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Episode③ 魂の居場所
第13章|あなたはここにいる <3>鈴木先生の行きつけの店!?
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<3>
「も、持野さん。持野さん~~っ」
私はパニック状態になって、『株式会社E・M・A』の事務室に駆け込み、先輩保健師の持野さんに話しかけた。
「里菜ちゃん。どうしたの」
事務所には、産業医の荒巻先生と黒木先生、それに先輩保健師の福島さんがいたけれど、みんなそれぞれ、自分の作業に没頭しているようだった。私は小声で打ち明けた。
「それがっ、わ、私、今晩、鈴木先生の、お気に入りの女の人がいるお店に、連れていかれるようで」
「えっ!? マジで? 」持野さんが大きな声を出した。
「なにそれ。里菜ちゃん。説明して! 」
「さっき、鈴木先生に、一緒に夕飯食べに行かないか、って誘われたんです。で、いいですよ、って言ったら、自分の行きつけの店に連れていくから、って言われて」
「うんうん」
「それで先生が、その場でお店に電話しはじめて。“のぞみさんが席に着いてくれる日に予約したい”って………。のぞみさんって、鈴木先生のお気に入りの人らしいんですけど、すごく人気で、普段はなかなか予約が取れないって。でも、たまたま今日キャンセルが出たから行ける、ってなって」
「“のぞみさん”………!!? それ、ラウンジか何か? 」
「わかんないんです。わかんないんですけど、多分そういうお店ですよね? 以前持野さん、“荒巻先生に高級クラブに連れていかれる”って、言ってたじゃないですか。私、そんなところ行ったことないんですけど、どうしたらいいんでしょうか」
「どうするも何も。行くしかないよ。でも里菜ちゃん、覚悟しといてね。高級店で、ナンバー取ってる子は強烈だよ。“可愛い”と“綺麗”のエッセンスを煮詰めたような顔してて、おまけにバービー人形みたいな身体してたりするのよ。それが放送コードギリギリ、みたいな露出度の高いドレス着て出てきて、甘~い声で喋ってお酒飲んでるのよ。それ見ると、帰ってからしばらく、走馬燈のように頭の中を、色んな考えが駆け巡って、ちょっと精神を病むからね。気を確かにね」
「持野さん。脅しちゃダメダメ~。鈴木先生が足立さんをそんな店に連れていくとは思えない。私はきっとその店、無難なイタリアンかフレンチだと思うよ。“のぞみさん”は多分、ソムリエとかじゃないかな~」隣の席に居た黒木先生が、ボールペンを持った手をヒラヒラさせながら言った。
すると、さっきまでイヤフォンをしてスマホを眺めていたはずの荒巻先生が、気付くと私の目の前に来ていた。
「いや、ソムリエは“席に着いてもらう”とは言わんやろ。かといってクラブも、最近は電話で指名予約したりせんし。行きつけって言うくらい馴染みの店なら、普通は女の子に、LIMEとかで直接連絡するからな~。
ってことで、俺は、“マパホテルの女社長みたいなやり手ママが仕切ってる『スナックのぞみ』に連れていかれる”、に一票やな」真剣な顔で言った。
そこに福島さんも参加してきた。
「うーん。なんだろう。俺は、鈴木先生が人間の女の人を相手に楽しくお酒を飲んでいる図が想像できないんだよな。なんかこう………“鈴木セブンと仲間たち”みたいな感じで、目がピカーって光る、未来型ロボットの女の子みたいなのに囲まれて、口数少なく座ってるイメージしか見えないよ」
「え? 鈴木セブンって何?? 」黒木先生が訊く。
「あ、い、いやそれは…………」福島さんが言い淀んだけれど、荒巻先生がかぶせてきた。
「セブン? あ~、“ウルトラマンセブン”な。わかるわ~。あいつ、そっくりやんな。じゃあ、俺と、賭ける?? 『スナックのぞみ』か、『近未来キャバクラ』か」
「いや~、さすがに『スナックのぞみ』はないと思いますけどね~、どうしよっかな~、千円なら賭けてもいいかな」福島さんが笑った。
みんな言いたい放題だ。
「とにかく里菜ちゃん、行ったら絶対、詳細を報告してね!! 」「そうそう! 」「せやで! 」「里菜ちゃん、頑張って! 」
皆に応援されて、送り出された。
「も、持野さん。持野さん~~っ」
私はパニック状態になって、『株式会社E・M・A』の事務室に駆け込み、先輩保健師の持野さんに話しかけた。
「里菜ちゃん。どうしたの」
事務所には、産業医の荒巻先生と黒木先生、それに先輩保健師の福島さんがいたけれど、みんなそれぞれ、自分の作業に没頭しているようだった。私は小声で打ち明けた。
「それがっ、わ、私、今晩、鈴木先生の、お気に入りの女の人がいるお店に、連れていかれるようで」
「えっ!? マジで? 」持野さんが大きな声を出した。
「なにそれ。里菜ちゃん。説明して! 」
「さっき、鈴木先生に、一緒に夕飯食べに行かないか、って誘われたんです。で、いいですよ、って言ったら、自分の行きつけの店に連れていくから、って言われて」
「うんうん」
「それで先生が、その場でお店に電話しはじめて。“のぞみさんが席に着いてくれる日に予約したい”って………。のぞみさんって、鈴木先生のお気に入りの人らしいんですけど、すごく人気で、普段はなかなか予約が取れないって。でも、たまたま今日キャンセルが出たから行ける、ってなって」
「“のぞみさん”………!!? それ、ラウンジか何か? 」
「わかんないんです。わかんないんですけど、多分そういうお店ですよね? 以前持野さん、“荒巻先生に高級クラブに連れていかれる”って、言ってたじゃないですか。私、そんなところ行ったことないんですけど、どうしたらいいんでしょうか」
「どうするも何も。行くしかないよ。でも里菜ちゃん、覚悟しといてね。高級店で、ナンバー取ってる子は強烈だよ。“可愛い”と“綺麗”のエッセンスを煮詰めたような顔してて、おまけにバービー人形みたいな身体してたりするのよ。それが放送コードギリギリ、みたいな露出度の高いドレス着て出てきて、甘~い声で喋ってお酒飲んでるのよ。それ見ると、帰ってからしばらく、走馬燈のように頭の中を、色んな考えが駆け巡って、ちょっと精神を病むからね。気を確かにね」
「持野さん。脅しちゃダメダメ~。鈴木先生が足立さんをそんな店に連れていくとは思えない。私はきっとその店、無難なイタリアンかフレンチだと思うよ。“のぞみさん”は多分、ソムリエとかじゃないかな~」隣の席に居た黒木先生が、ボールペンを持った手をヒラヒラさせながら言った。
すると、さっきまでイヤフォンをしてスマホを眺めていたはずの荒巻先生が、気付くと私の目の前に来ていた。
「いや、ソムリエは“席に着いてもらう”とは言わんやろ。かといってクラブも、最近は電話で指名予約したりせんし。行きつけって言うくらい馴染みの店なら、普通は女の子に、LIMEとかで直接連絡するからな~。
ってことで、俺は、“マパホテルの女社長みたいなやり手ママが仕切ってる『スナックのぞみ』に連れていかれる”、に一票やな」真剣な顔で言った。
そこに福島さんも参加してきた。
「うーん。なんだろう。俺は、鈴木先生が人間の女の人を相手に楽しくお酒を飲んでいる図が想像できないんだよな。なんかこう………“鈴木セブンと仲間たち”みたいな感じで、目がピカーって光る、未来型ロボットの女の子みたいなのに囲まれて、口数少なく座ってるイメージしか見えないよ」
「え? 鈴木セブンって何?? 」黒木先生が訊く。
「あ、い、いやそれは…………」福島さんが言い淀んだけれど、荒巻先生がかぶせてきた。
「セブン? あ~、“ウルトラマンセブン”な。わかるわ~。あいつ、そっくりやんな。じゃあ、俺と、賭ける?? 『スナックのぞみ』か、『近未来キャバクラ』か」
「いや~、さすがに『スナックのぞみ』はないと思いますけどね~、どうしよっかな~、千円なら賭けてもいいかな」福島さんが笑った。
みんな言いたい放題だ。
「とにかく里菜ちゃん、行ったら絶対、詳細を報告してね!! 」「そうそう! 」「せやで! 」「里菜ちゃん、頑張って! 」
皆に応援されて、送り出された。
応援ありがとうございます!
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