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第6章 裏切りは突然に
第70話 暗躍
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「おい、ズボラ!魂の供給率はどうだ?」
「へい!現在、57%程です!」
「よし!半分を越えたか!今頃、あいつらも各地で頑張っていることだろう。このままいけば、我らの悲願の達成もそう遠くない」
「へい!そうですね!」
「引き続き、気を抜かぬよう活動をしていくぞ。今、動いている者達にもそう伝えよ」
「へい!」
「もう少しの辛抱です。あと少し、ほんの少しだけお待ち下さい………………アスターロ様」
――――――――――――――――――――
「お、肉屋の旦那!今日はいい肉仕入れたんかい?」
「………………」
「どうした?」
「仕入れてないよ……………だって、今から、もっといい肉が手に入るんだから!」
「お、おい!一体、何を…………!?」
「お~い!武器屋のオヤジ!武器の整備を頼みに来た……………ん?何をしてんだ?」
「うっひっひっひ…………今、試し斬りをするから、愛剣を研いでんのさ」
「試し斬り?」
「そうさ……………なんてったって、ちょうどいい的がやって来たんだからね」
「それって、どういう……………」
「なぁ?どんな風に斬られたい?」
「っ!!」
「すみません……………本当にすみません」
「おい!これは一体、どういうことだ!」
「すみません……………すみません」
「さっきから、そればっかじゃねぇかよ!なんで、奴隷を買いに来た俺が奴隷にされてんだよ!」
「すみません……………こうしないと私は…………」
各地では少しずつ、異変が起き始めていた。それはまるで今まで水面下で静かに進行していたことが段々と浮上してくるように。しかし、決して周りに悟られることなく、大きな騒ぎとなることもなかった。何故なら、加害者と被害者の素性が非常に多岐に渡り、そのほとんどが細々と活動をしている者達だったからだ。人々がいつも通りの日常を過ごしている裏で何者かの思惑が絡み、それがいずれ自分達をも飲み込まんとしていることなど、この時はまだ想像だにしていなかったのである。
「すみません……………すみません」
現にこうしている今も1人の男がとある命令を実行しようと動いていた。他の加害者達とは違い、罪悪感に押し潰されそうになりながらも忠実に命令に従っている。そこにどんな思いがあり、何故そんな思いをしながらも従っているのか、赤の他人には一切分からない。ただ一つ分かることといえば、月夜に照らされて露わになった、その男の左肩に彫られたマークだけだった。それはニヤけたピエロと短剣が描かれたとあるクランのマークであった。
――――――――――――――――――――
「おい、お前らはどんな感じだ?」
「こっちは本当に少しずつだけど、集まってるわ」
「オデのところも同じだど」
「アタシのとこはまだまだよ」
「えっ!?そ、そうなんですかぁ~!?」
「みんな、良くやってんねぇ~」
「これもあの御方の思し召し」
「ってか、そういうアンタはどうなのよ?人に訊いといて、自分からは何も言わないとか、あり得ないんだけど」
「まぁ、そう焦るな。今から説明してやるよ……………っと、着いたな」
「着いた?まさか、まだ始まってすら、いなかったっての!?」
「そうじゃねぇって。ここに来るまでにいくつかの村や街を通ったから、そこにはちゃんと部下を送り込んできた」
「そう…………全く、焦らせないでよ!」
「落ち着けよ。そんなに急ぎ過ぎると足元を掬われるぞ」
「アタシらの?それこそ、冗談でしょ。この世界でアタシらとまともに殺り合えるのが一体、どれだけいる?」
「だから、油断や過信は禁物だ。現に最近、とあるクランが急成長を遂げているとかで話題になってんだ。いつ、有望な奴が現れるか分からないだろ」
「有望ねぇ……………」
「はぁ、もういい。それより、俺はやっと目的地に着いて、テンションが上がってんだ!くれぐれもその邪魔をするなよ?」
「アンタの目的地って、例の?」
「ああ。ヨールの言っていた冒険者共がいるって街だ。改めて、教えてくれてサンキューな」
「いやいや。僕はただ部下からの報告を伝えただけだよ?」
「そのおかげでこれから面白いことになりそうなんだ……………自由の街、フリーダム。さて、どんなものが待っているのか。今から楽しみだ」
――――――――――――――――――――
「あれ?シンヤさん、またその魔道具を見てるんですか?」
「ああ。いつ、あいつから連絡が来るか分からないからな。何かあったら連絡してこいと言ったのは俺だ。その言い出しっぺがそれに対応できないのは論外だろ?だから、手が空いている時はなるべく連絡を受けられるようにしておきたいんだ」
「でも、そんな緊急の用事とかって、ありますかね?スタンピードもこの間、あったばかりですし。そうそう立て続けに何かが起こるとも限らないんじゃ…………」
「ああ。誰もがそう思うだろう。だが、何故かは分からないんだが……………胸騒ぎがするんだ。何か良くないことがこれから起こるかもしれない、もしくは今、まさに起こっているのかもしれない……………ってな」
「そうなんで…………っ!!」
辺りに響くホイッスルのような高音。ティアが言い切る前に通信の魔道具が反応したのだ。それは今、まさに話題に上がっていたもの。通信の相手に記載された名はブロン・レジスター、その人だった。
「へい!現在、57%程です!」
「よし!半分を越えたか!今頃、あいつらも各地で頑張っていることだろう。このままいけば、我らの悲願の達成もそう遠くない」
「へい!そうですね!」
「引き続き、気を抜かぬよう活動をしていくぞ。今、動いている者達にもそう伝えよ」
「へい!」
「もう少しの辛抱です。あと少し、ほんの少しだけお待ち下さい………………アスターロ様」
――――――――――――――――――――
「お、肉屋の旦那!今日はいい肉仕入れたんかい?」
「………………」
「どうした?」
「仕入れてないよ……………だって、今から、もっといい肉が手に入るんだから!」
「お、おい!一体、何を…………!?」
「お~い!武器屋のオヤジ!武器の整備を頼みに来た……………ん?何をしてんだ?」
「うっひっひっひ…………今、試し斬りをするから、愛剣を研いでんのさ」
「試し斬り?」
「そうさ……………なんてったって、ちょうどいい的がやって来たんだからね」
「それって、どういう……………」
「なぁ?どんな風に斬られたい?」
「っ!!」
「すみません……………本当にすみません」
「おい!これは一体、どういうことだ!」
「すみません……………すみません」
「さっきから、そればっかじゃねぇかよ!なんで、奴隷を買いに来た俺が奴隷にされてんだよ!」
「すみません……………こうしないと私は…………」
各地では少しずつ、異変が起き始めていた。それはまるで今まで水面下で静かに進行していたことが段々と浮上してくるように。しかし、決して周りに悟られることなく、大きな騒ぎとなることもなかった。何故なら、加害者と被害者の素性が非常に多岐に渡り、そのほとんどが細々と活動をしている者達だったからだ。人々がいつも通りの日常を過ごしている裏で何者かの思惑が絡み、それがいずれ自分達をも飲み込まんとしていることなど、この時はまだ想像だにしていなかったのである。
「すみません……………すみません」
現にこうしている今も1人の男がとある命令を実行しようと動いていた。他の加害者達とは違い、罪悪感に押し潰されそうになりながらも忠実に命令に従っている。そこにどんな思いがあり、何故そんな思いをしながらも従っているのか、赤の他人には一切分からない。ただ一つ分かることといえば、月夜に照らされて露わになった、その男の左肩に彫られたマークだけだった。それはニヤけたピエロと短剣が描かれたとあるクランのマークであった。
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「おい、お前らはどんな感じだ?」
「こっちは本当に少しずつだけど、集まってるわ」
「オデのところも同じだど」
「アタシのとこはまだまだよ」
「えっ!?そ、そうなんですかぁ~!?」
「みんな、良くやってんねぇ~」
「これもあの御方の思し召し」
「ってか、そういうアンタはどうなのよ?人に訊いといて、自分からは何も言わないとか、あり得ないんだけど」
「まぁ、そう焦るな。今から説明してやるよ……………っと、着いたな」
「着いた?まさか、まだ始まってすら、いなかったっての!?」
「そうじゃねぇって。ここに来るまでにいくつかの村や街を通ったから、そこにはちゃんと部下を送り込んできた」
「そう…………全く、焦らせないでよ!」
「落ち着けよ。そんなに急ぎ過ぎると足元を掬われるぞ」
「アタシらの?それこそ、冗談でしょ。この世界でアタシらとまともに殺り合えるのが一体、どれだけいる?」
「だから、油断や過信は禁物だ。現に最近、とあるクランが急成長を遂げているとかで話題になってんだ。いつ、有望な奴が現れるか分からないだろ」
「有望ねぇ……………」
「はぁ、もういい。それより、俺はやっと目的地に着いて、テンションが上がってんだ!くれぐれもその邪魔をするなよ?」
「アンタの目的地って、例の?」
「ああ。ヨールの言っていた冒険者共がいるって街だ。改めて、教えてくれてサンキューな」
「いやいや。僕はただ部下からの報告を伝えただけだよ?」
「そのおかげでこれから面白いことになりそうなんだ……………自由の街、フリーダム。さて、どんなものが待っているのか。今から楽しみだ」
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「あれ?シンヤさん、またその魔道具を見てるんですか?」
「ああ。いつ、あいつから連絡が来るか分からないからな。何かあったら連絡してこいと言ったのは俺だ。その言い出しっぺがそれに対応できないのは論外だろ?だから、手が空いている時はなるべく連絡を受けられるようにしておきたいんだ」
「でも、そんな緊急の用事とかって、ありますかね?スタンピードもこの間、あったばかりですし。そうそう立て続けに何かが起こるとも限らないんじゃ…………」
「ああ。誰もがそう思うだろう。だが、何故かは分からないんだが……………胸騒ぎがするんだ。何か良くないことがこれから起こるかもしれない、もしくは今、まさに起こっているのかもしれない……………ってな」
「そうなんで…………っ!!」
辺りに響くホイッスルのような高音。ティアが言い切る前に通信の魔道具が反応したのだ。それは今、まさに話題に上がっていたもの。通信の相手に記載された名はブロン・レジスター、その人だった。
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