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第二章 大魔道書『神々の終焉讃歌録』
38 炎の猛攻
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青き炎の渦は視界の全てを青に染めた。熱量により歪む視界に眼球内の水分がじわじわと蒸発していくのを感じる。
けれどもその炎はシルヴァとその腕の中にいるシアンへ雪崩れることはない。なぜならば、シルヴァの『支配』の力により、自分たちへ当たるはずの炎を操って外に曲げているからだ。
しかしそれでも熱さまでは操作しきれない。激しい炎と数センチの距離にいるのだから、肌がチクチクと痛むし、心なしか息苦しさも感じる。
その中に不意に炎の動きが小さくなった気がした。
シルヴァはハッとして剣を構えるも、それは少し遅かった。
「――くっ……!」
炎の中から出てきたハーヴィン。そしてそこから振るわれた拳をシルヴァは剣で相殺しようとするも、『少し遅かった』。
ハーヴィンの拳は吸い込まれるように、シルヴァの持つ剣へと向かう。その二つがかち合うと、今回はあっさりとシルヴァの持つ剣が押し負けたどころか、刀身全てが風化するかの如く、一気に崩れ落ちた。
「なるほどな」
ハーヴィンは崩れ落ちる刀剣を見据えながらも、そのままシルヴァへ蹴りを放った。シルヴァは柄だけになった剣をすぐさま捨てさり、腕の中のシアンを覆いかぶさるように防御すると、彼の蹴りを背中で受ける。
そのまま炎の中に投げ出されるシルヴァだが、その寸前に『支配』を発動し炎を割いて、その空いた部分に着地した。それでも衝撃を殺しきれず、ハーヴィンと距離を開ける形で地面をすべる。
体が止まり、立ち上がろうとしたところで背中に激痛が走り、思わず膝をついた。
「シルヴァ!」
抱きかかえられていたシアンがシルヴァから下り、地面に足をつけた。シアンはシルヴァの肩に手を伸べて、心配そうに彼の顔を覗き見る。
直後、シアンの獣耳がぴくりと揺れた。
シアンは一瞬でシルヴァから顔をそむき、そのまま後ろを向いて盾を構える。
それとほぼ同時に、シアンの目の前の空間が歪んだと思うと、ハーヴィンが出現して炎の拳がシアンに振るわれた。その瞬間、シルヴァは視界の隅でそれを捉えると『支配』を発動させる。
ハーヴィンの拳はそのまま盾へと伸び、鈍く低い音をたてた。ハーヴィンはシアンの盾を押し破る如く拳に力を込めながら、静かに言う。
「剣や盾に、お前の『操る』力を込めて、本当は割れているのを無理やりくっつけているみたいだな。疑似的にその力で武器の強度が増している、といったところか」
シルヴァの剣やシアンの盾が壊れなかった仕組みを看破したハービンに、シルヴァは思わず顔をしかめた。しかしだからといって、引き下がれるわけではない。
シルヴァは拮抗するシアンとハーヴィンの後ろで、新たに『支配』の力を発動させる。その力はシアンの盾を持っていない方の手に握られている槍に発動し、その槍は彼女の手を抜けてハーヴィンへ一直線に向かった。
「っ」
ハーヴィンは迫りくる槍に対し、体を反ってギリギリ回避する。も、姿勢が崩れた故にシアンに押し切られ、背後へと倒れた。
けれど、彼の背が地面につく瞬間、彼から青き炎が燃え上がったと思うと、その炎が消えると同時に彼の姿も消える。
脅威が目の前から去ったことに安堵する二人。しかし、それが甘い罠――否、当然の行動だったことにすぐに気づく。
「アレンの方にいったんじゃ……!」
結論、ハーヴィンの目的はシルヴァたちではないのだ。こちらに長時間構っているメリットは薄い。シアンに押し負けたところで、戦闘を離脱するには絶好のタイミングともいえる。
アレンのいるであろう方を見るも、瓦礫で見えなかった。彼らとはあの青い炎で分断されたはずだ。
あの炎で少なからず怪我を負っているはずだ。加えてハーヴィンも向かったときた。こんなところで油を売っている暇はない。
「行くぞ……っ!」
シルヴァは痛む腰に鞭打って立ち上がり、アレンのいる場所に走り出した。シアンもうなずいてそれに続く。
走る最中、その先から何かが爆発したような音が聞こえ、二人は顔を見合わせるとさらに走る速さを上げた。
二人のアレンへの視界を塞いでいた瓦礫を飛び越えて見えた景色を前に、シルヴァは思わず舌打ちをする。シアンはたまらず叫んだ。
「カレン!」
そこにはカレンの顎を片手で掴み、その顔を目を見開き凝視するハーヴィンの姿があったのだった。
けれどもその炎はシルヴァとその腕の中にいるシアンへ雪崩れることはない。なぜならば、シルヴァの『支配』の力により、自分たちへ当たるはずの炎を操って外に曲げているからだ。
しかしそれでも熱さまでは操作しきれない。激しい炎と数センチの距離にいるのだから、肌がチクチクと痛むし、心なしか息苦しさも感じる。
その中に不意に炎の動きが小さくなった気がした。
シルヴァはハッとして剣を構えるも、それは少し遅かった。
「――くっ……!」
炎の中から出てきたハーヴィン。そしてそこから振るわれた拳をシルヴァは剣で相殺しようとするも、『少し遅かった』。
ハーヴィンの拳は吸い込まれるように、シルヴァの持つ剣へと向かう。その二つがかち合うと、今回はあっさりとシルヴァの持つ剣が押し負けたどころか、刀身全てが風化するかの如く、一気に崩れ落ちた。
「なるほどな」
ハーヴィンは崩れ落ちる刀剣を見据えながらも、そのままシルヴァへ蹴りを放った。シルヴァは柄だけになった剣をすぐさま捨てさり、腕の中のシアンを覆いかぶさるように防御すると、彼の蹴りを背中で受ける。
そのまま炎の中に投げ出されるシルヴァだが、その寸前に『支配』を発動し炎を割いて、その空いた部分に着地した。それでも衝撃を殺しきれず、ハーヴィンと距離を開ける形で地面をすべる。
体が止まり、立ち上がろうとしたところで背中に激痛が走り、思わず膝をついた。
「シルヴァ!」
抱きかかえられていたシアンがシルヴァから下り、地面に足をつけた。シアンはシルヴァの肩に手を伸べて、心配そうに彼の顔を覗き見る。
直後、シアンの獣耳がぴくりと揺れた。
シアンは一瞬でシルヴァから顔をそむき、そのまま後ろを向いて盾を構える。
それとほぼ同時に、シアンの目の前の空間が歪んだと思うと、ハーヴィンが出現して炎の拳がシアンに振るわれた。その瞬間、シルヴァは視界の隅でそれを捉えると『支配』を発動させる。
ハーヴィンの拳はそのまま盾へと伸び、鈍く低い音をたてた。ハーヴィンはシアンの盾を押し破る如く拳に力を込めながら、静かに言う。
「剣や盾に、お前の『操る』力を込めて、本当は割れているのを無理やりくっつけているみたいだな。疑似的にその力で武器の強度が増している、といったところか」
シルヴァの剣やシアンの盾が壊れなかった仕組みを看破したハービンに、シルヴァは思わず顔をしかめた。しかしだからといって、引き下がれるわけではない。
シルヴァは拮抗するシアンとハーヴィンの後ろで、新たに『支配』の力を発動させる。その力はシアンの盾を持っていない方の手に握られている槍に発動し、その槍は彼女の手を抜けてハーヴィンへ一直線に向かった。
「っ」
ハーヴィンは迫りくる槍に対し、体を反ってギリギリ回避する。も、姿勢が崩れた故にシアンに押し切られ、背後へと倒れた。
けれど、彼の背が地面につく瞬間、彼から青き炎が燃え上がったと思うと、その炎が消えると同時に彼の姿も消える。
脅威が目の前から去ったことに安堵する二人。しかし、それが甘い罠――否、当然の行動だったことにすぐに気づく。
「アレンの方にいったんじゃ……!」
結論、ハーヴィンの目的はシルヴァたちではないのだ。こちらに長時間構っているメリットは薄い。シアンに押し負けたところで、戦闘を離脱するには絶好のタイミングともいえる。
アレンのいるであろう方を見るも、瓦礫で見えなかった。彼らとはあの青い炎で分断されたはずだ。
あの炎で少なからず怪我を負っているはずだ。加えてハーヴィンも向かったときた。こんなところで油を売っている暇はない。
「行くぞ……っ!」
シルヴァは痛む腰に鞭打って立ち上がり、アレンのいる場所に走り出した。シアンもうなずいてそれに続く。
走る最中、その先から何かが爆発したような音が聞こえ、二人は顔を見合わせるとさらに走る速さを上げた。
二人のアレンへの視界を塞いでいた瓦礫を飛び越えて見えた景色を前に、シルヴァは思わず舌打ちをする。シアンはたまらず叫んだ。
「カレン!」
そこにはカレンの顎を片手で掴み、その顔を目を見開き凝視するハーヴィンの姿があったのだった。
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