48 / 86
第四章
■五月山修羅は夢を見た
しおりを挟む
□修羅サイド□
幼子にするように布団に放り込まれ、おやすみのキスをおでこにされると意識がことんと落ちた。
――ああ、これは夢だな。
そう思いながら、バルザクトの膝を枕に彼を下から見上げていた。
『シュラ、どうした?』
いまよりもずっと柔らかく微笑んだ彼が、読んでいた本から視線を外し、修羅の前髪を指先で書き上げる。
『むかしの、夢を見てた』
『むかしの? 子供の頃か?』
楽しそうに聞き返す彼に修羅は首を横に振り、寝返りを打ってバルザクトの腹に顔を向けた。
『俺が、まだ従騎士だった頃の、です』
『むかしというほど、むかしではないではないか。だが、まぁ、色々あったものな』
懐古するような声音に、修羅は彼を見あげる。
『後悔、してますか?』
『私がか? してると、思うか?』
微笑みが唇に落ちてくる。何度も啄むように口づけられ、たまらずに彼の後頭部に手を掛けて引き寄せ、深く口腔を貪った。
「あの状態で、寝落ち? マジ、ありえねぇ……」
翌朝すっきりと目が覚めて、がっくりと肩を落とす。
いい夢を見ていた気がするが、内容はすっかり忘れてしまった。
「せめて唇にしてほしかった……」
ベッドに起き上がりキスを受けた額を指で触れてから、それを唇に乗せる。
バルザクトを前にして押し寄せるのは愛情だった。性別など、もうとっくに気にならなくなってしまっていた。ただ、彼が彼であるから愛しいのだ。
元の世界でも、これほど愛しく思った相手はいない。誰よりも愛しい、抱きしめると震える細い肩なのに、意思の強い目にいつも屈服させられる。
「絶対に生きて、バルザクト様を俺のものに――いや、俺がバルザクト様のものになるのか? そもそも所有云々はおこがましいな、ってことは、バルザクト様の永遠の相棒、とか? こう、同じ立ち位置で、等しくありたいんだよな。……考えても仕方ないか、まずはジェンド団長にクレーム……」
苦情を申し入れようとして、ジェンドの強さを思い出して身震いする。
「と、ともかく、問題なのは二日目のパレードだから、それまでは、バルザクト様に言われたように、騎士シュベルツに従って訓練しとかないとな」
バルザクトの居ない三日間の寂しさを振り払うように、気合いを入れてベッドを抜け出した。
幼子にするように布団に放り込まれ、おやすみのキスをおでこにされると意識がことんと落ちた。
――ああ、これは夢だな。
そう思いながら、バルザクトの膝を枕に彼を下から見上げていた。
『シュラ、どうした?』
いまよりもずっと柔らかく微笑んだ彼が、読んでいた本から視線を外し、修羅の前髪を指先で書き上げる。
『むかしの、夢を見てた』
『むかしの? 子供の頃か?』
楽しそうに聞き返す彼に修羅は首を横に振り、寝返りを打ってバルザクトの腹に顔を向けた。
『俺が、まだ従騎士だった頃の、です』
『むかしというほど、むかしではないではないか。だが、まぁ、色々あったものな』
懐古するような声音に、修羅は彼を見あげる。
『後悔、してますか?』
『私がか? してると、思うか?』
微笑みが唇に落ちてくる。何度も啄むように口づけられ、たまらずに彼の後頭部に手を掛けて引き寄せ、深く口腔を貪った。
「あの状態で、寝落ち? マジ、ありえねぇ……」
翌朝すっきりと目が覚めて、がっくりと肩を落とす。
いい夢を見ていた気がするが、内容はすっかり忘れてしまった。
「せめて唇にしてほしかった……」
ベッドに起き上がりキスを受けた額を指で触れてから、それを唇に乗せる。
バルザクトを前にして押し寄せるのは愛情だった。性別など、もうとっくに気にならなくなってしまっていた。ただ、彼が彼であるから愛しいのだ。
元の世界でも、これほど愛しく思った相手はいない。誰よりも愛しい、抱きしめると震える細い肩なのに、意思の強い目にいつも屈服させられる。
「絶対に生きて、バルザクト様を俺のものに――いや、俺がバルザクト様のものになるのか? そもそも所有云々はおこがましいな、ってことは、バルザクト様の永遠の相棒、とか? こう、同じ立ち位置で、等しくありたいんだよな。……考えても仕方ないか、まずはジェンド団長にクレーム……」
苦情を申し入れようとして、ジェンドの強さを思い出して身震いする。
「と、ともかく、問題なのは二日目のパレードだから、それまでは、バルザクト様に言われたように、騎士シュベルツに従って訓練しとかないとな」
バルザクトの居ない三日間の寂しさを振り払うように、気合いを入れてベッドを抜け出した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
248
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる