75 / 127
第3章:聖地ウスクヴェサール編
第71話:それぞれの想い
しおりを挟む
そして今、ミヤコはクルトの前でしおらしく正座をしていた。膝に置いた両手はぎゅっと握り締められている。
「こ、この度は、ご迷惑をおかけしまして」
「そんなことを聞いているんじゃない」
「う……」
今までになくクルトがおかんむりで、ミヤコの前で腕を組んで仁王立ちをしている。
怖い。
でかいだけに、迫力があって。イケメンだけに、真剣な顔は綺麗すぎて怖い。
「どうして、僕に睡眠の歌なんかを聞かせたんだ。君が死闘を繰り返している間、僕は精霊に見守られて草むらで惰眠を貪っていたんだぞ」
「……連日の疲れが出たのかと」
「僕はそんなに頼りないか」
「そんなつもりは…」
「じゃあなんでアイザックだけ連れて、僕だけ置いてきぼりだったんだ」
「いや、俺も寝てたんっスけど、数に入ってないっスか?」
「アイザックさんに子守唄が効かなかったのは、多分精霊たちが防御したからで」
「いや、あれはどっちかっつーと、精霊たちが嬢ちゃんを守るために俺を使った感じが強いけどな」
ミヤコはクルトを見上げた。どうしてもミヤコを問い詰めたいらしい。のらりくらりと躱しても、納得しないであろうクルトの表情を見て、ミヤコは内心ため息をつきながらも、意を決してまくし立てた。
「じゃあ言いますけど。クルトさんは、何を差し置いても私を守ろうと動くでしょう。でも、それじゃダメだったんです。妖精王が瘴気にやられて水の大精霊の結界もギリギリだったし、もしも彼の結界が妖精王を浄化するより先に弾けてしまったら瘴気が谷から溢れ出るところだったんですよ。そうなったら誰が魔獣や瘴気の暴走を止めるんですか。
それに妖精王の光の力は、半端なく人間に突き刺さります。普通の人には陰陽の心があります。陽の心は光に当てられても何ともないけれど、陰の心は光に脆い。純粋な妖精王の光で心の陰が焼かれれば、脆い人間の精神は焼き切られて命を失いかねないんですよ。
魔獣を倒すときの気持ちは、どうしたって陰に分類されるんです。その時、もし大量の魔獣を倒していたとしたら、陰の部分が大きくなる。もし仮にクルトさんが一緒に来ていたとして、そこに妖精王の光が当てられたら?クルトさんは今ここに立っていないかもしれないんですよ。
そうなったら私はどうなると思います?
悲しみと怒りと憎しみと後悔で負の力が溢れたら?私が感情に任せて言霊を発していたら、東の魔の森を再現してしまうかもしれないし、子供の頃と違ってもっと悲惨なことになっていたかもしれない。私の心の平静は、クルトさん達に参加させないことだったんです」
一気に言いまくったミヤコにクルトは瞬きを繰り返し、それまでの仁王立ちの姿勢から狼狽えた表情に変わっていった。
「大切な人だからこそ、私も守りたかったんです」
「!」
「……水鏡の世界に行くのは予定外でしたけど…」
先ほどの勢いは何処へやら、肩の力を抜き背中を丸めて頭を垂れたミヤコに、クルトは跪いて抱きしめた。
「…ごめん。ミヤの気持ちも考えずに八つ当たりをした」
「クルトさん」
「……君が好きすぎて、正直苦しい。求めても求めても、指の隙間からこぼれていってしまう君を捕まえたくて、閉じ込めてしまいたいほどで。そんなことミヤは望んでいないと分かっているけど、心の動揺に自分自身がついていけなくて、おかしな独占欲を押し付けた。本当にミヤが好きでしょうがないんだ。すまない。こんな気持ちは重いだろうか」
聞いていて恥ずかしくなるような告白に、耳まで真っ赤になってクルトの顔を覗き込めば、本人も真っ赤になって苦しそうに喘いでいるのがわかった。
(うっ、可愛い)
萌えてる場合じゃないと慌てて取り繕うミヤコだったが、おずおずと両手を伸ばしクルトの頭を抱きしめた。クルトはピクリと硬直したが、すぐにゆるゆると緊張を解いて、ミヤコに寄りかかるように顔を首筋に埋めた。ミヤコの鎖骨にクルトの吐息がかかり、ミヤコはゾクゾクと体を震わせる。
「私、水鏡の世界でみんなの声が聞こえた気がしたんです。諦めるな、とか、出来る事をしろとか。みんなの笑顔とか、感謝の気持ちとかもいっぱいもらって。それでもクルトさんにずっと会いたいって思ってました」
ミヤコが震える声でそっとクルトの耳元で囁いた。手ぐしでクルトの髪を撫でる。思っていたよりも猫毛な赤い髪は柔らかく、若葉と土の香りがクルトの香りと混じり合い、ミヤコの心臓が早鐘を打つ。
「でもこのショールがあったから…クルトさんがそばにいてくれるって思って、頑張れた。それで気づいたっていうか…。その、私も、あの………クルトさんが好きです」
クルトはゆるゆると顔を上げ、潤んだ瞳でミヤコを見つめると、一方の手でミヤコの後ろ髪を軽く握りしめ固定し、もう一方の手が愛おしそうに頬を撫で上げた。クルトの親指がミヤコの唇をなぞり、その視線は自然とミヤコの唇へと落とされて、ミヤコはされるがまま目を閉じた。
「かぁ…。所構わず発情しやがって」
「俺たち居ないもんとされてます?」
呆れたようにアイザックが頭をかいて、踵を返した。それに付き合うようにルノーもため息をついてアイザックの横に並び、そっぽを向いた。
「俺、このままアレに付き合うことができるか心配になって来たっス」
「ハルクルトは、あれか。初恋か?」
「婚約者は居たんっスけどねえ。大事にしてるっぽかったけど、まあ政略だったから心はなかったんでしょうねえ」
「ああ、あれか。王家の…」
「へっ。王家もどきのでしょ」
「はぁ。なーんか、本格的になって来たなあ。魔獣相手の方が考えずに済んで楽だった気がするぜ」
「腐った果実は取り除かないことには、全部腐るっス」
「ああ。わかってるけどよ。……まずは精霊か。執行人の仕事じゃねえけどなあ」
「正直、俺は精霊見えないっすからね。役に立つかどうかわかんないっすよ」
「大精霊は見えただろ。加護までもらっといて今更じゃねえか」
「あれ、やっぱり大精霊なんっすよね。いや、感動。そういや精霊王も見たっけな」
「はあ?精霊王にも会ってんのか」
「ええ。まあ。東の魔の森が精霊の住まう森になってすぐの頃に。ま、ミヤさん絡みだったんスけどね、それも」
ちら、と視線をクルトたちに投げやり、ルノーはまた大きくため息をつく。
「いい加減止めないと、最後までいっちゃいますよ」
「……しゃーねえなあ」
「俺も恋人欲しいっす、いい加減」
「あー無理無理」
「え~。なんで」
「アイツから奪えねえだろ?」
「……アイザックさんも、ですか」
「……俺は、まあ、な。アレだ」
「はあ。愛し子なんて面倒なもん、引き受けちゃいましたねえ、お互い」
「振られたモン同士、やけ酒なら付き合うぞ」
まったく、恋心に気付く前にフラれるなんて涙もでないっスよ、と愚痴るルノーの肩を組んでアイザックはガハハ、と笑う。
「聖女は俺のもんだと生まれた時から思ってたんだけどな。魔女の予言もアテになんねえや」
「ミヤさんが聖女とは限らないじゃないっス。本当のところ、愛し子なんだし?アイザックさんは魔女と神官の血筋でしたっけ。時代が時代なら王族でしょ。選べる立場なだけ良いっスよ。ハルクルト隊長の方が執行人って感じっスよね。おかしいっスよ。俺も選びたいッス!チャンスすらないってどんなっすか」
「アレにしかできない役割があるんだろうけど、俺たち凡人にはわかんねえんだろ。選べるほど出会いがないってのも、アレだよなぁ」
すん、と鼻を鳴らしてアイザックはくるりと振り返り、パンパンと手を叩いた。
「おら、お前ら!いつまでも発情してんじゃねえぞ!やることやってからイチャつけよ!」
ほとんど押し倒されていたミヤコは、正気に戻りガバッと体制を整え、クルトはちっと舌を鳴らし、恨みがましい目でアイザックを睨みつけた。
「そういえば、この薬草の塊の中に何があるんっスかね?」
ルノーが指をさしたのは、精霊たちが大精霊の体が隠されているといって刈り取らなかった薬草の山だ。
精霊も薬草を育てるのに飽きたようで、薬草はすでに成長しておらず、ただ爽やかな香りが漂う巨大な卵のようになっていた。
結局、大精霊は湖にミヤコとともに現れて消えていったから、この卵の中に大精霊の体が収められているとは思えない。そもそも精霊に本体も何もあったものではなかったのをすっかり忘れていた。
「えっと…水鏡の世界では、この湖ほど大きくはなくて、ホロンの水場より大きめの泉って感じで、中洲部分にはガゼボがあったと思う」
ミヤコが思い出しながらそういうと、ルノーは呆れたような声を出した。
「瘴気とか瘴魔が出てきたらどうしようとか、大精霊の体が出てきたらとかおっかなびっくりだったのに、ただのガゼボっスか」
「いや、だけどここは聖域の中心だろう。守られるべきだったんじゃないのか」
「怖いもの見たさで薬草を刈り取っても問題ないか?」
アイザックの言葉にミヤコは、刈り取らなくても大丈夫、とばかりに「解放」とつぶやきながら薬草の塊を触ると、どこからともなく精霊たちが集まってきてざわざわと薬草が動き、中身を露わにした。
ガゼボ、というよりは祠。八柱に屋根、それぞれの辺に腰あの高さぐらいの壁と内側に備え付けられたベンチ、だがその中心にジプシーの持つ水晶のような球が置かれていた。
「水晶玉?」
ミヤコが触れようとすると、クルトがそれを引き留める。
「呪具かもしれない。うかつに触らないほうがいい」
「呪具」
「触れる前に、水鏡の世界で何があったのか詳しく教えてくれないか」
ミヤコは3人の男を見渡して、コクリと頷いた。
==========
クルトは年中発情期。ミヤコ限定だけど。
「こ、この度は、ご迷惑をおかけしまして」
「そんなことを聞いているんじゃない」
「う……」
今までになくクルトがおかんむりで、ミヤコの前で腕を組んで仁王立ちをしている。
怖い。
でかいだけに、迫力があって。イケメンだけに、真剣な顔は綺麗すぎて怖い。
「どうして、僕に睡眠の歌なんかを聞かせたんだ。君が死闘を繰り返している間、僕は精霊に見守られて草むらで惰眠を貪っていたんだぞ」
「……連日の疲れが出たのかと」
「僕はそんなに頼りないか」
「そんなつもりは…」
「じゃあなんでアイザックだけ連れて、僕だけ置いてきぼりだったんだ」
「いや、俺も寝てたんっスけど、数に入ってないっスか?」
「アイザックさんに子守唄が効かなかったのは、多分精霊たちが防御したからで」
「いや、あれはどっちかっつーと、精霊たちが嬢ちゃんを守るために俺を使った感じが強いけどな」
ミヤコはクルトを見上げた。どうしてもミヤコを問い詰めたいらしい。のらりくらりと躱しても、納得しないであろうクルトの表情を見て、ミヤコは内心ため息をつきながらも、意を決してまくし立てた。
「じゃあ言いますけど。クルトさんは、何を差し置いても私を守ろうと動くでしょう。でも、それじゃダメだったんです。妖精王が瘴気にやられて水の大精霊の結界もギリギリだったし、もしも彼の結界が妖精王を浄化するより先に弾けてしまったら瘴気が谷から溢れ出るところだったんですよ。そうなったら誰が魔獣や瘴気の暴走を止めるんですか。
それに妖精王の光の力は、半端なく人間に突き刺さります。普通の人には陰陽の心があります。陽の心は光に当てられても何ともないけれど、陰の心は光に脆い。純粋な妖精王の光で心の陰が焼かれれば、脆い人間の精神は焼き切られて命を失いかねないんですよ。
魔獣を倒すときの気持ちは、どうしたって陰に分類されるんです。その時、もし大量の魔獣を倒していたとしたら、陰の部分が大きくなる。もし仮にクルトさんが一緒に来ていたとして、そこに妖精王の光が当てられたら?クルトさんは今ここに立っていないかもしれないんですよ。
そうなったら私はどうなると思います?
悲しみと怒りと憎しみと後悔で負の力が溢れたら?私が感情に任せて言霊を発していたら、東の魔の森を再現してしまうかもしれないし、子供の頃と違ってもっと悲惨なことになっていたかもしれない。私の心の平静は、クルトさん達に参加させないことだったんです」
一気に言いまくったミヤコにクルトは瞬きを繰り返し、それまでの仁王立ちの姿勢から狼狽えた表情に変わっていった。
「大切な人だからこそ、私も守りたかったんです」
「!」
「……水鏡の世界に行くのは予定外でしたけど…」
先ほどの勢いは何処へやら、肩の力を抜き背中を丸めて頭を垂れたミヤコに、クルトは跪いて抱きしめた。
「…ごめん。ミヤの気持ちも考えずに八つ当たりをした」
「クルトさん」
「……君が好きすぎて、正直苦しい。求めても求めても、指の隙間からこぼれていってしまう君を捕まえたくて、閉じ込めてしまいたいほどで。そんなことミヤは望んでいないと分かっているけど、心の動揺に自分自身がついていけなくて、おかしな独占欲を押し付けた。本当にミヤが好きでしょうがないんだ。すまない。こんな気持ちは重いだろうか」
聞いていて恥ずかしくなるような告白に、耳まで真っ赤になってクルトの顔を覗き込めば、本人も真っ赤になって苦しそうに喘いでいるのがわかった。
(うっ、可愛い)
萌えてる場合じゃないと慌てて取り繕うミヤコだったが、おずおずと両手を伸ばしクルトの頭を抱きしめた。クルトはピクリと硬直したが、すぐにゆるゆると緊張を解いて、ミヤコに寄りかかるように顔を首筋に埋めた。ミヤコの鎖骨にクルトの吐息がかかり、ミヤコはゾクゾクと体を震わせる。
「私、水鏡の世界でみんなの声が聞こえた気がしたんです。諦めるな、とか、出来る事をしろとか。みんなの笑顔とか、感謝の気持ちとかもいっぱいもらって。それでもクルトさんにずっと会いたいって思ってました」
ミヤコが震える声でそっとクルトの耳元で囁いた。手ぐしでクルトの髪を撫でる。思っていたよりも猫毛な赤い髪は柔らかく、若葉と土の香りがクルトの香りと混じり合い、ミヤコの心臓が早鐘を打つ。
「でもこのショールがあったから…クルトさんがそばにいてくれるって思って、頑張れた。それで気づいたっていうか…。その、私も、あの………クルトさんが好きです」
クルトはゆるゆると顔を上げ、潤んだ瞳でミヤコを見つめると、一方の手でミヤコの後ろ髪を軽く握りしめ固定し、もう一方の手が愛おしそうに頬を撫で上げた。クルトの親指がミヤコの唇をなぞり、その視線は自然とミヤコの唇へと落とされて、ミヤコはされるがまま目を閉じた。
「かぁ…。所構わず発情しやがって」
「俺たち居ないもんとされてます?」
呆れたようにアイザックが頭をかいて、踵を返した。それに付き合うようにルノーもため息をついてアイザックの横に並び、そっぽを向いた。
「俺、このままアレに付き合うことができるか心配になって来たっス」
「ハルクルトは、あれか。初恋か?」
「婚約者は居たんっスけどねえ。大事にしてるっぽかったけど、まあ政略だったから心はなかったんでしょうねえ」
「ああ、あれか。王家の…」
「へっ。王家もどきのでしょ」
「はぁ。なーんか、本格的になって来たなあ。魔獣相手の方が考えずに済んで楽だった気がするぜ」
「腐った果実は取り除かないことには、全部腐るっス」
「ああ。わかってるけどよ。……まずは精霊か。執行人の仕事じゃねえけどなあ」
「正直、俺は精霊見えないっすからね。役に立つかどうかわかんないっすよ」
「大精霊は見えただろ。加護までもらっといて今更じゃねえか」
「あれ、やっぱり大精霊なんっすよね。いや、感動。そういや精霊王も見たっけな」
「はあ?精霊王にも会ってんのか」
「ええ。まあ。東の魔の森が精霊の住まう森になってすぐの頃に。ま、ミヤさん絡みだったんスけどね、それも」
ちら、と視線をクルトたちに投げやり、ルノーはまた大きくため息をつく。
「いい加減止めないと、最後までいっちゃいますよ」
「……しゃーねえなあ」
「俺も恋人欲しいっす、いい加減」
「あー無理無理」
「え~。なんで」
「アイツから奪えねえだろ?」
「……アイザックさんも、ですか」
「……俺は、まあ、な。アレだ」
「はあ。愛し子なんて面倒なもん、引き受けちゃいましたねえ、お互い」
「振られたモン同士、やけ酒なら付き合うぞ」
まったく、恋心に気付く前にフラれるなんて涙もでないっスよ、と愚痴るルノーの肩を組んでアイザックはガハハ、と笑う。
「聖女は俺のもんだと生まれた時から思ってたんだけどな。魔女の予言もアテになんねえや」
「ミヤさんが聖女とは限らないじゃないっス。本当のところ、愛し子なんだし?アイザックさんは魔女と神官の血筋でしたっけ。時代が時代なら王族でしょ。選べる立場なだけ良いっスよ。ハルクルト隊長の方が執行人って感じっスよね。おかしいっスよ。俺も選びたいッス!チャンスすらないってどんなっすか」
「アレにしかできない役割があるんだろうけど、俺たち凡人にはわかんねえんだろ。選べるほど出会いがないってのも、アレだよなぁ」
すん、と鼻を鳴らしてアイザックはくるりと振り返り、パンパンと手を叩いた。
「おら、お前ら!いつまでも発情してんじゃねえぞ!やることやってからイチャつけよ!」
ほとんど押し倒されていたミヤコは、正気に戻りガバッと体制を整え、クルトはちっと舌を鳴らし、恨みがましい目でアイザックを睨みつけた。
「そういえば、この薬草の塊の中に何があるんっスかね?」
ルノーが指をさしたのは、精霊たちが大精霊の体が隠されているといって刈り取らなかった薬草の山だ。
精霊も薬草を育てるのに飽きたようで、薬草はすでに成長しておらず、ただ爽やかな香りが漂う巨大な卵のようになっていた。
結局、大精霊は湖にミヤコとともに現れて消えていったから、この卵の中に大精霊の体が収められているとは思えない。そもそも精霊に本体も何もあったものではなかったのをすっかり忘れていた。
「えっと…水鏡の世界では、この湖ほど大きくはなくて、ホロンの水場より大きめの泉って感じで、中洲部分にはガゼボがあったと思う」
ミヤコが思い出しながらそういうと、ルノーは呆れたような声を出した。
「瘴気とか瘴魔が出てきたらどうしようとか、大精霊の体が出てきたらとかおっかなびっくりだったのに、ただのガゼボっスか」
「いや、だけどここは聖域の中心だろう。守られるべきだったんじゃないのか」
「怖いもの見たさで薬草を刈り取っても問題ないか?」
アイザックの言葉にミヤコは、刈り取らなくても大丈夫、とばかりに「解放」とつぶやきながら薬草の塊を触ると、どこからともなく精霊たちが集まってきてざわざわと薬草が動き、中身を露わにした。
ガゼボ、というよりは祠。八柱に屋根、それぞれの辺に腰あの高さぐらいの壁と内側に備え付けられたベンチ、だがその中心にジプシーの持つ水晶のような球が置かれていた。
「水晶玉?」
ミヤコが触れようとすると、クルトがそれを引き留める。
「呪具かもしれない。うかつに触らないほうがいい」
「呪具」
「触れる前に、水鏡の世界で何があったのか詳しく教えてくれないか」
ミヤコは3人の男を見渡して、コクリと頷いた。
==========
クルトは年中発情期。ミヤコ限定だけど。
30
あなたにおすすめの小説
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~
九頭七尾
ファンタジー
子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。
女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。
「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」
「その願い叶えて差し上げましょう!」
「えっ、いいの?」
転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。
「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」
思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
薄幸ヒロインが倍返しの指輪を手に入れました
佐崎咲
ファンタジー
義母と義妹に虐げられてきた伯爵家の長女スフィーナ。
ある日、亡くなった実母の遺品である指輪を見つけた。
それからというもの、義母にお茶をぶちまけられたら、今度は倍量のスープが義母に浴びせられる。
義妹に食事をとられると、義妹は強い空腹を感じ食べても満足できなくなる、というような倍返しが起きた。
指輪が入れられていた木箱には、実母が書いた紙きれが共に入っていた。
どうやら母は異世界から転移してきたものらしい。
異世界でも強く生きていけるようにと、女神の加護が宿った指輪を賜ったというのだ。
かくしてスフィーナは義母と義妹に意図せず倍返ししつつ、やがて母の死の真相と、父の長い間をかけた企みを知っていく。
(※黒幕については推理的な要素はありませんと小声で言っておきます)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる