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第2章:西獄谷編
第42話:ミラート神と精霊王
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まずはじっくり策を練るべきだろう。
モンドと会った翌日、クルトが苦虫を踏みつぶしたような顔でやってきて西獄谷の討伐について話してくれた。
聖女の結界が無くなってから、転移ポイントがほとんど意味を成さなくなった。泥棒が開けっ放しの窓を横目に玄関の鍵を開けようと躍起になっているようなものだ、とクルトが説明したので妙に納得してしまった。
なので、ミヤコも移動の方法さえあれば何処へでも行くことができる。その分危険とも背中合わせになるのだが、クルトと討伐隊のみんながミヤコの安全は確保するということでモンドとの話し合いにケリがついたらしい。
いくらクルト達が守ってくれるとはいえ、万が一のこともあるかも知れない。ミヤコは哲也叔父夫婦にもいうべきかどうか悩んでいた。もしかしたら帰って来れないかも知れないし、何日かかるかも分からない。緑の砦にいないということは、いつでも帰れるドアがあるわけでもないのだ。怪我をするかもしれない。向こう側の戦士たちに効く「ミヤコが持ち込んだ薬草」は、ミヤコにはそれほど効かないことも判明していたから、薬草には頼れないだろう。ミラート神国で自生する薬草と魔法は効くかもしれないが、大きな怪我もしたことがないので試した事もない。
あとは精霊に頼るしかないだろう。
クルトと一緒に祖父母に会いに東の森にも行って、了承は一応もらった。本来なら精霊王が管理しているはずの四大精霊も姿を見せないことから、何か関わりがあるかもしれないということで、精霊王も様子を見るという。精霊王は不機嫌そうに「ミヤコに何かあったらどうなるかわかっているだろうな」とクルトに凄んで見せてくるとの顔を引きつらせていたが。
君代は付いて行くといったが「立場上、人間界に関与しすぎる」と精霊王にことごとく反対されて断念し、代わりに強力な歌を思考錯誤しながら作っていた。精霊達はついて行く気満々でキャーキャーと楽しそうにしていた。
「そういえば、おじいちゃん。一つ気になっていたんだけど」
祖父と二人、森の中で育成の歌を歌い終わったミヤコが、思い出したように言葉を綴った。
「ミラート神と精霊王の約束ってのをクルトさんから聞いたことがあるんだけど、知ってる?」
「む。誰だ、それは?」
「え?えーと、神様?」
「会ったことはないな」
「えっそうなの?創造神だと思うんだけど、おじいちゃんより昔の精霊王かな、だとすると」
「俺の前に精霊王はいないと思うが…」
「えっ!?」
「俺は命に限りがないからな。この国ができる前からずっとここにいる。まあ、人間と関わり合ったこともあまりない、かな」
「おじいちゃん…何年生きてるの?」
「うむ。どうかな。4、5千年か…いや、7千…。もっとかも…」
スケールが違うぞ、おい。
と、ミヤコは思ったが精霊というのはそういうものだと祖父は遠い目をして言った。
「お、おばあちゃんに会う前はどうしてたの?」
「これといって…森を作ったり泉を作ったり妖精王と語ったりしていたかな」
「妖精王!」
「うん。ここ数百年、会ってないが。どこへ行ったかな、あいつは」
「精霊と妖精は違うのか…初めて知った」
「妖精は妖精族という種族だ。精霊に種はない。妖精は擬態が好きなんだ。人型やら虫型やら形になりたがるのが妖精だ。まあ俺も人型を取って君代に合わせてるが、精霊は基本的に形はない」
「はあ。そんなもんなの…」
「ああ、でも。そういえば何度か人間と関わり合ったこともあったな。最初に現れた人間に興味を持ったことがあった。あれがここに国を作るというからちょっと力を貸したかも知れん。そういえば、あいつがミラートとかいう名前だったか…」
「…!!ミラートが人間?」
「うむ。そもそもたとえ創造神がいたとしても、たかが精霊の王なんぞと対話をするわけがなかろう」
「たかが、って存在でもないと思うんだけど」
「神なんぞ人間の想像のものではないのか」
「ええ?それは冒涜じゃ…」
「会ったことも見たこともないから俺は知らんが、俺が生まれた時にはこの世界もあったということは、誰かが作ったのだろうから、それが神かといえばそうかもな」
まあ、祖父はこの世界が創造されてからどうやってか生まれてきたようだし、世界が出来てからはうん万年経っていたと考えれば、たかだかウン千年の生の精霊王が神様と会話をしていなかったと言っても可笑しくはない、と思う。
それよりも、ミラートが人間だったとしたら。
初代の王様は人間で、精霊王と会話をすることができたとすれば、他の精霊が見えない人間はミラートが特別だと思うことは容易に想像できる。ミヤコが精霊を使って植物を成長させた時に女神だ、聖女だと言われたのと同じように。時代が過ぎるにつれ、その人が神のように祀られても不思議はないかもしれない。
では精霊王との約束というのは?
「そのミラートという王様と何か約束をしたことはある?」
「はて。覚えておらんな」
「愛し子を疎かにするなとか、傷つけたらこの国を守らないとかそういうのも覚えてない?」
「いや…。俺は基本、人の国に干渉はせん。細かいことでいちいち殺しあう種族だからな。まあ、個人で興味のあるのも居たにはいたが。ミラートの後は…ルビラとか言う女もいたな。だがあれは面倒くさい女だったからな。貢げかまえとうるさすぎたから放り出したが……あれはどこへ行ったかな」
いや、そんな昔の話だったら、とっくに死んでるでしょうけど。
でも。
「ルビラ……」
ルビラとルブラート。
なんか似てない?まさかその女がルブラート教の教祖ってわけでは、ないよね?精霊王に逃げられた腹いせに、精霊王が贔屓したミラート王を敵対してるなんてことは、まさか。ね?
「………」
これは、国の根本を覆すことになるのかも知れない。誰にも言わないほうがいいのかしら。
うーむ、とミヤコは頭をひねった。
***
「クルトさんから離れてはダメよ」
君代は真面目な顔をして、ミヤコに告げた。感情の起伏を精霊は敏感に察知する。過去の記憶を取り戻してから、ミヤコは怒りを露わにしないよう訓練もしてきたし、大人としての感情のコントロールも出来ているはずだから、よほどのことがない限り大丈夫なはずだと言ったら、ミヤコよりもクルトの方が心配だということで、クルトと共にシュミレーションテストで試された。
テストの中で問題があったのは、ミヤコが大怪我をする場面とクルトから引き離された場面。クルトに作ってもらった風結界の中でテストをしたのだが、この2場面でクルトが結界をふっ飛ばす程動揺してしまったのだ。何度かシチュエーションを変えてテストを繰り返したが、最終的にクルトは君代から「ミヤコから離れないように」と呆れられ、「ミヤが離れたら僕の命も危ないから、絶対一緒にいるように」とクルトがミヤコに念を押した。どちらが守る立場にいるんだか。
それではクルトの動きが鈍るのではと思ったが、ミヤコが浄化の歌を唄っている間は防御が甘くなるのは否めない。だが大量の魔獣が谷から飛び出してきたら、クルトがミヤコを守りながら戦うのはそれこそ難しいだろう。精霊が守ってくれるだろうとは思うが、精霊も行き過ぎの行動をとることもある。ミヤコは精霊ではなく、肉体を持つひ弱な人間体なのだ。怪我をして、打ち所が悪ければ死ぬこともある。やはりある程度は自分で守れるように防御法や攻撃方法も覚えておくべきだろう。
それに加えて、クルトはモンドに気をつけろと再々心配をしているようだ。自国の王子様を信用していないのかと思えば、そういうわけではないらしい。モンドの魔力も剣の技も普通に討伐隊と渡り合えるほど強い。
魔力だけで言えば、アッシュよりも強いはずだとクルトは言う。だが、モンドには精霊が近寄らず、警戒をしているように見えるとクルトは言った。彼は何かを隠しているのかも知れないというのだ。確かにモンドには憂いがある。彼の過去を垣間見ればそれも頷けるというものではあるが、普段から何かと含みのある言い方をするモンドはどこか近寄りがたい雰囲気もあるし、クルトのいうとおり精霊も警戒心を解いていないようだった。
「国の王子様というのは色々あるのかもね。こう、一般庶民には分からない事とか活政治的なものとか」
「そうかも知れないが、個人的にミヤを狙ってる気がする…」
「まさかの敵視!?」
馬鹿な、と青ざめたら、そうじゃないとクルトがジト目で「君は無防備で鈍感だから」と文句を言った。失礼な、とそっぽを向いて頬を膨らましたが、ふと俊則のことが頭に浮かんで「む」と考え込んでしまった。
「個人的に狙ってるっていうのは、その。そういう感情でっていうこと、です?」
「そういうって?」
「う、いや、えっと、つまり…」
真面目な顔で聞き返されて、ミヤコは自意識過剰気味かと自分で恥ずかしくなってしまい、頬を赤らめてぼそぼそと言葉を濁した。それを横目で見ていたクルトは眉をしかめて不機嫌そうにつぶやいた。
「そういうところが無防備だっていうのに…」
***
それはさて置いて、討伐に行くとなれば持っていくものを決めなければ。
ミヤコは役に立つ、持っていける物を厳選していた。まずは防虫スプレー。飛んでくる(魔物含む)虫除けになるかもしれない。作ったものを持っていくよりも原液を持って行く方が嵩張らなくていいだろうとハッカ油と無水エタノールをバッグに入れる。スプレーボトルは伸縮自在の大きめのやつを。それから蚊連草の種。虫が嫌いな臭いを発するので、街の防壁周辺に植えて増やせば幾らか襲撃を防げるだろう。魔獣に関してはオレンジオイルとか有効なのだろうか。ひとまず持っていく事にする。
「そういえば、食事はどうするんだろう。そんなに何日もかからないかな?」
桃のチューハイも持って行こう。クルトさん達には効き目抜群だから。スポーツドリンクの素と、かぼちゃの種、チョコレートあたりは必要かな。塩胡椒とカレールーも…。
気分はキャンプに行くようなものだな。なんかちょっと楽しみだったりして。
緊張感が薄れていくミヤコだった。
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一気に5話投稿しました。順番をお間違えのないよう読んでくださいませ。
モンドと会った翌日、クルトが苦虫を踏みつぶしたような顔でやってきて西獄谷の討伐について話してくれた。
聖女の結界が無くなってから、転移ポイントがほとんど意味を成さなくなった。泥棒が開けっ放しの窓を横目に玄関の鍵を開けようと躍起になっているようなものだ、とクルトが説明したので妙に納得してしまった。
なので、ミヤコも移動の方法さえあれば何処へでも行くことができる。その分危険とも背中合わせになるのだが、クルトと討伐隊のみんながミヤコの安全は確保するということでモンドとの話し合いにケリがついたらしい。
いくらクルト達が守ってくれるとはいえ、万が一のこともあるかも知れない。ミヤコは哲也叔父夫婦にもいうべきかどうか悩んでいた。もしかしたら帰って来れないかも知れないし、何日かかるかも分からない。緑の砦にいないということは、いつでも帰れるドアがあるわけでもないのだ。怪我をするかもしれない。向こう側の戦士たちに効く「ミヤコが持ち込んだ薬草」は、ミヤコにはそれほど効かないことも判明していたから、薬草には頼れないだろう。ミラート神国で自生する薬草と魔法は効くかもしれないが、大きな怪我もしたことがないので試した事もない。
あとは精霊に頼るしかないだろう。
クルトと一緒に祖父母に会いに東の森にも行って、了承は一応もらった。本来なら精霊王が管理しているはずの四大精霊も姿を見せないことから、何か関わりがあるかもしれないということで、精霊王も様子を見るという。精霊王は不機嫌そうに「ミヤコに何かあったらどうなるかわかっているだろうな」とクルトに凄んで見せてくるとの顔を引きつらせていたが。
君代は付いて行くといったが「立場上、人間界に関与しすぎる」と精霊王にことごとく反対されて断念し、代わりに強力な歌を思考錯誤しながら作っていた。精霊達はついて行く気満々でキャーキャーと楽しそうにしていた。
「そういえば、おじいちゃん。一つ気になっていたんだけど」
祖父と二人、森の中で育成の歌を歌い終わったミヤコが、思い出したように言葉を綴った。
「ミラート神と精霊王の約束ってのをクルトさんから聞いたことがあるんだけど、知ってる?」
「む。誰だ、それは?」
「え?えーと、神様?」
「会ったことはないな」
「えっそうなの?創造神だと思うんだけど、おじいちゃんより昔の精霊王かな、だとすると」
「俺の前に精霊王はいないと思うが…」
「えっ!?」
「俺は命に限りがないからな。この国ができる前からずっとここにいる。まあ、人間と関わり合ったこともあまりない、かな」
「おじいちゃん…何年生きてるの?」
「うむ。どうかな。4、5千年か…いや、7千…。もっとかも…」
スケールが違うぞ、おい。
と、ミヤコは思ったが精霊というのはそういうものだと祖父は遠い目をして言った。
「お、おばあちゃんに会う前はどうしてたの?」
「これといって…森を作ったり泉を作ったり妖精王と語ったりしていたかな」
「妖精王!」
「うん。ここ数百年、会ってないが。どこへ行ったかな、あいつは」
「精霊と妖精は違うのか…初めて知った」
「妖精は妖精族という種族だ。精霊に種はない。妖精は擬態が好きなんだ。人型やら虫型やら形になりたがるのが妖精だ。まあ俺も人型を取って君代に合わせてるが、精霊は基本的に形はない」
「はあ。そんなもんなの…」
「ああ、でも。そういえば何度か人間と関わり合ったこともあったな。最初に現れた人間に興味を持ったことがあった。あれがここに国を作るというからちょっと力を貸したかも知れん。そういえば、あいつがミラートとかいう名前だったか…」
「…!!ミラートが人間?」
「うむ。そもそもたとえ創造神がいたとしても、たかが精霊の王なんぞと対話をするわけがなかろう」
「たかが、って存在でもないと思うんだけど」
「神なんぞ人間の想像のものではないのか」
「ええ?それは冒涜じゃ…」
「会ったことも見たこともないから俺は知らんが、俺が生まれた時にはこの世界もあったということは、誰かが作ったのだろうから、それが神かといえばそうかもな」
まあ、祖父はこの世界が創造されてからどうやってか生まれてきたようだし、世界が出来てからはうん万年経っていたと考えれば、たかだかウン千年の生の精霊王が神様と会話をしていなかったと言っても可笑しくはない、と思う。
それよりも、ミラートが人間だったとしたら。
初代の王様は人間で、精霊王と会話をすることができたとすれば、他の精霊が見えない人間はミラートが特別だと思うことは容易に想像できる。ミヤコが精霊を使って植物を成長させた時に女神だ、聖女だと言われたのと同じように。時代が過ぎるにつれ、その人が神のように祀られても不思議はないかもしれない。
では精霊王との約束というのは?
「そのミラートという王様と何か約束をしたことはある?」
「はて。覚えておらんな」
「愛し子を疎かにするなとか、傷つけたらこの国を守らないとかそういうのも覚えてない?」
「いや…。俺は基本、人の国に干渉はせん。細かいことでいちいち殺しあう種族だからな。まあ、個人で興味のあるのも居たにはいたが。ミラートの後は…ルビラとか言う女もいたな。だがあれは面倒くさい女だったからな。貢げかまえとうるさすぎたから放り出したが……あれはどこへ行ったかな」
いや、そんな昔の話だったら、とっくに死んでるでしょうけど。
でも。
「ルビラ……」
ルビラとルブラート。
なんか似てない?まさかその女がルブラート教の教祖ってわけでは、ないよね?精霊王に逃げられた腹いせに、精霊王が贔屓したミラート王を敵対してるなんてことは、まさか。ね?
「………」
これは、国の根本を覆すことになるのかも知れない。誰にも言わないほうがいいのかしら。
うーむ、とミヤコは頭をひねった。
***
「クルトさんから離れてはダメよ」
君代は真面目な顔をして、ミヤコに告げた。感情の起伏を精霊は敏感に察知する。過去の記憶を取り戻してから、ミヤコは怒りを露わにしないよう訓練もしてきたし、大人としての感情のコントロールも出来ているはずだから、よほどのことがない限り大丈夫なはずだと言ったら、ミヤコよりもクルトの方が心配だということで、クルトと共にシュミレーションテストで試された。
テストの中で問題があったのは、ミヤコが大怪我をする場面とクルトから引き離された場面。クルトに作ってもらった風結界の中でテストをしたのだが、この2場面でクルトが結界をふっ飛ばす程動揺してしまったのだ。何度かシチュエーションを変えてテストを繰り返したが、最終的にクルトは君代から「ミヤコから離れないように」と呆れられ、「ミヤが離れたら僕の命も危ないから、絶対一緒にいるように」とクルトがミヤコに念を押した。どちらが守る立場にいるんだか。
それではクルトの動きが鈍るのではと思ったが、ミヤコが浄化の歌を唄っている間は防御が甘くなるのは否めない。だが大量の魔獣が谷から飛び出してきたら、クルトがミヤコを守りながら戦うのはそれこそ難しいだろう。精霊が守ってくれるだろうとは思うが、精霊も行き過ぎの行動をとることもある。ミヤコは精霊ではなく、肉体を持つひ弱な人間体なのだ。怪我をして、打ち所が悪ければ死ぬこともある。やはりある程度は自分で守れるように防御法や攻撃方法も覚えておくべきだろう。
それに加えて、クルトはモンドに気をつけろと再々心配をしているようだ。自国の王子様を信用していないのかと思えば、そういうわけではないらしい。モンドの魔力も剣の技も普通に討伐隊と渡り合えるほど強い。
魔力だけで言えば、アッシュよりも強いはずだとクルトは言う。だが、モンドには精霊が近寄らず、警戒をしているように見えるとクルトは言った。彼は何かを隠しているのかも知れないというのだ。確かにモンドには憂いがある。彼の過去を垣間見ればそれも頷けるというものではあるが、普段から何かと含みのある言い方をするモンドはどこか近寄りがたい雰囲気もあるし、クルトのいうとおり精霊も警戒心を解いていないようだった。
「国の王子様というのは色々あるのかもね。こう、一般庶民には分からない事とか活政治的なものとか」
「そうかも知れないが、個人的にミヤを狙ってる気がする…」
「まさかの敵視!?」
馬鹿な、と青ざめたら、そうじゃないとクルトがジト目で「君は無防備で鈍感だから」と文句を言った。失礼な、とそっぽを向いて頬を膨らましたが、ふと俊則のことが頭に浮かんで「む」と考え込んでしまった。
「個人的に狙ってるっていうのは、その。そういう感情でっていうこと、です?」
「そういうって?」
「う、いや、えっと、つまり…」
真面目な顔で聞き返されて、ミヤコは自意識過剰気味かと自分で恥ずかしくなってしまい、頬を赤らめてぼそぼそと言葉を濁した。それを横目で見ていたクルトは眉をしかめて不機嫌そうにつぶやいた。
「そういうところが無防備だっていうのに…」
***
それはさて置いて、討伐に行くとなれば持っていくものを決めなければ。
ミヤコは役に立つ、持っていける物を厳選していた。まずは防虫スプレー。飛んでくる(魔物含む)虫除けになるかもしれない。作ったものを持っていくよりも原液を持って行く方が嵩張らなくていいだろうとハッカ油と無水エタノールをバッグに入れる。スプレーボトルは伸縮自在の大きめのやつを。それから蚊連草の種。虫が嫌いな臭いを発するので、街の防壁周辺に植えて増やせば幾らか襲撃を防げるだろう。魔獣に関してはオレンジオイルとか有効なのだろうか。ひとまず持っていく事にする。
「そういえば、食事はどうするんだろう。そんなに何日もかからないかな?」
桃のチューハイも持って行こう。クルトさん達には効き目抜群だから。スポーツドリンクの素と、かぼちゃの種、チョコレートあたりは必要かな。塩胡椒とカレールーも…。
気分はキャンプに行くようなものだな。なんかちょっと楽しみだったりして。
緊張感が薄れていくミヤコだった。
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