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口を開かなければいいのに、どうしても物申したかったのか、オリバーはシャルルを見て喚き散らした。が、その言葉は次第に自白へと変わっていく。教室で喚いたことを再度繰り返し、シャルルがそこに立っているだけでオリバーは次々罪を告白し始めた。その所々で、やめてくれ、俺が悪かった、婚約はナシだ、と涙声で訴えたが数時間の間自白を続け、真っ白になっていた。
数ヶ月後、事細かく自白した物件について調べもつき、結果として侯爵家は断絶、オスカーを含めて侯爵家の面々は鉱山送りになり、オリバーと侯爵当主に至っては多くの女性を食い物にし、また命を奪ったものとして死罪となった。
「お兄様。この呪いはちょっと怖いです」
「うん、ちょうど俺もそう思ったところだ」
「解いてはもらえませんか」
「無理なんだ。お前が真実の愛を見つけるまでは」
「バカですか」
「……すまん」
だが、騎士にはひどく感謝された。人身売買や奴隷商の足取りがなかなか掴めず、何年も頭を悩ませていた事件が解決したせいでもあった。しかも侯爵家のチーズケーキは有名で王家でもよく食べられていたため、至急その商会は潰され、チーズケーキは危険食物として廃止、回収された。
「君がシャルル・ベイカー?」
幾多の要請を受け王宮に来ていたベイカー兄妹だったが、ようやく全てが終わり、シャルルは王妃のお茶会に呼ばれてしまった。緊張しまくりで、なんとかお茶を飲み下したシャルルに声をかけたのは、第二王子のバジルだった。愛想がよく、キラキラと輝く人気のある王子で、真面目がとりえの第一王子のアルバートより王太子に向いているのではと噂の人物だ。
シャルルは王族向けのカーテシーを知らないため、学園で学んだ最低限のマナー様式でお辞儀をした。
「へえ。君なかなか可愛いね。それで、不思議な能力があるのは君なんだって?あの侯爵家を断罪に持っていけたのも、君のおかげだと聞いたよ?」
「い、いえ。あの、私の力ではないのですが」
兄からは口外するなと言われたばかりだが、かといって、この呪いはシャルルを利用しようと悪意を持って、あるいは下心を持って近づいたものに発揮される呪いだ。それを第二王子に告げるということは第二王子に向かって「失礼ですが、あなたは腹黒ですか?私に下心を持っていますか」と聞くようなもの。絶対言えない、とシャルルは口を噤んだ。
だが、第二王子はまんまと罠に踏み入った。
「どう?僕は今婚約者もいなくて、フリーなんだけど。オリバーのように君を扱うことは絶対しないと約束する。僕の婚約者になってもらえないか?」
「あ……っ」
シャルルが止める間もなく、第二王子の口からは流れるように「婚約者」の言葉が出てきてしまった。
数ヶ月後、事細かく自白した物件について調べもつき、結果として侯爵家は断絶、オスカーを含めて侯爵家の面々は鉱山送りになり、オリバーと侯爵当主に至っては多くの女性を食い物にし、また命を奪ったものとして死罪となった。
「お兄様。この呪いはちょっと怖いです」
「うん、ちょうど俺もそう思ったところだ」
「解いてはもらえませんか」
「無理なんだ。お前が真実の愛を見つけるまでは」
「バカですか」
「……すまん」
だが、騎士にはひどく感謝された。人身売買や奴隷商の足取りがなかなか掴めず、何年も頭を悩ませていた事件が解決したせいでもあった。しかも侯爵家のチーズケーキは有名で王家でもよく食べられていたため、至急その商会は潰され、チーズケーキは危険食物として廃止、回収された。
「君がシャルル・ベイカー?」
幾多の要請を受け王宮に来ていたベイカー兄妹だったが、ようやく全てが終わり、シャルルは王妃のお茶会に呼ばれてしまった。緊張しまくりで、なんとかお茶を飲み下したシャルルに声をかけたのは、第二王子のバジルだった。愛想がよく、キラキラと輝く人気のある王子で、真面目がとりえの第一王子のアルバートより王太子に向いているのではと噂の人物だ。
シャルルは王族向けのカーテシーを知らないため、学園で学んだ最低限のマナー様式でお辞儀をした。
「へえ。君なかなか可愛いね。それで、不思議な能力があるのは君なんだって?あの侯爵家を断罪に持っていけたのも、君のおかげだと聞いたよ?」
「い、いえ。あの、私の力ではないのですが」
兄からは口外するなと言われたばかりだが、かといって、この呪いはシャルルを利用しようと悪意を持って、あるいは下心を持って近づいたものに発揮される呪いだ。それを第二王子に告げるということは第二王子に向かって「失礼ですが、あなたは腹黒ですか?私に下心を持っていますか」と聞くようなもの。絶対言えない、とシャルルは口を噤んだ。
だが、第二王子はまんまと罠に踏み入った。
「どう?僕は今婚約者もいなくて、フリーなんだけど。オリバーのように君を扱うことは絶対しないと約束する。僕の婚約者になってもらえないか?」
「あ……っ」
シャルルが止める間もなく、第二王子の口からは流れるように「婚約者」の言葉が出てきてしまった。
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