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饂飩
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「あ~すんまへんなぁ、お勤め中にうちの女子衆が」敦堂が話しかける。
「いや、そういう事やったら無理は言いまへん。犬はワテと一緒にここで待たして貰いまっさ。粗相をせんように見張ってまっさかいに」
「皆戻ってきたらワテが飼い主の代参(代わりにお参りする事)の犬の代参で拝ませて貰います。」
「それやったら問題おまへんやろ」
神職が何か言おうとした瞬間、敦堂はさっと小粒(昔の銀貨)を握らせ小声で「まあ美味しいもんでも食べてちょうだい」
神職はパァァァ~~ッと顔色を輝かせて「左様な事なれば当方として差し支えなし。通られい」
阿国達は(現金なもんだね)と思いながら、杉の巨木が立ち並ぶ中を参拝所へ歩き出した。
離れて行く大助に「うどん」がキュンキュン鼻を鳴らして寂しがると、ブスッとしてた女子達もキャイキャイ騒ぎだす。
敦堂は木の根元に座り込んで一同の帰りを待つ事にした。「うどん」も隣にお座りしてじっと待っている。(いや~良う躾てまんなぁ、うちの小娘どもとはえらい違いや)
半刻(約一時間)ばかり過ぎた頃に皆帰ってきた。
大助の姿が見えると「うどん」が嬉しくてたまらない様子を見せ、近づいた瞬間二度と離さないとばかりに両前足でくらいつく。
大助は困り顔だし、お日出は何とか引っ剥がそうと悪戦苦闘するしで皆大爆笑する中、敦堂は社殿に向かって歩き出した。
周りは樹齢数百年もの時を経た巨木が立ち並び、荘厳な雰囲気を醸し出している。
昔は天皇の代理である「斎王」や、高級貴族が国の繁栄を祈願するところであったが、今は一般民衆が日頃の感謝を捧げた後に自らの願い事をしても良いと言う風に変わってきているとか。
敦堂もここは作法に則って、この地へ無事に来れたことを感謝した後に「家内安全」「無病息災」「商売繁盛」を付け加える。
夏の暑さも感じさせぬ程、樹木の間を駆け抜ける薫風が心地良く、神々の住まう高天原とはこのような境地なのかと思わせる。
小悪党を自認している彼もこの心洗われるような霊気の中で、今までの自分が仕出かした事で他人を没落させたり、迷惑を掛けたことを後悔した。
(そうや、これからワテは生まれ変わって、人様のお役に立つような立派な人間にならんといかん)
自分の分と「うどん」に持たせる分の神宮大麻(御札)と御守を買い、御礼をしてから今来た道を戻って行く。
半泣きになりながら鳥居をくぐろうとすると、掃除をしていた神職が十人に増殖していた。
皆パァァァ~~ッと顔色を輝かせながら箒を操りながらこちらへ徐々に寄ってくる。
御国達は少し離れたところでニヤニヤ見ている。
敦堂は心の中で叫んだ!
「集られま~し~た~♪
チックショ~~~~~!!!」
「いや、そういう事やったら無理は言いまへん。犬はワテと一緒にここで待たして貰いまっさ。粗相をせんように見張ってまっさかいに」
「皆戻ってきたらワテが飼い主の代参(代わりにお参りする事)の犬の代参で拝ませて貰います。」
「それやったら問題おまへんやろ」
神職が何か言おうとした瞬間、敦堂はさっと小粒(昔の銀貨)を握らせ小声で「まあ美味しいもんでも食べてちょうだい」
神職はパァァァ~~ッと顔色を輝かせて「左様な事なれば当方として差し支えなし。通られい」
阿国達は(現金なもんだね)と思いながら、杉の巨木が立ち並ぶ中を参拝所へ歩き出した。
離れて行く大助に「うどん」がキュンキュン鼻を鳴らして寂しがると、ブスッとしてた女子達もキャイキャイ騒ぎだす。
敦堂は木の根元に座り込んで一同の帰りを待つ事にした。「うどん」も隣にお座りしてじっと待っている。(いや~良う躾てまんなぁ、うちの小娘どもとはえらい違いや)
半刻(約一時間)ばかり過ぎた頃に皆帰ってきた。
大助の姿が見えると「うどん」が嬉しくてたまらない様子を見せ、近づいた瞬間二度と離さないとばかりに両前足でくらいつく。
大助は困り顔だし、お日出は何とか引っ剥がそうと悪戦苦闘するしで皆大爆笑する中、敦堂は社殿に向かって歩き出した。
周りは樹齢数百年もの時を経た巨木が立ち並び、荘厳な雰囲気を醸し出している。
昔は天皇の代理である「斎王」や、高級貴族が国の繁栄を祈願するところであったが、今は一般民衆が日頃の感謝を捧げた後に自らの願い事をしても良いと言う風に変わってきているとか。
敦堂もここは作法に則って、この地へ無事に来れたことを感謝した後に「家内安全」「無病息災」「商売繁盛」を付け加える。
夏の暑さも感じさせぬ程、樹木の間を駆け抜ける薫風が心地良く、神々の住まう高天原とはこのような境地なのかと思わせる。
小悪党を自認している彼もこの心洗われるような霊気の中で、今までの自分が仕出かした事で他人を没落させたり、迷惑を掛けたことを後悔した。
(そうや、これからワテは生まれ変わって、人様のお役に立つような立派な人間にならんといかん)
自分の分と「うどん」に持たせる分の神宮大麻(御札)と御守を買い、御礼をしてから今来た道を戻って行く。
半泣きになりながら鳥居をくぐろうとすると、掃除をしていた神職が十人に増殖していた。
皆パァァァ~~ッと顔色を輝かせながら箒を操りながらこちらへ徐々に寄ってくる。
御国達は少し離れたところでニヤニヤ見ている。
敦堂は心の中で叫んだ!
「集られま~し~た~♪
チックショ~~~~~!!!」
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