瞬風雷刃の勇者 ~忘れた記憶~

ノイ

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1章 イグニドル

5話 『森に現れし獣人』

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ギルド協会にある依頼を受けるためには契約金がかかってしまう。


しかし、今の俺には一切お金がない。


だからと言って、得るものもない。


このままでは、スタートさえも切ることが出来ない。


そう考えた俺はまず、自分のやるべきことを考える。


普通のRPGなら最低限の装備と最低限のお金を所有している。


しかし、俺はその類の一切を手にしていない。


そして、ギルドカードには俺のステータス以外にも様々な記述があった。


それは、自分のギルド協会での立ち位置を示すランクなどが記されている。


ランクは一番上がSランク。その下がA、B、C、D、E、Fに分かれている。


俺はまだ、一つも依頼をこなしていないためランクはFランクということになる。


「契約金を……どうやって稼ぐか」


Fランクの依頼の契約金は大体100G。


そこまで大きな額ではないのだが、それをどうやって稼ぐかが問題だ。


この都市を出るためにも許可証が必要となる。


その許可証を発行するのにはギルドカードの他にもパスポートも必要となる。


そして、それを全て発行するにはまた、お金がかかる。


このままでは、今日の泊まるところもない。


すると、俺の腹の音がぐるるとなる。


食料代も合わせて稼がないといけない。


ヤバい……餓死寸前だ。


「何か……稼ぎどころを見つけないとな」


そこで俺が思いついた場所が一つだけあった。


それは、ギルド協会と似たような機関。


しかし、そこは、ギルド協会とは違ってギルドカードを必要としない。


そのため、簡単に仕事を出来、すぐに収入を得ることができる。


この都市イグニドルにはそういった機関がギルド協会も合わせて五つ存在する。


俺はその中でもここから一番近い場所のところに行く。


「ここか……な?」


外には【ヴァルーン】という看板が出ている。


ここは簡単に言えば換金所。


俺は何の迷うこともなく、中に入る。


カランコロンという音が店内には響き渡る。


そこはギルド協会よりも質素で古い。


それがここの特徴だろう。


中を見ると人は多くいるものの、店員らしき人はほとんど見当たらなかった。


そして、近くにあるボードには薬草などの名前と換金額が書いてある。


それは、そこまで高いとは言えないが、契約金を稼ぐには十分だ。


「これに……するかな」


危険でもお金を稼ぐにはギルド協会の依頼をこなさなければならない。


そのために俺は、契約金の100Gを稼がなくては。


俺はちょうど目に入ったのはグローリーという薬草だった。


グローリーというのは回復薬の一種で森の中に生えている。


換金するには現物がなければならない。


俺は決意を決めて森へ向かった。


薬草の種類は多く、見分けることが重要だ。


しかし、グローリーはその中でも特に見分けやすく、他の薬草とは比べられないほど多く生えている。












「これだよな……」


ヴァルーンでグローリーの写真を貰ってきていた。


それを見ながらグローリーを探し出す。


俺が100Gを稼ぐために換金しなければならない数は五つ。


その数の分のグローリーはすぐに簡単に見つかった。


俺はグローリーを持って戻ろうとした。しかし、


「……ん? なんか焦げ臭いな」


木々が燃え、焦げたような焦げ臭いがこの森には充満していた。


尋常ではないその匂いにつられて俺は向かう。


少し走ると遠くで黒い煙が上がっているのを見る。


俺はそこまで全力疾走をした。


「大丈夫かっ!」


俺の慌てようは今回、この異世界に来て初めてのことだった。


俺がそこまで行くと一人の少女がいた。


それも俺よりも小さい……幼女が。


「ご、ごめんなさいっ!」


頭を下げ続ける幼女。


「……どうして、こうなったんだ?」

「それはーーー」


周りを見渡してみると木々が倒れ、その木々は燃えきっている。


その幼女の説明を聞いた俺は、


「はぁ……なるほどね、この都市の冒険者というわけか」

「はい」

「あれ? でも、君はそもそも、どうしてここにいるんだ?」

「えっ……と」


ここは、人間族が住む国。


しかし、その幼女からははっきり言って俺たちの持っている魔力とは違う。


沈黙する俺と幼女。


「どうして……分かったんですか?」

「どうして、ってな……フードを外して見せろよ」

「はい……」


その幼女は被っていたフードを取る。


そこには、人間族には決して生えているはずのないもの『猫耳』が生えていた。


「やっぱり、獣人族か」

「はい……」


獣人族は物理攻撃を得意とし、そもそも魔法自体を得意としない。


そのためかは知らんが、人間族と明らかに魔力が違う。


「でも、なんで獣人族がこんな場所にいるんだ」


ここには、人間族以外にも種族が住んでいる場合もある。


しかし、獣人族がわざわざここにやってくるということは考えにくい。


そもそも、こんな場所で魔法の練習をしていること自体がおかしいのだ。


「……冒険者の依頼できたんですっ、でも、上手くいかなかったです……」


幼女は落胆している。


彼女は何かの依頼でここにきている。


そして、彼女は失敗したと言っているのだ。


俺の血の気は引いていく。


失敗したということはそのモンスターを倒せていないということだ。


近くの草たちがガサガサと揺れ出す。


俺はそっちの方を恐る恐る、見る。


すると、そこには赤く鋭い目つきを持ったモンスターが。


「お前の……探してたモンスターって、あれか?」


俺の指差した方を幼女は見る。


「はい……そ、そうです」


そのモンスターの名前を『オーガ』という。


俺のギルドランクはF。


そして、オーガのギルドランクはDだ。 


……あっ、早速死亡フラグだ。


幼女の力は相当なものだろう。


しかし、一人でそいつを倒せるかと言われると疑問が残る。


俺はその幼女に恐る恐る、聞くことにする。


「……お前、今のレベルは幾つだ?」

「……残念なことに10です」


恥ずかしそうに答える。


あぁ……どうして、こんな無茶をするのだろうか。


俺は不思議でしょうがなかった。


レベル10だったとしてもギルドランクはまだ、Fなのだ。


勝てるはずがない。


Fランクが二人いたところで勝ち目はない。


「お前っ、逃げるぞ」

「は、はいっ」


イグニドルの周りにはしっかりと結界が張られている。


Fランクぐらいのモンスターなら近づけもしない。


俺は幼女の手を引いて全速力で走って逃げた。
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