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14 夜会2
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ホールへの扉が開かれると、そこにいるたくさんの貴族が一斉に注目する。
いつもよりも騒めきが多いのはフィリアが居るからだろう。「あれはどちらの令嬢だ?」「隣国の王女は15歳だから違うだろう」といった声が聞こえてくる。
国王を真ん中にして、左右に王妃とフレデリックが立ち、フレデリックの隣にはランドルフ、王妃の隣にはフィリアが立った。緊張でフィリアの足は小刻みに震えていた。
「今夜は我が夜会によく集ってくれた。皆の顔が見れて嬉しく思う。本日は皆に良い知らせがある。第二王子のクリフォードの婚約がまとまったので、この場で正式に発表をしたい。残念なことに本日はクリフォードが体調不良の為に来てはいないが、皆にクリフォードの婚約者を紹介する。ポナー伯爵家のフィリア嬢がクリフォードの婚約者になった。皆も今度はそのように扱って欲しい」
フィリアは一番端にいるので貴族たちの声が聞こえてきていた。国王がフィリアの名前を挙げると、一部の令嬢や令息たちから「え、ポナーってあの枯葉の?」「別人じゃないの?」「いつもと全然違うじゃない」といった大きな囁き声が耳に入ってきた。
それでもフィリアが前へ進み出てカーテシーをすると、一斉に大きな拍手が上がった。
国王のスピーチはその後、小麦や野菜の収穫高や公共事業の話になり、さり気なく大聖堂の改修ではポナー伯爵家が資金提供をすることを貴族達に話した。
国王が「皆もこの宴を楽しんでいってくれ」と言うと、柔かいゆったりとした音楽が流れ出してきた。
フレデリックが前に進み出たので、フィリアもそれに倣う。自然な調子で手を差し出されたので、フィリアも緊張せずにフレデリックの掌の上に自分の手を重ねられた。
「焦らず、ゆっくりでいいから、段差に気を付けて」
入場前の人を寄せ付けない、硬質な雰囲気とは違う調子でフレデリックが話し掛けてきたので、フィリアは驚いた。今のフレデリックの話し方は、クリフォードの話し方によく似ていた。
(わざとクリフ様に似せて話していらっしゃるのかしら?)
王宮のホールの階段は多くないので、ゆっくり降りてもそれほど時間をかけずにホールまで降りられた。
タイミング良く一曲目の曲が流れる。一曲目が何の曲か聞いていたので、ダンスレッスンではアンナと何度も踊った曲だ。
フィリアは練習した通りに、頭の中でリズムを数えながら必死にステップを踏む。王太子殿下の足なんて絶対に踏めない。
「体が固くなってる。足を踏んでもいいから、もっと力を抜いて。少しくらいミスをしても私が何とかするから大丈夫だ」
(えっ、本当にクリフ様に言われてるみたい)
ふと見上げたら、これまで表情の無い顔しか見せて来なかったフレデリックがやわらかく笑っていた。
(うそ……。本当にそっくりだわ)
「私の事は今だけクリフと思って踊って」
「いいの、ですか?」
「ああ」
フィリアはクリフォードと踊っていることを想像しながらフレデリックに体を預けるように踊る。
フレデリックはフィリアのペースに合わせてくれるし、女性のアンナとは違ってフィリアを支える力があるので、練習の時よりも安定して踊る事ができる。一度だけ苦手なところで足を踏んでしまったが、フレデリックは痛がる素振りも見せずに、くすりと笑っていた。
(すごく、踊りやすかったわ)
ファーストダンスが終わると一斉に拍手が上がり、2曲目が始まる。1曲を何とか無事に踊り切れた。次に誰かに誘われたとしても、疲れているのでさすがに連続では踊れない。
足を踏んでしまった事を謝ろうと声を掛けようとしたら、フレデリックからはクリフォードの面影は消えていて、少し前の無機質で人を寄せ付け無い、いつもの顔に戻っていた。
「今日はありがとうございました。先ほどは失礼をしてしまい……」
謝罪をしかけたところでフレデリックが小さく首を振り、フィリアの言葉を止める。
「気にするな。私も楽しかった」
フレデリックは静かにそう言うと立ち去った。ダンスの時は夢中で気が付かなかったが、フィリアのドレスにウッディな香りが移っていた。
「フィリア様、とてもお上手でした。お飲み物をご用意致しましたので、あちらのソファでお休み下さい」
色の違う飲み物の入ったグラスを二つ持ったイーサンがタイミング良く声を掛けてくれたので、フィリアをダンスを誘おうかと動きかけた何人かの令息達は踵を返して去って行く。
「主からはファーストダンスが終わったら帰っていいとも言われているのですが、伯爵があちらで動きが取れなくなっていらっしゃいます」
イーサンの目線の先に人集りがあった。壮年くらいの男性ばかりなので、おそらくあの中心にポナー伯爵がいるのだろう。
「お父様がこんなに長く滞在しているのは久し振りだし、夜会へも何年も顔を出していなかったから、お父様とお話しをされたい方が多いのだと思うわ」
「皆さん、伯爵と仲良くなりたいんですね。馬車はこちらでご用意致しますね。少しだけお待ち下さい」
イーサンが目配せをすると、一人の給仕係の男性がやってくる。イーサンは声が届かない程度に少し離れるが、目線はフィリアから外さずに、給仕係と何かを話している。
「あらぁ、お久しぶりですわね。ポナー様」
イーサンが離れたタイミングを狙ったかのように、ギレット公爵令嬢のマレーネがソファで休んでいたフィリアの隣に腰掛けた。
「……ごきげんよう。ギレット様」
「今日もお一人ですのね。私、本日はラン様にエスコートをしていただきましたの」
(ラン様って誰かしら?)
「それはよろしゅうございました」
「クリフォード様は相変わらずお加減がよろしくないようですわね」
「ええ、今は休養する時だと思っておりますわ」
「あまりお気持ちを強くお持ちになられない方ですし、塞ぎ込む事も多いお方ですから、ポナー様もお支え甲斐がありましてね」
(クリフ様の事よね?私の知っているあの方とは全く違うのだけど、他の方の事ではないわよね?)
疑問に感じながらも、フィリアはマレーネに話を合わせる事にした。
「ええ、とても充実した毎日を送っておりますわ」
「あらぁ、本日のポナー様は珍しいお色のドレスをお召しになられてますのね」
マレーネが今気が付きました、と言わんばかりに、フィリアのドレスの色を指摘した。マレーネのドレスは、水色の生地に金糸の刺繍がふんだんに使われている。
「つい先日、自分を変えた方がいいと、アドバイスを頂きましたの」
「あら、どのようなお方からのアドバイスかしら?」
「クリフォード殿下ですわ」
マレーネが思い切り眉を顰めて、キレイな顔を歪めて笑った。
「ポナー様、嘘はいけませんわぁ。あのように無口で気弱な方がそのような事を仰るわけございませんもの……あらっ、ランさまぁ」
マレーネの視線の先にはランドルフがいた。フィリアから表情が消える。
「マレーネ、こんなところにいたのか。何故その女と仲良くしてる?」
「私たち、お友達になりましたのぉ」
「友のいない女に情けを掛けるとは、マレーネは本当に優しいのだな」
「だって婚約発表で、肝心の婚約様のエスコートが無いなんてぇ、可哀想かとおもってぇ、ふふふ」
「こんな枯葉女にキミのような美しい花のような女性が友人になってあげるなんて勿体ないな。それにこのような者と一緒にいてはキミの品格も疑われかれない。慈悲をかけてやるのはほどほどにしてやらないと……」
フィリアを貶める時のランドルフの話はいつも長く、延々と喋り続ける。婚約者時代はそれでも我慢して聞いていたが、他人になった今もランドルフはフィリアに文句を言い続けたいらしい。
これまでは心を閉ざし、置き物になったつもりでやり過ごしていたのだが、今日のフィリアにはランドルフの声がどんどん遠く感じられていく。
(……あら、変ね。暑くも無いのに汗が出てきてしまったわ。……それに何だか気持も悪いし、…呼吸も少ししにくくなってきたわ)
イーサンが真っ青な顔をして慌てて駆け寄るのを、フィリアはぼんやりと見ていた。それと少し離れたところからもう1人背の高い誰かがやってきたなあ、と思ったところでフィリアの意識は途切れてしまった。
いつもよりも騒めきが多いのはフィリアが居るからだろう。「あれはどちらの令嬢だ?」「隣国の王女は15歳だから違うだろう」といった声が聞こえてくる。
国王を真ん中にして、左右に王妃とフレデリックが立ち、フレデリックの隣にはランドルフ、王妃の隣にはフィリアが立った。緊張でフィリアの足は小刻みに震えていた。
「今夜は我が夜会によく集ってくれた。皆の顔が見れて嬉しく思う。本日は皆に良い知らせがある。第二王子のクリフォードの婚約がまとまったので、この場で正式に発表をしたい。残念なことに本日はクリフォードが体調不良の為に来てはいないが、皆にクリフォードの婚約者を紹介する。ポナー伯爵家のフィリア嬢がクリフォードの婚約者になった。皆も今度はそのように扱って欲しい」
フィリアは一番端にいるので貴族たちの声が聞こえてきていた。国王がフィリアの名前を挙げると、一部の令嬢や令息たちから「え、ポナーってあの枯葉の?」「別人じゃないの?」「いつもと全然違うじゃない」といった大きな囁き声が耳に入ってきた。
それでもフィリアが前へ進み出てカーテシーをすると、一斉に大きな拍手が上がった。
国王のスピーチはその後、小麦や野菜の収穫高や公共事業の話になり、さり気なく大聖堂の改修ではポナー伯爵家が資金提供をすることを貴族達に話した。
国王が「皆もこの宴を楽しんでいってくれ」と言うと、柔かいゆったりとした音楽が流れ出してきた。
フレデリックが前に進み出たので、フィリアもそれに倣う。自然な調子で手を差し出されたので、フィリアも緊張せずにフレデリックの掌の上に自分の手を重ねられた。
「焦らず、ゆっくりでいいから、段差に気を付けて」
入場前の人を寄せ付けない、硬質な雰囲気とは違う調子でフレデリックが話し掛けてきたので、フィリアは驚いた。今のフレデリックの話し方は、クリフォードの話し方によく似ていた。
(わざとクリフ様に似せて話していらっしゃるのかしら?)
王宮のホールの階段は多くないので、ゆっくり降りてもそれほど時間をかけずにホールまで降りられた。
タイミング良く一曲目の曲が流れる。一曲目が何の曲か聞いていたので、ダンスレッスンではアンナと何度も踊った曲だ。
フィリアは練習した通りに、頭の中でリズムを数えながら必死にステップを踏む。王太子殿下の足なんて絶対に踏めない。
「体が固くなってる。足を踏んでもいいから、もっと力を抜いて。少しくらいミスをしても私が何とかするから大丈夫だ」
(えっ、本当にクリフ様に言われてるみたい)
ふと見上げたら、これまで表情の無い顔しか見せて来なかったフレデリックがやわらかく笑っていた。
(うそ……。本当にそっくりだわ)
「私の事は今だけクリフと思って踊って」
「いいの、ですか?」
「ああ」
フィリアはクリフォードと踊っていることを想像しながらフレデリックに体を預けるように踊る。
フレデリックはフィリアのペースに合わせてくれるし、女性のアンナとは違ってフィリアを支える力があるので、練習の時よりも安定して踊る事ができる。一度だけ苦手なところで足を踏んでしまったが、フレデリックは痛がる素振りも見せずに、くすりと笑っていた。
(すごく、踊りやすかったわ)
ファーストダンスが終わると一斉に拍手が上がり、2曲目が始まる。1曲を何とか無事に踊り切れた。次に誰かに誘われたとしても、疲れているのでさすがに連続では踊れない。
足を踏んでしまった事を謝ろうと声を掛けようとしたら、フレデリックからはクリフォードの面影は消えていて、少し前の無機質で人を寄せ付け無い、いつもの顔に戻っていた。
「今日はありがとうございました。先ほどは失礼をしてしまい……」
謝罪をしかけたところでフレデリックが小さく首を振り、フィリアの言葉を止める。
「気にするな。私も楽しかった」
フレデリックは静かにそう言うと立ち去った。ダンスの時は夢中で気が付かなかったが、フィリアのドレスにウッディな香りが移っていた。
「フィリア様、とてもお上手でした。お飲み物をご用意致しましたので、あちらのソファでお休み下さい」
色の違う飲み物の入ったグラスを二つ持ったイーサンがタイミング良く声を掛けてくれたので、フィリアをダンスを誘おうかと動きかけた何人かの令息達は踵を返して去って行く。
「主からはファーストダンスが終わったら帰っていいとも言われているのですが、伯爵があちらで動きが取れなくなっていらっしゃいます」
イーサンの目線の先に人集りがあった。壮年くらいの男性ばかりなので、おそらくあの中心にポナー伯爵がいるのだろう。
「お父様がこんなに長く滞在しているのは久し振りだし、夜会へも何年も顔を出していなかったから、お父様とお話しをされたい方が多いのだと思うわ」
「皆さん、伯爵と仲良くなりたいんですね。馬車はこちらでご用意致しますね。少しだけお待ち下さい」
イーサンが目配せをすると、一人の給仕係の男性がやってくる。イーサンは声が届かない程度に少し離れるが、目線はフィリアから外さずに、給仕係と何かを話している。
「あらぁ、お久しぶりですわね。ポナー様」
イーサンが離れたタイミングを狙ったかのように、ギレット公爵令嬢のマレーネがソファで休んでいたフィリアの隣に腰掛けた。
「……ごきげんよう。ギレット様」
「今日もお一人ですのね。私、本日はラン様にエスコートをしていただきましたの」
(ラン様って誰かしら?)
「それはよろしゅうございました」
「クリフォード様は相変わらずお加減がよろしくないようですわね」
「ええ、今は休養する時だと思っておりますわ」
「あまりお気持ちを強くお持ちになられない方ですし、塞ぎ込む事も多いお方ですから、ポナー様もお支え甲斐がありましてね」
(クリフ様の事よね?私の知っているあの方とは全く違うのだけど、他の方の事ではないわよね?)
疑問に感じながらも、フィリアはマレーネに話を合わせる事にした。
「ええ、とても充実した毎日を送っておりますわ」
「あらぁ、本日のポナー様は珍しいお色のドレスをお召しになられてますのね」
マレーネが今気が付きました、と言わんばかりに、フィリアのドレスの色を指摘した。マレーネのドレスは、水色の生地に金糸の刺繍がふんだんに使われている。
「つい先日、自分を変えた方がいいと、アドバイスを頂きましたの」
「あら、どのようなお方からのアドバイスかしら?」
「クリフォード殿下ですわ」
マレーネが思い切り眉を顰めて、キレイな顔を歪めて笑った。
「ポナー様、嘘はいけませんわぁ。あのように無口で気弱な方がそのような事を仰るわけございませんもの……あらっ、ランさまぁ」
マレーネの視線の先にはランドルフがいた。フィリアから表情が消える。
「マレーネ、こんなところにいたのか。何故その女と仲良くしてる?」
「私たち、お友達になりましたのぉ」
「友のいない女に情けを掛けるとは、マレーネは本当に優しいのだな」
「だって婚約発表で、肝心の婚約様のエスコートが無いなんてぇ、可哀想かとおもってぇ、ふふふ」
「こんな枯葉女にキミのような美しい花のような女性が友人になってあげるなんて勿体ないな。それにこのような者と一緒にいてはキミの品格も疑われかれない。慈悲をかけてやるのはほどほどにしてやらないと……」
フィリアを貶める時のランドルフの話はいつも長く、延々と喋り続ける。婚約者時代はそれでも我慢して聞いていたが、他人になった今もランドルフはフィリアに文句を言い続けたいらしい。
これまでは心を閉ざし、置き物になったつもりでやり過ごしていたのだが、今日のフィリアにはランドルフの声がどんどん遠く感じられていく。
(……あら、変ね。暑くも無いのに汗が出てきてしまったわ。……それに何だか気持も悪いし、…呼吸も少ししにくくなってきたわ)
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