2 / 44
新婚旅行のドキドキ
1.愛と混雑の街で(ハプニング・イン・タイムズスクエア)
しおりを挟む
side 一ノ瀬 遥
俺は、かつてクズ彼氏に傷つけられ、心の半分を折られたままだった。
そんなとき、偶然出会ったのが拓実だった。
拓実は、冷静で、優しくて、でも時々少し強引だった。
最初は、その距離感に戸惑ったけど――少しずつ、俺の心の固く閉ざした扉を押し開いてくれた。
優しく触れる手に、俺は気づけば心を預けていた。
出会ってからの毎日は、奇跡の連続だった。
傷ついた心を抱えながらも、拓実がいるから、少しずつ前を向けるようになった。
嬉しいことも、悔しいことも、全部彼と一緒に分かち合いたくなった。
守られているだけじゃなく、俺も拓実を守りたい――そう思うようになった。
時にはぶつかり合い、時には甘く言葉を交わし、互いに少しずつ歩み寄って。
そんな日々の積み重ねが、今の俺たちを作っている。
そして――今。
あの日、初めて出会ったときのドキドキと緊張が、胸の奥でまだ確かに響いている。
あの時の俺たちが、こうして夫婦として人生を共に歩き始めるなんて――。
拓実との「Forever Begins Here」――
新しい人生が、ここから始まる。
ニューヨークでの結婚式を終えた翌朝、俺は拓実の腕に抱かれたまま目を覚ました。
「……ん」
拓実もゆっくりと目を開け、俺を見て微笑んだ。
「おはよう」
その笑顔に、思わず胸が温かくなる。
――今日から、俺たちは夫婦だ。
その実感が、ゆっくりと胸に広がっていった。
「今日は何する?」
「せっかくだし、観光したいな」
「じゃあ、ブルックリン橋を渡って、それからタイムズスクエアとかどう?」
「いいね」
二人でシャワーを浴び、服を整え、朝食を済ませてから街へ出る。
ブルックリン橋の上、風に吹かれながら見下ろすマンハッタンの景色に、思わず息を呑む。
「すごい……」
思わず呟くと、拓実が肩に手を置き、笑顔で自撮りを始めた。
「……ちゃんと撮れてる?」
「完璧」
二人で笑顔の写真を確認し、橋を渡りきった後、タイムズスクエアへ向かう。
人混みに圧倒されながら歩いていると、突然観光客の男性に声をかけられた。
「Excuse me! Can you take a photo?」(すみません、写真を撮ってもらえますか?)
「OK.」
拓実がすぐにスマホを手に取り構える。しかしその瞬間——
背後から走ってきた別の男が、拓実のスマホを奪い取ろうと手を伸ばしてきた。
「Wait!」
「えっ?」
一瞬何が起きたのかわからなかったが、拓実はすぐに反応し、男を追いかけた。
「拓実!」
俺も慌てて後を追った。人混みをかき分け、拓実は男に追いつき、腕を掴んだ。
「返せ!」
「Let go!」(離せ!)
男は抵抗するが、拓実の腕は揺るがない。
俺は近くの警察官に駆け寄った。
「Help! That man stole my husband’s phone!」(助けてください!あの男が夫の携帯を盗みました!)
警察官がすぐに駆けつけ、男を取り押さえた。
「Are you okay?」(大丈夫ですか?)
「Yes, we’re fine. Thank you.」(はい、大丈夫です。ありがとうございます)
スマホは無事に戻ってきた。
日本語が話せる警察官に、被害届の有無を聞かれ、拓実は首を振る。
「……いえ、スマホが戻ったので大丈夫です」
警察官が男を連れて行くのを見送った後、俺たちは少し落ち着けるベンチに腰を下ろした。
「遥、大丈夫?」
「俺は大丈夫……拓実は?」
「俺も平気」
「でも、すごかったな。あんなに素早く追いかけるなんてさ」
俺が言うと、拓実は照れくさそうに頭を掻いた。
「だって、今日撮った写真も全部入ってるし」
「……そうだったな。ありがとう」
「でも、お前がすぐ警察呼んでくれたから助かったよ」
拓実が肩を抱き寄せ、頭を優しく撫でる。
「二人で協力できたな」
「ああ。でも拓実が一緒だったから、何とかなったんだよ」
俺が笑うと、拓実も嬉しそうに微笑んだ。
「これから先も、何かあったら俺が守るから」
「……頼もしいな」
「当たり前だろ。お前は俺の大切な人なんだから」
その言葉に胸が温かくなる。
「俺も、拓実を守りたい」
「ありがとう」
少し休んでから、ホテルに戻る。
「今日はもう、ゆっくりしよう」
「そうだね」
部屋に戻ると、大きくため息をついた。
「疲れた……」
「お疲れ様」
「でも、本当に無事で良かった」
「ありがとう」
拓実は嬉しそうに微笑み、そっとキスをしてきた。
「シャワー浴びてくる」
「うん」
俺は窓の外を眺め、今日のことを反芻した。
拓実と結婚して、本当に良かった――。
そう心から思えた瞬間だった。
俺は、かつてクズ彼氏に傷つけられ、心の半分を折られたままだった。
そんなとき、偶然出会ったのが拓実だった。
拓実は、冷静で、優しくて、でも時々少し強引だった。
最初は、その距離感に戸惑ったけど――少しずつ、俺の心の固く閉ざした扉を押し開いてくれた。
優しく触れる手に、俺は気づけば心を預けていた。
出会ってからの毎日は、奇跡の連続だった。
傷ついた心を抱えながらも、拓実がいるから、少しずつ前を向けるようになった。
嬉しいことも、悔しいことも、全部彼と一緒に分かち合いたくなった。
守られているだけじゃなく、俺も拓実を守りたい――そう思うようになった。
時にはぶつかり合い、時には甘く言葉を交わし、互いに少しずつ歩み寄って。
そんな日々の積み重ねが、今の俺たちを作っている。
そして――今。
あの日、初めて出会ったときのドキドキと緊張が、胸の奥でまだ確かに響いている。
あの時の俺たちが、こうして夫婦として人生を共に歩き始めるなんて――。
拓実との「Forever Begins Here」――
新しい人生が、ここから始まる。
ニューヨークでの結婚式を終えた翌朝、俺は拓実の腕に抱かれたまま目を覚ました。
「……ん」
拓実もゆっくりと目を開け、俺を見て微笑んだ。
「おはよう」
その笑顔に、思わず胸が温かくなる。
――今日から、俺たちは夫婦だ。
その実感が、ゆっくりと胸に広がっていった。
「今日は何する?」
「せっかくだし、観光したいな」
「じゃあ、ブルックリン橋を渡って、それからタイムズスクエアとかどう?」
「いいね」
二人でシャワーを浴び、服を整え、朝食を済ませてから街へ出る。
ブルックリン橋の上、風に吹かれながら見下ろすマンハッタンの景色に、思わず息を呑む。
「すごい……」
思わず呟くと、拓実が肩に手を置き、笑顔で自撮りを始めた。
「……ちゃんと撮れてる?」
「完璧」
二人で笑顔の写真を確認し、橋を渡りきった後、タイムズスクエアへ向かう。
人混みに圧倒されながら歩いていると、突然観光客の男性に声をかけられた。
「Excuse me! Can you take a photo?」(すみません、写真を撮ってもらえますか?)
「OK.」
拓実がすぐにスマホを手に取り構える。しかしその瞬間——
背後から走ってきた別の男が、拓実のスマホを奪い取ろうと手を伸ばしてきた。
「Wait!」
「えっ?」
一瞬何が起きたのかわからなかったが、拓実はすぐに反応し、男を追いかけた。
「拓実!」
俺も慌てて後を追った。人混みをかき分け、拓実は男に追いつき、腕を掴んだ。
「返せ!」
「Let go!」(離せ!)
男は抵抗するが、拓実の腕は揺るがない。
俺は近くの警察官に駆け寄った。
「Help! That man stole my husband’s phone!」(助けてください!あの男が夫の携帯を盗みました!)
警察官がすぐに駆けつけ、男を取り押さえた。
「Are you okay?」(大丈夫ですか?)
「Yes, we’re fine. Thank you.」(はい、大丈夫です。ありがとうございます)
スマホは無事に戻ってきた。
日本語が話せる警察官に、被害届の有無を聞かれ、拓実は首を振る。
「……いえ、スマホが戻ったので大丈夫です」
警察官が男を連れて行くのを見送った後、俺たちは少し落ち着けるベンチに腰を下ろした。
「遥、大丈夫?」
「俺は大丈夫……拓実は?」
「俺も平気」
「でも、すごかったな。あんなに素早く追いかけるなんてさ」
俺が言うと、拓実は照れくさそうに頭を掻いた。
「だって、今日撮った写真も全部入ってるし」
「……そうだったな。ありがとう」
「でも、お前がすぐ警察呼んでくれたから助かったよ」
拓実が肩を抱き寄せ、頭を優しく撫でる。
「二人で協力できたな」
「ああ。でも拓実が一緒だったから、何とかなったんだよ」
俺が笑うと、拓実も嬉しそうに微笑んだ。
「これから先も、何かあったら俺が守るから」
「……頼もしいな」
「当たり前だろ。お前は俺の大切な人なんだから」
その言葉に胸が温かくなる。
「俺も、拓実を守りたい」
「ありがとう」
少し休んでから、ホテルに戻る。
「今日はもう、ゆっくりしよう」
「そうだね」
部屋に戻ると、大きくため息をついた。
「疲れた……」
「お疲れ様」
「でも、本当に無事で良かった」
「ありがとう」
拓実は嬉しそうに微笑み、そっとキスをしてきた。
「シャワー浴びてくる」
「うん」
俺は窓の外を眺め、今日のことを反芻した。
拓実と結婚して、本当に良かった――。
そう心から思えた瞬間だった。
69
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
溺愛の加速が尋常じゃない!?~味方作りに全振りしたら兄たちに溺愛されました~
液体猫(299)
BL
毎日AM2:10分に予約投稿。
*執着脳筋ヤンデレイケメン×儚げ美人受け
【《血の繋がりは"絶対"ではない。》この言葉を胸に、クリスがひたすら生きる物語】
大陸の全土を治めるアルバディア王国の第五皇子クリスは謂れのない罪を背負わされ、処刑されてしまう。
けれど次に目を覚ましたとき、彼は子供の姿になっていた。
これ幸いにと、クリスは過去の自分と同じ過ちを繰り返さないようにと自ら行動を起こす。巻き戻す前の世界とは異なるけれど同じ場所で、クリスは生き残るために知恵を振り絞っていく。
かわいい末っ子が兄たちに可愛がられ、溺愛されていくほのぼの物語。やり直しもほどほどに。罪を着せた者への復讐はついで。そんな気持ちで、新たな人生を謳歌するマイペースで、コミカル&シリアスなクリスの物語です。
主人公は後に18歳へと成長します(*・ω・)*_ _)ペコリ
⚠️濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭のみ重い展開あり。それ以降はコミカルでほのぼの✌
⚠️本格的な塗れ場シーンは三章(18歳になって)からとなります。
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話
日向汐
BL
「好きです」
「…手離せよ」
「いやだ、」
じっと見つめてくる眼力に気圧される。
ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ──。
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
純真天然イケメン大学生(21)× 気怠げ社畜お兄さん(26)
閉店間際のスーパーでの出会いから始まる、
一途でほんわか甘いラブストーリー🥐☕️💕
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
📚 **全5話/9月20日(土)完結!** ✨
短期でサクッと読める完結作です♡
ぜひぜひ
ゆるりとお楽しみください☻*
・───────────・
🧸更新のお知らせや、2人の“舞台裏”の小話🫧
❥❥❥ https://x.com/ushio_hinata_2?s=21
・───────────・
応援していただけると励みになります💪( ¨̮ 💪)
なにとぞ、よしなに♡
・───────────・
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談?本気?二人の結末は?
美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる