ランドの方に視線を向ける。
「貴様には失望したぞ? 蒼き狼よ。神器を与え、もう少し成長すると思ったのだがな」
「お前はロプト……だよな……?」
「そうだ。だが貴様と会ったのは分体だがな」
「分……体……?」
「少々貴様が面白そうだったので遊ばせて貰ったようだ。だがその体たらくはなんだ? 私が降魔化させたトズールの民たちを虐殺している時はあれほど猛々しかったではないか!!」
「なん……だって……? トズールの人達が……? 降魔……?」
「くく……素晴らしかったぞ! 呪いの大戦斧で住人を皆殺しにする様はな!!」
「本当……に……? そう……なのか……? うぅ……」
ランドが泣き崩れる。トズールに住む普通の人達を皆殺しにしたと思っていたのだが、住人達はすでにロキによって降魔へとされていたようだ。だからといって自分が許されるとは思っていないが、思わず涙が溢れる。
「とんだ見込み違いだな。だが……」
ロキがカタリナに視線を移す。
「貴様はなかなかに面白い。その容姿は天翔のデータでも反映されたのか? そのうえ金獅子はこちら側ではすでに発生しなくなったと思っていたが……少し調べさせて貰うとするか」
ずしゃり──
と、ロキが一歩前へと進む。この時カタリナは一歩も動けなくなっていた。目の前にいるのは見たところただの少年兵だが……
少しでも動けば殺されるという恐怖が、カタリナの身を硬直させる。一歩、また一歩とロキが近付き……
「……させるかぁっ!!」
「ほうっ! もう回復したのか! そうでなくてはなぁっ!!」
ロキの背後から、まるで砲弾のように駆けてきたノヒンの両足による飛び蹴り。それを振り返ったロキが両手で受け、ノヒンは空中で翻って着地。
「頼むっ! 耐えてくれ! 耐えてくれよっ! もうこれ以上俺の目の前で誰かが傷付くのは勘弁だ! 絶てぇやらせねぇっ! 俺がっ! 俺がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! っくぞぉっ! 血燃ォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」
魔石が限界を越えた状態でのバーンブラッド。ノヒンの魔石からはバキバキとひび割れる音がする。
「くく……面白いっ!! 貴様の全力を受けてやろう!!」
「……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ノヒン渾身のボディブローがロキの腹部へとめり込み、弾け飛ぶ。ロキはそのまま黒い霧となって霧散。霧の一部が僅かにだがノヒンの体に侵入した。
「ぐぅ……がはっ……わざと受けやがって……。だが終わったん……だよなぁ……?」
息も絶え絶えなノヒンが片膝を付いて声を絞り出す。だが──
『くくく……それなりに楽しませて貰ったので今日のところはこれで終いにしてやろう。それにしても貴様は相変わらず他人のために力を振るうのだな』
姿は見えないが、どこからともなくロキの声が響く。
「てめぇ! わざとランドとカタリナを狙いやがったな!!」
『貴様はそうした方が本気が出ると思ったのでな』
「ちっ! マジでなんなんだよっ! 何がしてぇんだ! ラグナスは……ジェシカは無事なのかよっ!!」
『次元崩壊の中のことに関しては私も分からんが、死んでいる可能性の方が高いのではないか? まあどちらでも私はかまわないのだ。私は私のしたいようにするだけなのでな。ではノヒンよっ!! また相見えようぞ!!』
「待てっ! 待ちやが……ぐう……ぅ……」
ノヒンが胸を押さえて倒れ込む。魔石がひび割れたことで体は限界を迎え、文字通りその身を流れる血潮さえも燃やし尽くし──
再びヘドロのような闇に、意識は沈んでいった。
────第六章 夢の残火─継承編─(了)
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