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七章 暗殺ギルド編
65話 幾度の死の上に
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心臓を貫かれた俺は光の粒子となっていく。
デスペナになるかと思われたがいつもと違って光の粒子は霧散せずに部屋の外へと集まっていき、再び体を構成し始める。
完全に体が構成されると同時に灰色の球がパリンという音を立てて砕けた。
こんなことは初めてで不思議な感覚を確かめるように両拳を握ったり開いたりする。
「分かっただろ、この部屋で死んでもその球が代わりになってくれる。お前がマシになるまで殺して殺して殺しまくってやるよ」
俺は再び透明の球に手を当てて部屋に入る。
さっきは瞬殺されたが次はそうはいかない。
より集中してサンドラを注目する。
動きの一つも逃さないように全神経を注ぐ。
赤の槍がこちらに向けられて、槍先がゆらゆらと揺れるのと同時にサンドラの体も揺れる。
一瞬のまばたきの間にサンドラは消えて、次は薙ぎ払いで胴を真っ二つにされた。
「弱すぎるな」
「くっ……」
サンドラの辛辣な言葉に返す言葉もない。
一瞬で二度も殺されたのだ。
だが、どうすればいいのか解決策が思いつく間もなくまた部屋に戻される。
「今までの相手はご丁寧に殺気を向けてくれてたようだが、そんなの三流のやることだ。私らは殺すことに集中しない。当たり前のことのように、息をするように、生活の一部のように殺す」
「……」
「まぁ、まだ分からないだろうから、分かるまで殺してやるよ。大体、相手を殺そうとしすぎるから暴走なんてするんだよ」
暴走とは俺がラフェグと戦っていたときのことだろう。
しかし、あれはどうしようもなかった気がする。
あのスキルを使うなということなのか。
「あの程度で飲まれてたらいずれ自身の殺した骸に飲まれることになるぞ。とにかく今は生き残ることに集中しときな」
正直、よく分からない。
サンドラのいうように今は生き残ることに集中するしかない。
そこから十度程俺は殺された。
最初は全く分からなかったが徐々に感覚は掴めてきてるような気はする。
殺気に反応するのではなく何となく危ないと感じたら、感じたままに行動する。
サンドラは最初と同じように消えた。
赤と黒の混じる残像だけが残っていて、はっきりとは分からないが何となくは分かる。
……脱力。
いつからか忘れていたような気がする。
相手の殺気に反応するように集中すればするほど体に力が入っていた。
攻撃に対して全身の筋肉をこわばらせていては反応が良くなる訳もない。
肩の力を抜いて自然と心臓に向かってくる赤の槍を体を捻りながら『刹那無常』を『赤竜氷牙アグスルト』に入れ替えて逸らす。
初めてサンドラの攻撃から生き残れた。
「へぇ、思いのほか早かったね。これならもう次の段階に行けそうだ」
サンドラは赤の槍の突きを躱されたがそのまま薙ぎ払いで胴体を狙ってくる。
これも必要な部位にだけ、足にだけ必要な分の力を込めて距離を離して薙ぎ払いを躱す。
生き残るのがこの訓練の目的だった筈だが、俺は何を思ったのか攻撃に転じていた。
一旦距離を離したのを活かして一気に加速し、月蝕で首を狙う。
甲高い音が鳴り響き、俺の攻撃は赤の槍に阻まれていた。
「まさか……意外だな。そんな風には見えなかったが、私は嫌いじゃないね」
「それはどうも」
何とか形にはなっているが、こちらが全力なのに対してあちらは全く本気どころではない。
「ハスタ・ルブルム、第一階位解放」
サンドラの言葉で赤の槍に文字が走り、数度光った。
しかし、攻撃が変わった様子は見られない。
と、思ったが違うようだ。
避けたと思ったのに、いや確実に避けた筈なのに槍が体を掠めた。
槍先が陽炎のようにゆらゆらと揺れ動いている。
これは厄介だな。
ギリギリで躱すことができず大きく回避しなければいけない。
だが、大きく回避してしまえばそれだけ隙もできてしまう。
そして、掠った傷痕が焼けるように熱くダメージが入っている。
「ハスタ・ルブルムは呪いの槍。その傷はただの熱傷のダメージではなく赤の呪いだぞ。さぁ、時間がなくなったな、どうする?」
どうすると言われてもやることは決まっている。
全力で動き回って撹乱したいが、常にこちらの動きを正確に捉えられている。
まだまだ速度を上げなければいけない。
限界まで速度を上げて背後を取った!!
「ガハっ!?」
サンドラの背後を取って突進したはずが、俺の体に赤の槍が刺さっている。
しかし、サンドラの右腕にはしっかりと赤の槍が握られてい……。
握られていた赤の槍は陽炎のように消えて本物は俺の体に刺さっている槍だったようだ……
「今日はここまでだな」
「まだできます!!」
サンドラは透明の球が並べられていた場所を槍で差す。
「もう球がなくなった。明日になれば復活するから今日は終わりだ」
サンドラは部屋を出てどこかへ行ってしまってすぐにメイドが入ってきて俺を別の部屋へと案内する。
「今日はここでお泊まりをお願いいたします」
メイドは俺に恭しく頭を下げる。
「あの、質問してもいいでしょうか?」
「はい、私の答えれる範囲でならお答えいたします」
メイドは少し雰囲気を重くして頷いた。
もちろん、シュバルツ家の秘密が聞きたいとかそういうわけではないので安心して欲しい。
「サンドラについて聞きたいんですけど」
さすがに今日の結果は不甲斐なさすぎた。
明日以降もう少しまともに戦闘ができるように情報収集をしておかないと。
これは卑怯とかではない。
情報収集も立派な作戦なのだ。
「サンドラ様はストルフ様のお姉様でご姉弟で拾われ、幼少期よりシュバルツ家で働いております」
あー、思ったよりもナイーブな話を聞けたけどそういうのが聞きたいわけじゃないんだけどな。
「あの二本の槍とか鎧について聞きたいんだけど」
「詳しくは知らないのですが、二本の槍は呪いの槍とサンドラ様本人はよく仰られております。それ以上はセバス様にお聞ききするのがいいかと」
「ありがとうございます」
うーん、確かに呪いの槍って言ってたな。
よし、セバスさんのとこに行ってみよう。
ジャックがどんな訓練をしてるかも気になるし。
デスペナになるかと思われたがいつもと違って光の粒子は霧散せずに部屋の外へと集まっていき、再び体を構成し始める。
完全に体が構成されると同時に灰色の球がパリンという音を立てて砕けた。
こんなことは初めてで不思議な感覚を確かめるように両拳を握ったり開いたりする。
「分かっただろ、この部屋で死んでもその球が代わりになってくれる。お前がマシになるまで殺して殺して殺しまくってやるよ」
俺は再び透明の球に手を当てて部屋に入る。
さっきは瞬殺されたが次はそうはいかない。
より集中してサンドラを注目する。
動きの一つも逃さないように全神経を注ぐ。
赤の槍がこちらに向けられて、槍先がゆらゆらと揺れるのと同時にサンドラの体も揺れる。
一瞬のまばたきの間にサンドラは消えて、次は薙ぎ払いで胴を真っ二つにされた。
「弱すぎるな」
「くっ……」
サンドラの辛辣な言葉に返す言葉もない。
一瞬で二度も殺されたのだ。
だが、どうすればいいのか解決策が思いつく間もなくまた部屋に戻される。
「今までの相手はご丁寧に殺気を向けてくれてたようだが、そんなの三流のやることだ。私らは殺すことに集中しない。当たり前のことのように、息をするように、生活の一部のように殺す」
「……」
「まぁ、まだ分からないだろうから、分かるまで殺してやるよ。大体、相手を殺そうとしすぎるから暴走なんてするんだよ」
暴走とは俺がラフェグと戦っていたときのことだろう。
しかし、あれはどうしようもなかった気がする。
あのスキルを使うなということなのか。
「あの程度で飲まれてたらいずれ自身の殺した骸に飲まれることになるぞ。とにかく今は生き残ることに集中しときな」
正直、よく分からない。
サンドラのいうように今は生き残ることに集中するしかない。
そこから十度程俺は殺された。
最初は全く分からなかったが徐々に感覚は掴めてきてるような気はする。
殺気に反応するのではなく何となく危ないと感じたら、感じたままに行動する。
サンドラは最初と同じように消えた。
赤と黒の混じる残像だけが残っていて、はっきりとは分からないが何となくは分かる。
……脱力。
いつからか忘れていたような気がする。
相手の殺気に反応するように集中すればするほど体に力が入っていた。
攻撃に対して全身の筋肉をこわばらせていては反応が良くなる訳もない。
肩の力を抜いて自然と心臓に向かってくる赤の槍を体を捻りながら『刹那無常』を『赤竜氷牙アグスルト』に入れ替えて逸らす。
初めてサンドラの攻撃から生き残れた。
「へぇ、思いのほか早かったね。これならもう次の段階に行けそうだ」
サンドラは赤の槍の突きを躱されたがそのまま薙ぎ払いで胴体を狙ってくる。
これも必要な部位にだけ、足にだけ必要な分の力を込めて距離を離して薙ぎ払いを躱す。
生き残るのがこの訓練の目的だった筈だが、俺は何を思ったのか攻撃に転じていた。
一旦距離を離したのを活かして一気に加速し、月蝕で首を狙う。
甲高い音が鳴り響き、俺の攻撃は赤の槍に阻まれていた。
「まさか……意外だな。そんな風には見えなかったが、私は嫌いじゃないね」
「それはどうも」
何とか形にはなっているが、こちらが全力なのに対してあちらは全く本気どころではない。
「ハスタ・ルブルム、第一階位解放」
サンドラの言葉で赤の槍に文字が走り、数度光った。
しかし、攻撃が変わった様子は見られない。
と、思ったが違うようだ。
避けたと思ったのに、いや確実に避けた筈なのに槍が体を掠めた。
槍先が陽炎のようにゆらゆらと揺れ動いている。
これは厄介だな。
ギリギリで躱すことができず大きく回避しなければいけない。
だが、大きく回避してしまえばそれだけ隙もできてしまう。
そして、掠った傷痕が焼けるように熱くダメージが入っている。
「ハスタ・ルブルムは呪いの槍。その傷はただの熱傷のダメージではなく赤の呪いだぞ。さぁ、時間がなくなったな、どうする?」
どうすると言われてもやることは決まっている。
全力で動き回って撹乱したいが、常にこちらの動きを正確に捉えられている。
まだまだ速度を上げなければいけない。
限界まで速度を上げて背後を取った!!
「ガハっ!?」
サンドラの背後を取って突進したはずが、俺の体に赤の槍が刺さっている。
しかし、サンドラの右腕にはしっかりと赤の槍が握られてい……。
握られていた赤の槍は陽炎のように消えて本物は俺の体に刺さっている槍だったようだ……
「今日はここまでだな」
「まだできます!!」
サンドラは透明の球が並べられていた場所を槍で差す。
「もう球がなくなった。明日になれば復活するから今日は終わりだ」
サンドラは部屋を出てどこかへ行ってしまってすぐにメイドが入ってきて俺を別の部屋へと案内する。
「今日はここでお泊まりをお願いいたします」
メイドは俺に恭しく頭を下げる。
「あの、質問してもいいでしょうか?」
「はい、私の答えれる範囲でならお答えいたします」
メイドは少し雰囲気を重くして頷いた。
もちろん、シュバルツ家の秘密が聞きたいとかそういうわけではないので安心して欲しい。
「サンドラについて聞きたいんですけど」
さすがに今日の結果は不甲斐なさすぎた。
明日以降もう少しまともに戦闘ができるように情報収集をしておかないと。
これは卑怯とかではない。
情報収集も立派な作戦なのだ。
「サンドラ様はストルフ様のお姉様でご姉弟で拾われ、幼少期よりシュバルツ家で働いております」
あー、思ったよりもナイーブな話を聞けたけどそういうのが聞きたいわけじゃないんだけどな。
「あの二本の槍とか鎧について聞きたいんだけど」
「詳しくは知らないのですが、二本の槍は呪いの槍とサンドラ様本人はよく仰られております。それ以上はセバス様にお聞ききするのがいいかと」
「ありがとうございます」
うーん、確かに呪いの槍って言ってたな。
よし、セバスさんのとこに行ってみよう。
ジャックがどんな訓練をしてるかも気になるし。
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