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【第三章】本能と理性の狭間
5.αの独占欲
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夕方。
だいぶ身体が軽くなったから、ゆっくり階段を降りてリビングに向かった。
「律、大丈夫か?」
すぐに冬馬が近づいてくる。
その顔が本気で心配そうで、なんか胸がむず痒い。
「……平気」
そっけなく言った瞬間、冬馬の手が俺の腰に回った。
「っ、ちょ……何してんの」
「支えてるだけだ」
「いらない」
「いる」
俺の拒否なんて最初から聞く気ないみたいに、そのままソファまで連れていかれる。
座ると、すぐ横に冬馬も腰を下ろした。
……近い。
「律」
名前を呼ばれて、思わず身じろぎする。
「……何」
「まだΩのフェロモン出てる」
「……え、嘘」
一気に不安になる。
ヒート、もう治まったと思ってたのに。
「嘘じゃない。ヒート明けはしばらく残るんだ」
冬馬は真剣な顔で続けた。
「だから、外出は控えろ」
「……なんで」
「他のαに狙われる」
声が低くなる。
「今のお前、甘い匂いが強い。他のαが嗅いだら……多分、理性飛ぶ」
「……っ」
怖さがじわっとこみ上げる。
冬馬はすぐに俺を抱き寄せた。
「大丈夫だ。俺がいる」
落ち着いた低い声。
胸に押し付けられるみたいに抱かれて、さっきまでの不安が少しずつ薄れていく。
「だから……しばらく俺から離れるな」
「……わかった」
素直に言うと、冬馬の腕が少しだけ緩む。
代わりに、冬馬のフェロモンが俺を包むように漂ってきた。
強い匂いなのに、不思議と安心する。
冬馬の匂いだから。
「律」
「……何」
耳元に近い声で冬馬が囁く。
「俺のものだからな」
「……っ」
心臓がドキンと跳ねる。
「……知ってるよ」
小さく返すと、冬馬が俺をさらに抱き寄せた。
「他のαには絶対に渡さない」
「……当たり前」
そっけなく言ったけど、胸の奥では、嬉しくて仕方なかった。
――数日後。
「律、買い物行くぞ――」
誠さんの声がリビングに響く。
「……はいはい」
腰を上げようとした瞬間――
「待て」
冬馬が手を伸ばし、俺の腕を掴んだ。
「まだフェロモンが残ってる」
「……もう落ち着いてきたから」
「落ち着いてない」
表情はいつも通り無機質なのに、声だけ妙に強い。
「俺も行く」
「……めんどくさい」
「めんどくさくない」
押しに逆らえず、結局三人でスーパーへ向かった。
買い物中。
「律、これうまそうだな」
誠さんが得意げに肉パックを突き出してくる。
「……うん」
そっけなく返したその時――
「おい、そこのΩ」
背後から聞こえた知らない声に、全身が強張った。
振り返ると、見知らぬαが気味の悪い笑みを浮かべて立っていた。
「……何」
「いい匂いじゃん。発情期か?」
ぞわっと鳥肌が立ち、反射的に後退る。
「関係ない」
「逃げんなよ。ちょっとこっちに――」
男の手が伸びてきた瞬間。
「律に触るな」
氷のような低い声と同時に、その腕が鋭く止められた。
冬馬が男の手首を掴んでいた。
「な、なんだよ、お前……」
「律のαだ」
冬馬の瞳は冗談抜きで冷えていて、見ているだけで空気が凍る。
次の瞬間、冬馬のフェロモンが強く広がった。
完全に“威嚇”の香り。
男の顔がみるみる青ざめる。
「……っ、わ、わかった! もう近づかねぇよ!」
情けない声を残し、男は逃げるように去っていった。
静かになった通路で、冬馬がすぐに俺を抱き寄せる。
「律、大丈夫か」
「……平気」
言ったけど、握った手が震えてるのを自分でも分かっていた。
冬馬はその震えを確かめるみたいに、そっと髪を撫でる。
「怖かったんだろ」
「……別に」
「嘘つくな」
あきれたように笑いながらも、抱く腕の強さは優しい。
「しばらく外出は控えろ。危険すぎる」
「……わかった」
素直に頷く。
冬馬の腕の中だと、さっきの恐怖が少しだけ遠ざかった。
だいぶ身体が軽くなったから、ゆっくり階段を降りてリビングに向かった。
「律、大丈夫か?」
すぐに冬馬が近づいてくる。
その顔が本気で心配そうで、なんか胸がむず痒い。
「……平気」
そっけなく言った瞬間、冬馬の手が俺の腰に回った。
「っ、ちょ……何してんの」
「支えてるだけだ」
「いらない」
「いる」
俺の拒否なんて最初から聞く気ないみたいに、そのままソファまで連れていかれる。
座ると、すぐ横に冬馬も腰を下ろした。
……近い。
「律」
名前を呼ばれて、思わず身じろぎする。
「……何」
「まだΩのフェロモン出てる」
「……え、嘘」
一気に不安になる。
ヒート、もう治まったと思ってたのに。
「嘘じゃない。ヒート明けはしばらく残るんだ」
冬馬は真剣な顔で続けた。
「だから、外出は控えろ」
「……なんで」
「他のαに狙われる」
声が低くなる。
「今のお前、甘い匂いが強い。他のαが嗅いだら……多分、理性飛ぶ」
「……っ」
怖さがじわっとこみ上げる。
冬馬はすぐに俺を抱き寄せた。
「大丈夫だ。俺がいる」
落ち着いた低い声。
胸に押し付けられるみたいに抱かれて、さっきまでの不安が少しずつ薄れていく。
「だから……しばらく俺から離れるな」
「……わかった」
素直に言うと、冬馬の腕が少しだけ緩む。
代わりに、冬馬のフェロモンが俺を包むように漂ってきた。
強い匂いなのに、不思議と安心する。
冬馬の匂いだから。
「律」
「……何」
耳元に近い声で冬馬が囁く。
「俺のものだからな」
「……っ」
心臓がドキンと跳ねる。
「……知ってるよ」
小さく返すと、冬馬が俺をさらに抱き寄せた。
「他のαには絶対に渡さない」
「……当たり前」
そっけなく言ったけど、胸の奥では、嬉しくて仕方なかった。
――数日後。
「律、買い物行くぞ――」
誠さんの声がリビングに響く。
「……はいはい」
腰を上げようとした瞬間――
「待て」
冬馬が手を伸ばし、俺の腕を掴んだ。
「まだフェロモンが残ってる」
「……もう落ち着いてきたから」
「落ち着いてない」
表情はいつも通り無機質なのに、声だけ妙に強い。
「俺も行く」
「……めんどくさい」
「めんどくさくない」
押しに逆らえず、結局三人でスーパーへ向かった。
買い物中。
「律、これうまそうだな」
誠さんが得意げに肉パックを突き出してくる。
「……うん」
そっけなく返したその時――
「おい、そこのΩ」
背後から聞こえた知らない声に、全身が強張った。
振り返ると、見知らぬαが気味の悪い笑みを浮かべて立っていた。
「……何」
「いい匂いじゃん。発情期か?」
ぞわっと鳥肌が立ち、反射的に後退る。
「関係ない」
「逃げんなよ。ちょっとこっちに――」
男の手が伸びてきた瞬間。
「律に触るな」
氷のような低い声と同時に、その腕が鋭く止められた。
冬馬が男の手首を掴んでいた。
「な、なんだよ、お前……」
「律のαだ」
冬馬の瞳は冗談抜きで冷えていて、見ているだけで空気が凍る。
次の瞬間、冬馬のフェロモンが強く広がった。
完全に“威嚇”の香り。
男の顔がみるみる青ざめる。
「……っ、わ、わかった! もう近づかねぇよ!」
情けない声を残し、男は逃げるように去っていった。
静かになった通路で、冬馬がすぐに俺を抱き寄せる。
「律、大丈夫か」
「……平気」
言ったけど、握った手が震えてるのを自分でも分かっていた。
冬馬はその震えを確かめるみたいに、そっと髪を撫でる。
「怖かったんだろ」
「……別に」
「嘘つくな」
あきれたように笑いながらも、抱く腕の強さは優しい。
「しばらく外出は控えろ。危険すぎる」
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素直に頷く。
冬馬の腕の中だと、さっきの恐怖が少しだけ遠ざかった。
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