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17章-06
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その後、詰めかけた仲間たちによって私の部屋が満員になりかけたものの、ディアナ様の一喝ですぐさま沈静化。
流れのまま、先ほどジュードが話していた仮会議室に集まり、数時間ぶりに部隊の全員が集合することになった。
「ううっ……アンジェラさん、本当によかった……」
「別に泣くほどのことでもないでしょう。心配しすぎよ、ウィリアムさん。でも、ありがと」
何故か泣いているウィリアムの他にも、皆安堵と戸惑いが同時にやってきたような表情だ。
まあ、問い質すまでもなく、ジュードが話した過去の自分たちとアンジェラのことを考えているのだろうけど……私はあくまで私だもの。
彼らが仲違いした『アンジェラ』は泥女のほうだし、私に戸惑われても困るのよね。
唯一ジュードだけは、いつも通りのさっぱりした様子なのが逆に驚いたけど。
「それでアンジェラ、お前の体はもう大丈夫なのか?」
ウィリアムを宥めていれば、その横からノアがそわそわした様子で自分の外套を脱ごうとしている。さっきは着ていなかったのに、わざわざ持ってきたのかしら?
「着るか?」ということなのだろうけど、別に具合が悪いわけではないので遠慮しておいた。
「私は体調を崩したんじゃなく、〝体と魂が分かれていた〟だけだからね。その辺りは神様が安定させてくれたみたいだから、今は大丈夫よ」
「魂に神か……お前より長く生きているつもりだが、未知の話ばかりだな」
「私も完璧にわかっているわけではないわよ?」
あいまいに笑って返せば、ノアも外套をちゃんと留めて席に座り直す。ウィリアムの涙も、ちょうど止まったようだ。
「……さて、それじゃあ私の話をしましょうか。と言っても、大したことではないけどね」
ジュードが話したことは私も聞いていたと先に注意をしてから、その後のこと――神様から教えてもらった『私』についてのことを皆に話す。
私がアンジェラが捨てた『聖女の体』を動かすために神様に突っ込まれた、異世界の死者であること。
聖女として皆を導くために、最初から多くの知識を与えられていたこと。
そして、ジュードが簡単にしか話さなかった【無垢なる王】……魔物システムの具体的な説明と、それを止めるという私たちの目的について。
「殿下に謝らないといけませんね。私は【無垢なる王】の居場所を知っていると話し、そこへ向けて旅をしてきましたが……情報の混濁があって、正しい位置ではなかったみたいです」
「気にしないでくれ。この地……ヘルツォーク遺跡こそが正しい目的地だったのなら、ちゃんと辿りつけたわけだしね」
これは神様から『思い込み』だと教えられて気付いたことなのだけど。
かつての私が本当にプレイしていたゲームと、神様の情報が混ざってしまっており、私が『ラスボスステージ』だと話した場所は、ここではない別のところだったのだ。
一応そこも魔物の頻出地帯らしいから、完全なハズレでもないんだけど。正しい場所を教えてくれたという一点については、私を呼びつけた泥女に感謝しなければいけないわね。
「というか、導師サマはずっと全部覚えていたのでしょう? 私の間違いを指摘してくれればよかったのに」
「今回もヤツが同じ場所にいるとは思わないだろう。第一、ここはかつての俺たちが、アンジェラを失った街だ。できれば近付きたくもなかった」
「……それもそうか」
私を今も偽者と呼ぶカールが、アンジェラと別れた街に近付きたいはずもないか。
以前、お城で神様に見せてもらった夢……ゲームのアンジェラ編と思っていた過去の姿の中でも、彼はアンジェラをよく気遣っていたものね。
「しかし、まさかアンジェラちゃんが異世界の人だったとは……そんなものがあるっていうのも、まず驚きだよ」
「アンジェラ殿は、たまに不思議な言葉を使っていたしねえ。神に選ばれた聖女よりも、もっと稀有な存在だったわけだ」
王子様とダレンは別のところに興味を持ったようで、もの珍しそうに私を眺めてくる。外見はアンジェラのままなんだから、眺めたところで面白いところはないわよ?
……それに、かつての私は家に監禁されたまま殺されてしまったのだから、自分が思っている以上に地球について知らないだろう。
そう考えると、異世界人と言っても中途半端な存在ね、私。『殴り聖職者』という可能性を持ち込んだことだけは、評価してもらえるかしら。
「……まあ、色々と聞きたいことはあるが。今はそなたの話を参照した上で、我らの目的を明らかにしておこう」
「あ、はい!」
話し込む皆を諫めるように、ディアナ様の低い声が響く。私も姿勢を正せば、鋭い緑眼がスッとこちらを見つめてきた。
さすがは我が女神様。お辛い過去を思い出してしまった後でも、その態度はとても堂々としていらっしゃるわ。
「あの泥の魔物がかつてのアンジェラであり、〝本物〟である。ここにいるアンジェラ殿は、異世界から神に遣わされて来た者。そして、神は今のアンジェラ殿を聖女として支援し、【無垢なる王】の討伐を求めている……これで相違ないか?」
「はい、その通りです」
ハキハキと告げられた説明に、私もしっかり頷いておく。
向こうを本物だと言われるのは今もちょっとだけ悲しいけど、事実だから仕方ない。
神様がこちらの味方な以上、真偽はもう関係ないしね。
「あれ? えっと……アンジェラさん、ぼくたちのやることは……変わってないですよね?」
「ええ、最初から変わらないわ。私たちの目的は、魔物の異常発生の元凶である【無垢なる王】をどうにかすること。……変わったのは、倒すべき敵がかつて貴方たちが捨てた仲間であり、味方にいるのが偽者のアンジェラってことよ」
「……っ!」
私の返答に、ウィリアムの顔色が一瞬で青くなった。
目的は最初に集まった時からずっと変わらない。変えるべきは、こちらの心構えだけ。
国の平和ためという正義感は、かつて死なせてしまった仲間を前にしても持ち続けられるのか。
「……ジュードはどうなの? 『お嬢様』と戦える?」
相変わらず、ジュードはこうした会議の場では乞われない限り喋らない。今回も集まってからずっと、一言も喋らずにじっとしていた。ちゃっかりと私の隣の席を陣取って。
「アンジェラ」
なんだかんだ言って、アンジェラの傍にいた時間は、幼馴染で従者のジュードが一番長かったはずだ。
彼の顔を挑むように見つめれば、途端に黒眼が細められて……ふわりと笑った。
「僕はもちろん戦えるよ」
「かつての貴方が守れなかった、お嬢様が相手なのに?」
「僕のアンジェラは、君だけだ。君こそが僕の全て。お嬢様は、君を殺すと言っていた。だからもう、あの人は敵だよ」
言い淀む様子など一切なく、はっきりと言い切ったジュードに、ぽかんとした皆の視線が集まる。
……聞いた私ですら、驚いてしまったわ。
「そ、そんなにアッサリと切り捨てられるものなの?」
「後悔はあるよ? けど、お嬢様はもうああなってしまったし、今から過去は変えられない。だったら、戦うだけだよ」
「……本当に清々しいな、お前」
あまりにも淡々と語るジュードに、カールは慄いてしまっている。
そういえば、以前にカールは『俺と同じでは』というような質問をしていたものね。ジュードも以前の記憶があるはずなのに、アンジェラに対する考え方がここまで違うとは。
「何度でも言うけど、僕はお嬢様じゃなくて、今ここにいるアンジェラが好きなんだよ。どっちのために戦うかなんて、迷うはずがないだろう?」
「――――ッッ!!」
さらにスパッと続いた発言に、皆の目が今度は私のほうに向けられた。
待って、今この場で言われると、さすがの私もちょっと恥ずかしいぞ!?
「わ、私は偽者よ? それに、貴方のお嬢様が使ってた時よりも、この体は女らしくないわ。傷もあるし、胸も育ってないし……」
「お嬢様の体なんて、僕は知らないし興味もなかったからね。僕とずっと一緒に育ってきた君だからこそ、その体に触れたいと思うんだ。胸の大きさにこだわりはないけど、言うよりは意外とあ「ジュード!!」
セクハラまっしぐらな発言をしそうなジュードを、慌てて遮る。口を滑らせてしまったのは私だけど、そんなカウンターがくるなんて聞いてないわ!
とっさに胸を隠せば、彼は楽しくて仕方がないとばかりに、私の肩を抱き寄せてきた。くそう、私の胸の大きさなんて、修道服の上からじゃわからないはずなのに!
「そりゃー、あれだけしょっちゅうくっついていればなあ……」
「ジュード殿の鋼の理性をいつも褒め称えていたけど、気にはするよね。男だし」
「ちょっと!?」
軽い印象のダレンがツッコむのはともかく、王子様までうんうん頷いているのはどうなのよ。高貴な見てくれが台無しだよ!
「まあ、アンジェラを可愛がるのは後にして」
「可愛がるな変態!」
「お嬢様と戦うのなら、躊躇う余裕はないよ。彼女……いや【無形の悪夢】は覚醒体の魔物だし、向こうにいるんだろう? サイファさんが」
軽い調子から一転、低い声でジュードが告げたことに、皆もハッとした様子で目を見開いた。
「前回の彼は自害してくれたからよかったけど、今回はそうもいかないんだろう、アンジェラ」
「……多分ね」
神様は【無垢なる王】を討伐せよ、とわざわざ聖女の体を蘇らせたのだ。その命令は今も続いているし、魔物たちが前回よりも強くなっていることを見ても、恐らく【無垢なる王】は前回とは違う形で動いている。
想いを寄せたアンジェラは、聖女ではないどころか今は魔物だ。ヒトとして気遣ってやる必要がなくなったのなら、普通に戦うことになる可能性が高いだろう。
〝ゲーム〟とは違うとしても、ラスボスとされていた【無垢なる王】が弱いはずもない。
「僕たちは前回戦わなかったから、サイファさんの本当の実力をまだ知らない。覚醒体の魔物だけでも未知数なのに、そこに魔物の王が加わったらどうなるか。……皆も、後悔だなんだと言ってる場合ではないでしょう?」
「そうだな」
淡々と続けるジュードに、ディアナ様もしっかりと頷きを返す。
皆も表情を改めて、仮会議室の中の空気がピリピリと張り詰めていく。
「アンジェラ、君が偽者だとか、そういうことは誰にも言及させないよ。僕は君に力を貸して欲しい」
「もちろんよ。私だって、この体で生きるしかないんだから」
肩を抱いたままの彼の腕に、決意を込めて拳をあてる。
……そうね。正体がどうあれ、私だって戦うと決めている。
皆がアンジェラに何を思っていたとしても、戦うしかないのだ。ウィリアムに言った通り、やるべきことは何も変わらない。
様々な思いを内包したまま、夜は更けていく。
流れのまま、先ほどジュードが話していた仮会議室に集まり、数時間ぶりに部隊の全員が集合することになった。
「ううっ……アンジェラさん、本当によかった……」
「別に泣くほどのことでもないでしょう。心配しすぎよ、ウィリアムさん。でも、ありがと」
何故か泣いているウィリアムの他にも、皆安堵と戸惑いが同時にやってきたような表情だ。
まあ、問い質すまでもなく、ジュードが話した過去の自分たちとアンジェラのことを考えているのだろうけど……私はあくまで私だもの。
彼らが仲違いした『アンジェラ』は泥女のほうだし、私に戸惑われても困るのよね。
唯一ジュードだけは、いつも通りのさっぱりした様子なのが逆に驚いたけど。
「それでアンジェラ、お前の体はもう大丈夫なのか?」
ウィリアムを宥めていれば、その横からノアがそわそわした様子で自分の外套を脱ごうとしている。さっきは着ていなかったのに、わざわざ持ってきたのかしら?
「着るか?」ということなのだろうけど、別に具合が悪いわけではないので遠慮しておいた。
「私は体調を崩したんじゃなく、〝体と魂が分かれていた〟だけだからね。その辺りは神様が安定させてくれたみたいだから、今は大丈夫よ」
「魂に神か……お前より長く生きているつもりだが、未知の話ばかりだな」
「私も完璧にわかっているわけではないわよ?」
あいまいに笑って返せば、ノアも外套をちゃんと留めて席に座り直す。ウィリアムの涙も、ちょうど止まったようだ。
「……さて、それじゃあ私の話をしましょうか。と言っても、大したことではないけどね」
ジュードが話したことは私も聞いていたと先に注意をしてから、その後のこと――神様から教えてもらった『私』についてのことを皆に話す。
私がアンジェラが捨てた『聖女の体』を動かすために神様に突っ込まれた、異世界の死者であること。
聖女として皆を導くために、最初から多くの知識を与えられていたこと。
そして、ジュードが簡単にしか話さなかった【無垢なる王】……魔物システムの具体的な説明と、それを止めるという私たちの目的について。
「殿下に謝らないといけませんね。私は【無垢なる王】の居場所を知っていると話し、そこへ向けて旅をしてきましたが……情報の混濁があって、正しい位置ではなかったみたいです」
「気にしないでくれ。この地……ヘルツォーク遺跡こそが正しい目的地だったのなら、ちゃんと辿りつけたわけだしね」
これは神様から『思い込み』だと教えられて気付いたことなのだけど。
かつての私が本当にプレイしていたゲームと、神様の情報が混ざってしまっており、私が『ラスボスステージ』だと話した場所は、ここではない別のところだったのだ。
一応そこも魔物の頻出地帯らしいから、完全なハズレでもないんだけど。正しい場所を教えてくれたという一点については、私を呼びつけた泥女に感謝しなければいけないわね。
「というか、導師サマはずっと全部覚えていたのでしょう? 私の間違いを指摘してくれればよかったのに」
「今回もヤツが同じ場所にいるとは思わないだろう。第一、ここはかつての俺たちが、アンジェラを失った街だ。できれば近付きたくもなかった」
「……それもそうか」
私を今も偽者と呼ぶカールが、アンジェラと別れた街に近付きたいはずもないか。
以前、お城で神様に見せてもらった夢……ゲームのアンジェラ編と思っていた過去の姿の中でも、彼はアンジェラをよく気遣っていたものね。
「しかし、まさかアンジェラちゃんが異世界の人だったとは……そんなものがあるっていうのも、まず驚きだよ」
「アンジェラ殿は、たまに不思議な言葉を使っていたしねえ。神に選ばれた聖女よりも、もっと稀有な存在だったわけだ」
王子様とダレンは別のところに興味を持ったようで、もの珍しそうに私を眺めてくる。外見はアンジェラのままなんだから、眺めたところで面白いところはないわよ?
……それに、かつての私は家に監禁されたまま殺されてしまったのだから、自分が思っている以上に地球について知らないだろう。
そう考えると、異世界人と言っても中途半端な存在ね、私。『殴り聖職者』という可能性を持ち込んだことだけは、評価してもらえるかしら。
「……まあ、色々と聞きたいことはあるが。今はそなたの話を参照した上で、我らの目的を明らかにしておこう」
「あ、はい!」
話し込む皆を諫めるように、ディアナ様の低い声が響く。私も姿勢を正せば、鋭い緑眼がスッとこちらを見つめてきた。
さすがは我が女神様。お辛い過去を思い出してしまった後でも、その態度はとても堂々としていらっしゃるわ。
「あの泥の魔物がかつてのアンジェラであり、〝本物〟である。ここにいるアンジェラ殿は、異世界から神に遣わされて来た者。そして、神は今のアンジェラ殿を聖女として支援し、【無垢なる王】の討伐を求めている……これで相違ないか?」
「はい、その通りです」
ハキハキと告げられた説明に、私もしっかり頷いておく。
向こうを本物だと言われるのは今もちょっとだけ悲しいけど、事実だから仕方ない。
神様がこちらの味方な以上、真偽はもう関係ないしね。
「あれ? えっと……アンジェラさん、ぼくたちのやることは……変わってないですよね?」
「ええ、最初から変わらないわ。私たちの目的は、魔物の異常発生の元凶である【無垢なる王】をどうにかすること。……変わったのは、倒すべき敵がかつて貴方たちが捨てた仲間であり、味方にいるのが偽者のアンジェラってことよ」
「……っ!」
私の返答に、ウィリアムの顔色が一瞬で青くなった。
目的は最初に集まった時からずっと変わらない。変えるべきは、こちらの心構えだけ。
国の平和ためという正義感は、かつて死なせてしまった仲間を前にしても持ち続けられるのか。
「……ジュードはどうなの? 『お嬢様』と戦える?」
相変わらず、ジュードはこうした会議の場では乞われない限り喋らない。今回も集まってからずっと、一言も喋らずにじっとしていた。ちゃっかりと私の隣の席を陣取って。
「アンジェラ」
なんだかんだ言って、アンジェラの傍にいた時間は、幼馴染で従者のジュードが一番長かったはずだ。
彼の顔を挑むように見つめれば、途端に黒眼が細められて……ふわりと笑った。
「僕はもちろん戦えるよ」
「かつての貴方が守れなかった、お嬢様が相手なのに?」
「僕のアンジェラは、君だけだ。君こそが僕の全て。お嬢様は、君を殺すと言っていた。だからもう、あの人は敵だよ」
言い淀む様子など一切なく、はっきりと言い切ったジュードに、ぽかんとした皆の視線が集まる。
……聞いた私ですら、驚いてしまったわ。
「そ、そんなにアッサリと切り捨てられるものなの?」
「後悔はあるよ? けど、お嬢様はもうああなってしまったし、今から過去は変えられない。だったら、戦うだけだよ」
「……本当に清々しいな、お前」
あまりにも淡々と語るジュードに、カールは慄いてしまっている。
そういえば、以前にカールは『俺と同じでは』というような質問をしていたものね。ジュードも以前の記憶があるはずなのに、アンジェラに対する考え方がここまで違うとは。
「何度でも言うけど、僕はお嬢様じゃなくて、今ここにいるアンジェラが好きなんだよ。どっちのために戦うかなんて、迷うはずがないだろう?」
「――――ッッ!!」
さらにスパッと続いた発言に、皆の目が今度は私のほうに向けられた。
待って、今この場で言われると、さすがの私もちょっと恥ずかしいぞ!?
「わ、私は偽者よ? それに、貴方のお嬢様が使ってた時よりも、この体は女らしくないわ。傷もあるし、胸も育ってないし……」
「お嬢様の体なんて、僕は知らないし興味もなかったからね。僕とずっと一緒に育ってきた君だからこそ、その体に触れたいと思うんだ。胸の大きさにこだわりはないけど、言うよりは意外とあ「ジュード!!」
セクハラまっしぐらな発言をしそうなジュードを、慌てて遮る。口を滑らせてしまったのは私だけど、そんなカウンターがくるなんて聞いてないわ!
とっさに胸を隠せば、彼は楽しくて仕方がないとばかりに、私の肩を抱き寄せてきた。くそう、私の胸の大きさなんて、修道服の上からじゃわからないはずなのに!
「そりゃー、あれだけしょっちゅうくっついていればなあ……」
「ジュード殿の鋼の理性をいつも褒め称えていたけど、気にはするよね。男だし」
「ちょっと!?」
軽い印象のダレンがツッコむのはともかく、王子様までうんうん頷いているのはどうなのよ。高貴な見てくれが台無しだよ!
「まあ、アンジェラを可愛がるのは後にして」
「可愛がるな変態!」
「お嬢様と戦うのなら、躊躇う余裕はないよ。彼女……いや【無形の悪夢】は覚醒体の魔物だし、向こうにいるんだろう? サイファさんが」
軽い調子から一転、低い声でジュードが告げたことに、皆もハッとした様子で目を見開いた。
「前回の彼は自害してくれたからよかったけど、今回はそうもいかないんだろう、アンジェラ」
「……多分ね」
神様は【無垢なる王】を討伐せよ、とわざわざ聖女の体を蘇らせたのだ。その命令は今も続いているし、魔物たちが前回よりも強くなっていることを見ても、恐らく【無垢なる王】は前回とは違う形で動いている。
想いを寄せたアンジェラは、聖女ではないどころか今は魔物だ。ヒトとして気遣ってやる必要がなくなったのなら、普通に戦うことになる可能性が高いだろう。
〝ゲーム〟とは違うとしても、ラスボスとされていた【無垢なる王】が弱いはずもない。
「僕たちは前回戦わなかったから、サイファさんの本当の実力をまだ知らない。覚醒体の魔物だけでも未知数なのに、そこに魔物の王が加わったらどうなるか。……皆も、後悔だなんだと言ってる場合ではないでしょう?」
「そうだな」
淡々と続けるジュードに、ディアナ様もしっかりと頷きを返す。
皆も表情を改めて、仮会議室の中の空気がピリピリと張り詰めていく。
「アンジェラ、君が偽者だとか、そういうことは誰にも言及させないよ。僕は君に力を貸して欲しい」
「もちろんよ。私だって、この体で生きるしかないんだから」
肩を抱いたままの彼の腕に、決意を込めて拳をあてる。
……そうね。正体がどうあれ、私だって戦うと決めている。
皆がアンジェラに何を思っていたとしても、戦うしかないのだ。ウィリアムに言った通り、やるべきことは何も変わらない。
様々な思いを内包したまま、夜は更けていく。
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