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Episode② 港区ラプソディ

第9章|弱肉強食の世界 <12>『ジュリー・マリー・キャピタル』密森司さん

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<12>

栗栖さんのところへお見舞いに行ったあと、鈴木先生と私に『ジュリー・マリー・キャピタル』から連絡があった。

メールの差出人は“みつもり つかさ”、という人だった。


――――弊社の栗栖は、諸事情によりしばらく仕事を離れることとなりました。
つきましては今後しばらく、私、密森がご対応に当たらせて頂きますので
お忙しいところ恐縮ではございますが、一度ご来社頂けませんでしょうか。―――


……そう、書いてあった。


**************************

翌日、鈴木先生と私が、『ジュリー・マリー・キャピタル』へ訪問すると、
メールの主と思われる、50代くらいの男性が受付に立っていた。

 豊かなグレーヘアと、うりざねがおにバランスのよい目鼻立ち。スリムな身体に、チャコールグレーのスリーピースのスーツを着て、水色のシャツと青紫のネクタイを合わせていた。


「鈴木先生に足立里菜さんですね。あらためまして、よろしくお願い致します。栗栖の代理を務めております、密森と申します」


 挨拶のために密森さんに歩み寄った時、彼のスーツの裾がひらりと舞ったような気がした。ふわりと煙草の香りがしたけれど、不思議と、嫌な気が起こらない。
 密森さんの持っている雰囲気が、どこか芝居じみていて、渋い二枚目俳優のようだったから、……なのかもしれない。


名刺を受け取った。
-----------------------------------------
ジュリー・マリー・キャピタル株式会社
  
            取締役パートナー
                みつもり つかさ

-----------------------------------------


―――“取締役パートナー”……。


(うわっ……“部長”でもないし……“課長”でもないし…。また新しい役職が、登場しちゃったよぉ……これ、どういう意味なんだろう……汗)


私には、さっぱり“取締役パートナー”の立ち位置がわからなかったけれど……、


こなれた三つ揃いスーツと白髪まじりのヘアから、おそらく密森さんは、「偉い人」なのだろう…………、と、とりあえず判断しておくことにした。


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