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最終章:クローゼットの向こう側
第119話:樫の記憶
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それからどれほどの時間そこにいたのか。
ミヤコはぼんやりと樫の木の前にいた。真木村家が衰退した理由を、おばあちゃんは知らない。ちょっと向こうへ遊びにいっていた間に数十年が過ぎ、戻ってきたら真木村の人間は誰も残っていなかったのだ。
だから二人の姉がなぜ死んでしまったのかも、姉が残した言葉も知らない。二番目の姉は普通に結婚をして、この家を出て行ったきり帰ってこなかった。君代の口から聞いた事がない姉の行方は、ミヤコにもわからなかった。
しばらくして君代が戻ってきた時に、せめて静香の言葉を伝えようと何度も話しかけてみたけれど、君代には届かず、寂しそうにしていたが、数日のうちに顔を上げて真木村家の跡地を去って行った。
誰も住まない、誰も訪れない神社はぼろぼろに風化し、ただ樫の木だけが寂しげに季節を繰り返していた。そんな恐ろしいほど長い時間も早送りのように過ぎていく。
いつまでもここに残るわけにはいかないのに、どこへも行けず瞬きを繰り返す。誰に見えるわけでもなく、ただ亡霊のように樫の木のそばに立ち尽くす。
ミヤコは、無力だ。
これは過去で、起こってしまった事柄を変えることはできないのだ。静香を助けることができなかった。君代に姉の言葉を残すことさえ。でも、姉があんな最期を迎えたと、どうやって知らせることができるだろう。
あなたの代わりに姉様が生贄になりましたなんて、どうしたっていえない。伝えられなくてよかったのかもしれない。知らない方がいい事はこの世にたくさんある。ミヤコに両親の本当の死因を伝えられなかった大人たちのように。
まあその真実すら、本当に隠された真実が裏にあったわけだけれど。
「ここの神木は樫の木なんだ……」
レアの聖地、ソルイリスの聖木は樟だった。同じ聖木だからこの世界とあちらは繋がったのだと、以前君代は言っていた。同じ神木が同じ地軸上にあったからだと。だから樟に、あんなにどんぐりがあったのだろうか。
「神木から、瘴気が湧き出るってダメでしょう?」
ミヤコはそっと、樫の木に触れた。リーン、と音がしてミヤコの頭の中に会話が流れ込んできた。
『姉様、これはクスノキというのよ』
『違うわ、君代。これは樫の木よ。ほら、どんぐりが生ってるでしょう?』
『そんなはずないわ、アルヒレイトが樟だって言ったもの』
『誰が、樟だと?』
『…あー、なんでもないわ。なんだか樟だと思っただけ』
『でも君代、樟はどんぐりを落とさないのよ』
『そうなの?』
『まあ、樟を神木にする神社も多いけれど、うちは樫の木を祀って長寿を願うのよ』
『姉様、物知りねぇ。でもこれはクスノキでいいの、わたしの中だけはね!』
……精霊王《おじいちゃん》は自分とこの聖木が樟だからこれも樟だと思ったのかな。人の記憶ってなんて曖昧。
そう。人の記憶なんてあやふやで、どこまで真実でどこから偽りなのかなんてわからない。こうだと思えば記憶の中ではそれが真実で。こんなことはなかった、と思えばきっとなかったことになってしまう。あるがままを覚えるなんて、想像力を働かせる人間には到底無理なのだろう。ある意味ありがたい。辛いことは忘れて、楽しいことだけ覚えていられる。
でも、この樫の木はきっと覚えてる。静香さんのこともおばあちゃんのことも。
もしも、あなたがクルトさんに会えるのなら。もしもソルイリスの樟と繋がっているのなら。伝えてほしい。きっとあなたに会いにいく、と。
「あなたはどこの世界と繋がっているの…?」
『……世界軸ノ長樹』
「えっ?」
まさか答えが返ってくるとは思わず、ミヤコは目を見開いた。声は、頭の中に響いてくるようで、精霊《ちび》たちとよく似ている。樫の木はサワサワと葉を揺らし、どんぐりを落とした。
『世界軸ノ長樹。同ジ時間軸ニアル、世界全テヲ繋グ命ノ樹。樫、樅《もみ》、柊、樟、皆繋ガッテル』
「え、なにそれ。世界軸の長樹?というか、あなた、わたしと意思疎通ができたのね」
『長樹、人食ベナイ。デモ、人間、人身御供出スカラ、長樹、穢レル』
「えっ?待って。生贄で穢れるって、え?」
『タスケテ』
ええ……?
長樹は、神木の言うところの世界の中心にあり、物質世界と精神世界を繋げる役割にあるらしい。
神木は物質世界で生まれ根を生やし長樹と繋がり、精霊界や妖精界は聖地を通して長樹と繋がる。それぞれの世界と長樹はリサイクルの関係にあり、精神界で生成し清め浄化した魂を、物質界で生成した生物体に納め物質を操り、肉体の生気を糧にしながらその魂を育て精気を養う。その精気は長樹の糧となり、世界の格を上げながら、繋ぎ止める要の役割を果たす。
そうして精気を集めた魂は聖霊界や妖精界の聖地に集められ、魂と精気は分離される。魂はまた浄化して清められ物質界に送られ、精気は長樹の糧となる。糧を得た長樹は、その記憶を集めながら全ての世界をより良い関係へと結びつけていくーー。
とまあ、どこの哲学クラスかしらと思う。ちょっとややこしいけど、まさに三位一体のリサイクル関係だ。
ただ、そうして育った肉体と魂の関係が、時折歪むこともある。それが人間の在り方に関係してくるのだけれど、まあ、進化する中で人間に意識革命が起きた。
弱肉強食の時代から自己分析をする人が生まれ、他人軽視とか我田引水的な人間が生まれた。人々のためと言いつつ、人身御供のような生贄を作ることを覚え、その上にあぐらをかき始めた。それを進化と呼ぶのか、能力の向上と呼ぶのかはわからないけれど、神木から見て、あれ?と思うこともあったのだろう。精霊や妖精はちゃんと魂の浄化をしているのか?と疑問視し始めたところで、長樹が弱り始めていることに気がついた。そして瘴気が生まれた。
差し出された生贄や、精神汚染された魂から発生する負の感情(恐怖や無念、恨みや妬み)が長樹に届く。それを長樹が消化しきれず瘴気を作り、己を害するようになった。
そして溜まった瘴気《ガス》を神木や聖地を通して世界に排泄していく。
「まさに悪循環」
思わずこめかみを抑えた。汚れたフィルターを使って空気の循環をしているようなものだ。ますます病気になりそう。
『長樹弱ルト、世界枠、ズレル。枠、ズレルト、時空、歪ム』
………。
世界枠がずれると、時空が歪む?
『我々、神木ノ根ガ、長樹ノ根ト繋ガッテ、世界支エテル。長樹ノ根、緩ムト隙間デキル。ソコカラ人、落ッコチル。世界、入レ替ワル』
「えぇ…、瘴気だけでなく、人も落っこちちゃうんだ………。あれ?もしかして水鏡の狭間もそれっぽい?」
ミヤコはふと思い当たる節があって頭を捻った。
世界枠というのは人間界だけではなく精霊界も、果ては妖精界までもつなげている。クルトさんたちの世界とミヤコの世界が繋がったように、精霊王《おじいちゃん》はミラートに出会い、掟を破って加護を与えた。確かにそれは、精霊王の罪かもしれないけれど、その時にはすでに長樹は弱っていたのだろう。だからあちこちから聖女が現れ、異世界からも召喚できた。それにミラートに出会った頃のおじいちゃんが既に穢れ始めていたのだとしたら?だから掟を破ることも考えずに…。すでに全てに歪みが生じていたとしたら。
「なんて言うか、ややこしくてわかんないけど」
わたしの存在意義はなんだろう、とか。今のわたしは過去に居座るだけの亡霊なのか、とか。延々とうじうじ悩んでここにいても、埒があかないのは確か。何もできないと嘆くより、出来ることを探す方が建設的で、たとえこのままシェリオルの水辺で洗われようが、アーラの業火で浄化されようが、長樹に美味しい精気を与えるほうがよっぽど役に立つと言うわけで。
「ねえ、樫の木さん。わたし、助けたい人たちがたくさんいるの。もしわたしが長樹の周りの瘴気を浄化できて、長樹を元気にすることができたら、元通りになるかしらね?いるべき場所を無くした精霊たちも、元に戻ると思う?」
『自然ト生キル者、在ルベキ姿ニ戻ル。長樹、タスケテ。我、人間助ケル』
うん。
少なくとも、わたしに出来る事がある。後のことは、後で考えよう。二度とクルトさんに会えなくなるかもしれないとか、今は考えない。
だって今現在、わたしは過去にいる。起きてしまったことは変えられないけれど、今この時に長樹に干渉できるなら。瘴気を浄化して、時空枠とやらを正常に戻せば、ミラートと精霊王は出会わないかもしれないし、怨念の塊のルビラが生まれることもない。
深く考えれば、お父さんもおじさんも生まれてこないのかもしれないし、そうなったらわたしも当然生まれてこなかったりするのだけど。
わたしを失うことでクルトさんが嘆くこともなく、現世に戻ることでわたしがクルトさんを忘れることもない。わたしの心はわたしのまま。長樹に届けば、それは歴史に刻まれる。たとえ誰もわたしを覚えていなくても。
『輪廻の輪に戻れば、いずれまた会えるから。今は辛くても、来世でまた会えるから』
おばあちゃんの言う通り。
「じゃあ、行こうか」
『我、連レテク。入レ』
「は、入れ?入れってどこに、」
『アナ』
樫の木の根元がポッカリと口を開け、ミヤコは吸い込まれるように、落ちた。
ふと昔話の世界に繋がっているような気がして、笑いが込み上げた。昔話もバカにしたものではない。本当に起こったことかも知れないのだ。今のミヤコの様に。
願わくば、どうか餅をつくネズミはいませんように。
==========
おむすびころりん。
ミヤコはぼんやりと樫の木の前にいた。真木村家が衰退した理由を、おばあちゃんは知らない。ちょっと向こうへ遊びにいっていた間に数十年が過ぎ、戻ってきたら真木村の人間は誰も残っていなかったのだ。
だから二人の姉がなぜ死んでしまったのかも、姉が残した言葉も知らない。二番目の姉は普通に結婚をして、この家を出て行ったきり帰ってこなかった。君代の口から聞いた事がない姉の行方は、ミヤコにもわからなかった。
しばらくして君代が戻ってきた時に、せめて静香の言葉を伝えようと何度も話しかけてみたけれど、君代には届かず、寂しそうにしていたが、数日のうちに顔を上げて真木村家の跡地を去って行った。
誰も住まない、誰も訪れない神社はぼろぼろに風化し、ただ樫の木だけが寂しげに季節を繰り返していた。そんな恐ろしいほど長い時間も早送りのように過ぎていく。
いつまでもここに残るわけにはいかないのに、どこへも行けず瞬きを繰り返す。誰に見えるわけでもなく、ただ亡霊のように樫の木のそばに立ち尽くす。
ミヤコは、無力だ。
これは過去で、起こってしまった事柄を変えることはできないのだ。静香を助けることができなかった。君代に姉の言葉を残すことさえ。でも、姉があんな最期を迎えたと、どうやって知らせることができるだろう。
あなたの代わりに姉様が生贄になりましたなんて、どうしたっていえない。伝えられなくてよかったのかもしれない。知らない方がいい事はこの世にたくさんある。ミヤコに両親の本当の死因を伝えられなかった大人たちのように。
まあその真実すら、本当に隠された真実が裏にあったわけだけれど。
「ここの神木は樫の木なんだ……」
レアの聖地、ソルイリスの聖木は樟だった。同じ聖木だからこの世界とあちらは繋がったのだと、以前君代は言っていた。同じ神木が同じ地軸上にあったからだと。だから樟に、あんなにどんぐりがあったのだろうか。
「神木から、瘴気が湧き出るってダメでしょう?」
ミヤコはそっと、樫の木に触れた。リーン、と音がしてミヤコの頭の中に会話が流れ込んできた。
『姉様、これはクスノキというのよ』
『違うわ、君代。これは樫の木よ。ほら、どんぐりが生ってるでしょう?』
『そんなはずないわ、アルヒレイトが樟だって言ったもの』
『誰が、樟だと?』
『…あー、なんでもないわ。なんだか樟だと思っただけ』
『でも君代、樟はどんぐりを落とさないのよ』
『そうなの?』
『まあ、樟を神木にする神社も多いけれど、うちは樫の木を祀って長寿を願うのよ』
『姉様、物知りねぇ。でもこれはクスノキでいいの、わたしの中だけはね!』
……精霊王《おじいちゃん》は自分とこの聖木が樟だからこれも樟だと思ったのかな。人の記憶ってなんて曖昧。
そう。人の記憶なんてあやふやで、どこまで真実でどこから偽りなのかなんてわからない。こうだと思えば記憶の中ではそれが真実で。こんなことはなかった、と思えばきっとなかったことになってしまう。あるがままを覚えるなんて、想像力を働かせる人間には到底無理なのだろう。ある意味ありがたい。辛いことは忘れて、楽しいことだけ覚えていられる。
でも、この樫の木はきっと覚えてる。静香さんのこともおばあちゃんのことも。
もしも、あなたがクルトさんに会えるのなら。もしもソルイリスの樟と繋がっているのなら。伝えてほしい。きっとあなたに会いにいく、と。
「あなたはどこの世界と繋がっているの…?」
『……世界軸ノ長樹』
「えっ?」
まさか答えが返ってくるとは思わず、ミヤコは目を見開いた。声は、頭の中に響いてくるようで、精霊《ちび》たちとよく似ている。樫の木はサワサワと葉を揺らし、どんぐりを落とした。
『世界軸ノ長樹。同ジ時間軸ニアル、世界全テヲ繋グ命ノ樹。樫、樅《もみ》、柊、樟、皆繋ガッテル』
「え、なにそれ。世界軸の長樹?というか、あなた、わたしと意思疎通ができたのね」
『長樹、人食ベナイ。デモ、人間、人身御供出スカラ、長樹、穢レル』
「えっ?待って。生贄で穢れるって、え?」
『タスケテ』
ええ……?
長樹は、神木の言うところの世界の中心にあり、物質世界と精神世界を繋げる役割にあるらしい。
神木は物質世界で生まれ根を生やし長樹と繋がり、精霊界や妖精界は聖地を通して長樹と繋がる。それぞれの世界と長樹はリサイクルの関係にあり、精神界で生成し清め浄化した魂を、物質界で生成した生物体に納め物質を操り、肉体の生気を糧にしながらその魂を育て精気を養う。その精気は長樹の糧となり、世界の格を上げながら、繋ぎ止める要の役割を果たす。
そうして精気を集めた魂は聖霊界や妖精界の聖地に集められ、魂と精気は分離される。魂はまた浄化して清められ物質界に送られ、精気は長樹の糧となる。糧を得た長樹は、その記憶を集めながら全ての世界をより良い関係へと結びつけていくーー。
とまあ、どこの哲学クラスかしらと思う。ちょっとややこしいけど、まさに三位一体のリサイクル関係だ。
ただ、そうして育った肉体と魂の関係が、時折歪むこともある。それが人間の在り方に関係してくるのだけれど、まあ、進化する中で人間に意識革命が起きた。
弱肉強食の時代から自己分析をする人が生まれ、他人軽視とか我田引水的な人間が生まれた。人々のためと言いつつ、人身御供のような生贄を作ることを覚え、その上にあぐらをかき始めた。それを進化と呼ぶのか、能力の向上と呼ぶのかはわからないけれど、神木から見て、あれ?と思うこともあったのだろう。精霊や妖精はちゃんと魂の浄化をしているのか?と疑問視し始めたところで、長樹が弱り始めていることに気がついた。そして瘴気が生まれた。
差し出された生贄や、精神汚染された魂から発生する負の感情(恐怖や無念、恨みや妬み)が長樹に届く。それを長樹が消化しきれず瘴気を作り、己を害するようになった。
そして溜まった瘴気《ガス》を神木や聖地を通して世界に排泄していく。
「まさに悪循環」
思わずこめかみを抑えた。汚れたフィルターを使って空気の循環をしているようなものだ。ますます病気になりそう。
『長樹弱ルト、世界枠、ズレル。枠、ズレルト、時空、歪ム』
………。
世界枠がずれると、時空が歪む?
『我々、神木ノ根ガ、長樹ノ根ト繋ガッテ、世界支エテル。長樹ノ根、緩ムト隙間デキル。ソコカラ人、落ッコチル。世界、入レ替ワル』
「えぇ…、瘴気だけでなく、人も落っこちちゃうんだ………。あれ?もしかして水鏡の狭間もそれっぽい?」
ミヤコはふと思い当たる節があって頭を捻った。
世界枠というのは人間界だけではなく精霊界も、果ては妖精界までもつなげている。クルトさんたちの世界とミヤコの世界が繋がったように、精霊王《おじいちゃん》はミラートに出会い、掟を破って加護を与えた。確かにそれは、精霊王の罪かもしれないけれど、その時にはすでに長樹は弱っていたのだろう。だからあちこちから聖女が現れ、異世界からも召喚できた。それにミラートに出会った頃のおじいちゃんが既に穢れ始めていたのだとしたら?だから掟を破ることも考えずに…。すでに全てに歪みが生じていたとしたら。
「なんて言うか、ややこしくてわかんないけど」
わたしの存在意義はなんだろう、とか。今のわたしは過去に居座るだけの亡霊なのか、とか。延々とうじうじ悩んでここにいても、埒があかないのは確か。何もできないと嘆くより、出来ることを探す方が建設的で、たとえこのままシェリオルの水辺で洗われようが、アーラの業火で浄化されようが、長樹に美味しい精気を与えるほうがよっぽど役に立つと言うわけで。
「ねえ、樫の木さん。わたし、助けたい人たちがたくさんいるの。もしわたしが長樹の周りの瘴気を浄化できて、長樹を元気にすることができたら、元通りになるかしらね?いるべき場所を無くした精霊たちも、元に戻ると思う?」
『自然ト生キル者、在ルベキ姿ニ戻ル。長樹、タスケテ。我、人間助ケル』
うん。
少なくとも、わたしに出来る事がある。後のことは、後で考えよう。二度とクルトさんに会えなくなるかもしれないとか、今は考えない。
だって今現在、わたしは過去にいる。起きてしまったことは変えられないけれど、今この時に長樹に干渉できるなら。瘴気を浄化して、時空枠とやらを正常に戻せば、ミラートと精霊王は出会わないかもしれないし、怨念の塊のルビラが生まれることもない。
深く考えれば、お父さんもおじさんも生まれてこないのかもしれないし、そうなったらわたしも当然生まれてこなかったりするのだけど。
わたしを失うことでクルトさんが嘆くこともなく、現世に戻ることでわたしがクルトさんを忘れることもない。わたしの心はわたしのまま。長樹に届けば、それは歴史に刻まれる。たとえ誰もわたしを覚えていなくても。
『輪廻の輪に戻れば、いずれまた会えるから。今は辛くても、来世でまた会えるから』
おばあちゃんの言う通り。
「じゃあ、行こうか」
『我、連レテク。入レ』
「は、入れ?入れってどこに、」
『アナ』
樫の木の根元がポッカリと口を開け、ミヤコは吸い込まれるように、落ちた。
ふと昔話の世界に繋がっているような気がして、笑いが込み上げた。昔話もバカにしたものではない。本当に起こったことかも知れないのだ。今のミヤコの様に。
願わくば、どうか餅をつくネズミはいませんように。
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おむすびころりん。
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