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Episode➃ 最後の一滴

産業保健師 里菜の勉強ノート㉘ 【アルコールチェック義務化】/【CAGEテスト】/【アルコール依存症】

【アルコールチェック義務化】
2022年4月1日より施行された改正道路交通法施行規則で、業務上運転のルールが変わった。これまでも緑ナンバーのトラックやタクシーなどにおいては、事業者サイドでの運転者へのアルコールチェックが義務化されていたが、2022年4月からは一定台数以上（たとえば乗用車5台以上）の「白ナンバー」の車を業務で使用させている事業者もアルコールチェック義務化の対象となった。
この改正は本来、2段構えで施行されることとなっており、予定では2022年10月1日からアルコール検知器を用いてのチェックが義務化されるはずだったが、アルコール検知器の需要急拡大により機器生産が追い付かず入手困難状態となり一時延期された。その後、アルコール検知器の供給不足が解消された2023年12月1日から検知器を用いてのアルコールチェックも義務化されることとなった。
事業所においてアルコールチェックを中心的に担当するのは「安全運転管理者」または「副安全運転管理者」で、企業が事業に使用する自動車の規定台数ごとに、これら管理者の選任人数が決められており、選任したら公安委員会に届け出をする。選任を怠ると罰則もあるので注意。
安全運転管理者は運転前後の運転者の状態を目視などで確認することで、運転者の酒気帯びの有無を確認し、酒気帯びの有無について記録し、記録を1年間保管することが義務付けられている。


【CAGEケージテスト（アルコール依存症スクリーニングテスト）】
1.飲酒量を減らさなければいけないと感じたことがありますか
2.他人があなたの飲酒を非難するので気にさわったことがありますか
3.自分の飲酒について悪いとか申し訳ないと感じたことがありますか
4.神経を落ち着かせたり，二日酔いを治すために， 「迎え酒」をしたことがありますか
という、全4問のシンプルな質問。
4項目のうち、2項目以上が「はい」の場合はアルコール依存症の可能性が高いとされ、専門的な検査を受ける必要がある。「CAGE」というテスト名の由来は（Cut down）/（Annoyed by criticism）/（Guilty feeling）/（Eye-opener）の頭文字。
➣関連ワード「ICD-10　アルコール依存症の診断基準」


【アルコール依存症】
アルコール依存症は、お酒の飲み方（飲む量、飲むタイミング、飲む状況）を自分でコントロールできなくなる病気。過量飲酒はよくないことだとわかっていても酒の量が増え、飲酒欲求がエスカレートして、飲むことをやめられなくなる。長期間多量に飲酒した結果、アルコールに対し精神依存や身体依存をきたすことで起きる場合が多いが、比較的少量の飲酒でも依存性が形成されることもある。アルコール依存症は個人の性格や意志だけの問題ではなく、精神疾患の一種と捉えられており精神科治療の対象にもなる。しかし隠れ患者数が多い病気と言われており、治療に繋がることができている患者は、全体のごく一部である。
依存が進むと家庭や社会生活に影響があってもおかまいなしに飲酒するようになり、飲酒量が増え、飲む時間や飲む場所を気にしなくなってしまう。そのため、深酒、迎え酒、飲酒運転、勤務時間中の飲酒、といったことが起きやすくなり、結果的に会社の同僚が最初の発見者になることがある。
アルコール依存症では、アルコールが体から抜けると、手の震え、イライラ、頭痛・吐き気、下痢、発汗、頻脈・動悸などの離脱症状が出てくるため、それを抑えるためにまたお酒を飲んでしまうという悪循環が起きる。
またアルコール依存症では本人は自分が病気であることを認めたがらない傾向があり、適切な相談や治療につながりにくいという難しさがある。治療を開始していったんは飲酒をやめても、再度の飲酒で依存が再発してしまうことも多い。アルコール依存症を治療するには、本人の固い意志だけでなく、長期にわたる粘り強い治療対応と周囲からのサポートが必要になる。