【完結】俺の教育係は、甘くて意地悪なエリート【α】――未熟御曹司【Ω】の恋レッスン

砂原紗藍

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【第五章】つがいの名を呼ばれて

2.守られた瞬間

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翔太が俺を引っ張ろうとした、そのとき――

「律から離れろ」

低い声が背後から響いた。

――冬馬だ。

振り返った瞬間、胸の奥が一気に熱くなる。
冬馬は、明らかに怒ってる目で翔太を睨みつけていた。

「……早く律を離せ」
「使用人のくせに邪魔するな。こいつは俺のものだ」
「違う。律は、俺のつがいだ」

その言葉と同時に一歩踏み出す冬馬。

空気がギュッと締まったみたいになって、冬馬のフェロモンが一気に広がった。
鋭いのに、不思議と怖くなくて、むしろ心臓が勝手に落ち着いていく。

「っ……!」

翔太がわずかに後ずさる。
その隙に、冬馬が俺の腕を取り、強く引き寄せた。

「律、大丈夫か?」
「……うん」

小さくうなずくのが精一杯だった。
指先がまだ震えてるの、きっと冬馬にはバレている。

「もう二度と、律には近づくな」

冬馬の声は低くて、冷たかった。
翔太は苦々しそうに顔をゆがめる。

「……覚えてろ」

そう吐き捨てて逃げていく背中を見届けた途端、全身の力が抜けた。
膝が折れそうになったところを、冬馬がすぐ支えてくれた。

「怖かったな」

あたたかい腕に包まれる。

「……怖くない」

否定したのに、冬馬の服を無意識に掴んでいた。

「嘘つくな。震えてる」

冬馬は苦笑しながら、ぎゅっと抱き締めてくれた。
その温かさに息が落ち着いていく。

「でも、もう大丈夫だ。俺がいるからな」
「……うん」

その一言で、ようやく呼吸が楽になった。

――ああ、やっぱりこの人がいてくれないと無理だ。
そう思った瞬間、涙が出そうになって慌ててこらえた。

部屋に戻ると、冬馬は迷いもなく俺をベッドに寝かせた。
額に手を当てられただけで、心臓がまた暴れ出す。

「律、休め」
「……平気だから」
「平気に見えない。顔、真っ青だ。ちゃんと休めって」

その言い方が優しくて、強くて。
俺の全部、見透かされてる気がして落ち着かないのに――嫌じゃない。

「律」

冬馬がそっと俺の手を握る。

「ごめん。俺がそばにいなかったから」
「……冬馬のせいじゃない」

小さく返す。

「ちゃんと……助けてくれただろ。だから、いい」

そう言った途端、冬馬の表情がほんの少し柔らかくなった。

「当たり前だ。お前は俺のつがいなんだから」
「……っ」

胸の奥がじんわり温かくなる。

「律、もう一度言うぞ」

冬馬がまっすぐ俺を見る。

「お前を絶対に守る。誰にも渡さない」
「……うん」

その言葉に、自然とうなずいていた。

「冬馬……」

名前を呼ぶと、軽く眉が動く。

「ん?」
「……ありがとう」
「礼なんていらない。お前を守るのは俺の役目だからな」

優しく笑う冬馬がまぶしくて、視界が滲みそうになる。

「泣きそうだな」
「……泣かないし」
「嘘だな。ほら、目が赤い」

そんなふうに言われると、もう隠せなくなる。

「……可愛い」

冬馬が言うたび、胸の奥が柔らかくなる。

「可愛くない」
「素直じゃないな。でも、そういうところも可愛い」
「……可愛くない」
「可愛い」

即答されて、言い返せずに顔をそむけた。

「……もう」

それでも胸の奥は、あたたかいままだった。

冬馬に守られてる――その事実が、どうしようもなく嬉しかった。

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