カナリア姫の婚約破棄

里見知美

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「聞いたぞ、レニー。婚約を破棄されたとか」

 都内にあるタウンハウスに戻ると、兄であるクロヴィスがティルームにレニーを呼び出した。書類をテーブルに投げ出したところを見ると、たった今パーティ会場での情報を手に入れ読み終えたところなのだろう。レニーの侍女がお茶をすぐさま用意する。甘いものが大好きなレニーのためにはちみつがたっぷり入ったローズヒップティだ。

「お兄様。……ええ。フランシス殿下は生粋の阿呆でございますから」

「しれっと毒を吐くな。父上と母上はすでにご存知で、今頃陛下と対談中だ」

「そうでしたか。相変わらず良い耳をお持ちですこと。わたくし、もう限界。何を歌おうと、どんな楽器を奏でようとあの阿呆は耳を塞いでしまいますもの。アマディリア嬢の甘言にすっかり惑わされてしまって」

「あれは甘やかされて育ったからな。阿呆なのは生まれつきだ、仕方あるまい。気にするな。あとはなるようにしかならんだろう」

「わたくし、また婚約者に戻されるのだとしたらもう我慢なりません。これで三度目。しかも今回は王宮に来るな、金輪際歌うなとまで言われてしまいましたのよ?」

「それについては手を打ってある。心配するな」

「あら。さすがですわね?わたくし的には、別に構わないと思ったのですけれど?」

「いやいや。あの阿呆の発言如きで国を更地に戻すわけにはいかんだろう。だがいい加減、王家にはフローレス侯爵家をコケにした代償を払ってもらわねばな。二週間後の国際歌劇音楽祭フェスタヴァーレで思う存分知らしめてやろう」

「まあ、まあ!素晴らしいですわ。野外劇場でしたら、わたくしも参加して宜しくて?」

「もちろんだ。思いっきり歌うといい」

「お題目が『魔笛』や『魔王行進曲第十三番・殺戮の限りこの世のはてまで』でも?それに『絶望』も取り入れたいですわ」

「ああ。この際だ、皆にもわからせてやろう。なぜフローレス家が歌うのか」


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