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第3章:聖地ウスクヴェサール編
第65話:水鏡の世界
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今ミヤコができること。
それはなんだろうかと考えて、ミヤコは大きく息を吸った。
「そもそも此処が何処なのか分からないうちは、身動きが取れないもの。おばあちゃんかおじいちゃんに連絡がつけば早いのだけど…。シロウは大丈夫だったのかな。できればクルトさんたちをサポートしてもらいたかったんだけどな…」
シロウは精霊王の使いだ。ミヤコが生きている可能性があったのなら、シロウはきっと大丈夫だろう。
ミヤコが妖精王の浄化の衝撃で何処かに飛ばされたのだとしたら、おそらく帰る道はある。妖精王の浄化はできた。シロウが何処に行ってしまったかはわからないが、きっと何処かで休養しているはずだから、心配はないだろう。
気になるのは、泉の精霊の態度だ。敵意をむき出しにして、ミヤコにですら小馬鹿にした態度を取っている…ということは、おそらく水の大精霊がまだ救出できていないから。そして人間に対して悪意を持っているということは、水の大精霊の現状は人間が作り出したと考えられる。
瘴気が関係しているのだから、ミヤコの責任もあるのかもしれないと思うと胃が重くなる。
「20年前の自分を呪いたくなるわ…」
精霊王に張り付いている森の精霊たちとは部類が違うのか、泉の精霊の言葉をミヤコは理解できる。それがどうしてなのかはまだわからない。あの泉は何か特別なのか、でなければ泉の精霊が力のある精霊なのか。そういえば、ナイアドたちは妖精とは少し違うが、人型を取っている。
妖精王の浄化で消え失せるほどやわではないはずだから、何処かにいるはずなんだけど…。アイザックたちでもまだ見つけられないのかも知れないし、最悪ルブラート教徒に囚われているのかも知れない。
とはいえ、精霊を嫌って排除しようとしていた人間に大精霊の姿が見えるとは思えないが。西獄谷にまだいるのなら、クルト達かアイザックに任せておけばいいが、もしいないとなると。
「うーん。ともかくナイアドと話をしてみなくちゃ…」
『ダメダメ!』
「え?」
『泉ノ精霊、コワレテル!イジワル スル!イッチャダメ!』
ログハウスを出て泉に向かおうとしたミヤコを妖精達が止めた。どうやら妖精達はミヤコを心配しているようだが、それにしては大慌てで何か裏があるようにも思う。
「妖精さん、私が水の大精霊を助けださないことには、王様もナイアドも治らないよ。わかってる?」
『大精霊ヨリ、オウサマ サキ!オウサマ、大事!』
「ダメだよ。水の大精霊が先だよ。妖精王はとりあえず助かったでしょ。大精霊が闇に落ちたら大変なことになるんだよ」
『闇落チ?』
『ヤミオチ、ダメ。水ケガレル』
「でしょ?だからね。水の大精霊が先なんだよ。だからナイアドと話をさせてね」
妖精達はひらひらとミヤコの周囲を飛び回りながらも、混乱しているようだ。水の大精霊を助けないことには自分たちも危ないと気がついたのだろうが、それより自分たちの王様が心配、といったところだろう。
妖精はまるで子供と同じで、優先順位は常に自分が一番だ。少し考えればわかることでも、気が逸れて『やっぱり自分が』『でもそれには』と振り子のように考えがまとまらない。
ミヤコは苦笑しながら泉に近づいた。
「ナイアドー…うっぷ!」
ミヤコが声をかけようとした瞬間に水鉄砲を食らった。
鉄砲というよりも大砲のようにミヤコの体は後ろに吹っ飛んだ。
ゴロンと後転して座り込み、目を丸くするミヤコに、ナイアド達はクスクスとバカにしたように笑う。
「ちょっと!話ぐらい聞きなさいよ!」
『話ス事ナンカナイ!ニンゲン、ウルサイ』
『マタ来タラ殺ス、イッタ!オマエ、シニタイ』
ムッとして立ち上がり、悪態をつこうとしたミヤコのうしろ首を掴み、光の束が現れた。
「ミヤコ!無事だったか」
あっと振り向くと、そこにはシロウにまたがった精霊王とキミヨがいた。
「おじいちゃん!おばあちゃん!シロウ!」
ミヤコの首筋を食んだのはシロウで、ミヤコに頬を擦りつけてきた。
ミヤコはシロウの首に抱きついて、再会を喜んだ。
「よかった!瘴気にやられてしまったかと思ってたよ!心配した!」
抱きつくミヤコに、愛おしそうにブルルと鼻を擦りつけシロウは首を上下した。
「ミヤコの気配が消えたから、どこへ飛んだかと思ったら水鏡に来ているとは……油断したわ」
「妖精さん達に連れてこられたの。半分石化しかけてて、妖精王の浄化の光で死んだかと思ったわ」
キミヨが喜び勇んで、シロウから飛び降りミヤコを抱きしめる。
「精霊さんにお願いしたの!伝言が届いてよかった!」
キミヨを見上げたミヤコを精霊王も後ろから二人まとめて抱きしめた。
「水鏡の世界なら俺たちも力が貸せるからな。よかったよ」
「水鏡の世界?」
「妖精の世界よ。聖地ウスクヴェサールの泉が水合わせで妖精界につながっているのよ」
「それが、ここ?」
「そう。おそらく妖精王の浄化の光に飲まれたのね?」
「あ、ああそっか。アイザックさんは押し返したって妖精が言ってた…」
「半分石化した状態で、アイザックさんは私を助けようとしてくれて、そこから意識が飛んで…」
石化、と聞いたキミヨはギョッとして振り向き、精霊王を睨みつける。
「孫娘にこんな危険な目に合わせて!」
「いや、そんなこと言われても、手出しはできなかったんだ…」
「ああ、ミヤコ!可哀想に!アルヒレイトは役立たずだから、これからは私がずっとついているからね!」
ぎゅうっと抱きしめるキミヨに精霊王はおろおろしながら「それは、だから出来ないと」と伝えるが、キミヨはプリプリしながらそっぽを向く。そんな祖父母の様子を見ながら苦笑するミヤコだったが、呆然とミヤコたちを見つめる泉の精霊と目があうと、ハッとして、キミヨから体を離した。
「水の大精霊が危ないんだと思うの」
ミヤコは夢に見たことを祖父母に伝えた。瘴気にまみれた水の人型が子供を隠していること、その子供が助けを求めていること。聖地の状態と、妖精王が小さくなってしまったと妖精たちが心配していることを併せ見て、子供は大精霊なのではないかと考えたこと。
付け加えて、泉の精霊に悪意があること。
「東の森の精霊たちはあんなに無邪気で協力的なのに、この泉の精霊がこれほど敵対心を持っているのは、おかしいでしょう」
「敵対心」
精霊王が泉の精霊を振り返ると、彼女たちはギクッと背筋を伸ばしたものの、その瞳には憎しみが映し出されている。
「なるほどな」
ひんやりした空気が精霊王から発散されたのに気がついて、ミヤコは慌てて精霊王の腕を掴んだ。
「あの、おじいちゃん?泉の精霊は悪くないかも、なんだよ。もしかすると発端は私かもだし、大精霊を助ければこの子たちも元に戻ると思うんだけど」
「わかってる」
精霊王が泉に近づくと、泉の精霊は少し後ずさり、泉のほぼ中央に固まって顔を水面から半分だけ出した状態で精霊王を注視している。
「うむ。濁りきっておるな」
そういうと、精霊王は水面に手のひらを近づけた。
「浄化」
バシュッと光がほとばしったと思うと、泉に光の輪が溢れ水面が揺れた。
「ぎゃっ!」と泉の精霊の叫び声が響き、眩しさに思わず顔を背けたが、次の瞬間に光は消え、きょとんとした泉の精霊が同じ位置でお互い抱きついていた。
『ナ、ナニ?』
『体ガ…』
ミヤコが目覚めた時の泉の色は澱んだ緑色をしていたのだが、それがどれだけ不浄だったのかが目に見えてわかるほど、今の泉の色は空色をしていた。透明に近い水色は、しかし底を映し出すことはなかった。
「気分はどうだ、泉の精霊よ」
『ヒ、ヒエェ…』
『精霊王様…!ホントニ…?』
「ああ。そうだ。そしてお前たちが殺したいと思うほど睨んでいたのは、俺の孫のミヤコだ」
『!!』
泉の水より青ざめて、泉の精霊たちはペコペコ頭を下げた。
精霊王はそんな泉の精霊にシラっとした目を向けると、今度はその様子を黙って見守っていた妖精に目を向けた。
「妖精王はどこだ?」
『オ、王宮ニイマス、デス』
「案内しろ」
『ハ、ハイ』
フン、と鼻を鳴らすと、精霊王はくるりと振り返り、ミヤコとキミヨを呼んだ。
「俺は妖精王に会ってくる。あいつは少し説教が必要のようだからな。その間に」
精霊王はミヤコの手を取り先を続ける。
「ミヤコ。水の大精霊はお前に助けを求めた。これはお前に与えられた仕事だ。頼めるか?」
「な、何をどうすればいいの?」
「キミヨにできるのは、大精霊を手助けするための歌をミヤコに与えること、ミヤコはその歌とお前の言葉でもって大精霊を救ってほしい。泉の精霊が大精霊まで案内してくれるだろう」
「エ、デ、デモ、…」
精霊王が泉の精霊を横目で見ると、泉の精霊は口を閉じ、コクコクと頷いた。
「夢に出て来た魔性は、水の大精霊の半身でもある水魔だ。正と負は1枚のコインと同じで、俺たち精霊もバランスを保って生きている。人間もそれは同じだが、精霊は力が大きい分、バランスを崩せば世界の崩壊にも繋がる。水は特にこの世界に大きく反映される。汚れた水からは負しか生まれない。つまり魔性や瘴気を生み出すということだ」
わかるか?と精霊王がミヤコに確認を取る。ミヤコは慎重に頷く。
「ならば、何が水の大精霊を救えるか、考えるんだ。できるな」
ミヤコはごくりと喉を鳴らす。
できるな、と言われても。自信はないが、やるしかない。
「やってみる…ううん。やる。できます」
ミヤコは精霊王の目を見て頷いた。
「頼んだぞ」
精霊王はそういうと、妖精と光の粒になって消えた。
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読んでいただきありがとうございます。
それはなんだろうかと考えて、ミヤコは大きく息を吸った。
「そもそも此処が何処なのか分からないうちは、身動きが取れないもの。おばあちゃんかおじいちゃんに連絡がつけば早いのだけど…。シロウは大丈夫だったのかな。できればクルトさんたちをサポートしてもらいたかったんだけどな…」
シロウは精霊王の使いだ。ミヤコが生きている可能性があったのなら、シロウはきっと大丈夫だろう。
ミヤコが妖精王の浄化の衝撃で何処かに飛ばされたのだとしたら、おそらく帰る道はある。妖精王の浄化はできた。シロウが何処に行ってしまったかはわからないが、きっと何処かで休養しているはずだから、心配はないだろう。
気になるのは、泉の精霊の態度だ。敵意をむき出しにして、ミヤコにですら小馬鹿にした態度を取っている…ということは、おそらく水の大精霊がまだ救出できていないから。そして人間に対して悪意を持っているということは、水の大精霊の現状は人間が作り出したと考えられる。
瘴気が関係しているのだから、ミヤコの責任もあるのかもしれないと思うと胃が重くなる。
「20年前の自分を呪いたくなるわ…」
精霊王に張り付いている森の精霊たちとは部類が違うのか、泉の精霊の言葉をミヤコは理解できる。それがどうしてなのかはまだわからない。あの泉は何か特別なのか、でなければ泉の精霊が力のある精霊なのか。そういえば、ナイアドたちは妖精とは少し違うが、人型を取っている。
妖精王の浄化で消え失せるほどやわではないはずだから、何処かにいるはずなんだけど…。アイザックたちでもまだ見つけられないのかも知れないし、最悪ルブラート教徒に囚われているのかも知れない。
とはいえ、精霊を嫌って排除しようとしていた人間に大精霊の姿が見えるとは思えないが。西獄谷にまだいるのなら、クルト達かアイザックに任せておけばいいが、もしいないとなると。
「うーん。ともかくナイアドと話をしてみなくちゃ…」
『ダメダメ!』
「え?」
『泉ノ精霊、コワレテル!イジワル スル!イッチャダメ!』
ログハウスを出て泉に向かおうとしたミヤコを妖精達が止めた。どうやら妖精達はミヤコを心配しているようだが、それにしては大慌てで何か裏があるようにも思う。
「妖精さん、私が水の大精霊を助けださないことには、王様もナイアドも治らないよ。わかってる?」
『大精霊ヨリ、オウサマ サキ!オウサマ、大事!』
「ダメだよ。水の大精霊が先だよ。妖精王はとりあえず助かったでしょ。大精霊が闇に落ちたら大変なことになるんだよ」
『闇落チ?』
『ヤミオチ、ダメ。水ケガレル』
「でしょ?だからね。水の大精霊が先なんだよ。だからナイアドと話をさせてね」
妖精達はひらひらとミヤコの周囲を飛び回りながらも、混乱しているようだ。水の大精霊を助けないことには自分たちも危ないと気がついたのだろうが、それより自分たちの王様が心配、といったところだろう。
妖精はまるで子供と同じで、優先順位は常に自分が一番だ。少し考えればわかることでも、気が逸れて『やっぱり自分が』『でもそれには』と振り子のように考えがまとまらない。
ミヤコは苦笑しながら泉に近づいた。
「ナイアドー…うっぷ!」
ミヤコが声をかけようとした瞬間に水鉄砲を食らった。
鉄砲というよりも大砲のようにミヤコの体は後ろに吹っ飛んだ。
ゴロンと後転して座り込み、目を丸くするミヤコに、ナイアド達はクスクスとバカにしたように笑う。
「ちょっと!話ぐらい聞きなさいよ!」
『話ス事ナンカナイ!ニンゲン、ウルサイ』
『マタ来タラ殺ス、イッタ!オマエ、シニタイ』
ムッとして立ち上がり、悪態をつこうとしたミヤコのうしろ首を掴み、光の束が現れた。
「ミヤコ!無事だったか」
あっと振り向くと、そこにはシロウにまたがった精霊王とキミヨがいた。
「おじいちゃん!おばあちゃん!シロウ!」
ミヤコの首筋を食んだのはシロウで、ミヤコに頬を擦りつけてきた。
ミヤコはシロウの首に抱きついて、再会を喜んだ。
「よかった!瘴気にやられてしまったかと思ってたよ!心配した!」
抱きつくミヤコに、愛おしそうにブルルと鼻を擦りつけシロウは首を上下した。
「ミヤコの気配が消えたから、どこへ飛んだかと思ったら水鏡に来ているとは……油断したわ」
「妖精さん達に連れてこられたの。半分石化しかけてて、妖精王の浄化の光で死んだかと思ったわ」
キミヨが喜び勇んで、シロウから飛び降りミヤコを抱きしめる。
「精霊さんにお願いしたの!伝言が届いてよかった!」
キミヨを見上げたミヤコを精霊王も後ろから二人まとめて抱きしめた。
「水鏡の世界なら俺たちも力が貸せるからな。よかったよ」
「水鏡の世界?」
「妖精の世界よ。聖地ウスクヴェサールの泉が水合わせで妖精界につながっているのよ」
「それが、ここ?」
「そう。おそらく妖精王の浄化の光に飲まれたのね?」
「あ、ああそっか。アイザックさんは押し返したって妖精が言ってた…」
「半分石化した状態で、アイザックさんは私を助けようとしてくれて、そこから意識が飛んで…」
石化、と聞いたキミヨはギョッとして振り向き、精霊王を睨みつける。
「孫娘にこんな危険な目に合わせて!」
「いや、そんなこと言われても、手出しはできなかったんだ…」
「ああ、ミヤコ!可哀想に!アルヒレイトは役立たずだから、これからは私がずっとついているからね!」
ぎゅうっと抱きしめるキミヨに精霊王はおろおろしながら「それは、だから出来ないと」と伝えるが、キミヨはプリプリしながらそっぽを向く。そんな祖父母の様子を見ながら苦笑するミヤコだったが、呆然とミヤコたちを見つめる泉の精霊と目があうと、ハッとして、キミヨから体を離した。
「水の大精霊が危ないんだと思うの」
ミヤコは夢に見たことを祖父母に伝えた。瘴気にまみれた水の人型が子供を隠していること、その子供が助けを求めていること。聖地の状態と、妖精王が小さくなってしまったと妖精たちが心配していることを併せ見て、子供は大精霊なのではないかと考えたこと。
付け加えて、泉の精霊に悪意があること。
「東の森の精霊たちはあんなに無邪気で協力的なのに、この泉の精霊がこれほど敵対心を持っているのは、おかしいでしょう」
「敵対心」
精霊王が泉の精霊を振り返ると、彼女たちはギクッと背筋を伸ばしたものの、その瞳には憎しみが映し出されている。
「なるほどな」
ひんやりした空気が精霊王から発散されたのに気がついて、ミヤコは慌てて精霊王の腕を掴んだ。
「あの、おじいちゃん?泉の精霊は悪くないかも、なんだよ。もしかすると発端は私かもだし、大精霊を助ければこの子たちも元に戻ると思うんだけど」
「わかってる」
精霊王が泉に近づくと、泉の精霊は少し後ずさり、泉のほぼ中央に固まって顔を水面から半分だけ出した状態で精霊王を注視している。
「うむ。濁りきっておるな」
そういうと、精霊王は水面に手のひらを近づけた。
「浄化」
バシュッと光がほとばしったと思うと、泉に光の輪が溢れ水面が揺れた。
「ぎゃっ!」と泉の精霊の叫び声が響き、眩しさに思わず顔を背けたが、次の瞬間に光は消え、きょとんとした泉の精霊が同じ位置でお互い抱きついていた。
『ナ、ナニ?』
『体ガ…』
ミヤコが目覚めた時の泉の色は澱んだ緑色をしていたのだが、それがどれだけ不浄だったのかが目に見えてわかるほど、今の泉の色は空色をしていた。透明に近い水色は、しかし底を映し出すことはなかった。
「気分はどうだ、泉の精霊よ」
『ヒ、ヒエェ…』
『精霊王様…!ホントニ…?』
「ああ。そうだ。そしてお前たちが殺したいと思うほど睨んでいたのは、俺の孫のミヤコだ」
『!!』
泉の水より青ざめて、泉の精霊たちはペコペコ頭を下げた。
精霊王はそんな泉の精霊にシラっとした目を向けると、今度はその様子を黙って見守っていた妖精に目を向けた。
「妖精王はどこだ?」
『オ、王宮ニイマス、デス』
「案内しろ」
『ハ、ハイ』
フン、と鼻を鳴らすと、精霊王はくるりと振り返り、ミヤコとキミヨを呼んだ。
「俺は妖精王に会ってくる。あいつは少し説教が必要のようだからな。その間に」
精霊王はミヤコの手を取り先を続ける。
「ミヤコ。水の大精霊はお前に助けを求めた。これはお前に与えられた仕事だ。頼めるか?」
「な、何をどうすればいいの?」
「キミヨにできるのは、大精霊を手助けするための歌をミヤコに与えること、ミヤコはその歌とお前の言葉でもって大精霊を救ってほしい。泉の精霊が大精霊まで案内してくれるだろう」
「エ、デ、デモ、…」
精霊王が泉の精霊を横目で見ると、泉の精霊は口を閉じ、コクコクと頷いた。
「夢に出て来た魔性は、水の大精霊の半身でもある水魔だ。正と負は1枚のコインと同じで、俺たち精霊もバランスを保って生きている。人間もそれは同じだが、精霊は力が大きい分、バランスを崩せば世界の崩壊にも繋がる。水は特にこの世界に大きく反映される。汚れた水からは負しか生まれない。つまり魔性や瘴気を生み出すということだ」
わかるか?と精霊王がミヤコに確認を取る。ミヤコは慎重に頷く。
「ならば、何が水の大精霊を救えるか、考えるんだ。できるな」
ミヤコはごくりと喉を鳴らす。
できるな、と言われても。自信はないが、やるしかない。
「やってみる…ううん。やる。できます」
ミヤコは精霊王の目を見て頷いた。
「頼んだぞ」
精霊王はそういうと、妖精と光の粒になって消えた。
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