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緑薫る五月‐5
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「では最初に、放送部に入ったきっかけを教えてもらえますか?」
話し始めてから、ミスった、と気づく。今までは上級生にインタビューすることが多かったから癖で敬語になってしまったけれど、今はもう自分が最上級生の学年だった。
保科くんは特に気にした様子はなく、いつも通りの調子で話し始めた。
「それはね、元から喋りに憧れあったんだ。小学生のとき家に携帯用の小型ラジオあってさ、よくそれ聴きながら勉強してたんだよね。ながら勉強だからあまりよくはないと思うんだけど、スマホとかゲームよりもいいかってことで親にも許されてて。無事柚木に受かったから結果オーライかな」
「小型ラジオですか」
「うん。手におさまるサイズで、ダイヤルでちまちま周波数調整するんだ。それに有線のイヤホンさして聴いてた。モリヤマカイトわかる? あの人、ブレイク前にラジオやっててそれが特に好きだったよ」
「なるほど」
モリヤマカイトのラジオ、とメモを取る。モリヤマカイトといえば、高めの声とちょっと困ったようなハの字の眉が特徴的な、今人気のシンガーソングライターだ。
「確かにモリヤマカイトって、音楽番組でもよくMCと喋ってる印象あります。ラジオもうまそう」
「そうそう。新しいラーメン屋行った話とか、電車で聞こえた隣のカップルの話とか……。日常の何気ないことでも、モリヤマカイトが話すとすんごい面白い。あとは、リスナーからのメールへの返しも毎回キレがあって、たまに勉強中でも吹き出しちゃってた。人からの言葉をただ受け取るだけじゃなくて、きちんと自分でも嚙み砕いたうえでやりとりするのが気に入ってたな」
「ラジオの面白さを今この場で言語化できる保科くんも、なかなかですよ」
「ほんと? ありがと」
保科くんがピースサインを作る。
ちょっとずつ、彼の素が出てきた気がする。これはいいぞと確信しながらメロンクリームソーダを飲んだ。
その後も質問を続けていると、ドアベルを鳴らしながら背後のドアが開く音がした。
「ただいま。スーパー今日特ば、うわっ」
修くんによく似た声。でも修くんがここにいるはずがない。
「灯、来ちゃった。今は広報さんのインタビュー中」
今日一番の弾んだ声で、保科くんは私の後ろに手を振った。
ぎこちなく振り向くと、また威嚇するときのヤマアラシみたいなオーラを出している桐谷君と目が合った。白いワイシャツに黒のエプロンといういかにも店員さんらしい出で立ちで、右手にはエコバッグを提げている。
「聞いてないんだけど」
「そりゃあ、言ってないし」
「言えよ」
「いいじゃん」
「なんでだよ」
「ダチじゃん」
「……」
保科くんとの問答は諦めたらしく、桐谷くんはすごすごとカウンターの内側にあるキッチンへ入っていった。エコバッグの中の食材を取り出し、冷蔵庫に入れている。
私は上半身を乗り出し、小声で詰め寄った。
「ちょっとちょっとちょっと。何なの保科くん、仕組んだの?」
「はーいはい、それはあとで答えるから。今はインタビューの続きしよう」
そう言って、ボイスレコーダーが起動中の私のスマホを指さした。いい流れができていたことは間違いないので、咳払いで仕切り直してから質問を再開する。
話し始めてから、ミスった、と気づく。今までは上級生にインタビューすることが多かったから癖で敬語になってしまったけれど、今はもう自分が最上級生の学年だった。
保科くんは特に気にした様子はなく、いつも通りの調子で話し始めた。
「それはね、元から喋りに憧れあったんだ。小学生のとき家に携帯用の小型ラジオあってさ、よくそれ聴きながら勉強してたんだよね。ながら勉強だからあまりよくはないと思うんだけど、スマホとかゲームよりもいいかってことで親にも許されてて。無事柚木に受かったから結果オーライかな」
「小型ラジオですか」
「うん。手におさまるサイズで、ダイヤルでちまちま周波数調整するんだ。それに有線のイヤホンさして聴いてた。モリヤマカイトわかる? あの人、ブレイク前にラジオやっててそれが特に好きだったよ」
「なるほど」
モリヤマカイトのラジオ、とメモを取る。モリヤマカイトといえば、高めの声とちょっと困ったようなハの字の眉が特徴的な、今人気のシンガーソングライターだ。
「確かにモリヤマカイトって、音楽番組でもよくMCと喋ってる印象あります。ラジオもうまそう」
「そうそう。新しいラーメン屋行った話とか、電車で聞こえた隣のカップルの話とか……。日常の何気ないことでも、モリヤマカイトが話すとすんごい面白い。あとは、リスナーからのメールへの返しも毎回キレがあって、たまに勉強中でも吹き出しちゃってた。人からの言葉をただ受け取るだけじゃなくて、きちんと自分でも嚙み砕いたうえでやりとりするのが気に入ってたな」
「ラジオの面白さを今この場で言語化できる保科くんも、なかなかですよ」
「ほんと? ありがと」
保科くんがピースサインを作る。
ちょっとずつ、彼の素が出てきた気がする。これはいいぞと確信しながらメロンクリームソーダを飲んだ。
その後も質問を続けていると、ドアベルを鳴らしながら背後のドアが開く音がした。
「ただいま。スーパー今日特ば、うわっ」
修くんによく似た声。でも修くんがここにいるはずがない。
「灯、来ちゃった。今は広報さんのインタビュー中」
今日一番の弾んだ声で、保科くんは私の後ろに手を振った。
ぎこちなく振り向くと、また威嚇するときのヤマアラシみたいなオーラを出している桐谷君と目が合った。白いワイシャツに黒のエプロンといういかにも店員さんらしい出で立ちで、右手にはエコバッグを提げている。
「聞いてないんだけど」
「そりゃあ、言ってないし」
「言えよ」
「いいじゃん」
「なんでだよ」
「ダチじゃん」
「……」
保科くんとの問答は諦めたらしく、桐谷くんはすごすごとカウンターの内側にあるキッチンへ入っていった。エコバッグの中の食材を取り出し、冷蔵庫に入れている。
私は上半身を乗り出し、小声で詰め寄った。
「ちょっとちょっとちょっと。何なの保科くん、仕組んだの?」
「はーいはい、それはあとで答えるから。今はインタビューの続きしよう」
そう言って、ボイスレコーダーが起動中の私のスマホを指さした。いい流れができていたことは間違いないので、咳払いで仕切り直してから質問を再開する。
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