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【第四章】つがいの契約
5.αの執着
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数日後。
また城崎が屋敷へ現れた。しかも今度は息子まで連れて。
……嫌な予感しかしない。
「律様、こちらが私の息子、翔太です」
紹介された翔太は、整った顔立ちなのに目の奥が冷たい。同い年とは思えない圧があった。
「……初めまして」
一応挨拶すると、翔太がすっと距離を詰めてくる。
「初めまして、律さん」
そう言って手を取ろうとしてきたから、思わず身を引いてしまった。
「っ……」
触れられたくない、と身体が勝手に動いた。
「おや、恥ずかしがり屋なんですね」
口元だけで笑う。その軽さが余計に嫌だった。
「でも、いずれは慣れていただかないと」
「……慣れる必要はありません。俺には、もう決まった相手がいます」
はっきり言った。
ここで黙っていたら、もっと面倒になる。
「ほう。それはどなたですかな?」
言えるわけがない。
どう答えるか迷った、そのとき――
「律は、俺のつがいだ」
背後から冬馬の声。
振り返ると、いつもの落ち着いた表情の冬馬が立っていた。
「教育係の分際で、何を思い上がっているんですか」
「思い上がっているのは、そちらだ」
冬馬は一歩も引かない。
その姿が頼もしくて、胸のあたりがじんとする。
「律には、もうつがいの印がある」
冬馬が俺の首筋に視線を向ける。とっさに手で隠したが、翔太の目にはもう映っていた。
「確かに印がありますね。でも……上書きできます」
本気で言っているのがわかって、背筋が冷たくなる。
「やめろ。律には触れさせない」
冬馬の声が低く響く。
その後ろ姿に、少しだけ安心する。
「律様の父上は、我々との縁組を望んで――」
「それは嘘だ」
気づけば口が動いていた。
父さんがそんなこと言うはずがない。
「では直接――」
「いや、その必要はない」
静かな声が廊下から聞こえた。
――父さんだ。
「城崎氏、私は律と翔太くんの縁組など望んでいない。むしろ断り続けてきた」
城崎の顔がこわばる。
「律には、すでに決まった相手がいる。……冬馬くん、これからも律を頼む」
「はい。必ず守ります」
冬馬が深く頭を下げる。
その言葉に、胸が少し温かくなった。
「……覚えていろ」
城崎は吐き捨てるように言い、去っていく。
翔太も鋭い目を向けたまま後を追った。
玄関の閉まる音が響き、ようやく緊張がほどけた。
「……はぁ」
「律、大丈夫か?」
「……平気」
そう返したけど、声がわずかに震えていた。冬馬は黙って俺を引き寄せる。
「怖かったなら、そう言っていい」
「……別に」
冬馬の腕の中はあたたかくて、力が抜けていく。
「もう大丈夫だ。俺がいる」
「……うん」
冬馬が俺の頭に手を置く。
優しく撫でられるたび、安心が広がっていく。
……ああ、もう。
さっきまであんなに緊張してたのに、なんなんだろう、この落差。
「少し休むか?」
「……うん。ちょっとだけ」
冬馬の服越しに聞こえる鼓動が、やけに静かで落ち着く。
大丈夫。冬馬がいるなら、きっと。
――そう思ってしまう自分が、少しだけ恥ずかしいけど。
また城崎が屋敷へ現れた。しかも今度は息子まで連れて。
……嫌な予感しかしない。
「律様、こちらが私の息子、翔太です」
紹介された翔太は、整った顔立ちなのに目の奥が冷たい。同い年とは思えない圧があった。
「……初めまして」
一応挨拶すると、翔太がすっと距離を詰めてくる。
「初めまして、律さん」
そう言って手を取ろうとしてきたから、思わず身を引いてしまった。
「っ……」
触れられたくない、と身体が勝手に動いた。
「おや、恥ずかしがり屋なんですね」
口元だけで笑う。その軽さが余計に嫌だった。
「でも、いずれは慣れていただかないと」
「……慣れる必要はありません。俺には、もう決まった相手がいます」
はっきり言った。
ここで黙っていたら、もっと面倒になる。
「ほう。それはどなたですかな?」
言えるわけがない。
どう答えるか迷った、そのとき――
「律は、俺のつがいだ」
背後から冬馬の声。
振り返ると、いつもの落ち着いた表情の冬馬が立っていた。
「教育係の分際で、何を思い上がっているんですか」
「思い上がっているのは、そちらだ」
冬馬は一歩も引かない。
その姿が頼もしくて、胸のあたりがじんとする。
「律には、もうつがいの印がある」
冬馬が俺の首筋に視線を向ける。とっさに手で隠したが、翔太の目にはもう映っていた。
「確かに印がありますね。でも……上書きできます」
本気で言っているのがわかって、背筋が冷たくなる。
「やめろ。律には触れさせない」
冬馬の声が低く響く。
その後ろ姿に、少しだけ安心する。
「律様の父上は、我々との縁組を望んで――」
「それは嘘だ」
気づけば口が動いていた。
父さんがそんなこと言うはずがない。
「では直接――」
「いや、その必要はない」
静かな声が廊下から聞こえた。
――父さんだ。
「城崎氏、私は律と翔太くんの縁組など望んでいない。むしろ断り続けてきた」
城崎の顔がこわばる。
「律には、すでに決まった相手がいる。……冬馬くん、これからも律を頼む」
「はい。必ず守ります」
冬馬が深く頭を下げる。
その言葉に、胸が少し温かくなった。
「……覚えていろ」
城崎は吐き捨てるように言い、去っていく。
翔太も鋭い目を向けたまま後を追った。
玄関の閉まる音が響き、ようやく緊張がほどけた。
「……はぁ」
「律、大丈夫か?」
「……平気」
そう返したけど、声がわずかに震えていた。冬馬は黙って俺を引き寄せる。
「怖かったなら、そう言っていい」
「……別に」
冬馬の腕の中はあたたかくて、力が抜けていく。
「もう大丈夫だ。俺がいる」
「……うん」
冬馬が俺の頭に手を置く。
優しく撫でられるたび、安心が広がっていく。
……ああ、もう。
さっきまであんなに緊張してたのに、なんなんだろう、この落差。
「少し休むか?」
「……うん。ちょっとだけ」
冬馬の服越しに聞こえる鼓動が、やけに静かで落ち着く。
大丈夫。冬馬がいるなら、きっと。
――そう思ってしまう自分が、少しだけ恥ずかしいけど。
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