俺は善人にはなれない

気衒い

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第11章 軍団戦争

第222話 軍団戦争

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広大な平原に何千という数の人間が集ま

っていた。それらは全て冒険者であり、

ある地点を境にしてそれぞれの陣営とし

て2つに分断されている。その中で一部

の者達はとあるクランマークの入った大

きな旗を掲げていた。双方、睨み合いの

ような状態がかれこれ5分程続いている

のだが、それぞれの雰囲気は対照的で一

方の陣営には張り詰めるような緊張感が

漂い、もう一方には至って普段通りの空

気が流れている。

「ではあと数分後に|軍団戦争《レギオ

ン・ウォー》を開始したいと思います。

双方、後悔のないよう、最後の最後まで

準備や装備・作戦の確認などをしっかり

と行って下さい」

そう告げたのは"笛吹き"の異名を持つ

SSランクの冒険者、ハーメルンだっ

た。彼は今回、戦いの審判及び見届け役

として、この場に立っている。そもそも

軍団戦争レギオン・ウォーとは|軍

団《レギオン》同士が日時や場所を指定

し、お互いの持つ資産や名誉、縄張りな

どを懸けて争うギルド公認の戦いであ

る。もちろん、これはお互いの同意の

下、行われるものであり、縄張りとなっ

ている国や地域に戦いの模様が映像の魔

道具によって、伝わってしまう為、原則

として死人を出してはいけないことにな

っている。しかし、過去には意図せず、

手にかけてしまうといった事例もあり、

故意でなければそのような事態に陥って

も最悪、仕方がないとされている。この

戦いの影響はとても大きく、勝てばその

軍団レギオンの信用が一気に上が

り、多方面から依頼が舞い込んでくる。

一方、負けてしまえば、信用は一気に下

がり、それが原因で軍団レギオン

がバラバラになり、深いトラウマを抱え

たまま冒険者をやめてしまうといったこ

ともある。また個人的な恨みから、家族

や親戚までもが危険に巻き込まれてしま

う可能性もあり、非常にハイリスクな戦

いとなっている訳だが、勝った時のリタ

ーンを夢見て挑む冒険者は昔から数多く

いた。ところがそれも10年程前までの

話であり、ここ数年は様々な勢力が均衡

状態を保っていて、比較的落ち着いてい

た……………ようだが、どうやら今回はそ

うではないみたいだ。

「いいか、お前ら!今回の|軍団戦争

《レギオン・ウォー》は決して負けるこ

とが許されない!心してかかれ!」

「「「「「はい!!!!!」」」」」

ピリピリした空気を放つ陣営では|軍団

長《レギオンマスター》が仲間達に喝を

入れている。それに対して、仲間達は同

意を気合の入った大声で以って返した。

「ブレス様、なんかキャラが違くない

か?普段だったら、もっと余裕ある態度

だろ」

「それはそうだろ。なんせ、今回は審判

をあの"笛吹き"か務めるんだぞ。しか

も緊張する要素はそれだけじゃない。見

届け人として、"赤虎"・"大風"・"

麗鹿"まで来てやがる。さらにそいつら

に関係するクランや冒険者もこぞって見

学する始末。おまけに何故かギルドの記

者までいやがる…………………この戦いが

終わった後、世界中の冒険者達に知れ渡

るだろうな。勝者と敗者がはっきりと」

「なんか、とんでもない事態に発展して

ないか?」

「まぁ、それだけ"黒の系譜"が注目さ

れてるってことだろ」

「俺達も傘下の1つとして、気合いを入

れなきゃな」

「ああ。こんな大規模な戦いに負けてし

まえば、俺達は終わりだ。なんせ、敗北

が知れ渡る範囲は縄張りだけじゃ済まな

いからな」

「文字通り、一世一代の大勝負って訳

か」

「俺達ですら、そんな気持ちなんだ。ブ

レス様のクランのメンバーはもっと気が

気じゃないだろうな。もし、万が一にも

負けるようなことがあれば、今の状態の

ブレス様からどんな制裁が待っているか

想像がつかない」

「おいおい。始まる前から、そんな弱気

でどうする。俺達にはあのブレス様がつ

いてるんだ。万が一なんてこと、そうそ

うない筈だ」

「だ、だよな?」

仲間に同意しつつも何故か、その冒険者

には一抹の不安が拭えずにいた。

「では皆さん、準備は整いましたか?お

返事は代表して、両陣営の|軍団長《レ

ギオンマスター》の方がお願い致しま

す」

「いつでもいけるぞ」

「同じく」

そうこうしている内に審判から声が掛か

る。それに対して、やはり対照的な表情

で返す2人のトップ。それを受けた審判

は周りを見渡して軽く微笑むと開戦の言

葉を告げた。

「只今より、"黒の系譜"対"|碧《あ

お》い鷹爪ようそう"の|軍団戦争

《レギオン・ウォー》を開始致します!

両陣営共、正々堂々とルールに則り、戦

うように!」
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