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第二章 大魔道書『神々の終焉讃歌録』
15 そして見えなくなる
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襲われていた金髪の女性に連れられて、シルヴァとシアンは森の中を歩いていた。
さっきまで歩いていたの街道のように舗装はされていないものの、小さな獣道みたいなものがあり、そこまで徒歩が苦にならなかった。
途中でその獣道から外れて、女性が隣へ草むらをかき分けて入っていく。二人もそれに続いた。
それから、今度は誰かが歩いた形跡が全くない草むらを少し歩く。
不意に――そう、本当に、シルヴァが瞬きをした瞬間、と言えばいいだろうか。そんな一瞬の後だ。
――前を見ると、あの女性が消えていた。
「――っ!」
足を止め、奇妙な事態に構えるシルヴァ。
――まさか、襲ってきた奴らに連れ去られたのか?
シアンも少し遅れて事態を把握し、構えた。
「……どこに消えた?」
「分かんない……突然消えたように見えたけど……。変な音も聞こえなかった」
猫耳をピクリと動かせながら、シアンは息を呑む。シルヴァも辺りを警戒した。
さっきまで女性がいた場所を見るも、誰かが介入した形跡はない。この整備されていない森の中で、形跡を残さず人をさらうのはとても難しい。
さらに、形跡のみならず、シアンの聴覚にさえ感知されていない。つまり、ほとんど音をたてず女性を連れ去ったということになる。そんなことはほぼ不可能だ。
ならば、女性は連れ去られたわけではないのだろうか。しかしそうなると、女性が消えた説明がつかない。
シルヴァがそんなことを考えていると、シアンは猫耳を動かしながら首を傾げた。
「でもおかしいな……。すっごく小さいけど、一人分の足音はちゃんと前から聞こえるよ」
「……そう? 僕には全然聞こえないけど……」
シルヴァも彼女に倣って耳を澄ます。しかし葉っぱが風でカサカサ揺れる音や、遠くの鳥の鳴き声のような環境音しか聞こえない。
シルヴァが耳を澄まし首をひねっている横で、シアンは一歩慎重に踏み出した。
一歩、さらに一歩、と段々前進していくシアン。
すると、
「うわっ」
「……?」
シルヴァの視界に、とても奇妙なものが映った。その当の本人であるシアンは気づいていないようで、情けない声を上げたシルヴァの方に彼女が振り返る。
「首元から下が消えてるんだけど……?」
「消え……? わっ!?」
シルヴァの指摘に意味が分からないという顔をするシアンだったが、自分の体を見下ろしてその異常さに気づいた。
シアンの首元から下が、消えているのだ。本来手足と胴体がある場所には、その向こうの景色が透けて見えている。まるで首元から下の体が透明になったようだ。
自分の体が半分以上消えているという事態に驚いたシアンは、シルヴァの方へ歩み寄ろうとする。
「……ん~?」
すると、その不可視だった踏み出したシアンの足がにゅるっと姿を表した。足の先から太もものあたりまで顕現している。
「……つまり?」
「僕もそう思う」
困ったように笑うシアンに、シルヴァは近寄った。シアンの隣に立ったところで、その寸前で胴体の三分の二ぐらいから下の部分が消える。しかし痛みなどは感じない。
「……なんだこれ。結界みたいな?」
シアンと同じように振り返り、腕を前後に動かしてみた。前に振れば見えるようになり、後ろに振れば見えなくなる。一定のラインから見えなくなっているようだ。
「顔だけ見えてるってことは……。そういう結界みたいなのが半球状になってる?」
見えない部分と見える部分の境界線。それが上に行くにつれ、内側へ曲がっている、ということだ。
とりあえず、害はなさそうなので、その見えない部分へ入っていく二人。前を見ると、さっきの女性が先の方を歩いていた。
「……仕組みは分からないけど、防犯用の結界か何かっぽいな」
その後姿を見ながら、シルヴァはぼやく。その隣のシアンが、自身の猫耳を左右に動かしながら言った。
「すごいね……。外の音がちょっととしか聞こえない。音をある程度は遮断できてるみたいね」
そのシアンの言葉にシルヴァはなるほどと納得がいった。
シアンだけに聞こえた小さな足音。それは、結界――それが本当に結界であるかはまだ定かではないが――の中で発した音だったのだ。
この結界に高度な防音効果があったから、人間の聴覚では音を捉えきれなかった。
「すごいのはシアンの耳もだよ。僕は全然聞こえないし」
「えっ……!? その、えっへん?」
「なんで急に褒められ方が下手になったの?」
シアンに耳を褒められて、驚いた顔になってから一転、猫耳をピタンと倒しながら、頬を染めて胸を張るシアン。
褒められてからそれを誇るまでに謎のタイミラグがあって、その不格好さにちょっとシルヴァは笑ってしまい、シアンはちょっと頬を膨らませた。
そんなやり取りをしているうちに、さっきの女性は結構遠くまで行ってしまっている。
それを見た二人は慌てて彼女の後を追ったのだった。
さっきまで歩いていたの街道のように舗装はされていないものの、小さな獣道みたいなものがあり、そこまで徒歩が苦にならなかった。
途中でその獣道から外れて、女性が隣へ草むらをかき分けて入っていく。二人もそれに続いた。
それから、今度は誰かが歩いた形跡が全くない草むらを少し歩く。
不意に――そう、本当に、シルヴァが瞬きをした瞬間、と言えばいいだろうか。そんな一瞬の後だ。
――前を見ると、あの女性が消えていた。
「――っ!」
足を止め、奇妙な事態に構えるシルヴァ。
――まさか、襲ってきた奴らに連れ去られたのか?
シアンも少し遅れて事態を把握し、構えた。
「……どこに消えた?」
「分かんない……突然消えたように見えたけど……。変な音も聞こえなかった」
猫耳をピクリと動かせながら、シアンは息を呑む。シルヴァも辺りを警戒した。
さっきまで女性がいた場所を見るも、誰かが介入した形跡はない。この整備されていない森の中で、形跡を残さず人をさらうのはとても難しい。
さらに、形跡のみならず、シアンの聴覚にさえ感知されていない。つまり、ほとんど音をたてず女性を連れ去ったということになる。そんなことはほぼ不可能だ。
ならば、女性は連れ去られたわけではないのだろうか。しかしそうなると、女性が消えた説明がつかない。
シルヴァがそんなことを考えていると、シアンは猫耳を動かしながら首を傾げた。
「でもおかしいな……。すっごく小さいけど、一人分の足音はちゃんと前から聞こえるよ」
「……そう? 僕には全然聞こえないけど……」
シルヴァも彼女に倣って耳を澄ます。しかし葉っぱが風でカサカサ揺れる音や、遠くの鳥の鳴き声のような環境音しか聞こえない。
シルヴァが耳を澄まし首をひねっている横で、シアンは一歩慎重に踏み出した。
一歩、さらに一歩、と段々前進していくシアン。
すると、
「うわっ」
「……?」
シルヴァの視界に、とても奇妙なものが映った。その当の本人であるシアンは気づいていないようで、情けない声を上げたシルヴァの方に彼女が振り返る。
「首元から下が消えてるんだけど……?」
「消え……? わっ!?」
シルヴァの指摘に意味が分からないという顔をするシアンだったが、自分の体を見下ろしてその異常さに気づいた。
シアンの首元から下が、消えているのだ。本来手足と胴体がある場所には、その向こうの景色が透けて見えている。まるで首元から下の体が透明になったようだ。
自分の体が半分以上消えているという事態に驚いたシアンは、シルヴァの方へ歩み寄ろうとする。
「……ん~?」
すると、その不可視だった踏み出したシアンの足がにゅるっと姿を表した。足の先から太もものあたりまで顕現している。
「……つまり?」
「僕もそう思う」
困ったように笑うシアンに、シルヴァは近寄った。シアンの隣に立ったところで、その寸前で胴体の三分の二ぐらいから下の部分が消える。しかし痛みなどは感じない。
「……なんだこれ。結界みたいな?」
シアンと同じように振り返り、腕を前後に動かしてみた。前に振れば見えるようになり、後ろに振れば見えなくなる。一定のラインから見えなくなっているようだ。
「顔だけ見えてるってことは……。そういう結界みたいなのが半球状になってる?」
見えない部分と見える部分の境界線。それが上に行くにつれ、内側へ曲がっている、ということだ。
とりあえず、害はなさそうなので、その見えない部分へ入っていく二人。前を見ると、さっきの女性が先の方を歩いていた。
「……仕組みは分からないけど、防犯用の結界か何かっぽいな」
その後姿を見ながら、シルヴァはぼやく。その隣のシアンが、自身の猫耳を左右に動かしながら言った。
「すごいね……。外の音がちょっととしか聞こえない。音をある程度は遮断できてるみたいね」
そのシアンの言葉にシルヴァはなるほどと納得がいった。
シアンだけに聞こえた小さな足音。それは、結界――それが本当に結界であるかはまだ定かではないが――の中で発した音だったのだ。
この結界に高度な防音効果があったから、人間の聴覚では音を捉えきれなかった。
「すごいのはシアンの耳もだよ。僕は全然聞こえないし」
「えっ……!? その、えっへん?」
「なんで急に褒められ方が下手になったの?」
シアンに耳を褒められて、驚いた顔になってから一転、猫耳をピタンと倒しながら、頬を染めて胸を張るシアン。
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