【完結】社長、俺のこと好きすぎじゃないですか?―キスから始まる溺愛オフィス―

砂原紗藍

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19.社長が俺の“盾”だった

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プレゼンが半分ほど進んだ頃、唐突に佐藤課長が手を上げた。

「ちょっといいですか」
「はい」

俺が応じると、佐藤課長は眉間に皺を寄せて言った。

「この提案、本当に実現可能なんですか?」
「はい。実現可能です。具体的なスケジュールとコストは――」
「いや、そうじゃなくて」

佐藤課長は俺の言葉を遮り、鋭い視線が突き刺さる。

「あなた、本当にこれを理解して説明してるんですか?」

会議室の空気が、ぴたりと止まった。

「……どういう意味でしょうか」
「だって、その見た目で……まともに仕事できるように見えないんですよ」

ずきり、と胸の奥が痛んだ。

……まただ。
見た目だけで判断されるのは、これで何度目だろう。

「佐藤。口を慎みなさい」

山田代表が低い声で注意した。

「いえ、でも社長」

佐藤課長が口ごもりながら、あからさまに俺の髪を見る。

「こんな髪の色の人を……その、現場に出すのはどうかと。本当に信用に足るんですか?」

俺の手が、わずかに震えた。
でも――。

「佐藤課長」

翔の声が、低く響いた。

「藤堂の外見を評価基準に入れるつもりは、当社にはありません」

翔は立ち上がり、冷たい目で佐藤を見る。

「判断するのは、仕事の質だけです。……それとも、あなたは外見で部下の能力を決めるんですか?」

会議室の温度が、一気に下がった気がした。

「外見を理由に部下を貶める相手と、当社は取引を検討いたしません」
「い、いや、そのつもりでは……」

佐藤課長が言い訳を探すように口を開くが、翔は一歩も引かない。

翔の支え方は、いつもこうだ。
背中からそっと押すんじゃなく、前に立って、迷いなく切り込む。

――絶対的な味方でいてくれる、そんな強さ。

「これ以上その話題を続けるなら、商談はここで打ち切ります」

きっぱりと言い切る翔の声に、会議室が静まり返った。

佐藤課長の顔がみるみる青ざめ、山田代表は立ち上がり、深く頭を下げた。

「黒崎社長のおっしゃる通りです。弊社の監督不行き届き……心よりお詫び申し上げます」

そして、厳しい目で佐藤に向き直った。

「佐藤、謝罪しろ」
「……申し訳ございませんでした」

渋々と頭を下げる佐藤課長。
その姿を横目に、翔がわずかに身を寄せるようにして俺の前へ出た。

まるで当然のように、俺を守る位置に立つ。

視線を上げると、ちらりと翔と目が合った。
さっきまで鋼のように冷たかった翔の横顔が、俺と目が合った途端、ほんの一瞬だけ緩んだ。

――この人は、やっぱり俺の“社長”であり、“盾”なんだ。

翔が場を収めるように深く息をつき、会議室の空気がようやく動き出した。


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