リスタート・ショコラ―拾われた俺、溺愛されてます―世界でいちばん甘い場所は、あなたの隣。

砂原紗藍

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新婚旅行のドキドキ

6.Roof Top, Heart Top (ルーフトップで、心も最高潮)

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「今日は何する?」
「そうだな……もう帰国まで一日しかないし、やり残したことあるか?」

拓実が肩を軽く揺らして、にこりと笑う。

そういえば……。

「自由の女神、まだ見てない……!」
「じゃあ、今日行こう」
「マジで?」
「ああ、せっかくニューヨークまで来たんだ。見ておかないと」

朝食を済ませて、フェリー乗り場へ向かう。
人混みのざわめき、街路樹の緑が朝日に照らされてきらきら光る様子に、思わず息を呑む。

「結構、人多いな」
「観光地だからね」

チケットを手に取り、船に乗り込む。
波の揺れ、海風の冷たさが顔に当たり、マンハッタンの景色が少しずつ後ろに遠ざかっていく。

「すごい……」

俺の声に拓実が笑う。肩をそっと抱き寄せてくる。

「綺麗だろ?」
「ああ……」
「写真、撮ろうか」
「ふはっ、また?」
「いいじゃん、思い出になるんだし」
「うん」

リバティ島に到着すると、目の前に自由の女神が立ちはだかる。
圧倒的な存在感に、思わず立ち止まる。

「でかい……」
「想像以上だろ?」

拓実がにこりと笑う。俺の手は自然と拓実の手に触れた。

二人で像の周りを歩きながら、俺はぽつりと漏らす。

「この旅行、本当に楽しかったよ」
「俺も。お前と一緒で、本当に良かった」
「……これからも、色んなところ行きたいね」
「ああ、どこでも連れてくよ」

握られた手の温もりが胸にじんわり広がる。

「約束だからな」
「約束する」

拓実が額にそっとキスを落とす。

「……ちょっ、人前だから」
「大丈夫。みんな女神見てるから」

悪戯っぽい笑みに、思わず顔が熱くなる。

午後、マンハッタンに戻り、ホテルの部屋に入る。
大きくため息をつくと、拓実がソファに座る俺の隣に腰を下ろした。

「……明日には帰国なんだよね」
「そうだな。早かったな」
「本当に」
「でも、楽しかっただろ?」
「うん……すごく」

抱き寄せられた瞬間、胸がぎゅっとなる。

「……拓実」
「ん?」
「ずっと一緒にいような」
「当たり前だろ。ずっと一緒だよ」

そして、再び唇が重なる。
柔らかく、でも確かな温もり。甘くて静かな幸福感が心を満たす。

――夜。

「最後の夜だし、何か特別なことしたいな」
「特別なこと?」
「うん。夜景見ながらディナーとか」
「いいね」
「じゃあ、ルーフトップバーに行こう」
「ルーフトップバー?」
「ビルの屋上にあるバーだよ。夜景がすごく綺麗なんだ」
「行きたい!」

屋上から見下ろす街の灯が、宝石みたいに煌めく。

「すごい……」
「気に入った?」
「うん、めっちゃ綺麗」

窓際の席に座り、メニューを開く。

「何にする?」
「ステーキかな」
「じゃあ俺も同じで」

シャンパンを口に運ぶと、泡が弾ける音と冷たさに思わず笑いがもれる。

「うわ、美味しい」
「本当に」

笑い合うだけで、胸が温かくなる。

「綺麗だな」
「うん」
「でも、お前の方が綺麗だよ?」
「……何言ってんの」

顔が熱くなると、拓実が真剣な瞳で言った。

「本当だって」
「もう……」
「可愛いな」

食事を終えてホテルに戻ると、拓実はそっと抱き寄せて耳元で囁く。

「最後の夜だから、ゆっくりしような」
「うん……」

新婚旅行最後の夜。二人だけの、甘く濃密な時間。
この幸せがずっと続きますように――そっと願いながら、俺は拓実の腕に包まれて眠りについた。

――翌朝。

「……もう帰らなきゃいけないんだね」
「でも、日本で新しい生活が始まるんだ」
「そうだね」

チェックアウトを済ませ、タクシーで空港へ。
窓の外を眺める街並みは、まだ鮮やかに記憶に残っている。

搭乗時間が近づき、飛行機に乗り込む。
席に座ると、拓実が肩を抱き寄せる。

「ゆっくり休めよ」
「ああ」

離陸し、街が小さくなるのを眺めながら、俺は小さく呟く。

「……さよなら、ニューヨーク」
「また来ような」

肩に頭を預けて目を閉じる。
新婚旅行は終わったけれど、これから始まる二人の生活に胸が高鳴る。

不安も少しあるけど、拓実と一緒なら、大丈夫――そう信じられた。

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