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ジョゼフと別れたルカ達三人は宿へと向かった。ルフェールに来た初日に泊まった宿屋だ。
「いらっしゃい、残念だけど今は満…って、あんたらかい」
宿屋に入ると、受付に座っていた初老の男性…すなわちこの宿の主人が眼鏡を上げながらルカ達の方を見た。
「迷宮の探索とやらは終わったのかい?」
「はい。思ったよりも時間がかかってしまいました」
「そうかい。だがまあ、無事に帰って来れて何よりだよ」
ルカの言葉に主人は微笑む。
「あんたらの部屋はそのままにしてあるからね」
「ありがとうございます」
「礼には及ばんよ。前金は貰ってるからね。ん?そこの嬢ちゃんは…?」
と、ここで主人はルカとアレクシアの横に立つ少女の存在に気が付いた。少女は「どうも…」と軽く頭を下げる。
「色々あって、僕たちと同行する事になった方です。追加でもう一部屋借りさせて貰えると有難いんですけど…」
「ほう、そうかい。それは別に構わないよ。…と、言いたい所なんだけどねえ」
ルカの言葉に、主人は困ったように腕組みした。
「さっき言いかけたけど、今ウチの宿は満室なんだよ。というのも、つい二日前にこの辺りで一番大きい宿屋で火事が起こってね。ボヤで済んだんだけど、その宿はしばらく営業できないんでそこに泊まってた客がウチに流れ込んできたって訳だ。だから新しく部屋を取るのは無理だ。すまないねえ」
「いえ、謝らないでください。満室なら仕方がないですよ」
とは言ったものの、さてどうしよう…と顎に手をあて考え込むルカ。
部屋が空いていないとは予想外だった。これでは少女の泊まる場所がない。さて、別の宿を探すか。しかし、一番大きな宿屋に泊まっていた客が他の宿に流れたとなると、どの宿屋も満室という可能性もある。
いや、ひとまずは駄目元で近くの宿屋を当たってみようか…と、ルカが考えたその時、
「では、今日は三人で同じベッドに寝る事にしよう」
と、まるでそれ以外に選択肢がない、とでも言わんばかりにアレクシアが提案した。
「え…あのベッドに三人で、ですか…?」
ルカはそう質問しつつ、借りている部屋のベッドを頭に思い浮かべる。三人で寝るには狭いように思われた。
「さすがに三人で寝るのは難しいと思います。一応、三人が横になるだけの幅はあるはずですけど…端っこの人は少し寝返りを打っただけで落ちちゃいますよ」
「それならば三人で抱き合って眠ればいいさ」
というアレクシアの提案に、
「ええっ!?」
と声を上げたのは少女だ。
「さ、三人でって…わたしと、ルカ君と、アレクシアさんの三人で抱き合って寝るって事ですか!?アレクシアさんはともかく、ル、ルカ君とも抱き合って…!」
驚いた様子で声を荒げる。
少し大袈裟だが、
(まあ、驚くのも当たり前だよね…)
とルカは思う。
出会ったばかりの人間、しかも幼いとはいえ異性と抱き合って眠るなど普通は避けたい所だろう。そう考え、
「やっぱり、同じベッドに寝るのはやめましょう――」
と提案しかけたルカだったが、その言葉に被せるように、
「そ、そんなの…最高じゃないですか!」
と、少女が身を乗り出してきた。眼鏡の奥のその瞳を爛々と輝かせ、頬をうっすらと赤く染めながら。そして、ルカの手をぎゅっと握りしめる。
「び、美少年と…ルカ君と同じベッドで抱き合いながら…うへへ…。さ、さあ、部屋へ行きましょう!一緒に寝ましょう!」
そう言って手を引く少女。その勢いに、
「え、え、え…?」
と、ルカは戸惑う事しかできなかった。
「いらっしゃい、残念だけど今は満…って、あんたらかい」
宿屋に入ると、受付に座っていた初老の男性…すなわちこの宿の主人が眼鏡を上げながらルカ達の方を見た。
「迷宮の探索とやらは終わったのかい?」
「はい。思ったよりも時間がかかってしまいました」
「そうかい。だがまあ、無事に帰って来れて何よりだよ」
ルカの言葉に主人は微笑む。
「あんたらの部屋はそのままにしてあるからね」
「ありがとうございます」
「礼には及ばんよ。前金は貰ってるからね。ん?そこの嬢ちゃんは…?」
と、ここで主人はルカとアレクシアの横に立つ少女の存在に気が付いた。少女は「どうも…」と軽く頭を下げる。
「色々あって、僕たちと同行する事になった方です。追加でもう一部屋借りさせて貰えると有難いんですけど…」
「ほう、そうかい。それは別に構わないよ。…と、言いたい所なんだけどねえ」
ルカの言葉に、主人は困ったように腕組みした。
「さっき言いかけたけど、今ウチの宿は満室なんだよ。というのも、つい二日前にこの辺りで一番大きい宿屋で火事が起こってね。ボヤで済んだんだけど、その宿はしばらく営業できないんでそこに泊まってた客がウチに流れ込んできたって訳だ。だから新しく部屋を取るのは無理だ。すまないねえ」
「いえ、謝らないでください。満室なら仕方がないですよ」
とは言ったものの、さてどうしよう…と顎に手をあて考え込むルカ。
部屋が空いていないとは予想外だった。これでは少女の泊まる場所がない。さて、別の宿を探すか。しかし、一番大きな宿屋に泊まっていた客が他の宿に流れたとなると、どの宿屋も満室という可能性もある。
いや、ひとまずは駄目元で近くの宿屋を当たってみようか…と、ルカが考えたその時、
「では、今日は三人で同じベッドに寝る事にしよう」
と、まるでそれ以外に選択肢がない、とでも言わんばかりにアレクシアが提案した。
「え…あのベッドに三人で、ですか…?」
ルカはそう質問しつつ、借りている部屋のベッドを頭に思い浮かべる。三人で寝るには狭いように思われた。
「さすがに三人で寝るのは難しいと思います。一応、三人が横になるだけの幅はあるはずですけど…端っこの人は少し寝返りを打っただけで落ちちゃいますよ」
「それならば三人で抱き合って眠ればいいさ」
というアレクシアの提案に、
「ええっ!?」
と声を上げたのは少女だ。
「さ、三人でって…わたしと、ルカ君と、アレクシアさんの三人で抱き合って寝るって事ですか!?アレクシアさんはともかく、ル、ルカ君とも抱き合って…!」
驚いた様子で声を荒げる。
少し大袈裟だが、
(まあ、驚くのも当たり前だよね…)
とルカは思う。
出会ったばかりの人間、しかも幼いとはいえ異性と抱き合って眠るなど普通は避けたい所だろう。そう考え、
「やっぱり、同じベッドに寝るのはやめましょう――」
と提案しかけたルカだったが、その言葉に被せるように、
「そ、そんなの…最高じゃないですか!」
と、少女が身を乗り出してきた。眼鏡の奥のその瞳を爛々と輝かせ、頬をうっすらと赤く染めながら。そして、ルカの手をぎゅっと握りしめる。
「び、美少年と…ルカ君と同じベッドで抱き合いながら…うへへ…。さ、さあ、部屋へ行きましょう!一緒に寝ましょう!」
そう言って手を引く少女。その勢いに、
「え、え、え…?」
と、ルカは戸惑う事しかできなかった。
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