上 下
2 / 8

2

しおりを挟む
「こんにちはー。この度はありがとうございます」

玄関扉をあけると先ほどインターホンのカメラ越しにいた女が目の前に立っていた。

「沢田由美子と申します。この度は健康食品のご紹介に…」

黒に近い紺色のスーツ姿の女性。
カメラ越しに見た彼女よりもきれいな女性だった。
幼い顔立ち…というよりは優しそうな顔立ちの女性らしい雰囲気の人。
背中まで伸びたウエーブのある栗色の髪の毛が、その優しさをより思わせる。

「こちらはこういったプランになってまして」

健康食品の訪問販売を行っている会社らしい。
声も甘い感じの、眠気を誘ういい声だ。
訪問販売員としてはダメなのかもしれないが。

そしてカメラで見たときよりも豊満だった。
女性らしいシルエットを強調する、少しタイトなスーツ。
ジャケットのボタンはかろうじて止まっているといった感じで、大きな胸を支えていた。
その胸もワイシャツからはみ出んばかりに大きさを強調する。
胸元が開いているため、身長のある俺からは、上から胸の谷間が丸見えだ。

上半身だけでもこんなにすごいのに下半身もすごい。
短すぎるのではないかと思えるようなスカートからきれいで長い太ももが露になっている。
薄いストッキングがまた綺麗さをよく強調する。

アダルトビデオなんかでよく見る、エロいOLが目の前にいた。

「…という感じなんですがどうでしょう」

「どうでしょうと言われても…」

ごくりと唾を飲む。
もし仮に、アダルトビデオみたいな殺し文句を言ったらどうなるのだろう。

そうですね。もしあなたの体を好きにしてくれるなら、購入も考えますが…

なんて言ってみたら…。
いやいや、セクハラなんてレベルじゃない。
この手の話を持ちかけられることなんて多いだろうし、録音なんてされてたら人生が終わる。

「すみませんが…」

そう言って扉を閉じようとしたら、彼女は一歩前に出てそれを阻む。

「そうですよね。いきなりこんなこと言われても…困りますよね」

「…」

近い…。
目の前に大きな胸が…。

「でも、諦めません。私…」

ぐっと、顔を近づけてくる。

「営業部の中で、一番口が上手いって…言われてるんですよ?試してみますか…?」

暖かい陽気な空気が入り込んでくる。
それと一緒に彼女の香水だろうか。
女の匂いが香った。

口が上手い。
それは営業トーク?
いや彼女の顔はそうとは言ってなかった。

少し赤らめた顔を見せる彼女。

ぺろりと唇を舐める由美子さんは…先ほどまでの柔らかな暖かい雰囲気から、なまめかしい雰囲気に様変わりした。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

君の姿をまだ知らない

青春 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:7

ほろ甘さに恋する気持ちをのせて――

恋愛 / 完結 24h.ポイント:553pt お気に入り:17

硝子の大瓶

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

どこかで雨が降る音がする(分からないことを分からないままでいられる幸せ)

エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

作品の裏話や日記

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

それが恋だっていうなら…××××

BL / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:17

処理中です...