【完結】ノンケだった俺が、敵対企業の年下イケメンCEOに堕とされました

砂原紗藍

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【最終章】選ばれる未来、選ぶ覚悟

2.隠さないと決めた夜

「でも……周りに、いろいろ言われるぞ」
「俺は構わない」

業界は狭い。噂はすぐに広まる。
ステラの専務が男と付き合ってるなんて。
……しかも、競合のCEOと。

父に何て説明しよう。
取締役会は? 業界の人たちは……?

黙って考えてた俺の頬に、そっと手が添えられた。

「もう隠さない。京介が俺の恋人だって、世界中に言いたい」

慧にそう言われて、思わず言葉に詰まった。

……なんでこいつは、こんな自然に殺し文句が吐けるんだ。

「俺は本気だよ。京介は?」

その問いに――少し考えた。

男同士で付き合うなんて全然未知の世界だったし、最初は流されたような感じだった。

でも、慧と出会ってから……俺は変わった。

本当の自分を取り戻した。
音楽への情熱を思い出した。

でも――

『え、あれって……』
『ステラの瀬戸専務じゃないか』
『ECHOの名波さんと……まじで?』

周りの視線が集まる。
ざわざわと、噂が広がっていく。

「京介。好きだよ」

そう囁かれて、思わず体がびくっとした。
慧にまっすぐに見つめられ、俺の心は一気に満たされていく。

「……俺も、好きだ」

小さな声で返した瞬間、いつもの香りに包まれる。
もう抵抗する間もなく、気持ちは全部、慧に持っていかれてた。



予感は、嫌になるほど当たった。
俺と慧の関係は、あっという間に業界中へ広まった。

最初は――正直、地獄だった。

SONIC WAVE本番から一週間後。
業界紙の一面に、俺たちの写真が載った。

『ステラ専務とECHOのCEO、懇親会で交際発覚』
『公私混同の疑い――利益相反か』

容赦のない見出しが並ぶ。

――音楽業界最大手ステラの瀬戸京介専務(29)が、競合企業ECHOの名波慧CEO(27)と交際していることが判明した。両社はSONIC WAVEの配信事業で協力関係にあり、利益相反の疑いが浮上している"

スマホは、取材依頼の着信で止まらない。
SNSを開けば、賛否が遠慮なく流れてくる。

『さすがに公私混同では?』
『ステラの株主はこれでいいの?』
『でも二人とも仕事はちゃんとしてるよね』
『恋愛は自由だけど、立場を考えろ』

画面を閉じても、現実は消えなかった。
――ここからが、本当の勝負だった。

取締役会。

「瀬戸専務。これは、どういうことですか」

取締役の一人、川村常務が資料を叩きつけた。

「業界紙に、あなたとECHOのCEOとの交際が報じられています」
「……事実です」
「事実? そんな軽々しく……」
「川村常務」

父が、低く口を開いた。

「京介の私生活について、取締役会で議論する必要はないでしょう」
「しかし会長。これは私生活の問題ではありません」

川村常務は立ち上がり、声を強めた。

「ECHOとの契約で、ステラは技術提供料として収益の15%を支払っています。その契約相手と専務が交際しているなど――利益相反ではないですか」

会議室がざわめいた。

「川村常務の言う通りだ」
「株主に説明がつかない」
「専務の職を辞すべきでは」

重なる声を、俺は黙って受け止めていた。

「皆さん」

俺は静かに立ち上がる。

「ECHOとの契約は、ステラにとって有益です」
「有益? 15%も支払って?」
「はい」

配布した資料を示す。

「SONIC WAVE本番配信の結果をご覧ください。視聴者数150万人。過去最高記録です」
「それは……」
「視聴者満足度98%。前年比6ポイント上昇。会員継続率も改善しています」

グラフを指で示しながら続ける。

「ECHOの技術があったからこそ、この結果が出せました」
「しかし……」

俺は取締役たちを見渡した。

「この契約は、ビジネス上の合理的判断です。私の私生活とは切り離して考えてください」
「本当に、切り離せていますか?」

川村常務が、声を荒げた。

「あなたが名波さんと交際していなければ、もっと有利な条件で契約できたのでは」

その一言に、言葉が詰まった。

――否定しきれない。

慧を想う気持ちが、“判断に影響していなかった”と言い切れる自信はなかった。

「答えられないのですか?」
「川村常務」

父の静かな声が、場を制した。

「それ以上は控えてください」
「会長……」

父は立ち上がり、会議室全体を見渡す。

「確かに、15%は高い。しかし結果は出ている。ステラの利益は前年比で増加している。京介の判断は、会社に利益をもたらした」

そして、俺に視線を向ける。

「公私の区別は必要です。しかし、京介はその一線を越えていない」
「会長……」

川村常務は、渋い顔で席に戻った。

「取締役会として、瀬戸専務の判断を支持します」

父の宣言のあと、短い沈黙が落ちる。

やがて――

「……異議なし」

取締役たちが、一人また一人と頷いた。

「では、この件はここまでとします」

会議は閉じられた。



会議室を出たところで、父に呼び止められる。

「京介」
「……はい」
「今回は、私が抑えた。しかし――」

父が、真剣な顔で俺を見た。

「次はない。公私混同と思われるようなことは、二度とするな」
「……はい」
「名波さんとの関係を続けるなら、今まで以上に結果を出せ。誰もが納得する成果を」
「わかりました」
「期待しているぞ」

そう言い残し、父はその場を去った。

――守られた。

同時に、もう逃げ道はないのだと、はっきり突きつけられていた。


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