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Episode② 港区ラプソディ
第9章|弱肉強食の世界 <21>友達を見捨てられない
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<21>
荒巻先生と高根さんが取り持ってくれたおかげで、『株式会社E・M・A』顧問弁護士の吉田先生と、『TAU-KAPPA』の南野さんが、オフィスにたずねて来てくれる日が決まった。
その日、トモコと私も同席して、話し合いをすることになった。
ただ、その日程はちょうど………『ジュリー・マリー・キャピタル』の江鳩さんとの、最後の産業医面談の日時とバッティングしてしまった。
江鳩さんとの最後の面談、同席したかった。
でも、周囲の皆さんを巻き込んでしまった以上、私はトモコの面談に同席しなければならない。
事務所で本を読んでいた鈴木先生に声をかけて、断りを入れた。
「鈴木先生……次回の江鳩さんの面談なのですが、私、同席できなくなりました……。どうしてもその日、別の打ち合わせに、出なければならなくて……」
「打ち合わせ? 」
鈴木先生が、顔を上げてこちらを不思議そうに見た。
「はい……友人が、お金を、300万円、だまし取られてしまったので、その件で、話し合いをすることになりまして……」
「……なるほど。それは大変ですね」
「本当に、本当に申し訳ありません。でも、騙されたのは、私の大切な友人なんです。どうしても、ほっておけなくて……」
「友情は、重要なものです。ま、細かいことはよく分かりませんが、どうぞ安心してそちらの面談を優先してください。
足立さんがいなくても、こちらは大丈夫ですので」
鈴木先生は、そうクールに返事をすると、再び本に目を遣った。
――――――――――ズキン。
ちょっとだけ、胸が痛んだ。
私がいなくなっても、鈴木先生は平常運転……………。
別に、お役に立っていないことは、わかっていたけど。
面と向かってそう言われると、ちょっと傷つく。
私がクビになっても、鈴木先生はきっと、困らない。
『株式会社E・M・A』の人たちも、困らない。
私、産業保健師のお仕事、好きになれそうだったのにな……。
荒巻先生と高根さんが取り持ってくれたおかげで、『株式会社E・M・A』顧問弁護士の吉田先生と、『TAU-KAPPA』の南野さんが、オフィスにたずねて来てくれる日が決まった。
その日、トモコと私も同席して、話し合いをすることになった。
ただ、その日程はちょうど………『ジュリー・マリー・キャピタル』の江鳩さんとの、最後の産業医面談の日時とバッティングしてしまった。
江鳩さんとの最後の面談、同席したかった。
でも、周囲の皆さんを巻き込んでしまった以上、私はトモコの面談に同席しなければならない。
事務所で本を読んでいた鈴木先生に声をかけて、断りを入れた。
「鈴木先生……次回の江鳩さんの面談なのですが、私、同席できなくなりました……。どうしてもその日、別の打ち合わせに、出なければならなくて……」
「打ち合わせ? 」
鈴木先生が、顔を上げてこちらを不思議そうに見た。
「はい……友人が、お金を、300万円、だまし取られてしまったので、その件で、話し合いをすることになりまして……」
「……なるほど。それは大変ですね」
「本当に、本当に申し訳ありません。でも、騙されたのは、私の大切な友人なんです。どうしても、ほっておけなくて……」
「友情は、重要なものです。ま、細かいことはよく分かりませんが、どうぞ安心してそちらの面談を優先してください。
足立さんがいなくても、こちらは大丈夫ですので」
鈴木先生は、そうクールに返事をすると、再び本に目を遣った。
――――――――――ズキン。
ちょっとだけ、胸が痛んだ。
私がいなくなっても、鈴木先生は平常運転……………。
別に、お役に立っていないことは、わかっていたけど。
面と向かってそう言われると、ちょっと傷つく。
私がクビになっても、鈴木先生はきっと、困らない。
『株式会社E・M・A』の人たちも、困らない。
私、産業保健師のお仕事、好きになれそうだったのにな……。
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