教室50センチのラブレター

山野 綾夏

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緑薫る五月‐6

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「なら、はい、次。今放送部の活動として普段のお昼休みからイベントまでいろいろやっていますが、今後新しくチャレンジしてみたいことはありますか?」

「今後か。そうだね、放送部としての活動は今のままでじゅうぶん楽しいかな。だからこそ、大人になってからも声で何かを届けることはやりたいって思う」

 日常の隙間に聴いてもらえるようなラジオやってみたいな。家事の時間とか、通勤通学中とか、あと昔の俺みたいな耳がさびしい受験生にも!
 保科くんは指を折りながらひとつずつ挙げて、楽しそうに笑った。

「ラジオなら耳が空いてれば気軽に聴けますもんね。なら、夢はプロのラジオパーソナリティですか?」

「かっこいい! 夢あるね。でも、今も部活でしゃべってるのがちょうどいいからチャンスがあったとしても本業にはしなさそう。例えばだけど……。うーん、何て言おう」

「普通に働きつつ、傍らでPodcastで配信するみたいな」

「そうそう、そういうの! よくパッと出てきたね。すごいな」

「よかった。こういう話出てくるかと思って、事前にちょっと調べてきたの。プロ以外の人もたくさん番組配信してて、最初アプリ見たときびっくりしちゃった」

 ほめられたことが素直に嬉しくて、広報モードが外れて素の口調になる。

「本物の記者っぽいな。そう思わない、灯ー?」

 保科くんがカウンターに視線を投げて同意を求める。慣れた手つきでコーヒーを淹れていた桐谷くんは、手元から目を離さないまま小さく肩をすくめた。
 他にも気になっていたことをいくつか聞き終え、ボイスレコーダーを停止させた。

「はい、以上です! ありがとう、いろいろ聞かせてくれて」

「楽しかったよ。ってことで、灯と話す?」

「とりあえず保科くんからの説明ほしいんだけれども」

「一から話すよ。マスター、灯借りていいですか」

「どうぞ」

 さらりと答えたマスターに、桐谷くんが眉をひそめた。その表情のまま、不服そうに保科くんの隣に座る。
 座り方といい、気まずい雰囲気といい、明るい話題がないときの学校の三者面談っぽい。

「久住さん。まず、このカフェ・クルールは灯のおじいさんがやってるお店なんだ。上の階が自宅で、三世代暮らし。俺もここの近所に住んでるから灯とは幼稚園のときから仲良くて、そこから公立小、柚木の附属中、附属高とずっと同じ」

 桐谷くんと保科くんは、教室でずっと一緒にいるって感じの二人ではない。だから、幼馴染だなんて思ってなかった。

「その、桐谷くん、勝手に来てごめん」

「謝らなくていい。どうせ保科が無理やり指定したんだろうし」

 両手を合わせて謝ると、仕方ないという風に首を左右に振った。
 申し訳ない気持ちプラス、推しの店員姿を間近で見られてハッピーな不純な気持ち。
 それと、直近の会話が体育祭での「嫌だ」なので、普通に話してくれるだけでも泣ける。マジで涙出そうまずい。
 
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