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Episode② 港区ラプソディ
第9章|弱肉強食の世界 <22>トモコ『株式会社E・M・A』に来る
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<22>
『株式会社E・M・A』の受付で待っていると、約束の時間にトモコがやってきた。
「里菜……」
「トモコ、待ってたよ」
「本当にありがとう。弁護士の先生まで紹介してくれて……」
「うん、大丈夫。IT社長のタカさんも、今日、もうすぐここに来てくれることになってるから」
トモコを、会議室に案内した。
今ごろ、鈴木先生は江鳩さんと別の個室で、産業医面談をしていると思う。
江鳩さんとの最後の面談、参加したかったな……。
鈴木先生、せっかくペアにしてもらったのに、ごめんなさい……。
私は心の中で謝った。
会議室の椅子に、トモコと並んで座る。
「今回の件……さ、彼氏に話したんだ」トモコが切り出す。
「えっ……彼氏さん、なんて? 」
「めちゃくちゃに、怒られた」
「そっか……」
「結婚の話も、白紙に戻したいって言われた」
なんと声をかけていいか、思いつかない。
「だからさ、里菜。私、もう、お金、返って来なくてもしょうがないかなって思ってるんだ。私の自業自得だから」
トモコの目が潤んで、鼻を啜っている。
「それはさ……、それは違うよ、トモコ。トモコが一生懸命働いて貯めたお金を騙し取られたんでしょ? 結婚資金にしなくても、お金はあったほうがいいよ。少しでも取り返せたら、取り返そう」
「そりゃ、そうだけど……そうだけど……ひっく……ひっく……」
泣き出したトモコに、ティッシュ箱を差し出した。
―――――トモコと出会った日のことを、思い出す。
埼玉県内の病院で働いていた頃、ACLS(二次心肺蘇生法)の院内講習会で、同じ班になった……というのが、トモコと私の出会いだった。
『株式会社E・M・A』の受付で待っていると、約束の時間にトモコがやってきた。
「里菜……」
「トモコ、待ってたよ」
「本当にありがとう。弁護士の先生まで紹介してくれて……」
「うん、大丈夫。IT社長のタカさんも、今日、もうすぐここに来てくれることになってるから」
トモコを、会議室に案内した。
今ごろ、鈴木先生は江鳩さんと別の個室で、産業医面談をしていると思う。
江鳩さんとの最後の面談、参加したかったな……。
鈴木先生、せっかくペアにしてもらったのに、ごめんなさい……。
私は心の中で謝った。
会議室の椅子に、トモコと並んで座る。
「今回の件……さ、彼氏に話したんだ」トモコが切り出す。
「えっ……彼氏さん、なんて? 」
「めちゃくちゃに、怒られた」
「そっか……」
「結婚の話も、白紙に戻したいって言われた」
なんと声をかけていいか、思いつかない。
「だからさ、里菜。私、もう、お金、返って来なくてもしょうがないかなって思ってるんだ。私の自業自得だから」
トモコの目が潤んで、鼻を啜っている。
「それはさ……、それは違うよ、トモコ。トモコが一生懸命働いて貯めたお金を騙し取られたんでしょ? 結婚資金にしなくても、お金はあったほうがいいよ。少しでも取り返せたら、取り返そう」
「そりゃ、そうだけど……そうだけど……ひっく……ひっく……」
泣き出したトモコに、ティッシュ箱を差し出した。
―――――トモコと出会った日のことを、思い出す。
埼玉県内の病院で働いていた頃、ACLS(二次心肺蘇生法)の院内講習会で、同じ班になった……というのが、トモコと私の出会いだった。
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