24 / 31
【第五章】つがいの名を呼ばれて
1.つがいの印と危険なα
しおりを挟む
それから数日。
冬馬は、ずっと俺のそばにいた。
朝、目を覚ますと――
「おはよう、律」
冬馬が、普通に隣で寝ていた。
「っ……! な、何で俺の部屋にいるんだよ」
「夜中にお前の泣き声が聞こえた。ほっとけるわけないだろ」
淡々と言われ、胸がちくりとする。
「……泣いてたなんて覚えてない」
「相当うなされてたぞ。来たら、お前がしがみついてきて離れなかった」
「……っ、そんなわけないだろ」
「本当だって」
冬馬が少し苦笑した。
その優しさがむずがゆくて、顔が熱くなる。
「……知らない」
「寝てる時は素直だな」
わざとらしく言うな。
でも、冬馬がそばにいてくれたことは――悔しいけど安心した。
それからの日々は穏やかだった。
朝は冬馬に起こされ、昼は一緒に勉強して、気づけば夜も隣にいて。
そんな毎日が、当たり前になりつつあった頃。
「律、今日は外に出るな」
冬馬が、いつになく真剣な声で言った。
「……なんで」
「城崎がまだ動いてる。お前を攫う計画があると情報が入った」
「は……? 冗談だろ……」
「冗談じゃない」
冬馬の目は、本気だった。
その目を見た瞬間、体がすっと冷える。
「外出は控えろ。俺がずっとそばにいる」
「……わかった」
素直にうなずいてしまう。
冬馬がいないと、不安が一気に押し寄せる。
「律」
冬馬が抱き寄せてくれる。
あたたかくて、安心して、呼吸がゆっくりになる。
「絶対に守るから」
「……うん」
冬馬の腕の中は、本当に安全な気がした。
――そして午後。
庭のバラを眺めていた。
冬馬は書斎に行っていて「すぐ戻る」と言っていた。
「……綺麗だな。冬馬にも見せたいのに」
そんな独り言を言った時だった。
「やあ、律さん」
背後から声。
振り返ると――翔太が立っていた。
「っ……! なんで……ここに」
「会いに来たんだよ」
笑みが、ぞくりとするほど冷たい。
「帰れ」
「帰らない。お前を連れて行く」
逃げようとした瞬間、腕を強く掴まれた。
「離せ!」
爪が食い込むほどの力。痛い。
「大人しくしろ。律は俺のものだ」
吐き捨てるような声に背筋が震えた。
「俺は冬馬のつがいだ!」
「関係ない。印なんて上書きできる」
首筋に顔を寄せられた瞬間、吐き気がするほどの恐怖が走る。
「やめろ!」
必死に抵抗するのに、身体が強張って動かない。
濃いαのフェロモンが、全身を締めつける。
「今度こそ、俺のものにする」
翔太が手で俺の口を塞いだ。
「声を出すな」
耳元で囁かれ、呼吸が詰まる。
「ん……っ」
膝から力が抜けていく。
冬馬……冬馬……!
声に出せないまま、胸の奥だけが必死に叫んでいた。
冬馬は、ずっと俺のそばにいた。
朝、目を覚ますと――
「おはよう、律」
冬馬が、普通に隣で寝ていた。
「っ……! な、何で俺の部屋にいるんだよ」
「夜中にお前の泣き声が聞こえた。ほっとけるわけないだろ」
淡々と言われ、胸がちくりとする。
「……泣いてたなんて覚えてない」
「相当うなされてたぞ。来たら、お前がしがみついてきて離れなかった」
「……っ、そんなわけないだろ」
「本当だって」
冬馬が少し苦笑した。
その優しさがむずがゆくて、顔が熱くなる。
「……知らない」
「寝てる時は素直だな」
わざとらしく言うな。
でも、冬馬がそばにいてくれたことは――悔しいけど安心した。
それからの日々は穏やかだった。
朝は冬馬に起こされ、昼は一緒に勉強して、気づけば夜も隣にいて。
そんな毎日が、当たり前になりつつあった頃。
「律、今日は外に出るな」
冬馬が、いつになく真剣な声で言った。
「……なんで」
「城崎がまだ動いてる。お前を攫う計画があると情報が入った」
「は……? 冗談だろ……」
「冗談じゃない」
冬馬の目は、本気だった。
その目を見た瞬間、体がすっと冷える。
「外出は控えろ。俺がずっとそばにいる」
「……わかった」
素直にうなずいてしまう。
冬馬がいないと、不安が一気に押し寄せる。
「律」
冬馬が抱き寄せてくれる。
あたたかくて、安心して、呼吸がゆっくりになる。
「絶対に守るから」
「……うん」
冬馬の腕の中は、本当に安全な気がした。
――そして午後。
庭のバラを眺めていた。
冬馬は書斎に行っていて「すぐ戻る」と言っていた。
「……綺麗だな。冬馬にも見せたいのに」
そんな独り言を言った時だった。
「やあ、律さん」
背後から声。
振り返ると――翔太が立っていた。
「っ……! なんで……ここに」
「会いに来たんだよ」
笑みが、ぞくりとするほど冷たい。
「帰れ」
「帰らない。お前を連れて行く」
逃げようとした瞬間、腕を強く掴まれた。
「離せ!」
爪が食い込むほどの力。痛い。
「大人しくしろ。律は俺のものだ」
吐き捨てるような声に背筋が震えた。
「俺は冬馬のつがいだ!」
「関係ない。印なんて上書きできる」
首筋に顔を寄せられた瞬間、吐き気がするほどの恐怖が走る。
「やめろ!」
必死に抵抗するのに、身体が強張って動かない。
濃いαのフェロモンが、全身を締めつける。
「今度こそ、俺のものにする」
翔太が手で俺の口を塞いだ。
「声を出すな」
耳元で囁かれ、呼吸が詰まる。
「ん……っ」
膝から力が抜けていく。
冬馬……冬馬……!
声に出せないまま、胸の奥だけが必死に叫んでいた。
36
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
大嫌いなアルファと結婚しまして
リミル
BL
面倒見のいい隠れSなα×アルファから転化したΩ
久世優生と神崎基城はアルファの幼馴染みで、互いのスペックを競い合うライバル同士でもあった。
パーティーの最中、基城は原因不明の体調不良に襲われ、第二性がアルファからオメガに転化したと告げられる。
オメガになったことで、優生に馬鹿にされるかと思えば、何故かプロポーズを申し込まれてしまい──!?
被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。
かとらり。
BL
セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。
オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。
それは……重度の被虐趣味だ。
虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。
だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?
そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。
ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…
巣作りΩと優しいα
伊達きよ
BL
αとΩの結婚が国によって推奨されている時代。Ωの進は自分の夢を叶えるために、流行りの「愛なしお見合い結婚」をする事にした。相手は、穏やかで優しい杵崎というαの男。好きになるつもりなんてなかったのに、気が付けば杵崎に惹かれていた進。しかし「愛なし結婚」ゆえにその気持ちを伝えられない。
そんなある日、Ωの本能行為である「巣作り」を杵崎に見られてしまい……
久しぶりの発情期に大好きな番と一緒にいるΩ
いち
BL
Ωの丞(たすく)は、自分の番であるαの かじとのことが大好き。
いつものように晩御飯を作りながら、かじとを待っていたある日、丞にヒートの症状が…周期をかじとに把握されているため、万全の用意をされるが恥ずかしさから否定的にな。しかし丞の症状は止まらなくなってしまう。Ωがよしよしされる短編です。
※pixivにも同様の作品を掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる