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デートの時間よ♡・前編

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キョウシロウが12の頃、祖母のミサコが
亡くなった、ミサコは亡くなる直前迄
キョウシロウとキョウシロウの
祖父であるリュウジロウの
二人の身を最後の最後まで案じていた
この世から旅立つ寸前まで
気高くそして美しい人だった
仲睦まじく長年連れ添った間柄だが
祖父のリュウジロウは厳格で
孫のキョウシロウの前では
別れた後も決して涙を見せなかった
厳格な祖父につられキョウシロウも
また泣かなかった、近親者のみで行われた
葬式も納骨も程なく終わり
数日後のある朝である

「…こんにちわ、リュウジロウさん、いらっしゃいますか?」

玄関の方で女性の声がした
キョウシロウは初めて聞く声だ
待っていたとばかりリュウジロウは
ゆっくりと立ち上がってから
キョウシロウに振り返り穏やかに言う

「…キョウシロウ…お前も来なさい」
「わかった」

玄関には黒艶のウェーブのかかった
ミディアムボブの髪型
薄紫のワンピース姿の
淑やかで清楚な二十歳位の
スタイルの良い美しい女性が居た

「…キョウシロウ、此方はユカリさん…
ミサコ婆様の日本舞踊の生徒さんだ
ほれ、挨拶しなさい」
「孫の神木キョウシロウです、初めまして、よろしくお願いします」
「…初めまして、ミサコさんに
お世話になった、都姫ユカリです
よろしくね、キョウシロウさん」

穏やかに微笑むユカリの姿に
キョウシロウの胸がときめく
胸が張り裂けそうなぐらい
正に一目惚れの瞬間である

「…この度は、御愁傷様でございました…」
「…丁寧にありがとうございます…
部屋でお茶でもどうぞ、さぁ、どうぞお上がりください」
「お邪魔します…」

ユカリを和室のお茶の間に招き入れ
キョウシロウが人数分の
お茶とお茶請けを準備し
座卓テーブル置かれると
少しの間、静寂の時間が流れた

「さて…儂は少し出掛けてくる
…ユカリさん…もし良ければ
儂が帰って来るまで
キョウシロウの話相手をしてもらえるかな?」
「ええ、この後は用事も無いので
構いませんよ」
「…ではキョウシロウ、ユカリさんに失礼の無いようにな」
「うん、気を付けてね爺ちゃん」
「ああ、行って来ます」

そう穏やかに微笑むリュウジロウは
少し哀しそうな瞳をしている様に
キョウシロウは思えた
一人になりたいのだろう
しかし、キョウシロウを
一人放っておく事も出来ないから
ユカリに任せたのだろう
それほどに祖父が信頼を置く女性に
キョウシロウは少し不思議に思っていた

「…ねえ、差し支え無ければ…
キョウちゃんって、呼んでも良いかしら?」
「へっ?えっ?構いませんよ?」
「えへへっ、キョウちゃん♪」

心がくすぐったくなる様な
屈託のないユカリの可愛らしい笑顔
ユカリのキョウシロウに対しての距離感は
錯覚してしまう様に物凄く近かった
それから、ユカリが何時からミサコの元で
日本舞踊を習ってたとか
亡くなったミサコが生前どう言った人
だったとか、そう言った何気ない
話をしているうち、キョウシロウの中で
祖母との思い出が蘇って来た
真面目で厳しくもとても優しかった祖母
記憶の泉からそれは勢い良く
溢れて、静かに一筋、頬を流れる

「…キョウちゃん…」
「…すいません…何だか…止まらなくって」

ユカリは静かにキョウシロウの隣へ座り
彼を柔らかく優しく胸に抱く
爽やかに甘い良い香りがした
母親が居たらこんな感じだったのだろうか?
ただひたすらに
優しく、柔らかく、暖かく
触れているだけで、落ち着く

「…キョウちゃん…無理しないで…いっぱい泣いて良いんだよ…」

頭を優しく撫でられて
耳に響く穏やかなユカリの優しい声が
とても心地良かった、心の奥底から
立ち上り込み上げてくる感情
キョウシロウの瞳から涙が溢れ出る

「…落ち着くまで一緒に居てあげるから…
思う存分、私の胸でいっぱい泣いて良いんだよ…キョウちゃん」

声にならない声で
キョウシロウは泣き続けた
ユカリはただ黙ってキョウシロウを
優しく抱き頭を撫でた
ひとしきり気持ちを吐き出すと
徐々に落ち着いて来た

「…なんか…ごめんなさいユカリさん…」
「ふふ…気にしないでいいのよ
多分…この為にリュウジロウさんも
席を外したと思うし…」

ひとしきり泣いた後
キョウシロウの心は
完全に落ち着きを取り戻した
時間はそろそろ夕方だ
微笑むユカリの穏やかな言葉は
キョウシロウの心をとても落ち着かせる

「…爺ちゃんも…俺と同じだろうな…」
「…ふふ…キョウちゃんは鋭いね」

玄関の音が鳴り響く、リュウジロウが帰って来た。

「…ただいま」
「おかえり爺ちゃん」

リュウジロウの目は少し赤い気がしたが
キョウシロウは何も言わずに祖父を迎え入れた
リュウジロウもまた何も言わずユカリの方に
身体を向ける

「ありがとうユカリさん…お陰で助かりました」

リュウジロウはユカリに深々と頭を下げた

「いえいえ、キョウちゃんと…沢山
お話出来て、とても楽しかったですから」

キョウシロウはユカリの花咲く満面の笑顔に
心の底から再びときめいた
こんな綺麗な人がこの世に存在するのかと
まるで女神の様にキョウシロウには映る

「…またね、キョウちゃん」

ユカリとキョウシロウは
お互いに名残惜しそうだったが
キョウシロウに笑顔で手を振り
外で待機していた車に乗り込み
その場から去っていく
しばしの別れであった

「…なあ…爺ちゃん…」
「なんだ?キョウシロウ」

ユカリを見送りながらキョウシロウは
心の奥底で決意した
彼女の笑顔を守れるような
強く立派な男になりたいと

「…俺…もっと強くなりたい
…心も身体ももっと鍛えたい」
「…ふっ…儂が生きとる間
儂の全てを儂の取って置きを
お前に叩き込んでやる…
孫とは言え泣き言は聞かんぞ?」
「…望むところだ、爺ちゃん」

その次の日から学校に通いながら
リュウジロウの課す過酷な修行を
キョウシロウは日夜こなし続けた
いつしか身体も仕上がって行き
その年では右に出る者がいない
実力者へと成長していった。



キョウシロウが16の時にリュウジロウは
静かに眠りについた、この日を境に
キョウシロウは完全に孤独となった
しかし、この四年間は学校に通いながら
日夜、リュウジロウと特訓の日々を過ごした
偉大なる祖父リュウジロウとの別れは
寂しくはあったが
不思議と哀しくはなかった
キョウシロウ自身の技や心の中に
リュウジロウの全てが生きているからだ
亡くなる前日、リュウジロウは
とても穏やかに微笑み
キョウシロウに言った
 
「…儂の今迄の弟子の中でも
キョウシロウ…間違い無く
お前が一番優秀だった…
儂の思いや技術、そして生き様は
お前の中で今後、生き続ける…
…思うがままに、強く生きろよ…
キョウシロウ…。」

そう言ってもらえた事が嬉しかった

「…キョウシロウ…この四年間
とても楽しかった、とても充実していた
ミサコとお前の両親と皆で
お前の幸せをあっちで願っているよ…」

そう言って、リュウジロウは
深夜の病院で
穏やかに息を引き取った
力の無くなった祖父の左手を
キョウシロウは両手で包む様に握る

「…爺ちゃん…爺ちゃん…今迄…本当に…
ありが…とう…」

主治医達が出て行った後で
冷たくなったリュウジロウの
手を握りながら
キョウシロウは一人静かに泣いていた



特に誰を呼ぶ事もなく
粛々と葬式と納骨を行い、荼毘に伏す
特に深い付き合いをしていた人達も
居なかった為、生前のリュウジロウに
言われていた通り指定された住所へと
ユカリ宛にだけ、訃報の手紙を出した
祖母の時もそうだったが町内会の人々が
手伝いに来てくれ、てとても助かった事に
キョウシロウは深く感謝をした
葬式で呼んだ人々への返礼品として
本来は出す物を手伝ってくれた人々に配る

「取り敢えず…こんなもんか…」

一通り終えて、落ち着くと
一人だと、家の広さに驚く

「…一人になっちまったな…」

両親や祖母が家や財産を
色々と残してくれたお陰で
極端な贅沢さえしなければ、不自由なく
暮らしていけそうだと思った
一通りの事が終わった次の日
キョウシロウはユカリと再開する
キョウシロウの元にやって来たユカリは
相変わらず美しかったが
とても心配そうな顔で玄関に立っていた

「お久しぶりです、ユカリさん」
「キョウちゃん…」

ユカリを心配させまいと
キョウシロウは爽やかに微笑み出迎えた
ユカリはキョウシロウに飛び付いて
前回の様に優しく抱きしめてくれた
甘く爽やかな香りがとても落ち着く

「…少し見ない間、大人になったね
…キョウちゃん…」
「ユカリさんは…以前と変わらず
優しく綺麗です…」
「…カッコよくなったね…キョウちゃん」
「…ユカリさんにそう言ってもらえて…
とても嬉しいです」

落ち着いた所為か、キョウシロウの腹が鳴る

「あ…落ち着いたら…すいません…
そう言えば…飯まだでした」
「ふふっ…何処か食べにいきましょうか
少しキョウちゃんとお話ししたいし」
「はい、いきましょう」

ユカリと一緒に食事が出来ることが
キョウシロウは嬉しかった
徒歩で行ける距離の近くのレストランに
二人で入った
正直なところキョウシロウはこの様な形で
女性と二人きりで食事をするのが初めてで
緊張していたのと同時に
キョウシロウは期待に胸を膨らませていた
緊張して食事の味はよく分からなかった

「キョウちゃん…困った事があったらいつでも私を頼ってね」
「はい、ありがとうございます」

ユカリの言葉にキョウシロウは微笑み返す
食事を終え、食休みの間、暫くの間談笑した

「…こうしてると…私達デートしてるみたいね…♡」
「えっ!?」

キョウシロウは小悪魔の様に微笑むユカリに
心臓を矢で射られた様にドキッとした

「あっ…キョウちゃん…嫌だったらかしら…?」
「そんな事ないです!…とても嬉しいです」

キョウシロウは頬を赤く染めて話を切り出す
勢い余った見切り発車だが
既に気持ちの歯止めはつかなかった
ユカリを思う感情が言葉を紡ぎ出す

「…ユカリさん…」
「…なあに?キョウちゃん?」
「…俺が…高校卒業したら……その時に…
俺と…結婚を前提とした、お付き合いをしませんか?」

ユカリはとても驚いたと同時に
とても嬉しそうにしていた
ユカリは両手を合わせて微笑む

「私…バツイチで、それに子供も居るけど…キョウちゃん…それでも良いの?」
「…俺は…ユカリさんが好きです…」
「…そう…ふふ…じゃあ、後二年、私…キョウちゃんの事…期待して待ってるわね♡」
「…もっと自分磨いてから、必ず迎えに行きますから…少しだけ待ってて下さい」
「…絶対に迎えに来てくれなきゃ、泣いちゃうからね?♡」
「ユカリさんを絶対に迎えに行きます、必ず!」

そう言った後、再会を誓い二人は別れた
そして、時間は現在へと戻る

ユカリとシオンがアカネから
キョウシロウを完全に解放してくれた後
ユカリとキョウシロウの二人は
日々デートを重ね続けていた
毎晩、ユカリが次の日に誘ってくれて
その都度ユカリはキョウシロウが
何処に行きたいのかを尋ねる
彼女はとても段取り良くプランを組んだ
そして、ユカリとのデートは
キョウシロウの日課にもなり
彼は毎日が楽しみだった
また、夜になるとユカリの提案通り
三姉妹が交代でキョウシロウと
何気ない会話をすると言うものだが
アカネは自分が起こした事重大さを
理解した所為で素直になりきれず
キョウシロウの寝室には現れなかった
アヤメかシオンのどちらかが
寝室に入ってきて会話をするか
もしくはその二人が来た時は
三人でゲームとかをして遊んで
楽しむだけにとどまった
まるで兄弟姉妹が出来たかのようで
キョウシロウは少し嬉しかった

(今年の冬休みはとても楽しいな…)

次の日の夜、シオン達は部屋に来ず
ユカリがデートの誘いに来ただけだった
その日は何もしないでゆっくりと
部屋でくつろぎ、気が付いたら
そのまま寝てしまった
デートの当日になって
キョウシロウはしっかりと衣服や
頭髪を整える、ユカリと並んで歩くのに
格好悪い姿なんか見せられない
シンプルではあるが清楚な格好で身支度を
整えるとユカリの準備が終わるまで
玄関で彼女が来るのを静かに待つ
程なくして玄関に現れたユカリは
いつも通りしっかりとめかし込んでいて
とても美しく、そして可愛らしかった

「…キョウちゃん…デートの時間よ♡」

ユカリにそう言われるたびキョウシロウの
胸の奥底は高鳴りときめいた。



ある午後の晴れた昼下がり
いつもの様にキョウシロウと
デートの約束をしていたユカリは
職場で少し仕事をしてから待ち合わせの
場所へと向かう、気持ちが昂っていた為か
思っていた時間よりもはるかに早く
待ち合わせ場所に辿り着いてしまった
それ程キョウシロウとのデートを
楽しみにしていたとも言える。
待ち合わせの場所はあまり人通りがなく
また、近くの繁華街でムードを深めた後の夜に
キョウシロウを連れてラブホテルで
じっくりと愛し合うと言う算段だった為
少し治安は良いとは言えない立地で
しかし、それでも計画は完璧だとユカリが
思っていた矢先に予期せぬ事は起こった

「…おねーさん…とても綺麗ですね
俺と一緒に遊びませんか?」

ユカリに陽気に話しかける男は
昼間から酒に酔っている様な感じであった
ユカリはこう言う人間が好きではなかった

「…今、人を待っているので、申し訳ありませんが、他を当たってください…。」

ユカリはこう言った人の心情だろうが
お構いなしに土足で踏み込んでくる
手合いが心底苦手だった。
都姫グループの会社内では
故・ユウイチロウが残してくれた
色々な情報や自身が勉強した全てを
巧みに使い上手く経営しているが
それ以外におけるユカリ自身の対男性経験は
全くの0、結婚式の日に故・ユウイチロウと
誓いのキスをしたぐらいだった

「…待ってる相手…まだ来ないんでしょ?
その間に俺といいことしようよ!…楽しませてやるからさ」

男はユカリの腕を掴む、ユカリの全身に嫌悪感が走る。男の口臭からはアルコールの匂いが漂っている様に思えた

「嫌です!!離してください!!」

ユカリは男の手を振り解こうとするも
力が強くて一向に振り解けない
周囲にも人影がなく、助けてくれる様な
人は見つからない

「…いいからこいよ!そんなデカパイ
ぶら下げてこんな所に居るって事は
相当な好きもんなんだろ!!
しっかり可愛がってやるからよ!!」

男は舌なめずりで邪悪な笑みを浮かべる

(…怖い…怖いッ…助けて…助けてッ…!)

ユカリの手を掴む男は強引にユカリを
自分の方へと引き寄せる男の強い力に
ユカリは恐怖でぐっと目を瞑った

(…助けてッ!!キョウちゃんッ!!!)

ユカリはしばらく身体を強張らせていたものの
何も起きない、恐る恐るユカリは目を開く
すると、キョウシロウが背後から男の腕を
握り潰すかの如く、力強く掴む光景が
ユカリの眼に映った。
キョウシロウの目が怒りで燃える

「!?いでっ!?いででででっ!!?はっ…はなせっ!!」

キョウシロウは腕に力を込めて
ユカリの手を掴む男の手を無理矢理解く
男がキョウシロウの手を振り払おうとするもがっちり固定されて一切動かない
体躯からは想像できない剛力に男は驚く

「お前、俺の女に何か用か?」
「ああっ…キョウ…ちゃん…」

キョウシロウは怒りの表情で男を睨んだ
その表情は今までユカリの見たこともない様な
鋭さや力強さがこもっていて
キョウシロウの目を見た男は恐怖する

(…キョウちゃん…やっぱり来てくれた…♡)

ユカリはその凛々しいキョウシロウの姿を
瞳の奥に焼き付けていた

「…ちっ…なんだ男連れかよ…」

男は観念したのか、抵抗するのをやめ
それを確認するとキョウシロウは
男の手を解く、男はキョウシロウの手を払い
そして、振り向いて何事もなかったかの様に
ゆっくりと逃げ出す
キョウシロウは男の事よりも
真っ先にユカリの安否を確認する

「…ユカリさん…怪我はない?
遅くなってごめんなさい…」
「ええ…大丈夫よ…ありがとう、キョウちゃん…」

ユカリはキョウシロウの普段見せない表情を
目を逸らさずしっかりと見ていた。
彼のとても悲しそうな表情がユカリの
胸の奥底に何かが刺さる様な感覚を覚えた

(…キョウちゃん…なんで…なんで…こんなに…こんなに…かっこよくて……可愛い…の…?)

ユカリは胸の奥が高鳴るのを感じていたが
それも束の間の事だった
何処かへ逃げたと思われていた
男が今度はキョウシロウの背後へ襲い掛かる
ユカリは咄嗟に叫ぶ

「危ない!!キョウちゃんッ!!」
「へっ!!スキだらけだ!!」

キョウシロウは咄嗟に体勢を構える
鋭い視線は男の動きを完全に捉えていた

「……遅いッ!!」

ユカリがキョウシロウの名を叫んだ刹那
キョウシロウは身体を振り向き
襲い掛かる男の右手を自身の左手で掴み
その手を引っ張りながら同時に
右手掌を男の胸の中心よりすぐ下の
勢い良く鳩尾に撃ち込む、男が悶える
キョウシロウは脚を踏ん張り
撃ち込んだ右手掌を中心軸として
腕を掴んだ左手を一気に引き寄せ
男を持ち上げ真横目掛け宙にぶん投げる
そのまま勢い良く地面に叩き付けると
男は痙攣し、やがて動かなくなる
どうやら気絶した様だ。

「…えっ…?何が起こったの…?」

一瞬の出来毎に困惑するユカリ
キョウシロウはすぐにユカリの手を引き
ここから逃げるために走り出した

「逃げるよ、ユカリさん!」
「えっ?…はい!!」

ユカリはキョウシロウに手を引かれるまま
二人はその場を走り去る、人通りの少ない
男は路地裏に放置されていた
走る途中、ユカリの提案で道沿いの
ラブホテルの一室にそのまま逃げ込んだ二人
ほろ暗く微かに桃色に灯る電飾が
部屋の淫猥さを醸し出す
電飾に映し出されるユカリの姿は
キョウシロウの目にとても美しく映った
息を切らせながら、ユカリにとっては
普段起こり得ない様なスリリングな
逃避行すら何処となく楽しんでいる様な
ユカリの姿を見てそんな風に
キョウシロウは思えた

「…はあ…怖かった…」
「…っ…ユカリさん…っ…!」

そう小さく漏らしたユカリを
キョウシロウは優しく抱く
まるで大切な宝物を護るかの様な抱擁だ
ユカリはキョウシロウの逞しいく
鍛え上げられた身体に優しく
抱かれ安堵感を覚えた

「…ごめんなさい…ユカリさん…ごめんなさい
…俺がもっと早く来てれば、こんな事には…
一歩間違えれば取り返しのつかない事になっていた…ごめんなさい…ごめんなさい」

ユカリを抱くキョウシロウの目から
涙が流れていた、それ程にユカリを
失う事が彼にとって恐怖だった

「…そんな事…良いのよ…助けに…
来てくれたじゃない…キョウちゃん…」

ユカリは目を瞑って聞いていた
キョウシロウに抱かれたユカリの耳には
逞しいキョウシロウの胸板から
彼の心臓の鼓動が聞こえてきて
段々と心地の良い気分に重なっていた

「…キョウちゃん…ありがとう♡」

ユカリは涙で濡れたキョウシロウの頬に
優しく手を添えて、優しく口付けをする
柔らかく暖かいユカリの唇の感触が
キョウシロウの唇に伝わる

「ほら…泣かないの…男の子でしょ?」
「…ユカリさん…。」

ユカリはキョウシロウの事が
愛おしくなって再度、唇を重ねる
自分の為に泣いてくれている姿が
たまらなく愛おしい、全身で包み込んで
彼を癒してあげたいとユカリは思った

「…キョウちゃん…とりあえず…
 一緒に…シャワー浴びましょ♡」

キョウシロウは静かに頷いた
浴室の前でユカリは服を脱ぎ捨てた
黒い華の刺繍が入った薄紫のブラジャーと
Tバックのパンティがユカリの
豊満な乳房と桃尻を一層美しく魅せていた
ユカリはゆっくりとブラジャーを取り外し
キョウシロウに見せつける様に
解放された乳房を放り揺らす
乳房の先端は桃色の乳首が
少し尖っている様にツンとそそり立っていた

「ッ…ユカリさんッ…!?」
「ふふ…私の身体…どうかしら?♡
これでも少しは鍛えているのよ?♡」
「綺麗です…とっても…!」
「…嬉しいわ♡」

ユカリがキョウシロウの下半身に目をやると
ズボン越しでもわかるぐらい出っ張っている
部分があった

「…苦しそうね…キョウちゃんも
早く脱いで♡」
「あっ…ちょっと!?ユカリさん!?」

焦るキョウシロウを尻目にユカリは
妖艶な笑みを浮かべながら
キョウシロウの衣服を勢い良く脱がし始める
ユカリがキョウシロウのボクサーパンツを
一気に下ろすと逞しく太くて硬い
キョウシロウの肉竿がぶるんッ!と
勢い良くユカリの目の前に現れた
むせかえる様なオスの匂いがユカリの
脳裏を刺激し、メスの本能を駆り立てる

「…この匂い…凄い…美味しそう…」

肉竿に顔をくっ付けて鼻先で蒸れた
愛するオスの匂いを堪能するユカリ
濃厚な香りを吸い込むとまるで
脳裏が麻痺する感覚を覚えていた

「少し…味見させて…」
「は…はい…」

桃色の乳首をびんびんに勃起させながら
ユカリは肉竿の先端の雁首を一周
ゆっくりと舌先で丁寧になぞる様に舐め回す
芳潤なオスの香りがユカリの口内に広がり
味わう様にして飲み込んでいく

(…ユカリさんが…俺のちんぽ…舐めてる…)

こそばゆい感覚が肉竿を伝って股間に響く
キョウシロウが至福の快感に顔を蕩けさせて
情けない顔でユカリを見つめていた
ユカリはキョウシロウ顔を覗きこんで
淫靡なメスの表情を浮かべ微笑む

「…キョウちゃんのおちんぽ…かっこよくて
美味しくて…とても素敵よ…♡…私の身体を
見ただけで…こんなになってくれるなんて
とっても嬉しいわ…♡」
「…ユカリさんは…とても魅力的ですから…」
「ふふ…ありがと♡」

跪いてキョウシロウの肉竿にユカリは軽く
口付けをした後、即座に立ち上がり
履いていたパンティを脱ぎ捨てて
少し楽しそうにキョウシロウの手を引く

「さぁ、いきましょ♡」

ユカリに手を引かれるままキョウシロウは
浴室へと入って行く



ユカリの豊満で唆る身体を目の当たりにし
キョウシロウの心臓は爆発しそうな
勢いで鼓動を刻んでいた
キョウシロウは浴室に入った直後
ユカリの頬に両手を添えて唇を重ねる
彼女を堪能したい感情に
最早、理性や歯止めは効かず
舌を絡ませあってお互いの唾液を
交換して味わう水音が軽く浴室に響く

「んむっ…もう…せっかちさん♡」
「だって…」

ユカリ自身もキョウシロウを求めているのに
余裕そうに悪戯っぽく甘く囁く

くちゅっ♡くちゅっ♡くちゅっ♡くちゅっ♡

「は…んっ…♡んっ…♡んむっ…♡んちゅっ
♡」

再びユカリの口内に舌を捩じ込み
舌を絡め合って、ユカリの唾液を味わう
ユカリから醸される爽やかで甘い香りが
キョウシロウが好むユカリのメスの香りが
オスとしての本能と欲情を唆る

ちゅっ♡くちゅっ♡ちゅっ♡ちゅっ♡

「は…っ♡あッ…あ…あ…んっ…♡キョウちゃん、ふふ…くすぐったい…♡」
「ふふ…ユカリさん…可愛い」

ユカリの頬にキスし、ユカリの首筋の輪郭を
なぞる様に舌を這わせる、ユカリの肌から
分泌された、仄かな汗の塩味と
甘く芳醇なユカリのメスの香りが
キョウシロウの口内に広がる
ユカリの白絹の柔肌は触れていて心地よく
ずっと触れていたい気分になった

「…ユカリさん…胸…物凄くおっきいね…」
「…いっぱい触ってね、キョウちゃん♡」

キョウシロウはユカリの豊満な乳房を
優しく揉み上げる。柔らかな感触が心地良い
きめ細やかな肌にはハリがあり
持ち上げるとまるで餅の様に手に吸い付いた

…ちゅっ♡…ちゅっ♡…ちゅぱっ♡

キョウシロウはユカリの桃色の乳首に
優しく吸い付き舌の上でコロコロと
弄ぶ様に味わう、ユカリは自身の
乳房に赤児の様に吸い付くキョウシロウの
その姿を見て、優しく微笑む

「ふふ…キョウちゃん…
まるで…赤ちゃんみたい…♡
…とっても、えっちな赤ちゃん…♡」
「ユカリさんの子供は幸せだろうね」
「…キョウちゃんったら…♡」

ユカリに耳元で甘く囁かれると
キョウシロウは背筋がぞくぞくする様な
感覚を覚えキョウシロウの肉竿が
反り返る様にピクンと反応する
乳房の先端から下に向かって舌を這わせ
腹部、へそ、そして太腿をなぞる様に舐める

「…キョ…キョウちゃん…♡」
「ユカリさんの隅々まで知りたいんだ…」

キョウシロウはしゃがみ込み
ユカリの太腿まで顔が来ると
整えられた黒艶の茂みの下で
一層メスの香りを漂わせる
場所があった、キョウシロウの呼吸が
一段と荒くなる、彼から漏れる微かな吐息が
ユカリの身体を熱くさせていく

「……ユカリさん……見ても……良い?」
「……ええ……しっかり……見てね……♡」

キョウシロウは跪いて
ユカリの両太腿の付け根にある
美しく整えられた黒艶の茂みの下を探る

「んっ…!♡」

茂みのすぐ下の小さな突起に触れると
ユカリは小さく喘ぐ、徐々に茂みの中の
ローズピンクの花弁が水気を帯びる

「…キョウちゃん…もっと見て…♡」
「ユカリさん…痛かったら…言ってね」
「うん…」

するとユカリは茂みの下がもっと見える様に
浴槽の淵に両手をついて
股間を突き出す様な格好になった。
微かに脈動する桃色の突起を先端に
二枚のローズピンクの微かに濡れた花弁が
ぴったりと閉じていた
桃色の突起のすぐ下の小さな肉穴はヒクヒクと微動し、閉じられた花弁から更に下りた
先に、薄桃色の蕾の様なものがあった

「…綺麗です…ユカリさん…」
「…奥まで覗いても良いのよ…?♡」

キョウシロウはローズピンクの花弁に
優しく指を這わせ、ゆっくりと開く
ゆっくりと、宝箱を開ける様に丁寧に開く

「あっ…♡…んんっ…♡」

ユカリは唇を噛む様にして目を瞑り喘ぐ

くちゅっ…♡…くぱぁっ…♡

開いた花弁の内側には、膣穴の中央に向かって複数の突起が短く伸びていて
ユカリの膣穴はまるで華の様な形状を
形成しているようにもイソギンチャクを
上から覗き込んだ様なものを思わせた
膣壺から生成した愛液がまるで
蜜でも溢れさせるかの様に
膣穴からゆっくりと漏れ出している
オスを誘う芳醇なメスの香りが漂う

「…これが…ユカリさんの…ユカリさんの…」
「…人に見せるのは…初めてなの…恥ずかしい…」

ユカリは顔面を真っ赤に染めながら目を瞑って少し唇を噛みながら、囀る様に囁く
ユカリの恥ずかしそうな囁きが
より一層、キョウシロウの欲情を駆り立てる
キョウシロウは鼻をユカリの膣穴に
ゆっくりと近付けて、膣穴から醸し出される
芳潤なメスの香りを堪能する
背筋が痺れる様な強烈な感覚を覚えて
肉竿がびくんびくんと悶える様に反応する

「あっ…キョウちゃん…匂い嗅いじゃ…恥ずかしい…♡」
「…ユカリさんの…大切な所…いい匂いがする…もっと好きになる…」

メスの香りに誘われる様に
黒艶の茂みの果実を舌先で弄る
小降りの果実に仄かにまとわり付いた
恥垢を丹念に舐め取って
果実を転がす様に舌の腹で優しく撫でる

「あっ…♡キョウちゃん…汚いよぅ♡」
「…ユカリさんの味…とても美味しいですよ
…匂いもユカリさんの全てが大好きです」
「もう…キョウちゃんったら♡」
 
小振りなローズピンクの花弁に
舌を這わせてゆっくりとなぞる
柔らかな輪郭に舌を這わせ
ユカリの味を丹念に堪能する
下着や汗で蒸れて熟成されたメスの匂い
舌から感じる愛液と汗の味、微かな塩味
爽やかな甘味と仄かな酸味それらを感じて
ユカリの華の様な膣穴に舌を差し込む

くちゃっ♡ぴちゃっ♡くちゅくちゅっ♡

「んんっ…♡」

やや抵抗感のある膣肉を舌で舐り
ユカリの膣壺から溢れ出る愛液を
じっくりと口内で味わった
膣壺の中は熱く柔らかく
塩味と苦味があるはずなのに、それらが全て
キョウシロウの口の中で甘味に変わって行く
ユカリの愛液を高級な甘味として
キョウシロウはただひたすら味わい続けた
ユカリは頬を真っ赤に染めて、囁く様に呟く

「…キョウちゃん…ごめんなさい…
…私……私…おしっこ…出そう…」
「…ユカリさん…」

太腿をモジモジと震わせる彼女の姿
このまま、ユカリの痴態の全てを味わいたい
サディスティックな欲望が
キョウシロウの脳裏を刺激する

「…このままここでしちゃいなよ」
「えっ!?キョウちゃん…!?」
「…ユカリさんのなら…俺が全部飲んであげるから…」

ユカリは酷く困惑し、一層頬を赤く染める
キョウシロウはユカリの放尿を促す様に
舌先で桃色の肉穴を優しく刺激する

「キョウちゃん…っ!そんな…そんな事されたら…!!♡」

舌先差し込み、桃色の肉穴の中を味わう様に
丹念に舌先を動かす、肉穴の中で蠢く
キョウシロウの舌先が必死に耐える
ユカリの膀胱を嘲笑うかの様に刺激する
ユカリはついに我慢が出来なくなって
両手でキョウシロウの頭を鷲掴みにすると
彼の口を自身の股間に勢い良く押し付けた
放出されるだけのただの老廃物
それを喜んで飲んでくれると言うオスに
全て捧げよう、自分の痴態を彼に捧げよう
身体を悶えさせながら、その時が来た

「ッッ!!出るっ!!♡」

…ちょろっ♡…ちょろろろっ♡
…じょろろろろろろろろっ♡
ちょろろろっ…♡
ちょろろっ♡…ちょろっ♡

「ああっ!いっぱい出てる…キョウちゃんにおしっこ…いっぱい飲まれてるぅっ…♡」

キョウシロウの口内に容赦なく
ユカリから放出される黄金色の聖水
塩味と苦味とユカリの愛液が入り混じり
複雑な味わいが口の中に広がる
キョウシロウはユカリの桃尻を鷲掴みにして
桃色の肉穴から吸い込む様に
ゴクゴクと喉音を立てて飲み込んでいく

(…コレが…ユカリさんの…味…)

ユカリの膀胱を空にする様に吸い付き
全てを搾り取り飲み込む、嫌悪感は無かった

(…こんな…こんなのってぇ…♡)

ユカリは背徳的な快感に顔を蕩けさせながら
恥ずかしそうに悶え、聖水を出し切ると
ブルッと大きく身震いさせた
一心不乱にユカリの桃色の肉穴と
茂みの果実にちゅうちゅう♡と吸い付く
キョウシロウの姿に胸が高鳴る

「…キョウ…ちゃんに…私の…濃いの飲まれちゃった…♡」

身体をビクビクッと強く震えさせながら
全身を流れる快感の信号に身悶えさせる

「キョウちゃんの顔…私の所為で汚れちゃったね…」
「ユカリさんにマーキングされたみたいで…少し嬉しい気分です…」

頬を染めるキョウシロウ
ユカリは跪きキョウシロウと視線を合わせて
しゃがみ込み、上から彼の口に舌を捩じ込む

くちゃっ♡ぴちゃっ♡じゅるるっ♡

塩味と苦味と酸味が入り混じり
ユカリの口内に広がって行く
少し、病み付きになりそうな背徳感だった
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